ポケットモンスター ノース・サウス   作:wisterina

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すみません。6600字も書きまして遅くなりました。


第二十二話『古の要塞都市ビィルタウン』

 二番道路とは異なり、アスファルトは一本だけですれ違う車もあまり来ない三番道路をセルピルは一人漕ぎ続けていた。もうすぐ昼前であるが一向に建物の一軒も見えないところでセルピルは少し焦っていた。もしかしたら昼ご飯抜きになるのではないかという不安が付きまとっていたのだ。

 ポケナビツーではあと数キロメートルという表示だけが記されていたが、まさか二番道路よりもインフラが悪いとは思わず、どこかに休憩所なりあると思って水や食べ物を買っていなかったのだ。ポケモンの道具は、タッシーマシティで買い込み万全なのに自分に必要なものがないという痛恨のミスを犯してしまったことをセルピルは後悔していた。

 その時、セルピルの目に四角い建物のようなものが左側に見え、急いでそこに向けて全力疾走で漕ぎ始める。

 近づいてみると、そこは乾いた石がセルピルの肩のあたりまで積みあがっていた廃墟だった。廃墟はどれも部屋と思われる場所は正方形状につくられて、その正方形の上にきちんと石が積みあがっていた。肩より上の方は崩れていて道路の反対側まで見えるほどだった。ほかの所も同じような形状で石が積み上がり大半が同じところで崩れていた。

 地面も石の模様が見えるぐらいのところで埋め込まれていてまるで歩道のようだった。

 しかし、セルピルは廃墟に全く興味がなく休憩所だと思って走って来たのに無駄な体力を使ってがっかりした。すると、北の方にこの廃墟から見た時よりも二回り大きい建物が見えていた。しかもその建物は、三番道路のアスファルトの上に建っていた。セルピルは今度こそ人がいるところだと期待して、自転車にまたがり漕ぎ始めた。

 そこは間違いなく人のいる町だった。人の話し声が飛び交い街灯もある町で、看板にはビィルタウンと書かれていてミュケーナ博士と落ち合う予定の場所だった。しかし、ビィルタウンは他の町とは大きく外観が異なっていた。他の町は近くに何らかの施設や建物が点在していて、人がすれ違うこともよくあった。

 しかし、ビィルタウンは道中そうしたものは一切なく、町をぐるっと囲むように石の壁があり、壁を越えたとたんに三番道路の静寂さから町の人の話し声や騒音が鳴り響き目を疑ってしまった。まるでその壁が外界と切り離すようなものであるようだった。そうしたことからセルピルはこの町がまるで別世界にあるのではと錯覚するほどだった。

 街を歩いていくとポケモンセンターの前にミュケーナ博士が佇んでいて、セルピルの姿を見つけるとセルピルの方に向かって歩み寄った。

「ひさしぶりねセルピル。ごめんなさいね急に呼んだりして、上の方から人が足りなさそうだから集めてきてくれって言われて」

「いえ、博士にはお世話になっていますから」

 セルピルはそう世辞を言ったものの、心の中では便利屋として今後も使われるのではないかと不安に思っていた。

 荷物をポケモンセンターにおいて博士に連れられて行くと、町の中もこれまた奇妙であった。道路はコンヤストリートと同じ石畳の道であるが、コンヤストリートとは異なり、右や左に曲がらなければならないところが多く、歩道も石の階段が多く一段一段の歩幅が異なり歩きにくく、しかもそれが目的の場所に近づくにつれて急になるのだから脚に疲労がたまっていく。

「すごいでしょこの町の道路。はぁはぁ。この町ずっと昔からある道をそのまま使っているから歴史研究にはいいけど、住むには不向きよね」

「なんでコンヤストリートとはこんなに違うんですか?はぁ」

 セルピルとミュケーナ博士は息を切らしながら会話すると、博士はいい質問ねと返した。

「コンヤストリートは町の人が便利に使えるようにって根底があるのだけど、ビィルタウンは違うの。はぁ。ここは、要塞都市だったから外敵から守る場所だったの。ほら目的の博物館まであと少しよ」

 目的の階層まで上がると、そこには町の灰色の外壁とは異なり黄緑色で彩られコンクリートでつくられた低い建物がそこにあった。その前には二十人以上はいる群衆が集まっていた。その中にいたあごひげがもみあげまでつながっている男性がセルピルたちの方に手を振って呼んだ。

