「もちろんよ。
それが、魔法少女の役割でもあるし」
「でも、魔法少女同士で戦う事もある」
「それは……」
「魔人の場合はどうなのか?
と言いたいが、現状オレしか魔人がいないらしいしなぁ。
まあ、知ったこっちゃ無い訳だが」
「……じゃあ、なんで言ったのよ?」
SIDE 巴マミ
群雲君の策。
その為に今、私は一人で佇んでいる。
ただ静かに、その時を待つ。
ドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
「まてやこらーっ!!」
そんな私の視線の先。全力で逃げる魔女と、下半身だけをダカダカと動かして追う、群雲君の姿。
……何も知らない人が見たら、殺し合いしてるなんて思わないでしょうね。
それでも、私は待つ。ただ静かに、その時を待つ。
群雲君からの合図を、静かに佇んで、待つ。
しばらく後、群雲君の叫び声が聞こえてきた。
私は、声のした方を向き。
SIDE 群雲琢磨
魔女を追う。ひたすらに追う。<
策は出来た。魔女が“オレと同じ力”を持つならば。同じ“時間停止”であるならば。
話は簡単。
自分が困る方法で。対処の難しい手段で。オレが攻めればいいのだ。
しかもこちらには、高火力魔法を使う巴先輩もいる。
あとは、タイミングを待つだけだ。
魔女に追い付き、オレは飛び上がりながら右拳を振りぬく。
「
名前のまんま。右手を帯電させて全力で殴るだけ。
正直、契約した際に肉体が強化されているので、別に帯電させてもあまり威力は上がってないっぽい。
せっかく使えるんだから的発想なので、そこまで威力を求めているわけじゃない。
……まあ、対人戦なら別だろうけど。
魔女相手となると、大して意味もないなぁ。そんな印象の、地味な技である。
が、殴り飛ばされた魔女を見る限り、まったくの無駄って訳でもなさそう。
ま、どっちでもいいけど。
ゆっくりと立ち上がる魔女を見ながら、オレはその時を待つ。
そして、魔女が泣き出し。
時が、止まる。
(
動きを封じられた“魔女の描いた世界”で、オレは内心ガッツポーズ。
そのまま、泣きながら歩いていく魔女の方向を確認し。
オレは、再び待つ。
しばらく後。時が再び動き出し、動けるようになった瞬間!
カチッ
今度は、オレが時を止めた。
魔法が使えない為、小走りながら魔女を探す。
“
オレが、対処に困る状況だ。
連続使用できないのに、自分が使った後に使われる。
ぶっちゃけ、どうしていいかわからなくなる。
だからこそ、オレはその方法を選んだ。
魔女を確認し、オレはそのまま速度を上げると、魔女の真上に飛び上がった。
<
予想通りに飛び上がり、上昇から下降へと変わる一瞬の無重力。
その瞬間、オレは秒針を動かした。
時間停止中は魔法は使えない。
だが、時間停止を解除した直後からなら、他の魔法が使用可能だ。
魔女が回避行動をとる前に、オレは<
SIDE out
「ロードローラーだ!」
左腰から取り出した、巨大な重機。
物理法則を無視した、それはまさに“魔法”と呼ぶに相応しい力であろう。
群雲の声を聞いたマミがそちらへ向き直り、巨大なマスケット銃を編み出す。
だが、撃たない。撃てない。
このままでは、ロードローラーと一緒に下降する群雲まで巻き込んでしまうためだ。
もちろん、マミにそのつもりはないし、その状況も群雲は想定済み。
空中で、器用にロードローラーを蹴り落とし、自身はその反動を利用して再び上昇を開始する。
相手に使用されないように、時間停止直後に<
世界を還した直後に攻撃を開始し、同時にそれを合図として、巴マミの射撃。
以上が、群雲の策。
「ティロ・フィナーレ!」
そして、考えられた策は現実へと昇華される。
最後の射撃が魔女とロードローラーの両方を確実に捕らえ、巻き起こる爆発。
「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!?」
そして、衝撃から逃げ切れずに飛ばされる群雲。
「群雲君!?」
それを見たマミは、咄嗟にリボンを伸ばして、群雲を捕まえる。
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉお゛う゛ッ!?」
抵抗なく吹き飛んでいた群雲の体に、マミのリボンが絡まり、引き寄せられる。
その際に群雲の腰辺りからいやな音がした気もするが。
「え……きゃぁっ!!」
そして、勢いよく引き寄せられた群雲を受け止めきれず、その場に倒れこむ二人。
「いたた……」
「こ、腰がグキッっていったぞ……」
折り重なり、その場を動けない二人。群雲が上、マミが下。そんな状態であっても。
「結界は!?」
「まだよ!!」
そのままの体勢で、マミはマスケットを手に取り。群雲は腰の後からショットガンを左手で持ち。
二人は同時に銃口を、爆発箇所へと向ける。
その体勢のまましばらくし。
結界がゆっくりと歪み、消えていく。
「はあああああぁぁぁぁ……」
結界が完全に消滅し、周りの景色がビルの内部に戻って、ようやく群雲は息を吐き、力を抜く。
「さ、さすがに大変だったわね……」
「独りだったらと考えると、ぞっとするな」
群雲の言葉に、マミも賛同せざるを得ない。
マミ独りでは、魔女の時間停止の対応に、手間取っていただろう。
群雲独りでは、時間停止に対応できても、その後の追撃に手間取っていただろう。
二人だったからこそ、二人ともが五体満足に勝利できた。
「……そろそろ、どいてもらってもいいかしら?」
さて、現在の二人の体勢。群雲が上、マミが下。
一見すれば、群雲がマミを押し倒している状態。
「うぉぉおぅ!?」
「……その反応は、それはそれで傷付くわね」
「どーせいと!?」
慌てて飛びのいた群雲と、ゆっくり立ち上がるマミ。
「私たちの勝利、かしらね?」
「まあ、そうだろうな。
戦利品もある」
マミの言葉に気を取り直し、傍らに落ちていた
そして、何の躊躇いも無く。
マミに、投げ渡した。
「っと!?」
想定外の群雲の行動に慌てながら、
「まずは、
話はそれからだ」
言いながら、ビルの窓から下を見下ろす群雲。
7階ぐらいか、ここ?
そんな事を考える群雲をよそに、マミは髪飾りを手に取り、その形を
そして今度は、マミから群雲へ
「いってぇ!?」
「あ」
反射的に<
「……ま、後でいっか」
「浄化しないの?」
首を傾げるマミに、群雲は顎で窓の外を差す。
「……あ」
二人の視線の先。先ほど助けた男性が立ち上がり、その周りには同業者らしき人が集まっていた。
「うん、このビルから出られない」
「……時間停止で抜け出せない?」
「インターバル中」
どうやら二人が、本当の意味で一息つくのは、もう少し後になりそうである。
「群雲君」
「……ん?」
「これからも、よろしくね」
「……ん」
次回予告
魔法少女 それは魔女を狩る者
魔人 それは魔女を狩る者
しかし、それ以前にこの二人は人間で
それ以上に、子供であるのだが
それは、言い訳にしかならない
戦いに身を置くとは、そう言う事である
そして、魔人は
そこで生き抜く為に試行錯誤を続ける
その為ならば、常識すらも――――――――――
七十七章 電子タバコ