無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「魔女と戦うのは、悪い事ではない」
「もちろんよ。
 それが、魔法少女の役割でもあるし」
「でも、魔法少女同士で戦う事もある」
「それは……」
「魔人の場合はどうなのか?
 と言いたいが、現状オレしか魔人がいないらしいしなぁ。
 まあ、知ったこっちゃ無い訳だが」
「……じゃあ、なんで言ったのよ?」


七十六章 だった

SIDE 巴マミ

 

 群雲君の策。

 その為に今、私は一人で佇んでいる。

 ただ静かに、その時を待つ。

 

ドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

「まてやこらーっ!!」

 

 そんな私の視線の先。全力で逃げる魔女と、下半身だけをダカダカと動かして追う、群雲君の姿。

 ……何も知らない人が見たら、殺し合いしてるなんて思わないでしょうね。

 それでも、私は待つ。ただ静かに、その時を待つ。

 群雲君からの合図を、静かに佇んで、待つ。

 しばらく後、群雲君の叫び声が聞こえてきた。

 私は、声のした方を向き。

 

 最後の射撃(ティロ・フィナーレ)を準備する。

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 魔女を追う。ひたすらに追う。<電気操作(Electrical Communication)>を駆使して。

 策は出来た。魔女が“オレと同じ力”を持つならば。同じ“時間停止”であるならば。

 話は簡単。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 自分が困る方法で。対処の難しい手段で。オレが攻めればいいのだ。

 しかもこちらには、高火力魔法を使う巴先輩もいる。

 あとは、タイミングを待つだけだ。

 魔女に追い付き、オレは飛び上がりながら右拳を振りぬく。

 

黒く帯電する拳(ブラストナックル)!」

 

 名前のまんま。右手を帯電させて全力で殴るだけ。

 正直、契約した際に肉体が強化されているので、別に帯電させてもあまり威力は上がってないっぽい。

 せっかく使えるんだから的発想なので、そこまで威力を求めているわけじゃない。

 ……まあ、対人戦なら別だろうけど。

 魔女相手となると、大して意味もないなぁ。そんな印象の、地味な技である。

 

 が、殴り飛ばされた魔女を見る限り、まったくの無駄って訳でもなさそう。

 ま、どっちでもいいけど。

 ゆっくりと立ち上がる魔女を見ながら、オレはその時を待つ。

 

 

 

 

 そして、魔女が泣き出し。

 

 

 

 

 時が、止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掛かった(フィーッシュ)!)

 

 動きを封じられた“魔女の描いた世界”で、オレは内心ガッツポーズ。

 そのまま、泣きながら歩いていく魔女の方向を確認し。

 オレは、再び待つ。

 

 しばらく後。時が再び動き出し、動けるようになった瞬間!

 

 カチッ

 

 今度は、オレが時を止めた。

 

 魔法が使えない為、小走りながら魔女を探す。

 

 

 

 

時間(じぶんが)停止解除した直後の時間(あいての)停止”。

 

 

 

 

 オレが、対処に困る状況だ。

 連続使用できないのに、自分が使った後に使われる。

 ぶっちゃけ、どうしていいかわからなくなる。

 

 

 

 だからこそ、オレはその方法を選んだ。

 

 

 

 魔女を確認し、オレはそのまま速度を上げると、魔女の真上に飛び上がった。

 <電気操作(Electrical Communication)>は使えないが、強化された肉体はそのままだ。

 予想通りに飛び上がり、上昇から下降へと変わる一瞬の無重力。

 その瞬間、オレは秒針を動かした。

 

 時間停止中は魔法は使えない。

 だが、時間停止を解除した直後からなら、他の魔法が使用可能だ。

 

 魔女が回避行動をとる前に、オレは<部位倉庫(Parts Pocket)>から目的の物を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE out

 

「ロードローラーだ!」

 

 左腰から取り出した、巨大な重機。

 物理法則を無視した、それはまさに“魔法”と呼ぶに相応しい力であろう。

 群雲の声を聞いたマミがそちらへ向き直り、巨大なマスケット銃を編み出す。

 だが、撃たない。撃てない。

 このままでは、ロードローラーと一緒に下降する群雲まで巻き込んでしまうためだ。

 もちろん、マミにそのつもりはないし、その状況も群雲は想定済み。

 空中で、器用にロードローラーを蹴り落とし、自身はその反動を利用して再び上昇を開始する。

 