「ミュケーナ博士もうすぐ出発しますよ」

 二人は駆け足で群衆の前に行くと、髭と髪がつながった男性がセルピルことを尋ねた。

「博士その子供は?」

「アッバス教授。この子はセルピルです。私の臨時助手で、昨日タッシーマジムリーダーに勝利した将来有望のトレーナーです」

 博士の方から紹介されセルピルは軽くお辞儀をすると、群衆たちはやいのやいのとセルピルのことで話始め、何人かはセルピルに向けて拍手が送られセルピルはなんだか恥ずかしい気持ちになった。今まで多くの大人の人に称賛を送られてたことはなかったのだ。

 

 群衆は博物館の職員や教授たちだった。彼らに連れらてた場所は発掘現場であった。発掘現場では砂や軽石を取り除くためにサンドが大きな石をどかし作業道具を運ぶためにイシツブテやワンリキーといったポケモンたちが遺跡の発掘作業を手伝っていた。

 セルピルのポケモンたちも多分に漏れず手伝いをしていた。イワンやゴトラは作業員たちの指示を仰ぎながら少しずつ地面を掘り、ニチャモは二足歩行できる利点を生かしテントの設営や機械の運搬に従事していた。セルピル本人は、過去の発掘作業で発見した遺構の資料をまとめたり研究班のいるテントにそれを運んだりとしていた。

「お疲れ様セルピルちゃん。適度に休憩して熱中症にならないように気をつけてしてくれたまえ」

「アッバス教授、この遺跡って何があるんですか?」

 セルピルがそう尋ねると、アッバス教授はあごひげをさすりながら軽く笑った。

「何があるってのはトレジャーハンターみたいな言い方だね。ここにあるのは金目の物とかそういうものはないが、過去の人々の生きていた証拠があるかな」

 セルピルは意味が理解できず首を傾げた。それを見たアッバス教授は地図を広げてセルピルに見せた。それはビィルタウンの全景と、この遺跡を重ね合わせた地図だった。

「この濃い線は今のビィルタウン。でこっちの薄い線が昔のビィルタウンの外壁と建物だ。今のビィルタウンより何十倍も大きいだろう。しかも構造上、ビィルタウンは軍事都市と要塞を兼ねて造られたんだ」

 地図上に記された薄い線が広範囲に広がり、薄い線だけ見ればブッスシティ並みの都市ほどの大きさであった。アッバス教授は講義を続ける。

「このビィルタウンの最盛期はこの薄い線の範囲であることがわかるんだ。この突出した場所や今発掘しているのはそれよりももっと古いビィルタウンのだけど、この薄い線のビィルタウンが存在していたのは大体百年以上前にあったんだ。そして埋まった時期もだいたい百年前だということも分かった」

 地図を見つめてみると、今のビィルタウンの位置から南西に三番道路に沿ってポツンと薄い線で囲まれた場所があった。そこはセルピルがビィルタウンに来る前に見かけた廃墟にそっくりの場所だった。

「ここ、私が見かけたあの廃墟に似てます」

「ほぅこれは見張り小屋だよ。遺構を調べてみると昔は一本の通路でつながっていたみたいだけどね。もう調査をし尽し終えたから一般開放しているんだけど誰も見向きしないから気付かれもしないんだ。セルピルちゃんよく気付いたね。ここにはポケモンの化石や金銀財宝のような金銭的な価値のあるものは出てこなくて、遺構や陶器や皿とかたまに骨とかが大半だ。だけど昔の人はこうやってこの町をつくったんだて気付かせないと、先人たちの知恵が風化してしまうのは惜しいんだ」

 へぇーという声を出したが、あまり興味を持たなかった。

「セルピル。ちょっとこっちに来て。面白いものがあるわよ」

 ミュケーナ博士がセルピルを呼ぶと、簡易テーブルの上に文字のようなものが刻まれた石があった。その石にはポケモンのような姿の絵も刻まれていた。

「これは昔のポケモン図鑑ね。これは結構年代が古いものだから色とかもついていないけど、ほらこっちの写真を見て色が変色しているけどこれも昔のポケモン図鑑よ」

 博士が見せた写真には、上部を右斜めの方向にバッサリと割かれて茶色に変色した布が写っていて、ずんぐりむっくりな体は変色しているが赤で彩り頭が四角いポケモンがいた。この布も先ほどの石板と同じように文字が刻まれていた。

