ポケットモンスター ノース・サウス   作:wisterina

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第三十二話『岩の旧市街の秘密』

 アニヤ総合大学の入り口付近では、多くの人たちが集まっていた。そのほとんどが研究関係者で、そのほとんどがギラギラとした目で燃え上がっていた。岩の旧市街の調査は、彼ら歴史・地質研究者にとって最も現地調査したい場所であり、幾度となく延期されたこともありこの時を一日千秋の思いで待っていた。

 そんな熱気が漂うそばを、セルピルとセロは博士の助手のアイスと合流した。どうやら、まだ博士は到着していないようだ。

 

「まだ、博士は来ていないようですねアイスさん」

「う~んもうすぐ出発の時間ですし、もしかすると博士抜きで出発するかもしれないですね」

 

 そんなことを話していると、大学のバスターミナルの前に黄色キャブが一台停まり、中からミュケーナ博士が姿を現した。

 

「遅いですぞミュケーナ博士!」

 

 ハギス博士が唾を飛ばしてミュケーナ博士をせかさせた。ハギス博士は、セルピルが前に見た白衣を着ておらず、サファリハットに緑の作業服と動きやすような服装で、白のムースのような髪は隠れてしまっていた。

 ようやく全員が揃いバスに乗り込む。バスの席順はセルピルの隣にミュケーナ博士、前列にセロとアイスの順番だった。

 全員席に座るとバスが揺れながら発車した。休日の土曜日ということもあって、車の量が少なく信号に引っ掛かることもほとんどなく十分で四番道路に入っていく。

 

「博士、ヴァディタウンの機械について何か進展はありましたか?」

 

 セルピルは三日前道中で会ったフリーが、自分たちは何もしていないと言い張ったことが気になっていたのだ。塔の墓室で会った二人は、言動や服装から間違いなくフリーの人であるのは明らかであり、それを真っ向から否定していたので不信感を抱いていたのだ。

 

「そのことなんだけど、確証が持てないの。ポケモンたちを操っていた機械がドカリモというかつてフィオレ地方で暴れていたヤミヤミ団が使っていたものだと分って、もしかしたらフリーの仕業に見せかけてヤミヤミ団の残党が仕組んだのでは警察は考えているの」

「そんな!私は二回もフリーの服装や話し方を見てますから、間違いなくフリーのはずです」

「わたくしもセルピルを信じるわ。でもフリーがやったという確実な証拠が見つからない限りはね」

 

 セルピルは肩を落とした。フリーが捕まらなければ、今度は自分のポケモンたちが操られるのではと気が気でなかったのだ。すると、セロが席から身を乗り出して顔を出し博士に話しかけて話題を変えた。

 

「そういえば、岩の旧市街ってどんなところなんですか?なんかみんな朝からワクワクしている見たいで気になって」

 

 それに答えるように、博士は先ほどまでしていた暗い顔から明るくなり解説を始めた。

 

「岩の旧市街はね。自然と人とポケモンがつくった岩の中で何百年も暮らしていた文字通り岩でできた町よ。火山の噴火でできた煙突のような岩や十メートルもある岩の住居とかあるのよ」

「今は人は住んでいないのですけど、道具やモザイク画とかが残っていまして。ポケモンたちは今も住んでいますよ。人がいなくなってもポケモンはその跡地を住処にしているとして研究者たちの間で人気なんです」

 

 補足でアイスが説明をする。さらにアイスが言うには、人がいなくなったのはここ九十年前ぐらいで百年戦争の最終決戦場となった後でも人は住み続けていたようだった。

 セルピルはどうして戦争の後十年も暮らしていたのにいなくなったのかと質問すると、反対側の席に座っていた研究者のビーンが質問に答えた。

 

「実はね、岩の旧市街の地下が氷に閉ざされているんだ。夏場は地下からの冷気が上がって涼しいからいいけど冬場になるととても住めるような場所じゃなくなったんだ。おまけにその氷や氷柱が落ちてきたら危ないということもあって地下にまで進めないんだ。今日の調査は専門の人を頼んで進むことにしているんだ」

 

