ポケットモンスター ノース・サウス   作:wisterina

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ロゼさんのCVは、クレヨンしんちゃんの『暗黒タマタマ大追跡』のローズを思い浮かべてください。


第十七話『ロゼさんって』

 ポケモンたちがポケモンセンターで治療を受けている間に、セルピルもオネエさんからもらった目薬をさして目の治療をしていた。あの大柄のオネエさんの名前は、ロゼと言いなんとも男の人の名前だとは思えないほど女性的な名前だった。

 ポケモンの治療が終わったと同時に、ロゼが車いすの人も使える男女兼用のトイレから出てきた。

 ポケモンたちを受け取るとき、ジョーイさんはセルピルの横にいるロゼさんを横目でチラチラと見ていた。ロゼは、先ほどの休憩小屋でかぶっていたカツラを被り、違和感がないように化粧も施していた。しかし、男の目線で見ればあまり違和感のないものであるが、女の目線から見れば一目で見ただけでおかしいとわかる化粧の仕方であった。そしてロゼの口が開いたときには決定的になものになった。

「さ、風も収まったようだし、バトルしましょうかセルピルちゃん」

 セルピルの背中に脂汗がじんわりと出てきた。今のタイミングでやっぱりやめると言ってはロゼの気分を害すだろうし、体調が悪いと言えば先ほどのようにされてしまう。

「は、はい。よろしくお願いします」

「あら緊張しているの?でも大丈夫よ二番道路なんてそんなに人が来ないところだから見物人もそんないないわよ」

 原因はあなたですとセルピルは心の中で叫んでしまっていた。

 ロゼの言う通り、ポケモンセンターの前に設けられたバトルフィールドには人っ子一人いなかった。あるのは、フィールドの砂と周りを囲んでいるフェンスだけだった。

 先にロゼが繰り出したのは、人と同じぐらいの身長と二足歩行と二本の腕がある人とにた姿のかいりきポケモンゴーリキーだった。

「リキちゃん。あんまりあの子のポケモンを痛めつけちゃ、めっよ」」

「リッキ!!」

 ゴーリキーの様子は普通のポケモンと変わりない様子だったのでセルピルは心のどこかで安心したが、ポケモンの選択に迷っていた。

 格闘タイプのゴーリキーに有効なポケモンがセルピルの手持ちにいないのだ。鋼タイプのゴトラと岩タイプのイワンは一発でも攻撃が当たれば致命傷となる。あとのポケモンはニチャモとむーんの二択であったが、ここはくせの強いむーんよりもニチャモを出そうとポーチから小さくなったボールを取り出そうとする。

 すると、セルピルは間違ってむーんの入っているボールの開閉スイッチを押してしまい、そのままむーんがバトルフィールドに出てしまった。

「セルピルちゃんはモンメンなのね。かわいい顔して意外と小悪魔的なポケモンが好きなのね」

 セルピルは、こうなったら仕方がないと考え、そのままもーんをバトルに出すことにした。

「むーん。お願いだから早く動いてね」

 そう言い終わったとたんに、ゴーリキーが先手を取った。

「ビルドアップでムッキムキになってよ」

 掛け声とともに、ゴーリキーは両腕をベルトのところに下げると一気に力を込め始める。すると二の腕や力こぶといった筋肉がブクブクと膨れ上がり、先ほどの倍ぐらいになっていた。

「嬢ちゃん頑張れよ」

 セルピルがむーんに命令を出す前に、黒髪のをオールバックにした男性がセルピルを応援していた。まさかオネエとバトルをしている姿を見られるとは恥ずかしかった。

 その隙を逃さず、ゴーリキーがむーんに向かってからてチョップを繰り出す。振り下ろされた手刀がむーんに突き刺さるが、むーんの表情は変化しなかった。ゴーリキーは不思議に思いもう一度からてチョップを繰り出すがまたしても反応がない。

「むーん平気?」

 むーんは全く反応しなかった。セルピルはしばらく考えていた。フェアリータイプもあるむーんは、格闘タイプに抵抗があるため耐えることはできるものの自ら攻撃できる技が少ない。