 これはセルピルの関心を引いた。今の図鑑と比べるまでもなくおおざっぱで色も異なっているが、昔の人もセルピルが持っているポケモン図鑑と同じようにポケモンを調べていたのだと親近感が持てたのだ。

 ミュケーナ博士がセルピルの興味を引いたことで少し微笑み、ファイルを開いてセルピルにそれを見せた。それは写真に記載された

「これにはヒードランの説明が載っているわ。上の方にも文章があったみたいだけど見つかってなくて、でも残りの部分はほとんど解読できているわ。これには『火の山にてはいずりまわる。鉄のごとき体と火の山から流れでゆ水からなる』てあるわ」

 それを見てセルピルはポーチに入っている図鑑を開きヒードランの記述を見ると、ほぼそのまんまの解説が載っていた。博士によると、この記述はこの遺跡から出没した文面をほぼそのまま写していると聞かされた。先人の観察力がすごいのか、それほど記載されないポケモンなのかわからなかった。

 すると、作業現場の方で細かい発掘作業を行うからイワンとゴトラを戻してくれという作業員の声があり、セルピルは作業現場の方へ降りていった。

 二匹をボールに戻してテントに戻ると、机の上にあったファイルがなくなっていた。ほかの写真や石板はそのままであるにもかかわらずにである。

「あれ?たしかここにファイルがあったはず……」

 セルピルは、下に落ちていないかと机の下にもぐり探していると、博士がその様子を見て尋ねた。

「セルピル?どうしたの?」

「博士ここにありましたファイルはどうしましたか?」

「ファイルなら、セルピルのいる机の上にあるわよ」

 見ると、ファイルが元のように机の上に置かれていた。博士は変なのといって向こうを向いたが、セルピルは解せなかった。セルピルは目は間違いなくファイルがないところを見た。博士に言われる前まで、誰かが通ったこと音もしなかった。

 するとテントの下から手のようなものが現れ、机にあった写真を取って消えてしまった。セルピルは一瞬その白い手を見て幽霊化と思ったが、幽霊が写真を見るのかと頭を振りテントの裏を覗き込んだ。だが、だれもいなかった。もしかしたらまたテントの中にあるのかと中を覗き込もうとするとあることに気付いた。影だ。

 テントが風で揺られテントの影も同じように動いているが、それとまったく一致しない僅かばかりの小さな半円状の影が見えていたのだ。あれが犯人だとセルピルは忍び足でそれに近づこうとする。

 突然、地面がへこみ異変を察知したセルピルはその足をひっこめた。そのへこんだ地面から大きい頭にギザギザの大きな口をのぞかせたポケモンが現れた。ポケモンはナックラーであった。

「クラ―!」

 顔をのぞかせたと同時に、ナックラーはへこみから飛び出し全体を現しセルピルにその大きな顎でかみくだかんと襲い掛かった。そのポケモンの星のような目は真っ赤に変色していた。

「キャ―!?」

 セルピルは身の危険を感じ、短く助けを求める叫びをあげると。ボールからゴトラが飛び出し、その自慢の鋼鉄の体でセルピルから身を挺して守った。ナックラーはゴトラの体をかみくだこうと顎を離さないが、ゴトラの鉄壁の体では傷一つもつけられない。しかし、体の側面の方で体を守っているため反撃もできなかった。

 セルピルは両ポケモンとも膠着状態に陥っているのを見て、ナックラーにボールを投げた。ナックラーは、先ほどの凶暴さとは思えないほどすんなりと捕まった。

 捕まえたナックラーのボールを取ったとき、発掘現場の方が騒がしくなりテントを抜け出してみると、ヤジロンやメグロコといったポケモンが作業員たちに襲い掛かっていた。しかも作業員たちの手伝いをしていたサンドまでもがその中にあったのだ。

 ほかのポケモンたちや、ニチャモがけたぐりなどの格闘タイプの攻撃でメグロコたちを吹き飛ばして追い払っている。セルピルも急いで作業員たちを助けようとゴトラを作業現場に向かわせる。

