無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「今日は、どうするんだ?」
「気分次第。
 てか、魔女の気配とか「なんとなく、コッチに居るんじゃないかなぁ」的なオレに、何を期待するのさ?」
「ホント、自分の魔法以外はからっきしだな」
「自己中なもので」
「……それ、関係あるのか?」
「知らんがな」(´・ω・`)


四十章 黒いアレ

 以前の、マミチームとの戦いから、3日。

 結局、これまで通りの行動となった、杏子と群雲。

 基本、一緒に()()()()()ので、今は群雲は一人。

 

「……ボー」

 

 公園のベンチに座り、頭の中を空っぽにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 まどかとほむらは、二人でパトロールしていた。

 

 先日、ほむらは自分の知る“魔法少女の真実”を、皆に話した。

 結果から言えば、信じては貰えなかった。

 SG(ソウルジェム)が、自分達の魂を実体化させた物。

 自分達が戦っている魔女が、魔法少女の成れの果て。

 中々、信じてもらえる内容ではないし、信じたくない内容でもある。

 マミチーム内は、あまり良い雰囲気とは言えない。

 杏子と群雲の存在も、それを加速させていた。

 

 現在は、マミとさやか、まどかとほむらの2チームに別れて、パトロールをしている。

 単独で行動している時に、杏子や群雲と鉢合わせるのは危険だと、マミが判断した結果だ。

 

(……え?)

 

 どうすれば、信じてもらえるのか。

 考え込んでいたほむらは、偶然見つけた。

 

「どうしたの?」

 

 突然立ち止まったほむらに、まどかが問いかける。

 

「あそこ……」

 

 ほむらが指を差した先。

 そこには、黒いトレンチコートを着た、白髪の少年がベンチに座っていた。

 

「あの子が、どうしたの?」

 

 まどかが少年を見て、首を傾げる。

 

「魔人……だと思う」

「……えぇ!?」

 

 ほむらの言葉に、まどかは声を上げた。

 

 ほむらは“以前の時間軸”で“変身していない群雲”を知っている。

 しかし、まどかは“変身した魔人”しか、知らない。

 

「なんで解るの!?」

「……魔力が同じだし……。

 白髪の少年なんて、めったにいないと思う」

「……ほむらちゃん、凄いね。

 私、あの子から魔力なんて、感じないよ?」

 

 繰り返している為、ほむらの方が魔法少女歴は長い。

 その経験の蓄積による物であると同時に、ほむらは“群雲を知っている”のだ。

 

「……話しかけてみる!」

「え……鹿目さん!?」

 

 しばらく少年を見ていたまどかが、意を決して近づいていく。

 同じように、魔女を狩る者なのに、敵対するなんて、おかしい。

 そう考えていたまどかにとって、これはチャンスであると言える。

 

(ちゃんと話せば、きっと解ってもらえる)

 

 無論、恐怖心はある。

 さやかを笑いながらあしらい、マミと強烈な立ち回りを見せた、自分より小さい少年。

 まどかとほむらの二人で、彼に敵うかと問われて、簡単に頷けるはずも無い。

 だが、その恐怖心を超える想いが、まどかにはあったのだ。

 

(険悪な仲だから、話す機会が無かったけど……。

 群雲くんにも、ちゃんと“真実”を話しておかないと。

 もしかしたら、信じてくれるかもしれないし、それを切っ掛けに仲が修復できるかもしれない)

 

 そんな期待を抱き、ほむらもまどかを追い、群雲に向かう。

 だが、二人よりも先に、群雲に接触するモノがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う わ ら ば !」

 

 どこからか、サッカーボールが飛来し、群雲に直撃したのだ。

 顔面にそれを受け、そのまま為す術も無くベンチから転がり落ちる。

 

「うわー!

 ごめんなさーい!!」

 

 たまたま、近くで遊んでいた小学生達が、慌てて駆け寄っていく。

 

「「…」」

 

 突然の事態の変化に、二人の魔法少女は思わず足を止めた。

 仰向けに倒れた群雲は、ぴくりとも動かない。

 マミとの戦いを見ていた二人には、サッカーボールが直撃し、派手に転倒した少年が、本当に同一人物なのか、一瞬疑ってしまう。

 それほどまでに、ギャップがあった。

 そして……。

 

「ぎゃー!」

 

 駆け寄った小学生が、逃げ出した。

 群雲が、仰向けに倒れた体勢のまま、小学生に無言で迫っていったからだ。

 想像して欲しい。

 仰向けのまま、ガサガサと自分に迫ってくる少年。

 しかも、地味に速い。

 

「ぎゃあぁぁ!!」

「わああぁぁぁ!!」

 

 想定外……と言うよりも、想定できるはずも無い状況に、小学生達はパニック。

 一緒に遊んでいたらしい子達をも巻き込んで、逃げ回る。

 それを、仰向けのまま追いかけるという、器用ってレベルじゃない事を披露する群雲。

 

「「…」」

 

 呆然と、その状況を見守るしかない、二人の魔法少女。

 群雲の服装は、基本的に黒で統一されている。

 その為、その動きは、台所とかによくでる、黒いアレを連想させる。

 小学生達が逃げているのも、それが要因だ。

 

 しばらく、追いかけていた群雲は。

 

「めちゃくちゃ疲れるんじゃ、ボケー!」

 

 声を上げながら、立ち上がった。

 

((((じゃあ、しなければいいじゃん!?))))

 

 逃げ回っていた小学生達と、魔法少女達の心がひとつになった。

 あまり、意味はないが。

 

「ったく……。

 遊ぶのはいいけど、周りをちゃんと見ろよ」

 

 いいながら、傍らに転がっていたサッカーボールを、小学生達に向かって、軽く蹴る。

 転がってきたボールを拾い、そのまま全速力で走り去る小学生達。

 

「……せっかく、気持ちよく寝てたのに……」

((寝てたんだ……))

 

 呟き、服の汚れを叩き落とす群雲に、毒気を抜かれた気がする魔法少女達。

 だからだろう。

 

「話がしたいんだけど、いいかな?」

 

 自然な感じで、まどかは群雲に声を掛けた。




次回予告

巡り会うは、同族にして真逆

運命は廻り



命を、運ぶ



四十一章 真っ先に説得するべきは

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