無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「これが、通常の台詞」
[これが、念話だ]
(これが、心の中の言葉)
「そういう形式ですすんでいくんで、よろしく!」(`>ω<)b
「……誰に言ってんだよ……」


二十七章 魔法少女の男バージョン

美樹(みき)さやか、鹿目まどか、か」

 

相手が学生なら、身分を調べるのは簡単。

<オレだけの世界(Look at Me)>を駆使すれば、重要書類の閲覧など、容易い。

 

「見滝原中学の学生名簿を盗んd……借りてきたぜ」

 

 そう言って、佐倉杏子が目を覚ます前に、群雲は“弓を使うツインテールの魔法少女”と“剣を使うショートカットの魔法少女”を調べてきた。

 起きて、朝飯をどうするか考えていた杏子は、その発言に目が点になった。

 

「なにしてんだ、てめぇは!?」

「いや、頼まれたから調べてきたんだが。

 ちなみに、これはコピーだから、本物が転載されたなど夢にも思うまいて。

 くくく……はははは…………はーっはっはっはっはっはっはっがっげほっごほっ!」

 

 三段笑いの挙句、むせる群雲に、杏子は思わず頭を抱える。

 しかし、情報を得るのは早いに越した事は無い。

 10秒チャージな朝ご飯を投げ渡し、自分は食パンを咥えながら、群雲が持ってきた書類に目を通す。

 支離滅裂で理解不能。

 だが、実力は折り紙付き。

 それが、杏子の群雲に対する評価であり、出来れば敵に回って欲しくない理由でもある。

 

「で、どう思うよ?」

 

 10秒チャージを終えた群雲が、歪な眼鏡を押し上げながら、杏子に問いかける。

 

「マミの一つ下か。

 どちらも家族持ちって事は、マミに賛同した協力者で、確定っぽいな」

「誰かの為に、か」

「なんにもなりゃしないのにな……」

「それを決めるのは、佐倉先輩じゃないだろ」

 

 呟いた杏子の言葉に、群雲は反論する。

 書類から顔を上げ、群雲を睨みつける杏子。

 眼鏡がずれ、長い前髪から緑の瞳が覗く群雲と、互いの視線が交錯する。

 

「幸せの形なんて、人それぞれだ。

 今、オレ達にとって重要なのはそこじゃない」

 

 眼鏡を押し上げたまま静止する事で、群雲は顔全体を隠して、問いかけた。

 

「どう、動くんだ?」

 

 長く、白い前髪が。

 縁の無い丸レンズの眼鏡が。

 そして、右手が。

 群雲の表情を完全に覆い隠す。

 杏子は、それを見ながらスティックチョコを取り出すと、口に咥えた。

 

「……様子見、だ」

「なら、オレはちょいと寝るぜ。

 流石に眠いんでね」

 

 言いながら、欠伸をしながら傍らの椅子に腰掛ける群雲。

 それを軽く一瞥し、杏子は立ち上がる。

 

「何かあれば、念話で叩き起こすぞ」

「……優しくしてね♪」

「うぜー」

「ほっぺにチュ~で起こしてくれるのを、期待する」

「耳を噛み切ってやるよ」

「こえー」

 

 軽口を叩きあい、杏子はその場を。

 

――――――父親の教会跡を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジに、正義の味方ごっこかよ……」

 

 使い魔を相手にする三人の魔法少女を、少し離れた所で見ながら、杏子は悪態をつく。

 

 既に、太陽は西に傾いている時間。

 学校に通っているのだから、魔法少女としての行動は、放課後だろうと当りをつけた杏子は、三人揃って学校を出た魔法少女達を、離れた所から尾行し、観察していた。

 三人は、街中をパトロールし、魔女や使い魔の気配を探す。

 しばらく後、使い魔の結界を発見した三人は、即座に討伐に向かった。

 

「……なんか、マミ以外はチョロそうだわ」

 