 ゴトラはヤジロンが作業員たちに向けてねんりきを放っているのを見て、再び自身が楯になってねんりきの集中砲火を防ぐ。鋼タイプということもあってエスパータイプの攻撃に強く、ゴトラは先ほどのナックラーに反撃できなかったとこの不満も含めた反撃のアイアンヘッドをヤジロンにぶつけた。この攻撃でヤジロンは戦闘不能になった。

 セルピルは作業員たちをテントの方へと誘導し、ニチャモはある程度自分に襲ってくるポケモンの数が減ってくると、逃げ遅れた作業員を抱え、その脚力でテントの方へ連れて行った。

 襲ってくるポケモンの数が減り、博士や教授が原因と発掘現場への避難を始めようとしたとき、発掘現場の向こう側から爆発音が聞こえ地震のような揺れが発生した。揺れが収まったときには、セルピルたちを襲っていたポケモンたちは、みんな何事があったかのような顔をしていた。セルピルが爆発音のした方向を向くと、一筋の黒い煙のようなものが上がっていてセルピルはそこに向かって駆け出す。

 煙が見えた場所に来ててみると、上部が欠けた赤色の機械のようなものが煙を上げてぱちぱちいう危ない音が鳴っていた。セルピルはこれがあの爆発音の原因かなと判断し、ミュケーナ博士に電話をかけようとした。

「マタドガス煙幕!」

 突然、黒い煙があたりを覆いセルピルは煙を吸ってむせ返る。その時、黒い煙の間からでも判別できるような白い服が一瞬横切るのが見えた。

 煙が晴れると、そこにはあの壊れていた機械も火花の鳴る音も聞こえていなかった。あったのは、電話から流れ出るミュケーナ博士の声だけであった。

 

 一方、水分補給のためにビィルタウンの建物の影で涼んでいたヘレナは小さい声で文句を言っていた。

「やれやれ、こんな何もないところで調査資料を入手してこいなんて無茶な上司を持ったものです。それをこなす私は優秀なのですが、ポルックがいないと危ないことだらけでした」

 事実、ヘレネはセルピルに二度も感づかれたという失態を犯していた。セルピルの監視より資料の入手を最優先していたのもあるが、普段ポルックとのコンビで潜入等をしていたので甘いミスが出てしまっていたのだ。

 ヘレネは口には出さなかったが、早くポルックが戻ってくるように心の中で何度も祈っていた。そこに偶然ナックラーたちが暴れるという幸運があり、資料の入手は成功できた。

 ヘレネは、ペットボトルに口を付けて水分補給をしながら、資料やメモの写しや写真を整理していた。その時、一瞬風が乱れるのを感じると横に金色の髪の美少年――ポルックがヘレネの手を握って座っていた。

「ヘレネ。戻りましたのです」

 ヘレネは流し目にポルックを見て、いつもの淡々とした口調で報告をする。

「こちらは別任務が入りましたが、無事に終わりました。ポルックの方は?」

「半分が観光地化してましたから人通りが多かったですが、潜入はしやすかったです。もちろんこちらも恙なく成功ですよ。大急ぎでバスに乗れて良かったのです」

 それを聴いたヘレネは、安どの息をこぼしペットボトルを地面に置いた。

「そうですか。そうですよね。ポルックも私と同じように任務を全うして」

「そうなのですよ。我々は任務の成功のためならば、たとえ石灰岩の中、お湯の中にも」

 ポルックがその言葉を発したとき、ヘレネがキッとポルックの方を睨んだ。

「入ったのですか?入ったのですね!?綿の城の温泉に!あれほど惑わされるなと言いながら!!」

「ち、違うのです。これは調査の一環で仕方なしに入っただけなのです。決して泳ぎ遊んだわけでは」

「裏切者!許さないのです!!私も温泉に入りたかったのですぅ!」

 ヘレネは、ポカポカという音でも出すかのようにポルックの頭をたたき始める。ポルックはヘレネが加減しているのかそんなに痛くもないため抵抗もせずヘレネのポカポカ攻撃を受け続けながら宥めさせる。

 結局、ポルックはエシリタウンで温泉に入るということでお相子にすることで決着がついた。

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