無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「お前、なんでそんなにいじわるなの?」
「意地悪してるつもりはないんだがな。
 ただ、自分の思った事を正直に話してるだけで」
「友達いないでしょ、お前」
「出来た記憶はないな。
 かろうじてナマモノが友人と……呼べないわ、アレはイキモノじゃない」


九十二章 ガキ二人

SIDE 佐倉杏子

 

 ゆま達と別れて、あたしとマミは病院の中へ。

 何故か、琢磨の<部位倉庫(Parts Pocket)>の中に入っていた花束を持って、歩く。もちろんカムフラージュの為だ。

 ……本当に、何で入ってたんだよ……?

 

[反応はあるか?]

[微妙なところね……。

 せめて、キュゥべえがいればよかったのだけれど]

 

 あいつはあいつで、結構自由な存在だよな。

 まあ、あれの役割は“契約”だし、仕方がないのかもしれない。

 ……それでも、ゆまを巻き込んだことに関して、あたしは許す気はないが。

 

[早く見つけないといけないわね]

 

 色々な意味でな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 さて。近辺に魔女絡みの代物があるのは、ほぼ確定しています。

 ……それ以上の手掛かりがない……。

 

「まあ、情報は足で稼ぐ。

 捜査の基本だな」

 

 言って、オレは歩き出す。が、ゆまが付いて来ない。振り返るとそこには、不貞腐れたゆまの姿。

 わっかりやすっ!

 

「佐倉先輩の言葉を、無駄にする気か?」

 

 オレの問いかけに反応して、こちらを向くゆま。オレはそのまま言葉を続ける。

 

「オレの事が嫌いなのは充分知ってるし、それを咎めるつもりはない。

 知ったこっちゃないんでな。

 でも、オレやゆまがそれでよくても、先輩達はどう思ってる?」

「でもお前、ゆまの事を役立たずって言った!」

「ああ、言った。

 当然なんだよ。

 成り立てのお前と『何年も』魔人をやってたオレじゃ、経験が圧倒的に違う」

 

 電子タバコを取りだs……流石に街中、しかも病院の敷地内じゃ面倒な事になるな。

 最近、癖になってきた。

 

「足の速い子と、足の遅い子が同じチームでリレーをした場合、どう考えても足の遅い子は役立たず呼ばわりされる。

 それを一緒だ」

「でも「でも!」!?」

 

 何か言おうとしたゆまの言葉を、オレはそれ以上の声量で黙らせる。

 

「でも、オレ達は二人だけのチームじゃない。

 巴先輩と佐倉先輩。

 オレよりも足の速い子が、同じチームにいる」

 

 真っ直ぐ視線をぶつけ合う、オレとゆま。

 

「オレ達は、四人で“魔女を倒す”というゴールを目指す。

 同じチームなんだから当然だ。

 誰か一人でも、いなくなっては意味がない。

 四人でゴールしなきゃ、意味がない」

 

 ……こういう役目こそ、先輩達の領分な気がするんだがなぁ……。

 

「オレの事がキライなら、キライのままで構わない。

 だが、バトンはしっかり持ってろ。

 バトンがなければ、リレーは成立しない。

 先輩達に、しっかりバトンを渡せ。

 お前がしっかりとバトンを持って走らなければ。

 先輩達が、リレーに参加出来ないんだ。

 オレの事なんか、無視してもいい。

 だが、先輩達にリレーをさせないのなら、お前は役立たず以下だ」

 

 言いたい事言って、オレはそのまま踵を返す。

 

「お前が選べ、ゆま。

 バトンを持って付いて来るか、バトンを投げ捨ててここに留まるか。

 キライなオレか、大好きなキョーコか」

 

 そのまま、オレは歩いていく。

 付いて来るなら、それでよし。

 来ないなら来ないで、やり方は考えてる。

 

 しばらく歩いて、振り返ると。

 

 ゆまが、少し離れて付いて来ていた。

 それでいい。オレなんか気にせず、キョーコの為に頑張ればいい。

 

