無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「人間よりも、魔女の方が活きがいいと思わないか?」
「その表現が出るあたりが異物だよn「そぉい!」ぎゅっぷい!?」


四十五章 spiral of despair

 魔女結界最深部。

 そこの魔女と対峙するのは、三人の魔法少女。

 

「ちっ!

 硬いな!!」

 

 金属音と共に、自身の槍が弾かれるのを見て、思わず杏子は舌打ちをする。

 幸いなのは、銀の魔女の動きが鈍重である事。

 ゆっくりと、腕と思われる部分を持ち上げ、杏子と同じように接近戦を行っているさやか目掛けて振り下ろす。

 

「遅いっ!!」

 

 その腕の軌道を読みきり、さやかは横に飛んで避ける。

 その合間を縫うように、マミの銃撃が魔女を襲う。

 

(……おかしいわ)

 

 周りに、新たなマスケット銃を召還しながら、マミは違和感を感じていた。

 

(以前に戦った時よりも、硬い……。

 佐倉さんや美樹さんの攻撃だけでなく、私の銃弾まで弾かれてる)

 

 以前、戦った時よりも、マミは成長している。

 それは、疑いようの無い事実。

 では、魔女は成長しないのか?

 答えは“否”である。

 そして、それはすなわち……。

 

「一気に決めるわ!

 二人とも、下がって!!」

 

 思考を切り替え、マミは巨大なマスケット銃を造り出す。

 それに合わせ、前線で戦っていた二人が、その射線の外へ避難する。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

 巨大なマスケット銃による砲撃。

 それから逃れられるほど、銀の魔女の動きは速くはない。

 いくら、防御力が高くとも、それに匹敵する高火力技ならば、通らない道理は無い。

 

「!?」

 

 だが、一撃で倒せるとも限らない。

 砲撃による爆煙の中から、変わらない鈍重な動きで姿を現す、銀の魔女。

 

「はあああああ!!!」

 

 その魔女に対し、真上から剣を振り下ろすさやかと。

 

「まだまだぁぁぁぁ!!!」

 

 下から突き上げるように、槍を構えて突進する杏子。

 二人の攻撃が同時に、銀の魔女に突き刺さる。

 

 マミとさやかはチームである。

 杏子はかつて、マミと共闘していた事がある。

 さやかと杏子は、殺し合いをした仲である。

 

 そして、彼女達は“魔女を狩る者(魔法少女)”であるのだ。

 奇しくも、これまでの経験から、連携力は決して低くは無い。

 このままならば、いずれ押し切る事が出来るだろう。

 

「「「!?」」」

 

 そう、()()()()であったなら。

 

 まるで、自分の黒い体を削ぎ落とすかのように。

 銀の魔女は、使い魔を召還した。

 杏子とさやかにとって、相性の悪い使い魔を。

 

「うぜぇ!!」

 

 自分の周りに召還された使い魔を、魔女もろとも攻撃する為、杏子は槍を展開し。

 

「このぉ!!」

 

 同じように、自分の周りに召還された使い魔を薙ぎ払う為に、自身も回転するさやか。

 マミは、マスケット銃を使い捨てながらの援護射撃。

 だが。

 魔法少女が使い魔を倒すより、魔女が使い魔を生み出す速度の方が速い。

 

[二人とも、一度退いて!

 砲撃でまとめて仕留めるわ!]

 

 マミの念話を合図に、二人は使い魔の攻撃を掻い潜り、マミの傍に帰還する。

 

「え……?」

 

 振り返ったさやかは、予想外の事態に、思わず動きを止めた。

 先程まで、黒い塊であったはずの、銀の魔女。

 だが、今はまるで別物。

 むしろ、その名に相応しい銀色の輝き。

 その場に居た三人全員が、銀色のバイクを連想しただろう。

 そして、まるでそのイメージに添うかのように。

 後方に飛び上がりながら、さらに変形する。

 

「まさかっ!?」

 

 声を上げた杏子のみならず、その場に居た全員が、魔女の次の行動を予測し、回避行動に移る。

 予想通り、高速で一直線に駆け抜ける魔女。

 自身の使い魔を轢き殺しながら。

 

