無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「そういえば、オレの変身シーンってどんなやつなんだろう?」
「……一人で喋っても返事が無い上に、そもそも男の変身シーンとか、拷問じゃね?」


五章 オレは、この日にこそ

SIDE 少年

 

 変身状態で、夜の街を色々と歩き回る。

 無論、出来る限り人目を避けて。

 ……そりゃ、10歳の子供が軍服をきて夜の街にいれば、補導されるっちゅーねん。

 そして、色々と回った結果、今日の修行場所を決めた。

 

 絵の具で出来た整備工場である。

 

 

 

 色々とおかしい気もするが、利点も多い。

 

1.一般人に目撃される心配の無さ

 ナマモノの言葉通りなら、ここに来るのは“魔女”か“魔法少女”或いは“素質を持つ者”だけである。

 人目を避ける事を重点に置くなら、ここほど理想的な場所も無い。

 もし、オレ以外の魔法少女が現れたら、色々教えてもらえば良いし、ここにいるのは“オレを見て逃げ出した使い魔”だけのはず。

 

2.魔法少女(魔女)関係の場所なら、魔法に関するヒントが得られるかもしれない事

 契約して、魔法少女(男)になったのに、魔法が使えないとか、納得いかん。

 求めているのが、魔法なのだから、それに関する場所が適しているのではないか。

 そんな考えだ。

 

3.そもそも、この場所ぐらいしか、思いつかなかった。

 (´・ω・`)

 

 さて、色々と試してみるかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後に、オレはこの日を振り返る。

 この場所から始まった、長い“時”の旅の途中。

 オレは、始まりの日を振り返る。

 そして、笑うんだ。

 運が良かった(わるかった)と。

 世界は優しかった(つめたかった)と。

 そして、笑うんだ。

 

 オレは、この日にこそ、生まれたんだと。

 

 

 

 

 

SIDE out

 

 少年は色々と試す。

 火が出るか、水が出るか、風が吹くか、地が揺れるか。

 生きていない、死んでいないだけの日々から逃避する為に、漫画や小説など、空想により生まれた物からの知識を元に。

 魔法という、幻想的な物を、自らの物とする為に。

 しかし、完全手探りの状態では、芳しい筈も無く。

 時だけが、無為に過ぎていく。

 だからこそ、少年は失念していた。

 ここが“魔女の結界の中”だと。

 使い魔でありながら、結界を生み出せる者がいる事を。

 そして、それが“ナニ”から生まれたのかを。

 

「……ん?」

 

 ありえない音を耳にして、少年は辺りを見渡す。

 その音は、少年にとっては馴染みの音で。

 だからこそ、この場所で聞く事に違和感を感じ。

 それは“バイクのエンジン音”であり。

 それは、先ほど逃げたお下げ少女姿の使い魔が、自身の下半身をバイクに変えて。

 

 ―――少年を轢き殺そうとする音だった。

 

「う、おおおおおぉぉぉ!!??」

 

 半ば、条件反射的に、少年は横に飛ぶ。

 ギリギリのところで、少年は轢かれる事無く、その場に転がり。

 使い魔はそのまま、直進して見えなくなった。

 

「あ……あ?」

 

 回避こそ出来たものの、少年の思考は混乱の極み。

 何故? なぜ? ナゼ?

 そんな思考を、再度近づくエンジン音が、急速に掻き乱す。

 

「ちょ……まじか!?」

 

 少年の言葉を掻き消すエンジン音。

 先ほど以上のスピードで、少年を殺そうと迫る。

 次の瞬間、少年は完全に理解した。

 

 “生きていない、ただ、死んでいないだけの日常”はすでに無く。

 

 “生きる為に殺し合う日常”が、すでに始まっている事を。

 

 “死んでないだけで、死の恐怖が無い日常”はとうに終わりを告げていて。

 

 “死の恐怖と常に向き合う日常”は、すでに始まっていたのだと。

 

 

 

 

 

 魔女は、絶望より産まれ、呪いを撒き散らす。

 そんな“魔女の使い魔”が、絶望を求めない訳が無い。

 その性質(存在)に、個体差があったとしても。

 大分類において、魔女も使い魔も“絶望側”である。

 

 

 

 

 

 魔法少女は、希望により産まれる。

 それは、魔法少女(男)である少年も、例外ではない。

 その性質(存在)に、個体(性別)差があったとしても。

 大分類において、少年は間違いなく“希望側”である。

 

 

 

 

 

 相反する存在(少年)が、自らの結界内(テリトリー)にいる。

 しかも、“魔女を殺す為の手段(魔法)”を得る為に、試行錯誤している。

 それを、黙って見過ごすほど“使い魔”という存在は、優しくはない。

 さらには、先程とは違い、少年は単独であり、助言者(ナマモノ)もいない。

 

 

 

 ならば、使い魔が少年を殺そうとするのは、至極当然の流れであるのだ。

 

 

 

 理解した瞬間、すでに目前にまで使い魔は迫っており。

 反射的に、少年は叫んでいた。

 

「止まれえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に浮かんだのは、時計の針。

 “右目の裏”に見えたのは、3本の時を表わす物。

 11:59:59を示していた、その三本の針が。

 00:00:00を示し。

 すべての針が真っ直ぐ上を向き、一つとなった瞬間。

 

 

 

カチッ

 

 

 

 ―――――時が、止まった




次回予告

必然と言える戦い
自業自得と呼べる初戦

少年の願いにより、目覚めた力は



少年が理解し、名付けた魔法は



その本心を、的確に射抜いていた

六章 Look at Me
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