「本体である魂が、より力を発揮しやすいようになるからね」
「……変身って必要なのか?」
「変身は、言うなれば“最適化”だからね。
変身後は使えても、変身前には使えない魔法が存在するのは、そこに起因する。
同時に、より最適な状態になる事も有り得る」
「バージョンアップみたいなものか?」
「普通は、そうなる前に絶望に負けちゃうんだけどね。
だから、逆を目指してる琢磨は、中々興味深いよ」
「変身後に使える魔法を増やすのではなく、変身前にも魔法を使えるようにする。
なるほど、確かに逆だな。
まあ、魔人だしねぇ」
「それは普通、理由にならないんじゃないかな?」
「理由なんて、後から納得する為のものじゃん。
事実である必要も、真実である意味もない。
テレビとかで、警察が動機を追及しているとか良く聞くけど、あれ、完全に無意味だよね」
「地球人であるキミが、そこを否定するのかい?
わけがわからないよ」
「わかれ」
「無茶を言わないで欲しいな。
僕らには感情がないんだから、キミ達を完全に理解する事なんて不可能だろう?」
「わかるようになれば、お前の仕事の効率だって上がると思うけどなぁ。
それよりも」
「なんだい?」
「お前といると、前書きが長くなる」
「いきなりメタくなったね」
SIDE 群雲琢磨
「誤解されてる気がする」
「何の話だい?」
「群雲琢磨くんの話さ」
右肩に乗るナマモノに、オレは簡潔に答える。
今、オレは見滝原じゃない場所で、ナマモノと一緒にいる。
目の前には、先程オレの
待っているんだ。魔女が産まれるのを。
「本当に、琢磨は僕の予想を裏切ってくれるね。
まさか“
「お前らにとって重要なのは“
魔法少女は、魔女を狩る。そして、
そうすると、
魔女を狩る魔法少女が、魔女が産まれるのを容認しない。
と、普通は考える。だからナマモノが回収する。
そういうシステムになっている。
“と、魔法少女は
孵化した魔女をもう一度倒せば、また使える
「そういえば、聞いてみたい事があったんだが」
「なんだい?」
せっかく“邪魔者”がいないので、ナマモノに疑問を解消してもらおう。
「
「正確な情報があるわけじゃないから、推察になるけれど、いいかい?」
「自分達で創ったシステムなのにか?
つっかえねぇマスコットだな、おい」
「僕はマスコットじゃないよ?」
いきなり話が逸れた。軌道修正、軌道修正。
「
つまり、
それが“魔法少女”のものか“魔女”のものかの違いだけでね」
頭をフル回転して、情報を整理。
「なるほど、そう言う事か」
「理解が早くて助かるよ。
皆が琢磨のようだと」
「世界が滅ぶぞ、多分」
「わけがわからないよ」
「わかれ」
世界に“まったく同じ人間”はいない。双子でさえ“魂は別々”だ。
そして“魂があるからこそ、
つまり“
「使い魔が成長した魔女は、
「その魔女は“自分を産んだ魔女とは別固体”だからね。
うわ、めんどくせぇ……。
結局の所、魔女を殺してみないと、落とすかどうかわからないって事じゃん……。
「そして、回収した
穢れとはすなわち“負の感情が具現したもの”だからね。
だから、先程琢磨が言ったように“
溜まった穢れこそが、目的だからね」
「まったくの無意味って訳でもないのか。
でもそれなら、穢れを抜いた
「それだと“新たな魔女”が生まれないじゃないか。
僕らの第一目的は“魔法少女が魔女になる際のエネルギーの回収”だよ?」
「それもそうか。
0よりは良い、程度の事。
あれ? そうなると回収した
穢れを回収したら、残るのは穢れのない
それは
「当然“穢れが溜まりそうな場所”に置いておくよ。
一般人には
最低だこいつら。知ってたけど。オレも人の事言えんし。こいつらは人じゃないけど。
「……ん?」
ここで、新たな疑問発生。
「なら、お前らは全ての魔女を把握してるのか?」
「いいや。
使い魔から産まれた魔女は、
僕らにとって、価値はないよ」
そうくるか。
「なら、全ての
「ところが、そうではないんだよね。
中には、使い魔がより良い場所へ
そうなると、僕らにはどうしようもない。
なにより、それらを探すよりも、新しい素質者を探すほうが効率が良い」
確かにそうだ。
“
同じ“時間”を費やすならば“より大きいエネルギー”を求めるのは道理。
「状況によっては、
それに“ワルプルギスの夜”や“キミ”のような“イレギュラー”も存在する。
ワルプルギスの夜が、今まで抱え込んできた穢れや、キミの
「魔人って“
こいつらの話から、回収できるエネルギーを比率するなら。
魔女化>
そして、オレのような魔人は、その間。しかも穢れ寄りのはずだ。
だからこそ魔人の絶対数が少ない。ナマモノ的にも、素質があっても、回収できるエネルギーが少ないと契約する価値が無いからだ。
「イレギュラーだと言っただろう?