 相手に使用されないように、時間停止直後に<オレだけの世界(Look at Me)>を使って魔女を補足。

 世界を還した直後に攻撃を開始し、同時にそれを合図として、巴マミの射撃。

 

 以上が、群雲の策。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

 そして、考えられた策は現実へと昇華される。

 最後の射撃が魔女とロードローラーの両方を確実に捕らえ、巻き起こる爆発。

 

「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 そして、衝撃から逃げ切れずに飛ばされる群雲。

 

「群雲君!?」

 

 それを見たマミは、咄嗟にリボンを伸ばして、群雲を捕まえる。

 

「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉお゛う゛ッ!?」

 

 抵抗なく吹き飛んでいた群雲の体に、マミのリボンが絡まり、引き寄せられる。

 その際に群雲の腰辺りからいやな音がした気もするが。

 

「え……きゃぁっ!!」

 

 そして、勢いよく引き寄せられた群雲を受け止めきれず、その場に倒れこむ二人。

 

「いたた……」

「こ、腰がグキッっていったぞ……」

 

 折り重なり、その場を動けない二人。群雲が上、マミが下。そんな状態であっても。

 

「結界は!?」

「まだよ!!」

 

 そのままの体勢で、マミはマスケットを手に取り。群雲は腰の後からショットガンを左手で持ち。

 二人は同時に銃口を、爆発箇所へと向ける。

 

 その体勢のまましばらくし。

 結界がゆっくりと歪み、消えていく。

 

「はあああああぁぁぁぁ……」

 

 結界が完全に消滅し、周りの景色がビルの内部に戻って、ようやく群雲は息を吐き、力を抜く。

 

「さ、さすがに大変だったわね……」

「独りだったらと考えると、ぞっとするな」

 

 群雲の言葉に、マミも賛同せざるを得ない。

 マミ独りでは、魔女の時間停止の対応に、手間取っていただろう。

 群雲独りでは、時間停止に対応できても、その後の追撃に手間取っていただろう。

 

 二人だったからこそ、二人ともが五体満足に勝利できた。

 

「……そろそろ、どいてもらってもいいかしら?」

 

 さて、現在の二人の体勢。群雲が上、マミが下。

 一見すれば、群雲がマミを押し倒している状態。

 

「うぉぉおぅ!?」

「……その反応は、それはそれで傷付くわね」

「どーせいと!?」

 

 慌てて飛びのいた群雲と、ゆっくり立ち上がるマミ。

 

「私たちの勝利、かしらね?」

「まあ、そうだろうな。

 戦利品もある」

 

 マミの言葉に気を取り直し、傍らに落ちていたGS(グリーフシード)を拾い上げる群雲。

 そして、何の躊躇いも無く。

 マミに、投げ渡した。

 

「っと!?」

 

 想定外の群雲の行動に慌てながら、GS(グリーフシード)を受け取るマミ。

 

「まずは、SG(ソウルジェム)の浄化。

 話はそれからだ」

 

 言いながら、ビルの窓から下を見下ろす群雲。

 7階ぐらいか、ここ?

 そんな事を考える群雲をよそに、マミは髪飾りを手に取り、その形をSG(ソウルジェム)に戻し、浄化する。

 そして今度は、マミから群雲へGS(グリーフシード)が投げ渡される。

 

「いってぇ!?」

 

 GS(グリーフシード)には、尖っている部分がある。群雲は見事にその部分が手に刺さり。

 

「あ」

 

 反射的に<部位倉庫(Parts Pocket)>の中へ。

 

「……ま、後でいっか」

「浄化しないの?」

 

 首を傾げるマミに、群雲は顎で窓の外を差す。

 

「……あ」

 

 二人の視線の先。先ほど助けた男性が立ち上がり、その周りには同業者らしき人が集まっていた。

 

「うん、このビルから出られない」

「……時間停止で抜け出せない?」

「インターバル中」

 

 どうやら二人が、本当の意味で一息つくのは、もう少し後になりそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「群雲君」

「……ん?」

「これからも、よろしくね」

「……ん」




次回予告

魔法少女 それは魔女を狩る者

魔人 それは魔女を狩る者

しかし、それ以前にこの二人は人間で

それ以上に、子供であるのだが

それは、言い訳にしかならない

戦いに身を置くとは、そう言う事である

そして、魔人は

そこで生き抜く為に試行錯誤を続ける

その為ならば、常識すらも――――――――――


七十七章 電子タバコ

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