「どうして?」
「だって、
「……ふむ」
ほむらの話を聞き、群雲は。
取り乱すでも、否定するでもなく。
考え込んだ。
「信じて……もらえますか?」
ほむらは、おずおずと問いかける。
「……聞きたい事がある」
ほむらの問いを無視し、群雲は自分の問いを被せる。
「他二人の先輩にも、話した?」
「はい」
「信じたかい?」
「いえ……信じてもらえませんでした」
「だろうねぇ。
鹿目先輩は?」
「え……?」
「いや、言わんでいいわ。
今の反応で、大体解る。
暁美先輩が嘘を言ってるとは思っていないが、内容が内容なんで半信半疑ってとこか」
「……私って、そんなにわかりやすいのかな?」
「いい子ってことじゃん?
それが、幸せな事かは知ったこっちゃないが」
言って、群雲は再び考え込む。
そのまましばらく、三人に沈黙が降りる。
聞こえるのは、公園で遊ぶ子供の笑い声と、その外を走る車の音。
「話を信じれば、理解できる事柄と。
話を信じても、理解できない事柄があるな……」
五分ほど考え込んでいた群雲は、突然そう言った。
「どういうこと……ですか?」
魔法少女の真実を、ほむらは告げたはずだ。
その事を、きっちり受け止め、割り切ったんだろう事は、今の群雲の言葉から、理解できる。
だが……それでも浮かぶ疑問とは、なにか?
「どちらから、聞きたい?」
「じゃあ、理解できる事柄から」
ほむらの言葉に、群雲は一つ頷き、自分の考えを告げた。
「暁美先輩の話は、正直に言って“常軌を逸した”話だ。
オレ達全員、魔女になるしかないって事なんだからな。
まあ、人間がいつ死ぬかなんて正確には解らない訳だし、死ぬ運命が魔女になる運命に変わっただけだろ?」
ここで、こう割り切ってみせるのが、群雲琢磨である。
「逆に言えば
半永遠の命だよ、やったねまどかちゃん!!」
「は、はぁ……」
「まあ、重要なのはそこじゃないんだけど」
「じゃあ、なんで言ったの!?」
まどかのツッコミに、群雲は満足気に頷きながら、真剣な声色で続けた。
「常軌を逸した情報を組み込むには“常識を疑う”のが、一番の近道だ。
先輩達は“何故、
「……え……?」
「まあ、普通はないだろうな。
“そういうもの”だと、ナマモノに教わっただけだし、普通は疑わない。
そして、今の疑問に対する答えを、暁美先輩の話が持っている」
「……それは?」
「“魔法少女が、いずれ魔女になる”という事。
さらに言うなら“
浄化の状況は見た事あるだろ?
まるで“
だから、こう説明できる。
二つが“同一の物”であると同時に“
故に“穢れは絶望側に移り、穢れが溜まれば希望側が絶望側に
「あ……ぁぁぁ…………」
「鹿目さん!?」
群雲が話を進めれば進めるほど、まどかの顔から色が消えていく。
群雲の言葉は、ほむらの言葉の補足の役割を果たし。
魔法少女の真実の信憑性を高め。
自分が、いずれ魔女になる事を、自覚させる事に繋がる。
はっきり言って、まどかの反応の方が正常だ。
割り切ってしまえる、群雲が異常なのだ。
「鹿目先輩、とりあえずベンチに座って。
暁美先輩は、なんか飲み物でも買ってきて」
冷静に、淡々と。
言いながら、群雲はまどかをベンチに座らせる。
「で、でも……」
「話の続きは後。
鹿目先輩がこんなんじゃ、続けられないだろ?
まずは、落ち着いてもらわないと」
まどかが心配なほむらだが、群雲の言う通りでもある。
慌てて、ほむらは自販機に向かって走り出す。
「鹿目先輩、
いつしか、顔が真っ青になり。
体をガタガタと震わせながら。
それでもまどかは、言われた通りに
見れば、半分近く穢れが溜まっている。
「
魔女や使い魔が、人間を襲い、絶望を振りまくのは、穢れを溜める為。
オレ達にとって“絶望”は“死への直行便”だ。
魔女になりたくないのなら、まずは落ち着け。
生きたいのなら、希望を持て。
まだ、幕を下ろすのは早いだろう?」
<
「このまま、絶望に負けるなら、それでもいいさ。
それが、鹿目先輩の幸せなら。
その絶望を乗り切り、尚も皆を守りたいなら、それでもいいよ。
それが、鹿目先輩の幸せなら」
絶望に揺れながら、希望を見失わんとする、鹿目まどかの“
絶望に慣れきって、希望を探す事を諦めた、群雲琢磨の“
「キミは、どこに、立ちたい?」
真っ直ぐに、相手を映していた。
次回予告
物語は紡がれていく
舞台は、その装飾を変え
役者も、その立ち位置を変える
四十三章 休戦