 岩の旧市街についての話が続き、セルピルはフリーのことなんてすっかり忘れてしまっていた。

 四番道路に入ってから数時間経ち、バスは朝日の洞窟の前で停車した。ここからは、荷物を置いて徒歩で向かわなければならなかった。

 セルピルが旅の初日に入って所とは異なり北側にあるため道は違うが、久々に入った朝日の洞窟は相変わらずライトいらずの輝きを放っていた。久しぶりの朝日の洞窟ともあり、セルピルは懐かしさを感じていた。

 ふと洞窟の壁でたくさんのメレシーたちが大きな一塊となっているのを見つけた。研究者たちは目もくれず先に進んでいったが、セルピルはその中にひと際ピンク色に輝くメレシーの姿を見つけたので近寄ろうとするとメレシーが一斉に耳を立てて警戒し始めそれ以上近づいたら危ないと思い踏みとどまった。

 

「セルピル早く、置いて行かれるよ!」

「今行く!ごめんねメレシーたち」

 

 セルピルは、メレシーたちに謝ると待っていたセロの方に向かって走った。その後ろ姿をメレシーとディアンシーは、じっとセルピルが去るまで見つめていた。

 洞窟を抜けると、そこには壮大な光景が広がっていた。見渡す限り天を貫くような柱の岩がいくつもあり、その一つ一つに窓のような穴がぽっかりと空いていた。その向こうでは、博士が言っていた煙突のような岩も見えていた。

 セルピルとセロがその光景に息をのんでいると、船頭に立っていた研究者が早めの昼食をとるようにと指示が下った。

 昼食は、各自持ち寄ってくるという形式だったのでセルピルは朝コンビニで買ってきたサンドイッチを食べていた。ニチャモたちも一緒に食べようとしてポケモンも食べやすい具材を選んだのだが、ネックだったのは値段だった。普段は、ポケモンセンターから支給されるポケモンフーズや調味料を与えているのだが、いざ普通の食品とかを買ってみると意外と出費がかかるのだ。

 アルバイトなどの収入源がある人ならばともかく、親の支援もなく今まで貯めてきたお小遣いでやりくりしてきたセルピルにとって少し痛い出費だった。

 昼食が終わったタイミングで、ビーンと数人の作業員風の人たちが前で話し始めた。

 

「え~本日は天候に恵まれ、絶好の調査日和となりました。今回調査に協力してくれますのは、ユタさんたちデミルシティのジムトレーナーたちです」

 

 紹介されたユタは、ビーンの一歩前に出て話し始めた。

 

「どうも、デミルジムのユタと申します。今回の調査では氷に閉ざされている地下にまで足を延ばすということもあり、氷に強い我々の鋼タイプのプロである私共にご協力を要請していただき誠にありがとうございます」

 

 その快活な見た目通りにハキハキとした言葉と自信で挨拶を始めた。すると、セロが爛々とした表情でセルピルに耳打ちする。

 

「セルピル、ジムトレーナーだって、もしかしたらデミルシティまで送ってくれるかもしれないよ」

「そんなにうまくいくかしら?」

 

 セロの言う通り、もしあの人たちに頼んでデミルシティまで案内してくれたら負担は少なく済みそうであるが、ミュケーナ博士の同行者というだけで連れて行ってくれるかは疑問であった。

 そうこうするうちに、どうやら役割分担が始まったようだ。ハギス博士らはジムトレーナーと共に地下の方へと行き、ミュケーナ博士とセルピルたちの一団は、ユタと一緒に地上階より上の部分の調査をすることになった。

 

 

 

 いざ岩の旧市街の一つに入ると、入っただけでぶるりと寒気による鳥肌が立った。先ほどまで二十度後半か三十度ぐらいあった外と違い、岩の中は十度ぐらいにまで下がったように思えるほど涼しいを通り越すほど寒かった。

 

「うわっ本当に寒い。クシュ!」

「地上階は地下の冷気が来やすいからね。上に行けばそんなことはないけど」

 

 セルピルたちは、温かい上の階へ登ろうと階段に足を掛けようとする。一方のミュケーナ博士は、ハギス博士と一時の別れの挨拶を交わしていた。

 

「では、ミュケーナ博士我々はこれより地下の調査に参りますので。いざしゅっぱーつ!!」

 

