無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「これで、ストックは残り3。
 使い回そうとしても、前提として人の居ない場所が必要だから、新たな魔女を狩らないと、これ以上は見込めないな」



四十三章 休戦

「ちっ!」

 

 杏子は、思わず舌打ちをした。

 

 マミとさやかの二人と交戦中の杏子は、劣勢に立たされていた。

 近接型のさやかと、遠距離型のマミ。

 相性抜群である。

 さやかの動きに合わせて、マミが射撃を行う。

 近接戦闘においては、さやかよりも杏子の方が上である。

 その、さやかの隙を補う形で射撃を行うマミ。

 槍を展開させて、攻撃を凌いではいるが、ジリ貧。

 有効打が思いつかず、いずれは押し切られてしまうだろう。

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 だが、状況は流転する。

 突如、三人全員が悪寒を感じ、同時に動きを止めた。

 

「なに……この感じ……?」

 

 呆然と呟くさやか。

 しかし、他二人は即座に原因に思い当たる。

 

「休戦よ、佐倉さん」

「ああ、ここはマズい」

 

 互いに武器を収め、その場を離れようとする二人。

 だが。

 

「!?

 予想以上に展開が速い!!」

 

 マミの言う通り、ソレの動きの方が、圧倒的に速かった。

 

「この感じって……!?」

 

 ようやく状況に思い当たり、狼狽するさやかだが。

 

「巻き込まれるッ!?」

 

 

 

 近くで起きていた魔法少女の戦い。

 それに引きずられるかのように。

 

 

 

 

 

―――――魔女が、目を覚ます―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたかい?」

 

 ほむらが買ってきたサイダーを飲み、群雲は静かに声を掛ける。

 同じく、ほむらの買ってきたココアを一口飲み、まどかは静かに頷いた。

 

「まあ、魔女になるまでは、好きなように生きれば良いとサイダーうめぇwww」

「貴方は……」

「どうした、暁美先輩?」

「どうして貴方は、そんな風に笑っていられるの!?」

「落ち着けっちゅうに。

 言うほどストックないのよ、マジで。

 鹿目先輩に使ったのも孵化直前だし、この上で暁美先輩にもってなると、放置して逃げるぞ、オレ」

「~っ!?」

「てか、話を振ってきた暁美先輩が感情的になってどうするのさ?

 内容が内容なんだから、その辺も考えてもらわないとやっぱサイダーうめぇwwwww」

「だから!!」

「落ち着けっての。

 泣くのも、怒るのも、笑うのも。

 どうしようもない時に、するものだろう?

 だったら笑えよって、そう想うだけだよ」

 

 眼鏡を押し上げながら、群雲は笑ってみせる。

 どうという事はないのだ。

 群雲にとって、死ぬのと魔女になるのは、完全に同義。

 

「いつ死ぬかなんて、知ったこっちゃない。

 いつ魔女になるかなんて、知ったこっちゃない。

 オレはただ、オレの為に、オレを生きる。

 それしかないし、それしか出来ない。

 だた、それだけの事だよ」

 

 そう言って、サイダーを飲み干す。

 二人の魔法少女はただ呆然と、そんな魔人を見詰めている。

 

「そう言える辺りが、僕らが異物と呼ぶ所以だよね」

 

 そんな三人の元に現れる、全ての元凶。

 

「キュゥべえ!?

 貴方……!」

「はい、先輩方、落ち着けぇ~♪」

 

 掴み掛からん勢いの二人を、魔人が鼻歌交じりに押し留める。

 

「オレが話をするから、先輩達は黙ってなさいな。

 落ち着いて話が出来るのって、現状オレとナマモノだけだろう?」

「事実をありのまま知って、そんな反応をするのは琢磨ぐらいだよ」

「本邦初だよ、やったね琢磨ちゃん!

 …………きめぇ」

「わけがわからないよ」

「まあ、それはそぉいしといて。

 色々と聞きたい事があるんだが。

 むしろ、小一時間問い詰めたいんだが」

「残念ながら、ゆっくり話をする状況じゃないんだよね」

 

 感情の無いソレは、事実をありのままに伝える。

 

「魔女が結界を展開した。

 マミ、さやか、杏子の三人の傍で」

「「「!?」」」

 

 予想外の情報に、全員が息を呑む。

 

「三人とも、結界に捕らわれているみたいだね。

 それぞれの仲間に、テレパシーを送ろうとしていたけど、聞こえたのは僕だけだったみたいだ」

「信頼度最底辺だったが、今だけ見直してやるよ、ナマモノ。

 場所は解るか?」

「もちろんだよ。

 その為に、僕は来たんだからね」

「パーフェクトだ、ナマモノ。

 お礼に孵化直前のGS(グリーフシード)をやろう」

 

 先程、まどかのSG(ソウルジェム)を浄化したモノを渡しながら、群雲は二人の魔法少女に向き直る。

 

「話をするのは後回し。

 てか、先輩達は戦える状態かい?」

 

 精神状態の事を、言外に問いかける。

 かなり不安定なのは、間違いない。

 だが、二人ともが真っ直ぐに頷く。

 誰かの為に戦うからこそ。

 仲間の危険に、心を奮い立たせるのだ。

 

「なら、行こう。

 今はひとまず、一時休戦って事で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……よりにもよって…………!?」

 

 結界に捕らわれ、現れた使い魔を見て、マミは呆然としていた。

 そんな彼女を余所に、各々の武器を振るう、杏子とさやか。

 

「ひとまず休戦だ。

 この感じ……かなり強力な魔女だぞ!」

「あんたに言われなくても解ってるわよ!

 マミさんもあんなだし……まどか達からの返答もないし……。

 流石に、この状況であんたと戦りあうほど、あたしも馬鹿じゃない!!」

 

 使い魔を撃退しながら、杏子とさやかが声を掛け合う。

 黒い塊に、錆びたアームの付いたような、そんな使い魔を薙ぎ払いながら、二人はマミを守るように身構えた。

 

 

 

 

 

 騒音を撒き散らす使い魔。

 その(あるじ)である魔女はかつて、巴マミが敗走した相手である。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――銀の魔女 その性質は“自由”――――――――――




次回予告

忘れてはならない

魔法少女は希望を

魔女は絶望を







忘れてはならない

魔女は人を陥れ

魔法少女はそれを止める








忘れてはならない

魔法少女を生み出したモノと

魔法少女ではないモノを

四十四章 今は協力してもらうわよ









TIPS 巴マミと銀の魔女(まどマギPSPのマミルートにて

巴マミが魔法少女になって間もない時期に、交戦
願いによる魔道具『リボン』しかなかったのと、圧倒的な経験不足により、巴マミは敗走
一般人の男の子が、魔女の犠牲となる
この経験を糧とし、巴マミはリボンからマスケット銃を造り出す術を得るも、銀の魔女の気配を見失ってしまい、再戦する事無く、現在に至る

果たしてこの魔女が、同一の魔女なのか
それとも、使い魔から成長したものなのか

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