無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「聞きたい事は色々あるが、一つだけいいかい、先輩?」
「なんだよ?」
「……どちらを相手にする?」
「決まってんだろ、そんなの」


三十三章 戦りあうしかない

 魔女結界の中で対峙する、魔法少女達(+1)。

 “魔女の脅威から人々を守る為に戦う”マミチームと。

 “自分の為に力を使う事を共通とする”杏子と群雲のコンビ。

 

「こちらの目的は、あくまでも“魔女狩り”であり“魔法少女狩り”ではない。

 無用な戦いを避けるのは、上策ではないかね?」

 

 いつでも日本刀が抜けるよう、逆手抜刀の構えを取りながら、群雲が告げる。

 

[そういや、なんでマミ達の前だと、そんな芝居掛かった口調なんだ?]

[このタイミングで、そんなどうでも良い事で念話するかよ、先輩?]

[いや、気になったもので]

[緊張感、ないなぁ]

 

 目的こそ、GS(グリーフシード)であるものの、ここで必ず手に入れなければならない理由が、二人には無い。

 だからこそ、緊迫した状況ながらも、さして気を張る必要もない。

 

[照れるんだよ。

 元々、女子とまともに会話なんか、した事ねぇんだもの]

[あたしは?]

[今でも、気を抜くと照れる]

[慣れろよ、いい加減]

[結構慣れた方だぞ。

 佐倉先輩限定だけど]

 

 しかし、相手の魔法少女は、そう思ってはいない。

 

[まさか、以前に会った少年と、佐倉さんが一緒に行動しているとは、ね]

[知り合いなんですか?]

[佐倉さんとは、以前に一緒に戦った事があるわ]

[じゃあ、なんで自分の為にしか、戦おうとしないんですか、あいつ?]

[……それが、別れた原因の一つよ]

 

 それぞれの武器を展開し、油断なく構える、三人の魔法少女。

 

 そして。

 

(やっぱりそうだ。

 私が過去に戻る度に、少しずつ状況が変わってる。

 美樹さんが魔法少女になったのも初めての事だし、赤い魔法少女も初めて見る)

 

 暁美ほむらは今回、見滝原中学への転入を、前回よりも遅らせていた。

 自作爆弾の数を増やす為だ。

 加えて“以前の世界で、群雲から渡されたままだった拳銃”の弾を、新たに自作していた為でもある。

 その結果が、現在の状況。

 美樹さやかが、新たに魔法少女となり。

 

 

 

 

 

『……“向こう”の皆に、よろしく』

 

 

 

 

 

 自分の為と言いながらも、その身を削っていた、不器用な少年が。

 

「こちらは、魔女を倒せればそれでいい。

 そちらは、使い魔も討伐対象なのだろう?

 なら大人しく、使い魔を退治していればいい。

 その間に、こちらが魔女を倒して、一件落着だ」

 

 完全に、対峙した状態になっている。

 自分の“時間”と、自分以外の“時間”のズレが、少しずつ……。

 

「おいしいところだけ、持って行こうっての?」

「あんたもやっぱり、GS(グリーフシード)が目的か?

 あたしらと一緒じゃん」

「~っ!?」

 

 ほむらの心情を気にする事無く、状況は刻一刻と変化していく。

 完全に、敵対状態となってしまっている。

 

「まあ、あたしらは自分の為に戦うんだから」

「邪魔するのなら、加減はしないぜ?」

 

 背中合わせに、槍と刀を構える二人は、いつでも動けるように構える。

 

「あんた達みたいな奴を、あたしは認めない!」

 

 それに合わせる様に、さやかの叫びがあたりに響く。

 

「だったら、掛かってきなよ」

 

 杏子が、それに応対する。

 

「譲れないんだろ?

 許せないんだろ?

 だったら、あたしらは戦うしかない」

 

 口の端を持ち上げ、杏子が一歩前に出る。

 

「話も大して通じない。

 互いに譲る気も無い。

 なら……戦りあうしかないよねぇ!!」

 

 杏子の言葉を合図に、戦闘が始まる。

 さやかは、自らの周りにある刀剣を、掴み投げ、蹴り飛ばす。

 それに対して、杏子は一歩も動かずに。

 ……群雲が動いた。

 飛んできた一本目を逆手抜きで弾き。

 右手に刀、左手に鞘の抜刀状態で。

 “両方”を駆使し、襲い来る刀剣を全て弾き落とす。

 

「くっ!」

 

 それを見たさやかは、その手に剣を持ち、間合いを詰める。

 さやかの動きに合わせて、まどかは弓を引き、マミは銃を手に取る。

 

 だが。

 さやかが攻撃を開始した瞬間に。

 杏子は魔法準備に入っており。

 群雲が前に出る事で、時間を稼いで見せた。

 そして、間合いを詰めてきたさやかの横を、群雲が通り過ぎた瞬間。

 杏子の魔法が発動した。

 

 赤いダイヤを繋ぎ合わせた防御結界。

 杏子とさやかだけを見事に分断し、一対一の構図が出来上がる。

 

「来なよ。

 格の違いを教えてやるからさ!」

 

 自らの予定通りの状況を作り上げ、串を咥えたまま、杏子は不敵に笑った。

 

「せめて、二対一なら、やり様があったんだけどな」

 

 刀を鞘に収めつつ、群雲も不敵に笑う。

 

「でもまあ、なんとかするさね」

 

 その手に、黒い放電を起こしながら、一人の魔人が三人の魔法少女と対峙する。

 

[負けるなよ?]

[先輩こそ、足元掬われるようなら、指差して笑っちゃるからな]

 

 念話を交わし、始まるのは殺し合い。

 自分の為に戦う者と、誰かの為に戦う者の、譲れないからこその衝突。

 

 

 

 

 

 

 お菓子だらけの空間で、全ての役者が、舞台に上がる。




次回予告

全ての役者が揃った


一人は、見滝原を守り続ける少女

一人は、守る事で、絶望を味わった少女


一人は、守る事を、心に決めた少女

一人は、救う為に、願いを叶えた少女






一人は、未来の為に戻ってきた少女

一人は、笑う為に今を生きる少年

三十四章 幕は既に上がった

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