無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「この程度で恥ずかしがるなよ」
「無茶言うな!
 そもそも、普通に会話しているようで、意外に無理してんだよ、オレ!」
「……仮に、裸を見たり、見られたりしたら、どうなるんだよお前」
「何の躊躇いも無く、全力で逃げる!!」
「ヘタレだなぁ」
「魔法少女達は、自分達の可愛さをもっと自覚するべき、そうするべき。
 でなければ、オレの精神が羞恥でマッハ」


四十六章 ジョーカー

 時の止まった世界。

 

「な、なんだこれ!?」

「これが、暁美さんの魔法。

 “時間停止”よ」

 

 世界に戸惑う杏子に、マミが静かに答える。

 

(なんつー反則的な……。

 こいつが後ろに控えているのは、この魔法が理由か。

 完全な切り札(ジョーカー)じゃねぇか)

 

 ある種の畏怖を抱えながら、杏子は顔を僅かに引きつらせた。

 それに気付かない暁美ほむらは。

 

「……顔……上げないで下さいね……」

「hai!!」

 

 僅かに頬を染めながら、足元に居る群雲に声を掛けていた。

 

 時の止まった世界。

 その世界の状況。

 

 今、世界で動けるのは6人。

 暁美ほむらを中心として。

 右手を掴むのは、巴マミと佐倉杏子。

 左手を掴むのは、鹿目まどかと美樹さやか。

 そして。

 

 素早くほむらに掴まる為、ヘッドスライディングをして、その左足を掴んだ群雲琢磨。

 顔を上げたら、その視界に入るのはスカートの中身。

 左足を掴み、うつ伏せになった状態で、群雲は清々しいほどの返事を返した。

 

「それで、ここからどうするんだ?」

 

 杏子の質問に、ほむらは視線を逸らした。

 

「皆の安全しか、考えてなかったから……」

 

 時間を止めただけ。

 次の一手はないらしかった。

 

「このまま、魔女を放置して帰るとか「ありえないわね」ですよねー」

 

 地面に顔をつけたまま、群雲が呟いた言葉を、マミは即座に否定した。

 

「でも、どうするんですか?」

「むしろ、今のうちに作戦会議でもすればいいじゃん?」

 

 まどかの疑問に、さやかが提案する。

 

「それって、あたしらも戦力に入れてるのか?」

「そりゃそうでしょ。

 この状況で、尻尾巻いて逃げんの?

 そもそも、出口知らないでしょ?」

(オレ、解るけどなぁ……)

 

 結界に巻き込まれた三人はともかく、群雲達は入り口から入っている。

 まどかとほむらは、その点を伏せている。

 そして、群雲もそれを言わずに黙したまま……うつ伏せで。

 

「無性に審議したくなったんだけれど」

「メタいぞ、マミ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの魔女、かなり硬いよ。

 あたしの剣どころか、マミさんの銃もそこまで効いてなかったみたいだし」

「黒い塊を削ぎ落としながら使い魔を産んで、最終的には裸になったみたいな感じだったわ」

「琢磨の突撃で攻撃が逸れた所を見るに、防御を落として速度を上げたって感じか」

「マミさんの“ティロ・フィナーレ”でも、ダメだったんですか?」

「黒い塊のままだと、効果は薄そうね。

 でも、裸になればわからないわ」

(タクマです。

 体勢的に、会話に参加できないとです。

 タクマです…タクマです……タクマです………)

「なら、もう一度裸に出来れば、突破口が?」

「囮でも使うか?」

「だ、ダメだよ!

 囮になる人って、使い魔に囲まれるって事でしょ?」

「使い魔召還の瞬間に、時間停止で逃げ出す……とか?」

「一回の召還で、裸になるとは限らないわよ?」

「仮に裸に出来たとしても、周りの使い魔をなんとかしないと、満足に動けないんじゃ?」

(タクマです。

 年上のお姉さん達が、普通に裸とか言っちゃってます。

 タクマです…タクマです……タクマです………)

「仮に、裸に出来たとして、だ。

 その後の攻めはどうする?」

「私と鹿目さんなら、広範囲の魔法があるから、使い魔ごと魔女に攻撃できるわ」

「使い魔さえいなければ、あたしが攻勢に出てもいいぞ?」

「あたしも、行くよ」

(タクマです。

 存在感がありません!

 タクマです…タクマです……タクマです………)

「要は、魔女が裸になるまで、時間を稼げれば良いわけだな」

「佐倉さんには、何か策があるの?」

「おい、琢磨。

 お前、囮役な」

「そうだと思ったよ、コンチクショウ!」

「か、顔を上げないで!」

「ひでぶ!」

「ほ、ほむらちゃん落ち着いて!

 ほむらちゃんと離れたら、時が止まっちゃうよ!」

「躊躇いなく、頭を踏みつけたな。

 さすがのジョーカーだ」

「男の子に、スカートの中を覗かれるよりは、マシじゃないかしら?」

「……収集、つかなくない?」

 

 

 

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず、琢磨一人で魔女を相手取る。

 魔女が使い魔を召還し、裸になった所で、マミとそっちのピンクが「鹿目まどかです」……まどかが広範囲攻撃で、使い魔を一掃。

 あたしとボンクラが「美樹さやか!」……さやかが追撃する。

 ジョーカーが「暁美ほむら……です」……ほむらが後方で控えて、不測の事態の時は時間停止でリカバリーをかける。

 作戦概要は、こんな感じか?」

「その子が囮で大丈夫なの?」

「琢磨、いけるよな?」

「……そう言われて、無理ですなんて答えられんでしょ。

 佐倉先輩って、意外にどSだよね」

「誤解を招く事言うな。

 お前なら“Lv2”を使えば、それぐらい楽勝だろ?」

「……後、任せる事になるけど?」

「それぐらい解ってるよ。

 まずはあの魔女を倒す事が、最優先だ」

「時間が動きます!」

 

 作戦を確認した所で、時間停止が解除される。

 同時にそれぞれが、役割の為に動き出す。

 さやかが左へ、杏子が右へ。

 ほむらが後ろに下がり、その前にまどかとマミ。

 そして、魔女に向かって真っ直ぐに歩き出す群雲。

 

「使い魔を召還させ、魔女が裸になるまでの囮役か」

 

 両手の中指をこめかみに当て、群雲は言ってのける。

 

「別に、時間を稼ぐのはいいが。

 アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

「多分、無理だから。

 でなきゃ、あたしらがマミチームと協力なんてしないし」

「ですよねー」

 

 軽口を叩きながらも、真剣な眼差しを崩さない。

 群雲の両手から、黒い放電が起こり、それに合わせるかのように、前髪にも放電が起こる。

 

「作戦は決まった!

 こちらの準備も整った!!」

 

 群雲の言葉を合図に、反撃が始まる。

 

 

 

 

 

 

「では、闘劇をはじめよう」




次回予告

ハジマルは、戦いの軌跡

誰より自由な、魔人の演舞

後ろに控える魔法少女の為

なによりも、自分の為に





魔法のレベルを、一つ上へ





四十七章 Electrical Overclocking

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