無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「オレはいつだって“自分の為”に動く。
 オレはいつだって“オレの為”に動く。
 そして……それを決めるのは“オレ”でなければならない」


五十六章 好ましくない感じ

「前回といい、今回といい、お前といると相性の悪い相手ばかりじゃねぇの?」

「あたしのせいじゃないでしょ!」

 

 互いに文句を言い合いながら、杏子とさやかは魔女結界を進む。

 

 たまたま遭遇し、偶然魔女結界を見つけた二人。

 魔女から人々を守る為。

 それが、さやかの進む理由。

 GS(グリーフシード)の入手。

 それが、杏子の進む理由。

 

 だが、休戦状態の相手を無視するほど、佐倉杏子という少女は冷たくはない。

 仕方無しに、といった感じで、杏子はさやかと行動を共にした。

 

 琢磨ならきっと、いかにさやかを出し抜くかを考えるんだろうなぁ。

 

 そんな事を思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この魔女結界か」

 

 二人が結界内に入ってからしばらく後。

 変身状態で、結界に入った群雲の第一声がこれだ。

 

「知っているの?」

「魔女本体とは、会った事はないがね」

 

 群雲は“魔法少女の基本”が、まったく成っていない。

 「なんとなく、こっちにいるような気が、していると思う感覚がなきにしもあらず」とか、そんなんである。

 故に、よく“ハズレ”に遭遇する。

 

 そんな群雲が、単独で魔女結界に挑む場合。

 使い魔を完全に無視しながら<電気操作(Electrical Communication)>で、一気に最深部を目指す。

 魔女がいれば、そのまま戦闘開始。

 魔女がいなければ、そのままUターンである。

 見滝原の人々など“知ったこっちゃない”群雲にとっては、これが最善であると言える。

 

 魔女の結界も、使い魔の結界も、内部風景にほとんど違いはない。

 安定しているか、していないかの違いがある程度。

 故に、群雲のような行動をしていれば“魔女は知らなくても、結界は知っている”という状況は起こりうる事なのだ。

 

「美術系の本に書いてある、有名作品みたいな使い魔がいる。

 ぶっちゃけ、叫ばれるとうざい」

「……え、それが攻略法?」

「前回の戦いで、使い魔が使ってた騒音波みたいなものさ。

 効果は多少違うだろうが、接近戦は好ましくない感じ」

「……先行しているのは、美樹さんと佐倉さんよね?」

「うむ。

 ぶっちゃけ相性は良くないだろうね」

 

 右腰からリボルバーを抜き、群雲は歩き出す。

 マミもまた、マスケット銃を手に取り、その横に続く。

 

「使い魔を無視して、突き進むか?」

「それはダメよ。

 ここまで結界が安定していると、魔女の口付けにやられた人がいても、おかしくは…………!?」

 

 言葉の途中で、マミの表情が引き攣る。

 群雲も、同じモノをみて、足を止めた。

 

 

 

 其処にあったのは、死体。

 一般人の遺体。

 哀れな犠牲者の、終末の風景。

 

 

 

「初めて見る、とか言わないよな?」

 

 その遺体に近づきながら、群雲は問いかける。

 

「……初めてじゃないわ。

 でも……慣れる様なものでもないわよ」

「そうかい?

 まあ、オレにとっちゃ、見ず知らずの人の死体なんて、知ったこっちゃないがね」

 

 そして群雲はそのまま、遺体を通り過ぎた。

 

「貴方は……人として終わってるわ」

 

 嫌悪感を隠さずに、マミは群雲の背中に呟き。

 

「そりゃそうだ。

 オレは10歳の時に、()()()()()()からな」

 

 振り返る事無く、群雲はそれに答える。

 

「化け物を殺すのは、いつだって人間だ。

 でも“化け物を殺せる人間”を、他の人間は“同じ”だと認めるか?」

「!?」

「さて、魔女という化け物を殺せるオレ達は“どちら側”だと思う?」

 

 そのまま数歩進み、群雲は振り返る。

 一般人の遺体を挟んで、群雲とマミは視線を交わす。

 

「きっと“これ”が。

 今のオレ達の“立ち位置”だよ。

 一般人の死に、心を痛める巴先輩と。

 一般人の死に、何も感じないオレの」

 

 そして群雲は、口の端を持ち上げる。

 

「それでもオレは、唯一残った“自分”だけは、絶対に手放さないと決めている。

 オレがオレでなくなる時が来たら、その時は“こう”だ」

 

 右手に持つリボルバーの銃口を、こめかみに当てて、群雲は真剣な眼差しをマミに向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、それは“今”じゃない」

 

 右手を降ろして、腰の後ろからショットガンを左手で取り出し、その銃身を肩に乗せる。

 

「行こうぜ、巴先輩。

 きっと奥で、仲間が戦ってる。

 それを手助けする為に、ここに来たんだろう?」

 

 マミは、自分が誤解していた事に気付いた。

 群雲琢磨は、人として終わっているわけではない。

 自分という“1”の為に、残りの“99”を、容赦なく切り捨てる人。

 そして、自分という“1”しか持ってない人なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最深部。

 さやかと杏子は、結界の主と対峙していた。

 とある国の建造物を思わせる姿の魔女。

 

――――――――――芸術家の魔女 その性質は“虚栄”――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その片隅。

 

「………………さやか?」

 

 招かれてしまった、青の魔法少女に近しい者。

 

 

 

 舞台は確実に、最悪の脚本を用意している。




次回予告

歯車は廻る

ぐるグル廻る





決められた動きでなければ

歯車は、歯車である意味がない


故に、歯車が廻るという事は………

五十七章 限界突破
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