無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「あんたら、なんで一緒にいるのよ?」
「利害が一致しただけだよ。
 それに……」

「貴方たちは、どうして一緒に居るの?」
「利害が一致したからな。
 それに……」

「「自覚はないだろうけど、優しいから」」


四十四章 今は協力してもらうわよ

 魔女結界を進む、三人の魔法少女。

 状況は、良くない。

 

 まず第一として、相性の問題がある。

 銀の魔女の使い魔。

 その騒音波の持つ魔力は、対象の動きを迫害する。

 近接型であるさやかは言わずもがな。

 スピード型である杏子にとっても、その騒音波は、厄介極まるものである。

 唯一、相性が良いと思われるマミは、動きに普段の精彩さがない。

 まだ、魔法少女になって間もない頃。

 マミは一度、この魔女に敵わず、逃げ出している。

 その過去は、確実にマミの心に影を落としているのだ。

 

 近接戦闘が、不利である為、三人の魔法少女は遠距離攻撃を選択する。

 しかし、マスケット銃が戦闘においての主力であるマミはともかく、他二人が火力不足。

 さやかの武器は剣。

 召還しては投げるを繰り返すしかない。

 杏子の武器は槍。

 同じく、召還しては投げるを繰り返す。

 

 杏子には他にも、槍を地面から召還し、相手を串刺しにする魔法が使える。

 しかし、相応に魔力を消費する為、現在は自粛している。

 

 奥から感じる魔女の気配が、かなりの大物である事も、理由の一つだ。

 使い魔戦で魔力を浪費した結果、魔女と満足に戦えないのでは、意味が無いのだ。

 火力不足を手数で辛うじて補いつつ、三人は最深部を目指す。

 

「一度退くってのも、一つの手だと思うがな」

「そういう訳にはいかないわ」

 

 使い魔との戦闘がひと段落した時に、杏子が提案するも、マミはそれを却下した。

 見滝原を守る魔法少女にとって、魔女や使い魔を放置するのは、選択肢には無い。

 

「放置しろって言ってる訳じゃねぇよ。

 他の仲間と合流してから、改めて来ればいいんじゃねぇのかって話」

 

 対して杏子は、必ずしも魔女を倒さなければならない理由は無い。

 杏子がマミ達と行動を共にしている理由は二つ。

 使い魔との相性の問題から、共闘した方が生存率が上がる事。

 結界の展開に巻き込まれた形である為、出口が解らない事だ。

 

「その後、あんたはどうすんのさ」

「お前らが戦うんだろ?

 だったら、あたしは手を出さずに帰るさ」

 

 だからこそ、さやかの質問に杏子はこう答える。

 はっきり言って、杏子にとってはこの魔女と戦うメリットが薄いのだ。

 無理してここの魔女と戦うぐらいなら、他の手頃な魔女を探す。

 そう考える程度には。

 

「でも、今は協力してもらうわよ。

 進むにしても退くにしても。

 現状、単独行動が危険なのは、理解しているんでしょう?」

「まあ、な。

 でなきゃ、ここにいないよ」

 

 マミの言葉に、杏子は渋々ながらも同意する。

 

「魔力の波動が近くなっているわ。

 魔女まで、あと少しのはずよ」

 

 マミの言葉を合図に、三人は魔女結界を進む。

 主の元を目指して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、妙だよなぁ……」

 

 キュゥべえに案内された魔女結界の入り口前。

 眼鏡を外し、それをコートのポケットに入れながら、群雲は呟いた。

 

「なにが、ですか?」

 

 変身完了したほむらが、群雲の言葉に反応する。

 右目を撫でた後、その手を振り上げ、自分の前に境界線を引くように、勢い良くその手を振り下ろす。

 まるで、場面が切り替わるかのように、群雲は変身を完了させた。

 

「さっきの話。

 理解できない事柄」

 

 僅かに前髪が持ち上がることで、顕わになった両目を向けながら、群雲は質問に答える。

 

「魔法少女が魔女になる。

 なら、見滝原にはそれだけ多くの“魔法少女がいた”のか?

 オレと佐倉先輩は“余所者”だが……。

 基本、魔法少女は“一つの街に一人”だろう?

 でなきゃ、縄張り争いなんて、有り得ないんだから」

 

 魔法少女の真実。

 それは“見滝原の魔女の多さ”を説明するには至らない。

 

「使い魔が成長して、魔女になったんじゃ?」

「その場合、主人となる魔女と“同じ”になるはず。

 だが少なくともオレは“同種の魔女”とは、戦った記憶がない」

 

 同じく変身を終わらせたまどかの質問に、群雲は否定という名の答えを示す。

 

「なにを隠してる?」

 

 見下すように、群雲はキュゥべえを睨み付ける。

 それに合わせるように、まどかとほむらも疑惑の眼差しをキュゥべえに向ける。

 

「流石の僕も、すべての魔女を把握している訳ではないよ」

 

 そんな視線など無意味であるように、キュゥべえはいつもの調子で言葉を紡ぐ。

 口は、一切動いていないが。

 

「見滝原の魔女の多さを危惧したからこそ、僕は琢磨達にこの場所を勧めた訳だし」

「……まあ、今はそれは置いておくさ」

 

 魔法少女の真実。

 それを知った今、三人がキュゥべえの言葉を、素直に聞く事は無いだろう。

 

「さて、行きますかね」

 

 思考を切り替えた群雲を先頭に、三人は魔女結界に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが、この結界の魔女か」

 

 最深部、まるで朽ち果てた立体駐車場のようなそこで。

 遠くを見つめるように佇む、魔女が居た。

 

「ここまで来られたんだ。

 少しは認めてやるよ、トーシロ」

「……あたしは、美樹さやかよ」

 

 どこからか取り出したスティックチョコを咥えながら、杏子はさやかに残りを差し出す。

 若干不満そうではあるが、それを受け取るさやかを横目に、マミはゆっくりと歩き出す。

 

「今度こそ……必ず!」

 

 

 

 

 

 

 銀の魔女 ギーゼラ

 

 対するは、黄色と赤色と青色の魔法少女。




次回予告

希望により生まれる
それが、魔法少女

絶望により生まれる
それが、魔女








魔法少女という希望を


魔女という絶望に堕とす








それこそが

四十五章 spiral of despair

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