無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「契約したら、肉体が強化させるじゃん?」
「そうだね。
 そのままの能力で魔女と戦わせるほど、僕らは非道ではないからね」
「オレや暁美先輩は、実弾銃使ってるじゃん?
 軍隊あたり呼べば、魔女を駆逐できるんじゃね?」
「普通の人はそもそも、魔女を認識できないよ?」
「でも、普通の人でも、魔女結界に迷い込んだりするだろ?」
「普通の人は、異常な空間に連れ込まれたら、冷静ではいられないんじゃないかな?」
「……それもそうか」


五十七章 限界突破

 杏子は縛鎖結界を使用し、迷い込んだらしい二人の一般人を隔離する。

 

「知り合いか?」

「うん……」

 

 さやかの表情は暗い。

 それも、仕方のないことだろう。

 

 迷い込んでいたのは二人。

 上条恭介と志筑仁美。

 想い人と親友。

 そして、さやかにとっての……。

 

「とっとと終わらせるぞ」

 

 さやかの葛藤を察知したのか、杏子はそう言いながら、槍を構え。

 

「……わかってる」

 

 数回首を振り、自身の蟠りを奥に仕舞い込んで、さやかも剣を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……数が多すぎないか?」

 

 リボルバーとショットガンの二丁拳銃で、使い魔を相手取る群雲が、疑問を洩らす。

 マミもまた、マスケット銃で使い魔達を相手にしている。

 双方共に、遠距離武器であり、その特性上迎え撃つ形となる。

 

「確かに……美樹さん達が先行している割には、数が多いわね」

 

 自分の周りに新たなマスケット銃を作り出し、マミも同様の意見を出す。

 

「ここの魔女が、使い魔生成に特化しているのか。

 先行した二人が、使い魔をスルーしたのか。

 或いは、その両方か」

 

 群雲が、使い魔の接近が途切れた頃合をみて、ショットガンを腰の後ろに戻し、リボルバーをリロードする。

 

「美樹さんが、使い魔を放置するとは思えないわ」

「それについては同感。

 でも、一緒に居るのは佐倉先輩だし、使い魔との相性を考えると、やむなしって所じゃないか?」

 

 リロードの終えたリボルバーを右腰にもどし、今度はショットガンのリロードを開始する。

 その隙をついて、近づこうとする使い魔を、マミのマスケットが撃ち抜く。

 

「確かに、ありえそうね」

「そして、この状況なら。

 使い魔を相手にするより、早急に魔女に辿り着いた方が、結果的に見滝原を守る効率がいいと思うんだが、そこんとこどうよ?」

「……」

 

 考え込むマミをよそに、左手の振りだけでショットガンを元の状態に戻して

 

「……あ。

 テレパシーがあるじゃん」

 

 基本的な事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[こちら群雲と巴先輩なんですが、届いてます~?]

[……緊張感ないな、おい。

 だが、助かる。

 こっちはちょいと面倒な事になってる]

[届いてる人がいるなら、罰ゲームとして、パンツくれ]

[意味がわかんないわよ!]

[巴先輩の]

[私の!?]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[で、面倒な事って?]

[ちゃんと聞いてる辺りが腹立つわ……。

 あたしらは魔女と交戦中だが]

[よっしゃ、サクっとシバキ倒してくれ。

 また、使い魔が寄って来てるのを巴先輩がティロフィナってるから]

[それが出来たら、苦労はしない。

 正直、劣勢だ。

 今は、さやかが前に出てる]

[……マジで?

 てか、なんで?]

[一般人が紛れ込んでた]

 

 その言葉に、使い魔を相手にしながらも、テレパシーを聞いていたマミは、表情を硬くする。

 

[……ひとつ、確認]

 

 そして、群雲は。

 

[その人に“魔女の口づけ”はあったか?]

[……いや、なさそうだな]

 

 違和感を覚えた。

 

[……どちらにしても、使い魔スルーして合流した方が良さそうだな]

[出来れば“Lv2”を使ってでも、早期に来て欲しい]

[佐倉先輩って、大概ドSだよな。

 あれ、肉体機能を簡単に限界突破するから、反動がえげつねぇんだけど。

 てか、巴先輩置いて行っちゃうぞ?]

[……それも困るな。

 一般人を守りながらの上に、魔女がガンガン使い魔召還するから、広範囲魔法が欲しい]

[ないからな、オレにはそんな都合のいい魔法は]

[あたしは無い訳じゃないが……縛鎖結界の方に魔力使わないと……]

[持ち堪えてくれ。

 慌てずに急ぐ]

 

 テレパシーを終えて、群雲は武器を両脇のハンドガンに持ち替える。

 

「聞いてたよな?

 駆け抜けるぞ」

「解ってるわ!」

 

 次の瞬間、マミの手から伸びたリボンが、空中で破裂するように無数に分かれる。

 

「レガーレ・ヴァスタアリア!!」

 

 それは、前方の使い魔達を拘束し、縛り付ける。

 

「行くわよ!」

「……ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じくテレパシーを終えた杏子は、襲い来る使い魔に対応する為、槍を多節根状に展開する。

 

「うぜぇんだよ!」

 

 範囲攻撃の可能な槍。

 それを、杏子は使いこなす。

 

 そして、さやかもまた、何本もの剣を作り出し、投げつけながら、魔女への接近を試みる。

 魔女は、最初の位置から動いてはいない。

 どう見ても“門”なので、動かないのは当然。

 故にさやかは、投擲する剣の標的を使い魔に絞っている。

 少しずつ、だが確実に魔女との間合いを詰めて行き、射程内に入ったら、一気に仕留める算段だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆が、魔女結界に!?」

 

 その頃、別働隊として街をパトロールしていたまどかとほむらは、キュゥべえの言葉を聴いていた。

 

「さやかと杏子が、偶然魔女結界を発見した。

 その相手は、二人とは相性が悪くてね。

 たまたま行動を共にしていたマミと琢磨が、それを知って救援に向かった。

 僕は、キミ達に連絡するよう、琢磨に依頼されたのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人は“魔法少女の真実”を知っている。

 それは、キュゥべえに対し、不信と不快感を覚えるという事と同義。

 

 だが、それすらも割り切り、キュゥべえに連絡役を頼んでみせるのが、群雲琢磨である。

 

[キュゥべえは、嘘は言わないし。

 群雲くんなら、充分にありえそうな事だけど……]

[さやかちゃんや、マミさんが大変なら助けに行かなきゃ。

 きっと群雲くんも、キュゥべえに依頼した方が確実だと思ったんだろうし]

 

 キュゥべえに悟られぬよう、念話で意見を纏めて、二人は頷いた。

 

「その結界まで、案内して」




次回予告

再び集結する、見滝原の魔女を狩る者達

前回のように、勝利を収める事が出来るかどうか





歯車は既に、決められた舞台へと、世界を運ぶ




五十八章 そんなのありかよ

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