誰も討伐した事のない、伝説の魔女。
前例のない事を起こした、群雲琢磨。
回収できるエネルギーを、正確に把握する事は不可能だ」
「伝説の魔女と同義とか、オレすげぇ」
「でなければ、僕らが
「上から目線をありがとよ。
人間が使えるのに、自分達が使えないシステムに固執する、下等生物」
でも、魔女を確殺できるほど強くないとか、ひどくね?
むしろ、ワルプリャーに勝てるとは限らんし、聞いた限りじゃ敗戦濃厚っぽいし。
最近は、どうにも感覚が鈍ってきてるしなぁ。
だからこそ、変身せずに<
「まあ、ある程度の情報は得られたんで良しとするか。
なにより、そろそろだからな」
本当は、もう少し話をしたいんだがねぇ。
オレは、思考を切り替えて、近くにある
「マミに言って、協力してもらえばいいのに」
「容認するはずないだろ?
“魔力を回復させる為に、殺した魔女にもう一度生まれてもらって、また殺す”とか」
うわ、言葉にすると、オレも大概えげつねぇ。
反省も後悔も絶望もしないけど。
まあ、魔女との戦いは一期一会。同一の魔女と戦う事は、めったに無い。
そんな簡単に、使い魔が魔女に成長するわけでもないし。
だが、
落とした
それは、先程ナマモノが言った事からも、充分に証明されている。
そして。
ここにあるって事は、オレは一度“この魔女を殺した事がある”と言う事。
「さて、サクっと倒して、見滝原に帰らないとな」
ちなみに、わざわざ別の街まできたのは“先輩達に気付かれない為”だ。
そして、朝までに。先輩達が起きる前に帰らないと。
実は、オレが睡眠をとってない事がばれたら、色々と小言を言われてしまう。
眠る必要は無い。肉体は所詮“魂が動かす道具でしかない”んだから。オレは、その事を知っているのだから。
まあ、他の魔法少女はそれに気付いておらず“人間として生活している”訳だが。
知ったこっちゃないさ。
「でてくるよ」
ナマモノはそう言って、遠くへと避難する。
……何体か、戦闘に巻き込んで殺しちゃったもんね。ごめんよナマモノ。反省も後悔も絶望もしないけど。
そして、オレはいつものように宣言する。
「では、闘劇をはじめよう」
「やべっ!?
空が明るくなりだしてる!!」
「てこずったのかい?」
「<
ぶっちゃけ、<
マジ、なんなんだよ、この魔法!?」
「キミの魔法だろう?」
「わかってるよ、コンチキショウ!」
次回予告
舞台は、準備を着々と進めている
役者は、状況を確実に進めている
そんな一場面が
心を、間違いなく揺り動かす
九十一章 使い物にならない