「むーん。あれを――」

「や~ん。セルピルちゃんバトル中に考え事しちゃダメ。じゃないと、あてみなげがきちゃうわよ」

 ゴーリキーはむーんをつかみ放り投げて、むーんは地面に叩きつけられた。かに見えたが、むーんの自慢の綿の毛で衝撃はそれほどなかった。

「だったらこれなら。愛をこめて育てた証のおんがえし!!」

 だが、ゴーリキーのおんがえしは起こらなかった。ゴーリキーは膝をついてしまっていた。みると、ゴーリキーの体中に小さな黄色い粉がついていて種からツタのような植物が生え始めていた。

 これが、セルピルの作戦であるしびれ粉とやどりぎのたねによる身動きと体力と奪うコンボ技である。

「さあむーん。はっぱカッター!」

 命令が飛んだが、むーんはのんびりと空を見ていて、はっぱカッターを出そうとしなかった。

「急いで!!」

 我慢できなかったセルピルはむーんを 咤してけしかけると、むーんはようやくはっぱカッターを出した。じわじわと体力を削られていたゴーリキーの体力は、はっぱカッターの攻撃でとどめを刺された。

 ロゼとの試合が終わった途端に、まばらながらも拍手の音がフィールドに響く。振り返ると、八人ぐらいの人がセルピルたちの試合を見に来ていた。

「やだ、結構見に来ている人いるじゃない。あたしのゴーリキーちゃんとセルピルちゃんのモンメンちゃんの戦う姿に惚れちゃったみたい」

 ロゼは、たった八人の観衆にも 手を合わせて指先だけで小さくかつ素早く拍手して喜んでいた。さらにロゼは、観衆一人一人にありがとうと声をかけ、手を振って応えていた。

 セルピルは、ロゼをオネエであるが悪い人ではないとその行動を見て、少しロゼという人を理解できた。

 ロゼがゴーリキーをボールに戻すと、セルピルのもとに近づき、手を差し伸べた。

「お疲れ様セルピルちゃんにむーんちゃん。ねぇねぇ一緒にお昼行きましょう。バトルしたばっかりでポケモンもセルピルちゃんもペコペコでしょ」

 確かに、セルピルのおなかはもうおなかが鳴りそうなほど減っていた。セルピルは、小さくうなずきポケモンセンターに併設されているレストランへロゼと共に行く。

 

「セルピルちゃん、ジムの挑戦をするために旅に出ているの?」

「はい。中央都市で待ち合わせしている人がいまして、そのために各地のジムを巡る旅をしてまして」

「まあすてき。じゃあタッシーマシティまで送ってあげるわ。ちょうどあたしもタッシーマシティの港町へ荷物を取りに行く予定だったし」

 ロゼは、セルピルが苦手なものを注文する前に聞いたり、ロゼの方が先に料理が運ばれてもセルピルの料理が来るまで話を延ばして待つなど意外と女子力が高かい人だと感じた。そこで、旅の目的を話すとロゼがまるで、我が子を応援するかのように嬉々とした表情を浮かべていた。

 セルピルは、ふと思い出したようにロゼがつけている香水が気になっていた。あの休憩所で、嗅いだ匂いがミノアからもらった香水に似ていると感じたのだ。そこで、ロゼにそのことを話した。

「ロゼさんのつけている香水って、私が持っている物となにか似ていますね」

「あら、興味ある?ちょっと待っててね」

 ロゼがハンドバッグを探って、その香水を探している。中は意外と整理されていて、一つ一つが見えやすく中身がばらけない様にしていてバッグもなかなかいいものを持っていて、女子力が高そうに見える。ロゼが取り出した香水は、セルピルがミノアからもらったものとよりは大きいが、形状が同じガラス瓶に入ったものだった。

「これね、ファトゥラシティの香水店で店長のミノアさんからおすすめされて買ったの。あの人は素晴らしいわ。顔を合わせて数分もしないうちにあたしの好みの香水を当てたの」

 ミノアという名を聞いて、セルピルは心臓がひっくり返った。

「ロゼさん、ミノアさんを知っているのですか!?」

 ナイフとフォークを皿の上に置いて、ポーチの中から持っている香水をテーブルに出した。

「やだ!これ店長さんが出た美魔女コーナーで紹介された香水じゃない。リラックス効果が出る柑橘系の匂いが評判のやつよ」

「ミノアさんってテレビに出るほどすごい人なのですか?!すごいトレーナーだとは思ってたのだけど」

「あら、セルピルちゃんミノアさんとバトルしたことあるの?

