「意地悪してるつもりはないんだがな。
ただ、自分の思った事を正直に話してるだけで」
「友達いないでしょ、お前」
「出来た記憶はないな。
かろうじてナマモノが友人と……呼べないわ、アレはイキモノじゃない」
SIDE 佐倉杏子
ゆま達と別れて、あたしとマミは病院の中へ。
何故か、琢磨の<
……本当に、何で入ってたんだよ……?
[反応はあるか?]
[微妙なところね……。
せめて、キュゥべえがいればよかったのだけれど]
あいつはあいつで、結構自由な存在だよな。
まあ、あれの役割は“契約”だし、仕方がないのかもしれない。
……それでも、ゆまを巻き込んだことに関して、あたしは許す気はないが。
[早く見つけないといけないわね]
色々な意味でな。
SIDE 群雲琢磨
さて。近辺に魔女絡みの代物があるのは、ほぼ確定しています。
……それ以上の手掛かりがない……。
「まあ、情報は足で稼ぐ。
捜査の基本だな」
言って、オレは歩き出す。が、ゆまが付いて来ない。振り返るとそこには、不貞腐れたゆまの姿。
わっかりやすっ!
「佐倉先輩の言葉を、無駄にする気か?」
オレの問いかけに反応して、こちらを向くゆま。オレはそのまま言葉を続ける。
「オレの事が嫌いなのは充分知ってるし、それを咎めるつもりはない。
知ったこっちゃないんでな。
でも、オレやゆまがそれでよくても、先輩達はどう思ってる?」
「でもお前、ゆまの事を役立たずって言った!」
「ああ、言った。
当然なんだよ。
成り立てのお前と『何年も』魔人をやってたオレじゃ、経験が圧倒的に違う」
電子タバコを取りだs……流石に街中、しかも病院の敷地内じゃ面倒な事になるな。
最近、癖になってきた。
「足の速い子と、足の遅い子が同じチームでリレーをした場合、どう考えても足の遅い子は役立たず呼ばわりされる。
それを一緒だ」
「でも「でも!」!?」
何か言おうとしたゆまの言葉を、オレはそれ以上の声量で黙らせる。
「でも、オレ達は二人だけのチームじゃない。
巴先輩と佐倉先輩。
オレよりも足の速い子が、同じチームにいる」
真っ直ぐ視線をぶつけ合う、オレとゆま。
「オレ達は、四人で“魔女を倒す”というゴールを目指す。
同じチームなんだから当然だ。
誰か一人でも、いなくなっては意味がない。
四人でゴールしなきゃ、意味がない」
……こういう役目こそ、先輩達の領分な気がするんだがなぁ……。
「オレの事がキライなら、キライのままで構わない。
だが、バトンはしっかり持ってろ。
バトンがなければ、リレーは成立しない。
先輩達に、しっかりバトンを渡せ。
お前がしっかりとバトンを持って走らなければ。
先輩達が、リレーに参加出来ないんだ。
オレの事なんか、無視してもいい。
だが、先輩達にリレーをさせないのなら、お前は役立たず以下だ」
言いたい事言って、オレはそのまま踵を返す。
「お前が選べ、ゆま。
バトンを持って付いて来るか、バトンを投げ捨ててここに留まるか。
キライなオレか、大好きなキョーコか」
そのまま、オレは歩いていく。
付いて来るなら、それでよし。
来ないなら来ないで、やり方は考えてる。
しばらく歩いて、振り返ると。
ゆまが、少し離れて付いて来ていた。
それでいい。オレなんか気にせず、キョーコの為に頑張ればいい。
“そうすれば、希望はお前を裏切らない”
SIDE out
微妙な距離を保ちながら、
途中、ゆまが病院関係者に声をかけられたが。
「大丈夫です。
『ここには良く来ますし』『今日は、お姉ちゃんのお友達のお見合いの付き添いですし』『もうすぐママが迎えに来てくれますから』
ほら、行くぞ」
群雲の口八丁な嘘八百で切り抜ける。
「……うそつき」
「大好物です」
ゆまの呟きに、的外れな返答をして、二人は散策を続ける。
それが、二人の距離を(物理的にだが)縮めた事が、すぐに幸運へと繋がる。
散策して、しばらく。
「あ」
ゆまが、声を上げ、駆け出す。
「ん?」
耳聡く、その呟きを拾った群雲は、ゆまの行く先を追い。
「oh……」
目的のモノを発見した。
建物の壁に、どう考えても物理法則を無視して存在する、魔女の卵。
「しかも、地味に高い所にあるし」
マミや杏子なら、手が届いたかもしれない。
しかし、ゆまも群雲も、背が低い。
実際、ゆまが取ろうと飛び上がってるが、届いていない。
ドクンッ
次の瞬間、二人が同時に感じたもの。それは、魔女の鼓動。
「マジで孵化する5秒前!?」
一瞬の判断。
[キョーコォォ!!]
ゆまは、全力で念話を杏子へと送り。
群雲は、その場に眼鏡を投げ捨てて、ゆまの元へ急ぐ。
そして二人は、展開した魔女結界に捕らわれる。
「さて、どうしたものかね……」
変身を終えた群雲が、電子タバコを咥えながら、思考を開始する。
「魔女は?」
同じく変身を終えたゆまが、お菓子だらけの結果以内を見回す。
病院関係者に声をかけられた結果、必然的に二人の距離が縮まっていたおかげで。
展開した結界内ではぐれる事を防いでいた。
「孵化する
この付近にいるのは間違いない」
「なんかいる!」
「無視か、オイ……」
ゆまの視線の先。ありえないほど高い椅子に、ぬいぐるみのような生き物が座っている。
「戦うのか?」
煙を吐き出しながら、群雲が声をかける。今度は無視せずに、ゆまが答えた。
「ゆまは、役立たずじゃない。
ちゃんと魔女と戦える。
お前にも、それを見せてやる」
「敵意バリバリやな、知ってるけど」
戦う気満々のゆまに、群雲は苦笑する。しかし、それを咎める気はない。
(まあ、先輩達の手を借りずに魔女を倒せれば、ゆまの自信にも繋がるか)
ついでに、結界展開直後から、群雲は先輩達に念話を送っているのだが、一向に返答がない。
どうやら、届いていないようだ。
(後方からの戦闘は久しぶりだが……ま、なんとかするさね)
(魔女を倒す。
ちゃんと強くなったって、キョーコやマミおねえちゃんに誉めてもらう。
あいつに、ごめんなさいって言わせてやるんだ!)
清々しいほどに、噛み合わない
されど、相手にする対象は同一。
お菓子の魔女 シャルロッテ その性質は執着
次回予告
始まるのは殺し合い
相手を殺し、生き残る為の戦い
あるものは、自身の性質ゆえに
あるものは、自身の目的ゆえに
あるものは、自身の根源ゆえに
そこへ、執着する
九十三章 割と切実に