 どうやら、使い魔討伐には、後輩魔法少女の経験値稼ぎも兼ねているようだ。

 変身しながらも、後方に控えて手を出さずに見守っているマミを見ながら、杏子はそう結論する。

 丸い毛玉に髭を生やしたような使い魔と、必死に戦う残り二人の魔法少女。

 使い魔が発生させた結界内で戦う新人らしき魔法少女を見ながら、杏子は咥えていた飴を味わう。

 飴に刺さり、口から出ている棒を、上下に揺らしながら、さてどうするかと考えていた杏子は。

 

「この街には、優秀な魔法少女がいると聞いていたが……」

 

 平然と歩きながら、使い魔と魔法少女の戦いへ声を掛けた、魔人の姿に目を疑った。

 

「なっ!?」

 

 なにしてんだよ、あいつは!?

 反射的に、念話を送る。

 

[てめぇ、琢磨!

 お前、何してんだ!?]

[ちょっ!?

 佐倉先輩煩いって!?

 念話で叫ぶとか、器用な事すんなよ!!]

 

 決して表情に出さないあたり、群雲はとんでもない。

 ……表情を作れないだけなのかもしれないが。

 

[てか、佐倉先輩の事だから、無駄な事すんなとか言って、介入するかと思ったが]

「この程度の使い魔すら、満足に倒せないなら、魔法少女廃業を勧めるが」

 

 念話と会話を同時に行うと言う、器用な事を披露しながら、変身状態の群雲は不敵に笑う。

 

「なっ……なんなんだよ、あんた!?」

[実力を見てたんだよ。

 弱い奴と組む気ないんてないからな]

 

 さやかの戸惑いの言葉と、杏子の質問の答えを聞きながら群雲は「これ、意外に大変だなぁ。」なんて事を思いながら、同時会話を継続していく。

 

「君たちと同じく、魔女狩りを生業とする者」

[昨日の戦いを見て、ある程度は把握してたんじゃないの?]

 

[流石に、一度戦闘を見ただけで判断するほど、あたしは馬鹿じゃないぞ?]

「まさか……魔法少女なの?」

 

 

「金髪のお姉さんには、オレが少女に見えるか?」

[てか、組む前提で動いてたのか?

 やっぱ、お師匠様と一緒がいいのかね、馬鹿弟子?]

 

[お前、晩飯抜きな]

「さやかちゃん、使い魔が逃げちゃうよ!」

 

「使い魔と遊ぶより、重要な事があると思うが?」

[それは横暴じゃね?

 寝る間も惜しんで、情報収集してきた相方に向かって]

 

[じゃ、お前は今、何してんだよ?]

「……なんなのさ、あんた」

 

「人にものを尋ねる時は、まず自分から名乗るのが筋じゃないのか?」

[情報収集。

 直に接触した方が良いと判断したまでさ。

 よくよく考えれば、魔法少女なんて口外不能な情報って、実際に接触しないと得られないんじゃね?]

 

[そりゃそうかもしれないが……。

 タイミングが悪くねぇか?]

「……美樹さやか」

「私は、鹿目まどか」

「チームリーダーの、巴マミよ」

 

「美樹先輩、鹿目先輩、巴先輩、ね」

[なんでさ?

 関係者だと分かり易くする為に、変身して結界に侵入したのに?]

 

[戦いの邪魔すれば、警戒されるだろうが!]

「……先輩?」

 

「そちら、中学生だろ?

 自分、学校に通ってたら小学生なんで」

[……ゴメン]

 

[考え無しか、てめぇ!]

「小学生!?」

 

「行ってないけどね」

[ったく……。

 どうすんだよ、この状況?]

 

「それで、あなたは何なの?」

[……どうしよ?]

 

[マジに考えなしか!?

 とりあえず、あたしは動かないから、自分でなんとかしな]

「まずは、自己紹介からだな」

 

[まあ、状況の流れに任せるさ]

「オレは、君たちの様に、魔女を狩る運命を背負う、魔法少女の男バージョン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔人群雲」




次回予告

出会った者は、同じ存在
希望で生まれた、奇跡の存在

出会った者は、違う存在
別の道を生きる、異端の存在



出会った者は、真逆の存在



道を譲らぬ、邪魔な存在









二十八章 不合格だ

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