「着いて行くよ? 別れる理由にならんし」
「……ひょっとして、あたしに惚れてたりするか?」
「なんでそうなるのかが解らん。
まあ、頼りにしてるのは認めるけど。
つか、契約前も後も、恋愛とか考えた事なかったしなぁ……」
「そんなもんか?」
「そんなもんさ」
「エンカウント率、高いなぁ……」
新たな
基本的に、群雲琢磨と佐倉杏子は行動を
信頼していない訳ではない。
かと言って、信頼しきっている訳でもない。
“自分の為に動く”事を共通としている為に。
四六時中、一緒にいるわけでもなく。
かと言って、疎遠になる訳でもなく。
“自分の為”という“共通の目的”
二人を繋ぐ物を、一言で表すなら、そういう事である。
異常だと言う人もいるかもしれない。
だが、二人とも普通ではない。
[琢磨、届いてるか?]
そろそろ合流して、晩飯の相談でもしようか。
そんな事を考えていた群雲に、杏子からの念話が届く。
[おぉ、いいタイミングだ。
個人的には、今日はもんじゃ焼きな気分なんだけど]
[届いているなら、あたしの場所は探知できるか?]
[解ってて聞いてるだろ。
そんな器用な事出来ないぞ、オレ]
[おまえって、自分の魔法以外は、からっきしだよな]
[言うなよ。
照れる上に、地味に気にしてるんだから]
[わけわからん。
それより、見滝原中学の場所はわかるな?]
[そりゃ、学生名簿を盗n……お借りした場所だしな]
[なら、その周辺の結界を索敵して、合流して欲しい]
[あらま、めっずらしぃ~。
佐倉先輩におきましては、魔女の多いこの街は身に余ると?]
[茶化さずに聞け。
マミのチーム、一人増えてる]
[ウェ ∑(0w0;)!?]
[器用な事すんな。
ついでに、エンカウント中]
[おまっ!
人の事言えないな、先輩!?]
[たまたま、同じ魔女結界を攻略しようとしてたんだよ。
流石に4対1は辛い。
合流できるか?]
[浄化前提で、5分。
浄化せずに8分]
[浄化して3分だ]
[戦闘直前?]
[美樹さやかが、斬りかかって来た]
[それまで一緒かぁ∑(・ω・`)!?]
[だから器用な事すんな。
こっちは地味にやばい]
[浄化+ストック使用。]
[1分で来い]
[30秒だ]
<
同時に、入手した直後の
「戻ってたのね」
「この街には魔女が多いって、キュゥべえに聞いたんでね」
群雲に、念話を送る数分前。
魔女結界の中で、杏子は“マミチーム”と対峙していた。
はっきり言って、想定外である。
杏子は、群雲のように、自分の実力を低く評価していない。
だが、魔法少女との戦いは、魔女との戦いとは勝手が違う。
それを割り切り、防御の練習とかしていた群雲が異常なのだ。
結界に入る前から食べていたフランクフルトを咥えながら、杏子は状況を観察する。
眼前、最前線に立つのは、かつて共に戦っていた巴マミ。
後ろに控えているのは、剣を使う美樹さやかに、弓を使う鹿目まどか。
個々の実力に差はあれど、チームとしてのバランスは悪くない。
加えて、まったく情報のない、眼鏡の魔法少女。
自身の武器である槍を、油断なく構えながら、杏子はどうするかを考えて。
……今の“相棒”に、念話を送る事にした。
「今も、街の人達の為に、戦ってるのかい?」
念話を送っている事を悟られないように、杏子から話を振る。
「そういうあなたは、変わってはいないの?」
「変わらないね。
“誰かの為に願った末の結末”を、身をもって知ってるんでね」
杏子の言葉に、マミの表情が目に見えて歪む。
情報は武器になる。
逆に、知りすぎる事は、心を揺さぶる欠点にも成り得る。
杏子は、其処を突く。
「あたしは、死ぬ気は無い。
そして、魔女を狩る事を、止めるつもりもない。
その為には、魔女の持つ
だからあたしは“自分の為”に、魔女を狩る」
自らの意思を示しながら、群雲との念話を続ける。
めんどくさいな、これ。
念話と会話の同時進行に、そんな印象を受けながら、油断なく構える杏子に、まどかが声を掛ける。
「あなたは、どうして魔法少女になったの?」
「……それを言うほど、あたし達は親しい仲かい?」
「~っ!?」
群雲の言い回しを真似しながら、杏子は“時間を稼ぐ”事に専念する。
「気に入らない……!」
だが、その言葉に反応する者がいた。
「せっかく、人を護る力があるのに……!
なんでそれを、自分の為に使うのさ!!」
美樹さやかである。
想い人の為に願い、力を得た彼女には。
自分の為だけという、利己的な使い方が納得できないのだ。
「あんた、バカだろ?」
そして、杏子は。
自身の経験があるからこそ。
自分の為だけという、利己的な使い方を選んだのだ。
「誰かの為に願ったって、それは“自分のエゴ”を押し付けてるだけだろ?
それに気付かないようなボンクラが、でしゃばるんじゃないよ!」
言葉と共に杏子は、自身の槍を上空に放り投げた。
後は、群雲が合流するのを待つだけだ。
「……なんのつもりよ?」
「あんた程度、素手で充分って事だよ」
不敵に笑う杏子に、飛び掛るさやか。
投げた武器を囮にして、魔法準備に入る杏子だが。
二人が交差する瞬間。
杏子の槍が、二人の間に落ちてきた。
「いや、速すぎるだろ、お前」
「それが、必死に駆けつけた相方への第一声かよ?」
突然降ってきた槍に後退するさやかと、地面に刺さったそれを手に取る杏子。
そして、数瞬後に降り立ったのは、緑の軍服に身を包む魔人。
軽口を叩きながら、杏子は槍を構え。
それに背を預けるように立ち、左手から鞘に納まったままの日本刀を取りだす群雲。
突然の来訪者。
その相手は、自分達を退けた魔人。
巴マミは、自身の周りにマスケット銃を召還し。
鹿目まどかは、弓を展開して構え。
美樹さやかは、マミと同じように自分の周りに刀剣を召還する。
「……群雲……くん……」
ただ一人。
マミチームの四人目である“暁美ほむら”は。
降り立った少年の名を、呆然と呟く。
その呟きは、誰にも届かない。
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次回予告
魔法少女の軋轢
魔人の思惑
戦うが定め 戦うが宿命
魔人の想い
魔法少女の願い
差異が定め 相違が宿命
魔法少女という存在
魔人という存在
生きる者の道筋
三十三章 戦りあうしかない
TIPS 作中設定説明(公式かどうか、調べ切れなかった為)
『ほむらの盾の中身』
ほむらの時間遡行は、ほむらの“魔法(盾にある砂時計)”によるもの
故に“盾の中身は、遡行前と変わらない”としています
アニメでの兵器の量は、いくら時間停止があるとはいえ“一回のループで全てを回収し、全てを使い切っている”とは思えないので