 ロゼとの会話が一気に進み始めると、急におなかのあたりがむずがゆくなる感覚が押し寄せてきた。

「すみません。ちょっと席外します」

 セルピルは席を外してトイレへ向かった。まさかスヨルタウンの大会で会った憧れのミノアが、そこまですごい人だとはセルピルには思いもしなかった。だからアロマグッズや香水に詳しいのも納得がいった。おかげで、少し素が出てしまったと内省したが。そして、レストランの奥の女性用トイレの扉を引こうと、取っ手に手をかける。 

「ねぇ嬢ちゃん今大丈夫?」

 後ろから男性の声が聞こえてセルピルが振り返ると、突然男性がセルピルをかぶさるように壁に手をついた。その男性は、さっきの試合でセルピルを応援していた黒髪のオールバックの男性だった。

 突然のことで狼狽えてしまったセルピルであったが、ロゼを待たせているので早く抜け出したかった思いがあり男性の誘いを断ろうとした。

「あの、私待たせている人がいますので」

「平気だって、すぐ済むから」

 男性は聞く耳を持っていないのか、気味の悪いにやついた顔をしてセルピルの言葉を一蹴した。その男性の表情を見たセルピルはとっとと逃げ出そうと、トイレのことを話せば離れてくれるだろうと考えた。

「あの、私早くトイレに行かないと、漏れそうなので」

 だが、男性の反応はむしろその顔をもっと気味の悪いものにさせた。そして壁に手をついていた左腕をぶらんと降ろして、男性は声を低くして言った。

「大丈夫。俺もトイレで済ませるから」

 その言葉にセルピルは意味が理解できなかったが、すぐにそれが嫌でも理解できた。なんと、男性の左手がセルピルの臀部を触ってきたのだ。あまりのことに恐怖で声も出ず、すくみ上げてしまった。そして男性の反対の手がセルピルの手をつかみ上げようと壁から手を放す。

「あら素敵なお・と・こね。でも、浮気しちゃやーよ。あたしのようなグラマラスな人が目の前にいるのにつれないの」

 その男性の右手をつかんだのは、なんとロゼであった。ロゼは少し高ぶっているのか、うわずったような声で話し、右手で投げキッスを男性に向けて投げた。

「な、なんだあんた!?」

「失礼ね。あなたの方から誘ってきたのに、その言い草。わかった。あたしの魅力がまだ伝わっていないのね。ふふんオッケー、お・し・え・て・あ・げ・る」

 男性の隙を与えないようなマシンガントークに気圧され、セルピルはその隙をついて男性の包囲から抜け出した。

 ロゼの魅力的でない姿と、積極性に男性は身震いして何も言わずにその場から去っていった。

 姿が見えなくなった時を見計らい、ロゼは膝を屈めて、先ほどのうわずったような声から元に戻り、セルピルを心配そうにした。

「ふん。あのロリコンめ。大丈夫?変なことされなかった」

「は、はい。おしりを触られただけで……」

 その言葉を聞いて、ロゼの眉間がしわを寄せ、声も裏声から低い声に変化していった。

「あの野郎。可憐な乙女のおしりをもてあそびやがって――許さねええええぇ!!」

 最後の言葉でロゼは男に戻った。その雄たけびにも似た声がレストラン中に響くと、ロゼは目にもとまらぬ速度でオールバックの男性を追いかけていった。レストランにいた客は全員ロゼが走っていった方向に凝視していた。セルピルは茫然とロゼの背中を見るだけしかできなかった。

 その後、ロゼとロゼのゴーリキーによって男性は取り押さえられ、警察に引き渡された。一連の捕物帳を見た人からの証言では、その雄たけびはバクオングのようにこだまし、その顔はオニゴーリよりも恐ろしいものだったという。

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