無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「琢磨くんは、魔女と戦うのが怖くないの?」
「怖いと思ったことは無いな。
 かと言って、自殺願望も無いけど」



十九章 状況は好転しない

SIDE out

 

「アハハハハハハハハッアアハハハハハハハハ!!」

 

 魔女の笑い声が響く中。

 昼間とは思えない空の下。

 魔女結界ですらない場所で。

 

 四人は疾走する。

 

 先頭を走るのは<電気操作(Electrical Communication)>を使い、脳が指示する以上の動きで走る群雲だ。

 

「このまま、何もせずに通り過ぎてくれるなら、戦う必要もなさそうだが」

 

 次の瞬間、ワルプルギスの夜から黒い光が発せられ、四人を襲う。

 

「!?」

 

 思い思いの方向へ、それを避けた四人が見たのは。

 

「キャハハハハ!」

 

 その光が、人の形を造り出し、現れた使い魔たち。

 

「そうは、いかないよなぁ!!」

 

 左手に愛用する日本刀を取り出し、逆手居合で斬り裂く群雲。

 巴マミも、マスケット銃を取り出し、鹿目まどかも弓で応戦する。

 暁美ほむらは

 

「あわわわわっ!?」

 

 爆弾を使おうにも、仲間達を巻き込みかねない為、逃げ惑うだけだ。

 

「っとぉ!」

 

 周りで笑う使い魔を切り裂きながら、暁美ほむらの元へ移動する群雲。

 

「使って!」

 

 そして、右手の<部位倉庫(Parts Pocket)>から銃を取り出し、暁美ほむらに渡した。

 リボルバー派の群雲が、入手したけど使っていない銃の一つ。

 デザートイーグルだった。

 

「わ、私、拳銃なんて…!」

 

 反射的に受け取るも、戸惑いを隠せない暁美ほむらに、さらに右手から弾倉を5つ取り出す群雲。

 

「使い方はシンプル。

 相手に向けて、引き金を引くだけ」

 

 言いながら、左手の日本刀を<部位倉庫(Parts Pocket)>に戻し、腰の後から水平二連ショットガンと取り出す。

 

「こんな感じに、ね!」

 

 そのまま、使い魔を撃ち抜く。

 

「弾が無くなったら、言ってくれ。

 次の銃を渡す」

 

 言いながら、中折れ式のショットガンに弾を補充する。

 受け取った弾倉を、盾の中にしまう暁美ほむらを確認し、次の使い魔を倒す為、ショットガンを腰の後に戻し、再び日本刀を手に取る。

 

 が

 

「琢磨くん! ほむらちゃん!!」

 

 鹿目まどかの言葉と同時に、二人に影が迫る。

 見上げると、迫るのは切り取られたビル。

 

「マジか!?」

 

 形振り構わず、全力で回避行動を取る。

 途中、時が止まる感覚を群雲は感じた。

 どうやら、暁美ほむらが回避行動の為に、時を止めたようだ。

 

 そういえば、暁美先輩がいるからか、最近時間停止使ってないな。

 

 ふと、そんな事を思う群雲だが。

 

 仮に使っても、現状を打破する手段にはなりえないな。

 

 時が動き出し、回避行動を続ける群雲だが。

 

「う、おおおおお!?」

 

 直撃こそ避けたが、巨大なビルが地面に叩き落された際の爆風に、体勢を崩される。

 日本刀を戻し、必死に受身を取る群雲に使い魔が追撃をかける。

 

「がああああ!!」

 

 流石に、受身中に攻撃を避ける事は出来ない。

 それでも怯まず、群雲は不恰好な体勢ながらも、右腰からリボルバーを取り出し、応戦する。

 なんとか、周りの使い魔を退けた群雲は

 

「……しくじった!」

 

 ワルプルギスの夜の狙いに気付き、唇を噛む。

 

「分断されたっ!?」

 

 先刻のビル落しは、四人を分散させる為。

 爆風と追撃により、自分がどの程度離されたのか、予想している暇も無い。

 群雲は、周りを見る……ではなく、上空に浮かぶワルプルギスの夜を見つめる。

 変わらず、笑い続けるワルプルギスの夜に、時折何かが飛んでいく。

 大してダメージがあるようには見えないが、群雲の狙いはそこではない。

 

「桃色の光は、鹿目先輩の矢。

 ……今のは、巴先輩の銃撃か」

 

