無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「なんで<一部召還(Parts Gate)>を、魔女戦で使わないんだ?」
「むしろ、どうやって使うんだよ?」
「銃を持ったまま移動させて、引き金を引くとか」
「……なんと」
「お前、意外と馬鹿なのか?」
「失敬な!
 巴先輩と二人で悩んでたけど、武器を持ったままって発想は無かった!」
「マミェ……」
「まあ、いつもはオレが前線だからなぁ。
 なら、魔女や使い魔が目の前にいる状況で<一部召還(Parts Gate)>をどう使うよ?」
「殴った方が早くないか?」
「だからこそ、使い方が思いつかなかったと、タクマは言い訳をしてみたり」


八十六章 野暮用

SIDE out

 

「……どういう状況なの?」

 

 その日、目を覚ました巴マミがリビングに行って見たものは。

 いつものように、自分より早く目を覚まして、テレビを見ている群雲と。

 眠る、二人の少女。

 一人は知らない少女。もう一人は佐倉杏子。

 頑なに、リビングで眠ろうとする群雲に対し、マミが用意した布団は、今は二人が使っていた。

 

[おはよう、巴先輩]

 

 眠る二人を起こさないように、群雲は背を向けたまま、念話で挨拶する。

 

[琢磨君、この二人は[おはよう、巴先輩]いや、状況の[おはよう、巴先輩]……おはよう]

[説明するには、ちと時間が足りない。

 巴先輩は今日も学校だろう?]

[そうだけど、流石にこの意味不明な状況で、学校に行く訳には[え? サボるの?]……いじわるね]

 

 それでも、マミは群雲を信用するまでになる程度には、一緒にいる。

 自分の為になる事に、全力を尽くす少年。

 その少年が、自分と別れる事が“自分の為にならない”と知っているからこそ。

 その為に“見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)”と“呼ばせるように先導”したからこそ。

 

[帰ってきたら、誰もいないなんて事は?]

[それは無い。

 佐倉先輩は、巴先輩に用があるからこそ、ここにいるわけだし。

 オレ目的なら、ここにいる必要はないでしょ?]

[確かにそうかもしれないわね。

 でも、琢磨君は嘘吐きだし……]

[いやぁ]

[誉めてないわよ]

[oh……]

 

 いつものような会話をして、二人は玄関へと向かう。

 

[朝御飯を用意出来なかったのは、勘弁してくれ]

[解ってるわ。

 流石にこの状況じゃね……]

 

 本来なら、朝食を用意するのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()群雲の役目。

 決めたわけではないが、そういう流れになっている。

 しかし、リビングで眠る二人がいる以上、キッチンでガチャガチャする訳にもいかないのだ。

 

[別に、学校の友達と一緒に、遊びに行ってもいいよ?]

[そういう訳にはいかないでしょ?

 私は、魔法少女なんだから]

[別に、魔法少女だからって、学校生活を満喫しちゃいけないって訳でもないだろうに]

[また、その話?

 自分の決めた“生き方”を変える気は無いって言ってるじゃない]

[むしろ、それに“縛られてる”ように見えるから、言ってるんだけどね。

 まあ、学校生活と自分で縁を切ったオレからすれば、妬ましいような気がするってだけだが]

[大丈夫、無理をしている訳じゃないから。

 私はもう、一人じゃないもの]

[そう言われちゃうと、何も言えないな。

 ……この話題って、176回目ぐらいか?]

[そんなわけ無いでしょ。

 13回目よ]

[マジカ]

 

 そして、マミは扉を開けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってきます」

「いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

「この挨拶に、どれだけオレが救われてるか、巴先輩は知らないんだろうなぁ」

 

 そんな事を呟きながら、オレはリビングに戻り、テレビを見る。

 どうやら“魔女の仕業っぽい事件”は、確認できないようだ。

 

 さて。

 

「起きてるだろ、佐倉先輩?」

 

 テレビを消して、オレはベランダへ移動しながら、声をかける。

 電子タバコを咥えて、うまく機能したのを確認した頃、佐倉先輩がゆっくりと起き上がった。

 

「……気付いてたか」

「ごめん、嘘付いた。

 ただのカマかけ」

「おまっ!?」

「静かにしないと、ゆまが起きるよ?」

「ぐぬぬ……」

 

 煙を吐き出しながら、オレは唸る佐倉先輩を見る。

 

 彼女が共闘するかどうか。オレがそれを決める気は無い。

 巴先輩と佐倉先輩の話しだいだ。

 かつて、一緒に戦い、袂を別った二人。ゆまという要素が絡む事でどう動くか。

 まあ、自分の為になるかどうか。オレにとって重要なのはそこなんだけど。

 

 でも、楽しそうじゃないか?

 

 なんて、ね。

 オレは、電子タバコを戻し、リビングに戻ると。

 

「さて、始めるか」

 

 右手の平の<部位倉庫(Parts Pocket)>から、目的の物を取り出した。

 

「!?」

 

 佐倉先輩の驚く顔を、視界の隅に収めながら。

 オレは“大量の重火器”を眺める。

 

[どれが、使いやすいと思う?]

[知るか!

 てか、何なんだよ、この兵器の山はっ!?]

 

 ちゃんと、ゆまを起こさないように念話を使う佐倉先輩は、絶対に優しいと思う。

 それはそれとして。

 

[オレが使う銃器は、魔法で造った物じゃないからね。

 調達してこないと駄目なのさ]

[まさか、昨日言ってた野暮用ってのは……]

[まあ、金と権力と保身にしか興味ない奴等は、世間に公表したりはしないからな。

 ぶっちゃけ、オレとしては非常に“やりやすい”わけですよ。

 仮に公表したとしても、魔法に係わりのない人に、真実が解るはずもない]

[よく、マミが許したな]

[いや、言ってないよ?

 だからこそ、夜中にここを抜け出して、巴先輩が起きる前に帰らなきゃならなかったんだし]

[……そういう事かよ]

[いやぁ]

[呆れてんだよ]

[だれか、誉めてくれないかなぁ。

 オレ、誉められると伸びるタイプなんだけどな。

 鼻が]

[最悪じゃねぇか]

 

 最後に、どっかの本屋から調達した兵器図鑑を取り出して、オレは選別を開始する。

 リボルバーと両脇のハンドガン、ショットガンの弾は確実に確保。

 それ以外の銃弾は電磁砲(Railgun)用にして……。

 後は、ロードローラーが無くなった代わりに、左腰に入れるべき物の選別。

 

[何が良いだろう?]

[知るかよ]

[……いっそ、読者にアンケートしてみる?]

[メタすぎんだろ!?]

 

 まあ、巴先輩が帰ってくるまでは、状況は変わらない。

 佐倉先輩は、その為にここにいるわけだし。オレが判断する事でもないし。

 

[まあ、左腰じゃなくてもいいんだけどね、オレの魔法]

[じゃあ、何で言った!?]

[何個でも入る右手の平じゃなく、一個しか入らない他の場所だからこそ、特別な感じがしない?]

[……お前の台詞を借りるぞ。

 知ったこっちゃないわ]

 

 まあ、入れたとしても、使いこなせるかどうかは、別問題だしね。

 

 そんな感じで、オレは巴先輩が帰ってくるまでの時間を潰していた。




次回予告

少女たちの会話

されど、最初に見せる舞台は












傍観の立場

八十七章 相互関係

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