無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「仕方ないっちゃぁ、仕方ないんだが。
 もっと、簡単に、シンプルに魔女退治って出来ないものかねぇ?」
「よっぽど強くならないと、無理だろ」
「ですよねー」


六十章 決して多い方ではない

「使い魔が多いよっ!?」

 

 魔女結界に辿り着き、中に入ったまどかの第一声がこれだった。

 

 

 

 

 

 

 

 暁美ほむらは、時間遡行者である。

 だが“前回”も含めて、彼女の魔法少女歴は、二ヶ月に満たない。

 10歳の時に契約した群雲を含め、ほむらの経験は決して多い方ではないのだ。

 

 加えて、鹿目まどかも、さやかほどではないが、契約してからそれほど日は経っていない。

 

 

 

 

 

 二人が、最深部に辿り着くまで、もうしばらく掛かりそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔女結界最深部。

 

 巻き込まれてしまった一般人、上条恭介と志筑仁美。

 縛鎖結界を挟み、右腕を失った群雲琢磨。

 

 そして、戦線に立つ3人の魔法少女。

 その先にいるのは、芸術家の魔女。

 左腕の治ったさやかが剣を投げ。

 縛鎖結界が消えないように注意しながら、杏子が槍を投げ。

 マミが、マスケット銃を撃ち。

 

 使い魔を迎撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ティロ・フィナーレの反射。

 右腕が弾け飛びながらも、群雲が無理矢理凌がなければ、無事ではすまなかった事実。

 魔女本体への攻撃を自粛するには、充分すぎる理由であった。

 

「ちまちまやってても仕方がないぞ?」

「でも、さっきみたいに大技を反射されたらどうすんのよ?」

「暁美さんがいれば、時間停止中に攻撃出来るのだけれど……」

 

 

(電撃系の魔法を発展させるのに必死で、時間停止中の攻撃手段を確立させてなかったのは、失敗だったな。

 まあ、そもそも巴先輩のティロ・フィナーレが反射された事が想定外すぎたか)

 

 魔女撃退の策を練る三人と、ここに至ってなおマイペースな魔人。

 

 そして、相変わらず自分の作品(使い魔)を造り続ける、芸術家の魔女。

 

[攻めないの?]

 

 具体的な策が浮かばない三人を見ながら、群雲が念話を送る。

 

[反射を警戒してるんだよ。

 琢磨は、なにか策はないのか?]

 

 返事をしたのは杏子。

 

[策……と言うか、魔女を観察して、感じた事でもいい?]

[かまわないわ]

 

 マミの返事を聞き、群雲は僅かに思考した後、眼鏡を押し上げるいつもの動作を。

 ―――――しようとしたが、右腕がない事を思い出し、苦笑した。

 

[癖ってのは、この状態でも抜けないらしい]

[何の話よ?]

[気にするな、独り言だから]

[念話で独り言とか、器用な事しないでよ]

 

 さやかのツッコミを受けつつ、群雲は思考を切り替え、念話を続ける。

 

[使い魔生成に特化した上に、先程の反射能力。

 そして、先程からの三人との戦いから見るに、魔女は基本的に移動しないと思われる]

[そう言えば、あたしが魔女を間合いに捉えて斬りつけてた時も、動かずに衝撃波で吹き飛ばされたっけ]

[……そんな事があったんかい]

 

 さやかの独白を情報として組み込み、群雲は頭をフル回転させる。

 地味に<電気操作(Electrical Communication)>の影響があるのだが、群雲自身に自覚はない。

 

[遠距離攻撃に対しては反射、近距離攻撃に対しては衝撃波。

 魔女の対応はそんな所か?]

[そう考えるのが妥当な所か]

[自身が移動しないのならば、死角の無い対応だな。

 でも]

[でも?]

[普通に考えて“両方同時は無理”だろうな]

「「「!?」」」

 

右腕を失いながらも、ここまで冷静に状況を分析するあたりが、群雲琢磨の異常性。

 

[なら、近距離攻撃と遠距離攻撃を同時に行えば!]

[近距離攻撃してる人が、下手すりゃ死ぬぜ?]

[……ダメじゃねぇか]

[とりあえず、自分の考えを垂れ流してるだけだもの、オレ]

[……他には、なにかないの?]

[ふむ……。

 普通に考えれば“常に反射する事は出来ない”って事か?

 魔女にだって、魔力の限界があるだろうし]

[だとすれば、反射状態か、そうじゃないかをうまく見極める事が出来れば……!]

[大技を叩き込むのは、不可能じゃないだろうな]

[加えて予想するなら“反射状態を解除した直後に反射状態になる”ってのは、考えにくい]

[……狙い目は、反射状態を解除した直後ね]

[そして、オレの予想が外れてた場合、最悪自分の技で自分が死ぬ]

[……まあ、リスクの無い戦いなんて存在しないからな。

 あたしらが執るべき作戦はやっぱり]

[反射されても、被害の少ない攻撃を魔女に行い、反射状態になるのを待ち]

[反射状態が解除された直後に、大技を叩き込む、ね]

 

 作戦概要を決め、三人の魔法少女は、即座に行動を起こす。

 

(いざと言う時は<オレだけの世界(Look at Me)>で、リカバリーをかけるか)

 

 自分の時計が、11時59分59秒で静止したのを確認し、群雲は戦局を見守る。

 

 しばらく、使い魔を迎撃する傍ら、魔女本体にも攻撃を加えて、反射状態になるのを待つ。

 

(このまま、ダメージが蓄積されて倒せれば楽なんだろうけど)

 

 そう群雲が考えた直後、さやかの投げた剣が反射され、他二人が慌ててそれを迎撃した。

 

(ですよねー。

 そう簡単にいくなら、苦労はありませんよねー。

 てか、反射状態が意外と解り易いな。

 普通にバリア張ってる感じか)

 

 マイペースな群雲を余所に、三人の魔法少女は大技の準備に入る。

 

 一人は、その場に跪いて祈り。

 一人は、周りに無数の剣を生み出し。

 一人は、巨大な銃を構える。

 

 そして、芸術家の魔女が反射状態を解除した直後。

 魔法少女の魔法が、炸裂する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「断罪の磔柱!」

「スプラッシュスティンガー!」

「ティロ・フィナーレ!」




次回予告












そして











状況は






























最悪へ


























六十一章 化け物

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