無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「出来る事と出来ない事を見極めるのは難しい。
 それは、人間にも、魔法少女にも、魔人にも言える、至極当然な事なのかもしれない」


五十九章 全ての予想の斜め上

<オレだけの世界(Look at Me)>

 

 群雲が、最初に使えるようになった魔法にして、最大の切り札。

 自分だけが動ける世界で、群雲は打開策を練る。

 

 が、それより先に、反射された“ティロ・フィナーレ”を何とかしないといけない。

 このままなら、マミに直撃するし、後方にいる自分達にも届く可能性がある。

 

 

 

 

 仮に魔法少女達を自分だけの世界に“招待”して、射線から逃れたとする。

 砲撃は、そのまま杏子の縛鎖結界に直撃。

 下手をすれば、一般人がフィナーレである。

 

 

 

 

 かと言って、この世界では群雲は“魔法を使用できない”という制限がある。

 時間停止中に何とかする方法が、残念ながら浮かんではこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仕方がない、か。

 試したい事もあるし」

 

 そして群雲は、マミの前に立ち。

 

 

 

 

 

 

 時が、動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 それは、誰の呟きであったのか。

 いつだって自分の為に動くと明言している魔人が今。

 

 明らかに、自らを盾とする為。

 砲撃の最前線に立っていた。

 

 

 

 

 

 右手の平を襲い来る砲撃に向けて。

 群雲は、自分の魔法を発動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<部位倉庫(Parts Pocket)>

 

 体の一部と異空間を繋ぎ、道具を収容する、群雲の魔法。

 基本、一部位に一つしか道具を収容できないが、その質量に制限はみられない。

 そして、右手の平のみ、収容数に制限がない。

 

 “収容する物に、部位が触れている事”

 

 これが、発動条件であり、群雲が唯一、変身前でも使用出来る魔法である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして群雲は。

 ティロ・フィナーレを。

 右手の平に“収容”するという。

 全ての予想の斜め上を、やってのけて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 代償として、右腕の肘から先が、弾け飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がああああああああ!!!!!」

 

 体の一部が弾け飛ぶ激痛は、自然と咆哮へと変換され、群雲の口から発せられる。

 そのまま群雲は、その場に倒れこんだ。

 

「たくまぁぁ!!」

 

 その名を呼び、駆け寄る杏子。

 

「そんな……群雲くん!!」

 

 もっとも近くで、その惨状を目撃する事になったマミも、その名を呼びながら、倒れた群雲を抱きかかえる。

 

「……せっかくの衣装が汚れるぞ……?」

 

 歯を食いしばりながら、それでも口元を吊り上げ、群雲はそんな事を言う。

 

 

 

 

 だが、状況は制止しない。

 魔女は使い魔を産み出し、使い魔が群雲達に迫る。

 

「近づくんじゃねぇぇぇ!!」

 

 それを、群雲達の前に立ちはだかり、槍を展開した杏子が凌ぐ。

 

「一度、さやかの所まで下がれ!」

「わかったわ。

 群雲くん、立てる?」

「心配は無用。

 <電気操作(Electrical Communication)>で、無理矢理にでも動く。

 右腕が弾け飛んだ程度で、人生止めるほど、オレは自分を疎かにはしていないんでね」

 

 激痛もまた、脳が受け取る電気信号によるものである。

 それを群雲は<電気操作(Electrical Communication)>による電気信号で、強制的に遮断する。

 

 

 

 

三人は、縛鎖結界の前で、さやかと合流する。

 

 

 

 

 

「二度とやらんぞ、こんな事」

「無茶しすぎだ!

 二度とやらせねぇよ、こんな事!!」

「ごめんなさい……私のせいで……」

「別に、謝る必要はない。

 オレが、自分勝手に動いた結果だし。

 きっと、その内生えてくるから」

「生えるって……」

「ナマモノいわく、魔法少女は条理を覆す存在らしい。

 なら、魔人がそれを出来ない道理はない。

 まあ、美樹先輩のような回復能力なんて持ってないから、時間と魔力を相当使いそうだが。

 ……てか、三人揃って、オレを心配そうに見つめるな、照れる」

「お前は、どうしてそう……!」

「落ち着きなって、杏子。

 てか、群雲も照れるってなによ、照れるって?」

「もうほんと、魔法少女達は自分の可愛さをもっと自覚するべきだよね。

 ただでさえ、異性との接触経験なんざ皆無なオレとしては、冷静さを保つのに必死」

「……右腕を失った直後の会話じゃないわよね、これ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな訳で、オレを通常通りに戦力として数えないでくれよ?」

 

 右腕の止血を終えた群雲が、言いながらその場に座り込む。

 さやかのように、骨が折れたわけではなく、弾け飛んでしまった群雲の右腕。

 それは、右手の平の<部位倉庫(Parts Pocket)>が、完全に使用不可能になった事を意味する。

 弾丸の補充が不可能である事を意味し。

 もちろん『逆手居合 電光抜刀』が使えるはずも無く。

 

「今のお前を戦わせるほど、あたしらは鬼畜じゃねぇよ」

「待ってて。

 すぐに魔女を倒して、貴方の治療に専念しましょう」

「あたしの癒しの力で、腕ぐらいすぐに生えてくるわよ」

 

 それぞれが言いたい事を言いながら、芸術家の魔女に向かう。

 その三者三様の背中を見つめながら、群雲は腰の後ろのショットガンを取り出す。

 

「何が辛いって……ストックしていたGS(グリーフシード)が取り出せないのが、一番辛いわ」

 

 片手しか使えないながらも、弾丸を抜き、群雲は空になった銃を腰の後ろに戻す。

 杏子の縛鎖結界に背中を預け、そのまま座り込みながら、群雲は弾丸を左手で弄ぶ。

 

「見届けさせてもらうぜ?

 先輩達の闘劇を」




次回予告

魔女との戦い

それは、いつだって命懸け

六十章 決して多い方ではない
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