 ワルプルギスの夜に向かう攻撃。

 その角度から、先輩達のおおよその位置を割り出すのだ。

 

「暁美先輩は、攻撃手段がオレの渡した拳銃ぐらい……。

 たまに、時が止まる感覚があるから、まだ戦っているんだろうけど……」

 

 位置が、割り出せない。

 群雲は思考を切り替える。

 

「どちらにしても、単独で挑んで勝てそうに無い相手。

 なら、早期の合流が重要!」

 

 言った瞬間、群雲は<電気操作(Electrical Communication)>を発動して、駆け出す。

 おそらく、鹿目先輩よりも巴先輩の方が近い。

 いくら遠距離攻撃が可能な二人でも、周りに使い魔がいたら、本体に向かって高火力技なんて、使えないだろう。

 なら、現状本体を攻撃する手段に乏しい自分が、先輩達の周りの使い魔を相手にする。

 自分の役割を認識し、群雲は歩を進め

 

「キャハハハハハハ!!!!」

「邪魔ぁ!!」

 

 使い魔に阻まれる。

 せっかく分断させた魔法少女達を、簡単に合流させるほど、優しい夜ではないのだ。

 日本刀で使い魔を迎撃するが、群雲に僅かに焦りが出始める。

 ――――使い魔にてこずっている奴が、本体を倒せるか?

 焦りは、動きを鈍らせ、鈍った動きは隙を作り、そこから更なる焦りを

 

「切り替えろ!

 弱気になっても、状況は好転しない!!」

 

 群雲は、割り切る。

 この状況ですら、割り切ってみせる。

 まずは合流、そこからなのだ。

 使い魔を切り裂き続けながら、群雲は走り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 何体の使い魔を切り裂いたのか。

 何体の使い魔を撃ち抜いたのか。

 最初からカウントする気が無かったので、数なんて覚えちゃいない。

 

「~~~あ゛あ!?」

 

 ここへ来て。

 “時の止まった世界を認識できる”のが、仇となっている。

 タイミングが、ずれるんだよ!!

 

「~~~~~っとぉ!!」

 

 動き出した世界で、使い魔との戦闘を再開する。

 だが、暁美先輩と会うまで“自分以外の人が時を止めた感覚”なんで、感じた事は無かった。

 要検証、考察だが。

 今は、それは隅に置く。

 上空のワルプルギスの夜を視界に捉え。

 

「…………頼む、攻撃してくれ。」

 

 今、先輩達の位置を予測できる手段が、それしかないのだ。

 だが、本体に対する攻撃が、確認できない。

 歩みを止めず、祈るような気持ちで魔女を見続ける。

 使い魔はかなりの数を倒した。

 確実に、数を減らしているはずだ。

 なら、本体を攻撃する隙も、見つけられるはずだ。

 先輩達の実力は、知ってる。

 ならば。

 

「~~~またか!?」

 

 世界が止まる感覚。

 それは、自分の体が強制的に止められる感覚。

 まあ、時が止まるって事は、暁美先輩が無事だという証拠だ。

 悲観しても仕方が無い。

 少しでも、プラスとなるように考え、そこから打開する策を見出s

 

「おぅあ!?」

 

 動き出した時に対応しきれず、すっころんだ。

 しかも<電気操作(Electrical Communication)>で両足に普通以上の動きをさせている為、かなりの勢いがある。

 さらに言うなら、体勢が崩れようと<電気操作(Electrical Communication)>が強制的に止まるわけじゃない。

 両足をダカダカさせながら、ゴロゴロと転がるハメに。

 ちきしょう、格好わりぃ。

 

「いって……………え?」

 

 <電気操作(Electrical Communication)>を止め、体を起こしたオレは、視界に“ありえないもの”を見た。

 見滝原中学の制服。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――おいおい。

 

 一般人は、避難所にいるはずだ。

 

――――なにを、してるんだよ?

 

 今、この辺りにいるのは、変身して、魔女と戦う者のはずだ。

 

――――――なあ?

 

 では、何故彼女は見滝原中の制服を着て。

 

――――――――巴、先輩?

 

 地面に、横たわっているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 

 

ワルプルギスの夜は、まだ。

――――――――――終わらない。




次回予告

失ったものは、戻ってこない
新たに、得るものがあったとしても、それは別のもの

失ったものは、戻ってこない
似たものを手に入れたとしても、それは別のもの




もう、もどらない




二十章 ばかなの?

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