無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「マミから逃げた後、合流するまで何してたんだ?」
「次の章で語られるんじゃないかな?」
「いやまて、メタすぎるぞ、お前ぇぇ!?」


三十八章 見滝原での立ち位置

 教会跡。

 ボロボロの祭壇前で、杏子と群雲は対峙していた。

 

 

 

 

 マミチームとの戦いから一夜明けて。

 この場所で寝泊りしている群雲に会いに、杏子はこの場所を訪れる。

 そして、一日の予定を話し合い、行動を開始する。

 それが、最近の二人の日課であった。

 

 しかし、今は違う。

 一人はみたらしを咥えて。

 一人は眼鏡を押し上げて。

 

 真剣な表情で、対峙していた。

 

「なんで、あのチームにこだわるんだ?」

 

 群雲の問いかけに、杏子は答えない。

 

「……はっきり言って、オレには魔法の才能は無い。

 佐倉先輩みたいに、双眼鏡を強化したり。

 “結界内に一般人がいるかどうかを判断する事”も出来ない」

 

 とぼけさせないように。

 言い逃れができないように。

 群雲は、順を追って、杏子を問い詰めていく。

 

「だが、先輩はそれが出来る。

 それが出来る事を、オレは知っている。

 だとするなら「同じ魔女結界を攻略しようとしていた」ってのが、嘘だって事も見抜ける」

「……あたしが先に、結界にいたって事は?」

「それも、考えにくい。

 仮に、そうだとしたら“佐倉先輩がいるだろう結界内に、あのチームが来る”か?」

 

 駆け出しの時に、色々教わった。

 以前、杏子はそう言った。

 つまり、結界内の一般人の有無を、少なくともリーダーのマミなら確認できるはずだ。

 そして“同族”が中にいるのならば。

 

「わからない、ってのは、ちと考えにくいよな」

「……お前って、変なところで頭が回るよな」

「まあ、義務教育すっ飛ばして、魔女狩りやってるんで。

 自分の魔法才能の無さを、知識と経験で補う。

 と言えば、格好いいんじゃね?」

「じゃあ、格好悪く言ったら?」

「生き汚いんだろ。

 弱いなりに、生きる為に必死」

「立証できない犯罪歴とか、地味に凄そうだよな、お前」

「いやぁ、それほでも」

「褒めてねぇ」

「oh……」

 

 話が脱線するも、群雲の言葉は的を射ている。

 

「最初に“様子見”って言ってたわりには、妙に拘っている様に見えてね。

 一応、相棒やってるオレとしては、真意を知っときたいわけよ」

「じゃあ、コンビ解消するか?」

「……佐倉先輩が“オレと組むのが自分の為にならない”と判断したのなら。

 佐倉お姉ちゃんに嫌われたから、巴お姉ちゃんに泣きついて……ないわー」

「自分で言い出した上で、言い切る前に否定すんな」

「まあ、個人的な意見を言うなら、あの人とは敵対よりは共闘したいけどな。

 もちろん、利害を別にして、だけど。

 マジ、強ぇよ、あの人」

 

 拘束魔法による、完全敗北。

 打破する方法があったとは言え、その前に引き金を引かれていたら、終わっていた。

 敗北は、疑いようが無い事実として、群雲は受け入れ、割り切っている。

 

「話したくないなら、そう言えばいい。

 ただ、ここまで行動した以上は“様子見”のままだと、ちと辛い」

 

 仲は険悪と言っていい。

 杏子とさやかは言わずもがな。

 群雲とマミも、相当なものである。

 まあ、殺し合いをしたのだから、当然ではあるが。

 

「そろそろ、オレ達の“立ち位置”を、明確にするべきじゃないか?」

 

 群雲の言葉に、杏子は考え込む。

 群雲の言う通り、このままの状況を続けていても、意味は薄い。

 少なくとも現状、この見滝原は“マミチームの縄張り”であり、杏子達は“部外者”でしかない。

 

「この街で活動を続けるなら、道は二つしかないだろ?

 向こうの魔法少女と“共闘”するか。

 向こうの魔法少女を“排除”するか。

 このまま、宙ぶらりんな状況だと、満足にGS(グリーフシード)収集とは、いかないだろう?」

 

 今の群雲の言葉は、的確だ。

 だが、本当にそれだけなのか。

 

「……あたしには、お前が結論を急いでいるように見えるが?」

 

 その言葉に、今度は群雲が黙る番だった。

 

「確かにあたしらは、この街にとっては“イレギュラー”だろうさ。

 そんな事は、言われるまでも無く解っている。

 だからこそ、あたしらはこの街の魔法少女がどういう存在なのかを、調べたんだろ?」

「先輩は、リーダーを知ってたみたいだけどね」

「だからこそさ。

 マミを知ってるからこそ、他の魔法少女を調べる必要があったんだろ?

 そして、魔法少女を知るには、接触するのが確実だって言ったのも、お前だ」

 

 新たにみたらしを口に運び、杏子は言葉を続ける。

 

「まあ、マミの信条が変わってないのも確認したし、さやかってボンクラがムカつく奴だって事もわかった」

「ボンクラって……せめて、ろくに覚悟も出来てない夢見がちな出来損ないって言ってあげなよ」

「お前の方がひでぇよ!!」

「なんで、佐倉先輩が怒るの!?」

 

 結局の所。

 いつかの朝と同じで。

 

「まあ、もう少し様子を見るわ。

 あのトーシロが、マシになるようなら、共闘も視野に入れるがね」

「……ん。

 それじゃ、朝飯でも食いにいきますかね」

 

 今の相棒と、敵対する意志が二人に無い以上。

 変わらないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てか、なんでマミにGS(グリーフシード)を渡したんだよ?」

「明確に敵対を決定したのならともかく、共闘するかもしれない相手が、魔力不足で足手纏いとか、笑えねぇよ?

 そもそも、あの結界が使い魔の物だっての、知らんかったし」

「そういう意味じゃ、戦闘前に自分が無能な事を、教えた事になるな、お前」

「いやぁ、照れ「褒めてねぇっての」oh……」

 

 佐倉杏子と群雲琢磨。

 見滝原での立ち位置。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――未定―――――




次回予告

時は僅かに遡り

夜、闇の時間




あるモノたちが

三十九章 狂いきった、二つ

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