 

 

 

 

 

 “そうすれば、希望はお前を裏切らない”

 

 

 

 

 

SIDE out

 

 微妙な距離を保ちながら、魔法少女と魔人(ガキ二人)は、目的のものを探す。

 途中、ゆまが病院関係者に声をかけられたが。

 

「大丈夫です。

 『ここには良く来ますし』『今日は、お姉ちゃんのお友達のお見合いの付き添いですし』『もうすぐママが迎えに来てくれますから』

 ほら、行くぞ」

 

 群雲の口八丁な嘘八百で切り抜ける。

 

「……うそつき」

「大好物です」

 

 ゆまの呟きに、的外れな返答をして、二人は散策を続ける。

 それが、二人の距離を(物理的にだが)縮めた事が、すぐに幸運へと繋がる。

 

 

 

 

 散策して、しばらく。

 

「あ」

 

 ゆまが、声を上げ、駆け出す。

 

「ん?」

 

 耳聡く、その呟きを拾った群雲は、ゆまの行く先を追い。

 

「oh……」

 

 目的のモノを発見した。

 建物の壁に、どう考えても物理法則を無視して存在する、魔女の卵。

 

「しかも、地味に高い所にあるし」

 

 マミや杏子なら、手が届いたかもしれない。

 しかし、ゆまも群雲も、背が低い。

 実際、ゆまが取ろうと飛び上がってるが、届いていない。

 

 ドクンッ

 

 次の瞬間、二人が同時に感じたもの。それは、魔女の鼓動。

 

「マジで孵化する5秒前!?」

 

 一瞬の判断。

 

[キョーコォォ!!]

 

 ゆまは、全力で念話を杏子へと送り。

 

 群雲は、その場に眼鏡を投げ捨てて、ゆまの元へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 そして二人は、展開した魔女結界に捕らわれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうしたものかね……」

 

 GS(グリーフシード)が展開した魔女結界。すなわち二人のいる場所こそが最深部。

 変身を終えた群雲が、電子タバコを咥えながら、思考を開始する。

 

「魔女は?」

 

 同じく変身を終えたゆまが、お菓子だらけの結果以内を見回す。

 病院関係者に声をかけられた結果、必然的に二人の距離が縮まっていたおかげで。

 展開した結界内ではぐれる事を防いでいた。

 

「孵化するGS(グリーフシード)に直進したからな。

 この付近にいるのは間違いない」

「なんかいる!」

「無視か、オイ……」

 

 ゆまの視線の先。ありえないほど高い椅子に、ぬいぐるみのような生き物が座っている。

 

「戦うのか?」

 

 煙を吐き出しながら、群雲が声をかける。今度は無視せずに、ゆまが答えた。

 

「ゆまは、役立たずじゃない。

 ちゃんと魔女と戦える。

 お前にも、それを見せてやる」

「敵意バリバリやな、知ってるけど」

 

 戦う気満々のゆまに、群雲は苦笑する。しかし、それを咎める気はない。

 

(まあ、先輩達の手を借りずに魔女を倒せれば、ゆまの自信にも繋がるか)

 

 ついでに、結界展開直後から、群雲は先輩達に念話を送っているのだが、一向に返答がない。

 どうやら、届いていないようだ。

 

(後方からの戦闘は久しぶりだが……ま、なんとかするさね)

(魔女を倒す。

 ちゃんと強くなったって、キョーコやマミおねえちゃんに誉めてもらう。

 あいつに、ごめんなさいって言わせてやるんだ!)

 

 清々しいほどに、噛み合わない魔法少女と魔人(ガキ二人)の思考。

 されど、相手にする対象は同一。

 

 

 

 

 

 お菓子の魔女 シャルロッテ その性質は執着




次回予告

始まるのは殺し合い

相手を殺し、生き残る為の戦い

あるものは、自身の性質ゆえに

あるものは、自身の目的ゆえに

あるものは、自身の根源ゆえに

そこへ、執着する


九十三章 割と切実に

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