「怖いと思ったことは無いな。
かと言って、自殺願望も無いけど」
SIDE out
「アハハハハハハハハッアアハハハハハハハハ!!」
魔女の笑い声が響く中。
昼間とは思えない空の下。
魔女結界ですらない場所で。
四人は疾走する。
先頭を走るのは<
「このまま、何もせずに通り過ぎてくれるなら、戦う必要もなさそうだが」
次の瞬間、ワルプルギスの夜から黒い光が発せられ、四人を襲う。
「!?」
思い思いの方向へ、それを避けた四人が見たのは。
「キャハハハハ!」
その光が、人の形を造り出し、現れた使い魔たち。
「そうは、いかないよなぁ!!」
左手に愛用する日本刀を取り出し、逆手居合で斬り裂く群雲。
巴マミも、マスケット銃を取り出し、鹿目まどかも弓で応戦する。
暁美ほむらは
「あわわわわっ!?」
爆弾を使おうにも、仲間達を巻き込みかねない為、逃げ惑うだけだ。
「っとぉ!」
周りで笑う使い魔を切り裂きながら、暁美ほむらの元へ移動する群雲。
「使って!」
そして、右手の<
リボルバー派の群雲が、入手したけど使っていない銃の一つ。
デザートイーグルだった。
「わ、私、拳銃なんて…!」
反射的に受け取るも、戸惑いを隠せない暁美ほむらに、さらに右手から弾倉を5つ取り出す群雲。
「使い方はシンプル。
相手に向けて、引き金を引くだけ」
言いながら、左手の日本刀を<
「こんな感じに、ね!」
そのまま、使い魔を撃ち抜く。
「弾が無くなったら、言ってくれ。
次の銃を渡す」
言いながら、中折れ式のショットガンに弾を補充する。
受け取った弾倉を、盾の中にしまう暁美ほむらを確認し、次の使い魔を倒す為、ショットガンを腰の後に戻し、再び日本刀を手に取る。
が
「琢磨くん! ほむらちゃん!!」
鹿目まどかの言葉と同時に、二人に影が迫る。
見上げると、迫るのは切り取られたビル。
「マジか!?」
形振り構わず、全力で回避行動を取る。
途中、時が止まる感覚を群雲は感じた。
どうやら、暁美ほむらが回避行動の為に、時を止めたようだ。
そういえば、暁美先輩がいるからか、最近時間停止使ってないな。
ふと、そんな事を思う群雲だが。
仮に使っても、現状を打破する手段にはなりえないな。
時が動き出し、回避行動を続ける群雲だが。
「う、おおおおお!?」
直撃こそ避けたが、巨大なビルが地面に叩き落された際の爆風に、体勢を崩される。
日本刀を戻し、必死に受身を取る群雲に使い魔が追撃をかける。
「がああああ!!」
流石に、受身中に攻撃を避ける事は出来ない。
それでも怯まず、群雲は不恰好な体勢ながらも、右腰からリボルバーを取り出し、応戦する。
なんとか、周りの使い魔を退けた群雲は
「……しくじった!」
ワルプルギスの夜の狙いに気付き、唇を噛む。
「分断されたっ!?」
先刻のビル落しは、四人を分散させる為。
爆風と追撃により、自分がどの程度離されたのか、予想している暇も無い。
群雲は、周りを見る……ではなく、上空に浮かぶワルプルギスの夜を見つめる。
変わらず、笑い続けるワルプルギスの夜に、時折何かが飛んでいく。
大してダメージがあるようには見えないが、群雲の狙いはそこではない。
「桃色の光は、鹿目先輩の矢。
……今のは、巴先輩の銃撃か」
ワルプルギスの夜に向かう攻撃。
その角度から、先輩達のおおよその位置を割り出すのだ。
「暁美先輩は、攻撃手段がオレの渡した拳銃ぐらい……。
たまに、時が止まる感覚があるから、まだ戦っているんだろうけど……」
位置が、割り出せない。
群雲は思考を切り替える。
「どちらにしても、単独で挑んで勝てそうに無い相手。
なら、早期の合流が重要!」
言った瞬間、群雲は<
おそらく、鹿目先輩よりも巴先輩の方が近い。
いくら遠距離攻撃が可能な二人でも、周りに使い魔がいたら、本体に向かって高火力技なんて、使えないだろう。
なら、現状本体を攻撃する手段に乏しい自分が、先輩達の周りの使い魔を相手にする。
自分の役割を認識し、群雲は歩を進め
「キャハハハハハハ!!!!」
「邪魔ぁ!!」
使い魔に阻まれる。
せっかく分断させた魔法少女達を、簡単に合流させるほど、優しい夜ではないのだ。
日本刀で使い魔を迎撃するが、群雲に僅かに焦りが出始める。
――――使い魔にてこずっている奴が、本体を倒せるか?
焦りは、動きを鈍らせ、鈍った動きは隙を作り、そこから更なる焦りを
「切り替えろ!
弱気になっても、状況は好転しない!!」
群雲は、割り切る。
この状況ですら、割り切ってみせる。
まずは合流、そこからなのだ。
使い魔を切り裂き続けながら、群雲は走り続ける。
SIDE 群雲琢磨
何体の使い魔を切り裂いたのか。
何体の使い魔を撃ち抜いたのか。
最初からカウントする気が無かったので、数なんて覚えちゃいない。
「~~~あ゛あ!?」
ここへ来て。
“時の止まった世界を認識できる”のが、仇となっている。
タイミングが、ずれるんだよ!!
「~~~~~っとぉ!!」
動き出した世界で、使い魔との戦闘を再開する。
だが、暁美先輩と会うまで“自分以外の人が時を止めた感覚”なんで、感じた事は無かった。
要検証、考察だが。
今は、それは隅に置く。
上空のワルプルギスの夜を視界に捉え。
「…………頼む、攻撃してくれ。」
今、先輩達の位置を予測できる手段が、それしかないのだ。
だが、本体に対する攻撃が、確認できない。
歩みを止めず、祈るような気持ちで魔女を見続ける。
使い魔はかなりの数を倒した。
確実に、数を減らしているはずだ。
なら、本体を攻撃する隙も、見つけられるはずだ。
先輩達の実力は、知ってる。
ならば。
「~~~またか!?」
世界が止まる感覚。
それは、自分の体が強制的に止められる感覚。
まあ、時が止まるって事は、暁美先輩が無事だという証拠だ。
悲観しても仕方が無い。
少しでも、プラスとなるように考え、そこから打開する策を見出s
「おぅあ!?」
動き出した時に対応しきれず、すっころんだ。
しかも<
さらに言うなら、体勢が崩れようと<
両足をダカダカさせながら、ゴロゴロと転がるハメに。
ちきしょう、格好わりぃ。
「いって……………え?」
<
見滝原中学の制服。
――おいおい。
一般人は、避難所にいるはずだ。
――――なにを、してるんだよ?
今、この辺りにいるのは、変身して、魔女と戦う者のはずだ。
――――――なあ?
では、何故彼女は見滝原中の制服を着て。
――――――――巴、先輩?
地面に、横たわっているのだろうか?
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
ワルプルギスの夜は、まだ。
――――――――――終わらない。
次回予告
失ったものは、戻ってこない
新たに、得るものがあったとしても、それは別のもの
失ったものは、戻ってこない
似たものを手に入れたとしても、それは別のもの
もう、もどらない
二十章 ばかなの?