無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「何でお前って、自分の魔法以外は、からっきしなんだろうな?」
「しらんがな。
 才能が無いんじゃね?」
「魔法少女と魔人の違い、とかか?」
「さあね。
 ナマモノが言うには、魔人自体、絶対数が少ないらしいからなぁ」
「ちなみに、自分以外の魔人に会った事は?」
「ないよ?
 魔法少女と同じように、昔の偉人の中に、何人かいるらしいけど」


三十五章 時と命は、有限である

 さやかと杏子の戦いは、近接戦闘。

 戦闘経験が豊富な杏子が、常時有利な状態が続いている。

 しかし、勘違いしてはいけない事がある。

 それは、杏子が手加減をしていない事。

 殺すつもりで戦っている。

 非道と思うかもしれないが、自らの為の生を望む者にとって、その判断は決して間違ったものではない。

 そして、相手に手心を加えないという事は、戦いに生きる者にとって、なによりも正しい。

 そんな相手を前に、さやかはまだ“負けていない”。

 自身の願いによる、回復能力の高さもあるだろう。

 だが、なによりも。

 

 “心が折れていない”

 

 戦いの運命を選んででも、想い人の為に願った少女は、魔女との戦いを望んでいるのではない。

 人々を護る戦いを、望んでいるのだ。

 

「負けるもんかあああぁぁぁ!!!」

 

 もうしばらく、二人の少女の信念の戦いは、続きそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 対して、魔人と魔法少女の戦いは、遠距離戦。

 正確には、銃撃戦となった。

 チームリーダーのマミは、マスケット銃による応戦。

 魔人群雲は現在、両手に自動拳銃(オートマチックハンドガン)で応戦している。

 まどかとほむらは、その戦いに巻き込まれないよう、少し離れた位置にいる。

 銃を撃ち、弾丸を避ける。

 そんな戦いに介入する事が、いかに危険であるか。

 まどかの武器は弓であるし、ほむらも“前の時間軸”で、群雲から貰った銃がある。

 しかし、マミの銃弾を避ける相手に、自らの攻撃を命中させる事の困難さを、二人は充分に理解していた。

 対するマミも、他二人に魔人の攻撃が向かわないように、自らが矢面に立つ形で戦闘をしている。

 そして群雲は、他二人(特にほむら)の攻撃が、想定できない以上、刀による近距離戦は分が悪いと判断。

 リボルバーとショットガンよりも、弾数と装填のしやすさに優れている自動拳銃で応戦しているのだ。

 

 同系統の武器で戦っているマミと群雲。

 差異こそあれど、その戦闘思考は、かなり似通っている。

 

(私の武器には“狙い(エイム)”と“発射(ファイア)”の手順がある)

(銃の使用には“構える”“狙う”“撃つ”の3アクションを必要とする)

 

((その攻撃を避ける手段を、相手は持っている))

 

((狙う際の銃口の向きを瞬時に判断し))

 

(左右によるランダムな高速移動で、射線から逃れてる)

(周りのマスケット銃を盾にする事で、オレの弾丸を防いでる)

 

 刀剣に比べ、圧倒的な威力と射程があるが、銃の攻撃はあくまでも“直線的”である。

 群雲は<電気操作(Electrical Communication)>による、両足神経操作を駆使し、“狙い(エイム)”と“発射(ファイア)”の僅かな隙に、射線から逃れている。

 マミは、周りのマスケット銃を、群雲と自分の間に位置するように立ち回ることで、飛来する弾丸を予測して防いでいる。

 

 

 

 弾は、無限ではない。

 群雲の銃にも装填数は決まっているし、マミの銃はそもそも単発式である。

 “補充(リロード)”が必要だ。

 マミは、新たなマスケット銃の召還。

 群雲は右手の平の<部位倉庫(Parts Pocket)>からの弾倉の交換。

 当然、互いにその動作の隙を突く事を考えるのだが。

 

((隙を突こうにも……))

 

(使用したマスケット銃の一部を消さず、盾にする事で)

(交換中も、高速移動を止めない事で)

 

((隙を補っている))

 

 ここでも、思考が似通っている。

 

 だが、弾は無限ではないのだ。

 群雲の銃はもとより、マミの銃も魔力によるもの。

 平行線を辿る、現在の戦闘状態では、いずれ尽きるのは必須。

 

(なら、大技を決める?)

(なら、戦闘方法を変える?)

 

((それも、難しい))

 

(大技の隙を突かれたら、終わりだわ)

(銃弾を防ぐ相手に、弾速の遅い電光(plasma)球弾(bullet)では話にならないし、準備(チャージ)中の隙を突かれるだろう)

 

(リボンによる、拘束魔法を使うにしても)

(刀に変えて、距離を詰めるにしても)

 

(ただ発動しただけならば、逃れられてしまう。

 それだけのスピードを、相手は持っているし、日本刀を抜かれては無力)

(後ろ二人の追撃に、対応出来る保障はない。

 一人は弓だしな)

 

 結果、動き回る膠着状態という、異常な状況が出来上がってしまっている。

 だが、このままではジリ貧であるのは、疑いようの無い事実。

 

 魔女結界の中。

 赤い結界魔法で分断された二つの戦い。

 

 先に終わるのは、果たしてどちらか。

 

 

 

 時と命(魔力)は、有限である。

 それを誰よりも知るほむらは、気が気ではない。

 ここでSG(ソウルジェム)が穢れきるような事があれば、それこそ“最悪”でしかないのだ。

 

 ほむらはまだ“魔法少女の真実”を、チームメイトに話してはいない。

 まだ、合流して間もないのもあるが。

 “前の時間軸”で共に戦った魔人が来てから、話をしようと思っていたからだ。

 だが、現れた魔人は、敵対中であるし、話を出来る状況でもない。

 “ワルプルギスの夜”という、超弩級の魔女が現れる事を“知っている”ほむらにとって、予想以上に悪化した状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、永遠に続く状況など、存在しない。

 

(盛り上げるか!)

 

―――――魔人が、動く。




次回予告

変化する戦況

譲れないモノの為

二人は、この舞台で舞う




三十六章 魔弾の舞踏

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