 辛うじて、轢かれる事は無かったものの、全員が対応に遅れを見せた。

 魔女の動きが、先程とは雲泥の差であるからだ。

 

「はやっ!?」

 

 まるで自分を縛るものが無くなったかのように。

 自分の使い魔を轢き殺した事など、どうでもいいように。

 ガシャガシャと音を立てながら、魔女は走り回る。

 ……足と思われる、二本の棒で。

 

「こわっ!?」

 

 一々リアクションを声に出す辺り、さやかは感情に正直な少女である。

 まあ、巨大な銀色のバイクベースのロボットが。

 マラソンをするかのごとく、走り回っていたら、普通に怖い。

 そして、速い。

 

「狙いが、定まらない!?」

 

 通常の射撃ならともかく、大技を決めるには相手の動きは速すぎた。

 状況を打開する為、三人それぞれが魔女と距離を離そうとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぇ~ん、ままぁ~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞いてはいけない声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……」

 

 かつて、マミが銀の魔女に敗走した際に、助ける事が出来なかった、男の子。

 決して、忘れる事は無く。

 決して、忘れる事が出来ず。

 何度その声(悪夢)聞いた(見た)かも解らないほどに。

 

 

 

 

 

 

 それは、魔法少女となった巴マミの、絶望の原点。

 

 

 

 

 

 

「ばかっ!

 なにやってんだ、マミ!!」

「マミさん、逃げてぇ!!!」

 

 その泣き声は、杏子とさやかには()()()()()()()()

 だが、マミには確実に届いていたのだ。

 それは、奈落へと誘う、絶望の(spiral)螺旋回廊(of despair)

 

「あ」

 

 マミが声を上げた頃には。

 銀の魔女は目前に迫り。

 その腕を振り上げ終わった時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その腕が振り下ろされる。

 一人の魔法少女を、其処へと叩き落す為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいだらぁー!」

 

 突如飛来したソレが、銀の魔女の腕に直撃した。

 それは、振り下ろされる腕の軌道を逸らし。

 ギリギリのところで、巴マミへの直撃を避けた。

 

「!?きゃぁぁぁぁ!!!」

 

 だが、その勢いを殺しきる事は出来ず、振り下ろされた腕の風圧と、腕が地面に激突した際に起きた衝撃波で、マミは真横に吹き飛ばされる事になり。

 

「いったーーーっ!?」

 

 考えなく突進していったソレは、予想以上の硬さによる激痛で、悲痛な声を上げながら転がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごく……硬いです……」

 

 額から流れる血を拭いながら、群雲は立ち上がった。

 右手に持つ弾丸を指で玩びながら、周りを見渡す。

 

 倒れている巴マミ。

 それに駆け寄っていく、美樹さやか。

 使い魔の攻撃を掻い潜り、群雲へと向かう佐倉杏子。

 群雲を追いかけてきた、鹿目まどかと暁美ほむら。

 

 辛うじて轢き殺されず、騒音波を撒き散らす銀の魔女の使い魔。

 そして、再び黒い塊へと変化する銀の魔女。

 

 異物の介入があったとしても、戦闘が中断される訳ではない。

 

「まいったねぇ」

 

 呟く言葉と裏腹に、その口元を吊り上げるのは、介入した異物。

 

[みなさん!

 私に掴まって下さい!!]

 

 ほむらの念話が、頭に響き渡る。

 それを聞き、魔法少女達がほむらの元へと集い。

 

「怖いよぉ~、ままぁ「うっさい」」

 

 同じようにほむらへと向かう際、聞こえてきた声の元(魔女のスピーカー)に、群雲は電磁砲(Railgun)を叩き込んで黙らせた。

 

「泣き叫ぶだけで救われるのなら。

 ()()()()()()()()()んだよ」

 

 その呟きは、誰にも届かないままに。

 全員が自分に触れた事を確認したほむらが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を止めた




次回予告

見滝原に存在する、魔女を狩る者達が

ついに、集結する

四十六章 ジョーカー

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