「むしろ、どうやって使うんだよ?」
「銃を持ったまま移動させて、引き金を引くとか」
「……なんと」
「お前、意外と馬鹿なのか?」
「失敬な!
巴先輩と二人で悩んでたけど、武器を持ったままって発想は無かった!」
「マミェ……」
「まあ、いつもはオレが前線だからなぁ。
なら、魔女や使い魔が目の前にいる状況で<
「殴った方が早くないか?」
「だからこそ、使い方が思いつかなかったと、タクマは言い訳をしてみたり」
SIDE out
「……どういう状況なの?」
その日、目を覚ました巴マミがリビングに行って見たものは。
いつものように、自分より早く目を覚まして、テレビを見ている群雲と。
眠る、二人の少女。
一人は知らない少女。もう一人は佐倉杏子。
頑なに、リビングで眠ろうとする群雲に対し、マミが用意した布団は、今は二人が使っていた。
[おはよう、巴先輩]
眠る二人を起こさないように、群雲は背を向けたまま、念話で挨拶する。
[琢磨君、この二人は[おはよう、巴先輩]いや、状況の[おはよう、巴先輩]……おはよう]
[説明するには、ちと時間が足りない。
巴先輩は今日も学校だろう?]
[そうだけど、流石にこの意味不明な状況で、学校に行く訳には[え? サボるの?]……いじわるね]
それでも、マミは群雲を信用するまでになる程度には、一緒にいる。
自分の為になる事に、全力を尽くす少年。
その少年が、自分と別れる事が“自分の為にならない”と知っているからこそ。
その為に“見滝原の
[帰ってきたら、誰もいないなんて事は?]
[それは無い。
佐倉先輩は、巴先輩に用があるからこそ、ここにいるわけだし。
オレ目的なら、ここにいる必要はないでしょ?]
[確かにそうかもしれないわね。
でも、琢磨君は嘘吐きだし……]
[いやぁ]
[誉めてないわよ]
[oh……]
いつものような会話をして、二人は玄関へと向かう。
[朝御飯を用意出来なかったのは、勘弁してくれ]
[解ってるわ。
流石にこの状況じゃね……]
本来なら、朝食を用意するのは、
決めたわけではないが、そういう流れになっている。
しかし、リビングで眠る二人がいる以上、キッチンでガチャガチャする訳にもいかないのだ。
[別に、学校の友達と一緒に、遊びに行ってもいいよ?]
[そういう訳にはいかないでしょ?
私は、魔法少女なんだから]
[別に、魔法少女だからって、学校生活を満喫しちゃいけないって訳でもないだろうに]
[また、その話?
自分の決めた“生き方”を変える気は無いって言ってるじゃない]
[むしろ、それに“縛られてる”ように見えるから、言ってるんだけどね。
まあ、学校生活と自分で縁を切ったオレからすれば、妬ましいような気がするってだけだが]
[大丈夫、無理をしている訳じゃないから。
私はもう、一人じゃないもの]
[そう言われちゃうと、何も言えないな。
……この話題って、176回目ぐらいか?]
[そんなわけ無いでしょ。
13回目よ]
[マジカ]
そして、マミは扉を開けて。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
SIDE 群雲琢磨
「この挨拶に、どれだけオレが救われてるか、巴先輩は知らないんだろうなぁ」
そんな事を呟きながら、オレはリビングに戻り、テレビを見る。
どうやら“魔女の仕業っぽい事件”は、確認できないようだ。
さて。
「起きてるだろ、佐倉先輩?」
テレビを消して、オレはベランダへ移動しながら、声をかける。
電子タバコを咥えて、うまく機能したのを確認した頃、佐倉先輩がゆっくりと起き上がった。
「……気付いてたか」
「ごめん、嘘付いた。
ただのカマかけ」
「おまっ!?」
「静かにしないと、ゆまが起きるよ?」
「ぐぬぬ……」
煙を吐き出しながら、オレは唸る佐倉先輩を見る。
彼女が共闘するかどうか。オレがそれを決める気は無い。
巴先輩と佐倉先輩の話しだいだ。
かつて、一緒に戦い、袂を別った二人。ゆまという要素が絡む事でどう動くか。
まあ、自分の為になるかどうか。オレにとって重要なのはそこなんだけど。
でも、楽しそうじゃないか?
なんて、ね。
オレは、電子タバコを戻し、リビングに戻ると。
「さて、始めるか」
右手の平の<
「!?」
佐倉先輩の驚く顔を、視界の隅に収めながら。
オレは“大量の重火器”を眺める。
[どれが、使いやすいと思う?]
[知るか!
てか、何なんだよ、この兵器の山はっ!?]
ちゃんと、ゆまを起こさないように念話を使う佐倉先輩は、絶対に優しいと思う。
それはそれとして。
[オレが使う銃器は、魔法で造った物じゃないからね。
調達してこないと駄目なのさ]
[まさか、昨日言ってた野暮用ってのは……]
[まあ、金と権力と保身にしか興味ない奴等は、世間に公表したりはしないからな。
ぶっちゃけ、オレとしては非常に“やりやすい”わけですよ。
仮に公表したとしても、魔法に係わりのない人に、真実が解るはずもない]
[よく、マミが許したな]
[いや、言ってないよ?
だからこそ、夜中にここを抜け出して、巴先輩が起きる前に帰らなきゃならなかったんだし]
[……そういう事かよ]
[いやぁ]
[呆れてんだよ]
[だれか、誉めてくれないかなぁ。
オレ、誉められると伸びるタイプなんだけどな。
鼻が]
[最悪じゃねぇか]
最後に、どっかの本屋から調達した兵器図鑑を取り出して、オレは選別を開始する。
リボルバーと両脇のハンドガン、ショットガンの弾は確実に確保。
それ以外の銃弾は
後は、ロードローラーが無くなった代わりに、左腰に入れるべき物の選別。
[何が良いだろう?]
[知るかよ]
[……いっそ、読者にアンケートしてみる?]
[メタすぎんだろ!?]
まあ、巴先輩が帰ってくるまでは、状況は変わらない。
佐倉先輩は、その為にここにいるわけだし。オレが判断する事でもないし。
[まあ、左腰じゃなくてもいいんだけどね、オレの魔法]
[じゃあ、何で言った!?]
[何個でも入る右手の平じゃなく、一個しか入らない他の場所だからこそ、特別な感じがしない?]
[……お前の台詞を借りるぞ。
知ったこっちゃないわ]
まあ、入れたとしても、使いこなせるかどうかは、別問題だしね。
そんな感じで、オレは巴先輩が帰ってくるまでの時間を潰していた。
次回予告
少女たちの会話
されど、最初に見せる舞台は
傍観の立場
八十七章 相互関係