 老人の見た目からは思えないほど元気いっぱいな声を出して、ハギス博士とビーン率いる一団はドリュウズを先頭に地下へと進んでいった。

 高さが不均等な階段を登っていくと、確かに地上階よりも暖かくなっている。部屋の中をのぞくと、石でできた椅子や机といった家財道具があり、他には陶器でできた皿が机の上に置きっぱなしになっているなど、九十年前に放棄されたはずなのに少し席を外したかのような生活感ある姿があった。

 他の部屋では、ニャスパーとチラチーノたちが誰も使わなくなった無人の木のベッドに寝転がっていた。通路では、ディグダやダグトリオが壁を掘って新しい道をつくっていたりと確かにポケモンたちの新たな生活の場となっているのが分かった。

 ふと通路の壁にある窓をのぞいてみると向こうの黒い煙を吐き続ける山が見えていた。セルピルは、以前の夕日の洞窟の一件のこともあり火山に怖れを感じていた。その心配をセロが代わりに代弁してくれた。

 

「そういえば、火山があると言ってたけどここは大丈夫かな?」

「小規模の噴火はあるけど、地形の流れからすればここに溶岩とかは流れてこないから大丈夫ですよ。百年前に大噴火があったけど旧市街に溶岩は流れた記録がありませんでしたし」

 

 アイスがそう言ったので、セルピルは内心安心した。すると、鼻の頭に角があり二足歩行で歩いてくるサイドンがこちらに向かって歩いてきた。

 セルピルとセロは身構えてポケモンを出そうとするが、博士が制止した。よく見てみると、サイドンの目は半開きでどこか眠たそうにしていた。サイドンはセルピルたちを無視して反対側へと行ってしまった。

 

「サイドンは疲れた体を休ませるためによくここに来るんだ。綿の城の地下のマグマや夕日の洞窟、そして向こうに見えた火山はマグマでつながっていて、溶岩を泳げるサイドンはあちこち移動しては、山から降りてここで休むんだ」

 

 ユタの説明を聞いて、セルピルはポケモンたちに感心してしまった。スヨルの森のマンキー達のように縄張りに入っただけで敵意をむき出しにするポケモンもいれば、この岩の旧市街のように色んなポケモンたちで暮らしている。おまけに人とも共同で生活するのだから不思議だなと思った。

 さらに歩いて一つ上の階へ登っていくと、博士は「着いたわよ」と言ったのでここが目的の場所らしかった。そこは、全てが石で作られていた礼拝所であり、目の前にはポケモンと人の姿が描かれたモザイク画があった。

 博士たちの目的はこのモザイク画のある部屋の調査に来たようだった。セルピルたちも博士の調査の準備をしていると、ユタがセロに話しかけた。

 

「そういえば、二人は博士の助手なのかい?」

「セルピルはそうだけど、僕は違うよ。僕とセルピルはジム巡りをしているんだ。それで頼みがあるんだけど、ユタさん。今日の調査が終わったらデミルシティまで連れて行ってくれないかな」

「へ~セルピルちゃんもジムに挑戦しているんだ。ちょっと待っててね、地下にいるジムトレーナーに今日の調査が終わったら君たちを連れて街まで連れていけるか電話するから」

 

 そういってユタは一度部屋から出ていった。言ってみるものなんだねとセルピルは少しセロの積極さを羨ましく思った。

 

「セルピル、ちょっとアイスと一緒に別の部屋の調査をお願いできる?」

「わかりました」

 

 そういわれて、セルピルはアイスと一緒に部屋を移動する。通路ではユタが体の正面を壁に向けて電話をしていた。

 二人は、先ほど登ってきた階段を下りていくと、アイスがにこやかな顔をしてセルピルに話しかける。

 

「いや~博士が来れてよかったですよ。おまけにセルピルちゃんとセロ君も手伝いに来てくれたおかげで、予定になかった他の場所も調査できてうれしいです」

「予定にはないところまで調査して大丈夫なんですか?」

「平気ですよ。どうせ、地下の調査に向かった人たちも予定しているところよりも奥の方へと進みたがってますから。私たちが他の所を調査しても罰は当たらないですよ」

 

 アイスはまん丸の眼鏡をキラリと光らせて何かをたくらんでいるような顔をして笑っていた。

 調査する部屋に到着したとき、セルピルは通路の角に白い服を着た人の姿を見かけた。研究者の人かと思ったが、ほとんどの研究者は地下に降りていて、待機している人だけのはず。

 

「アイスさん。他の人がこの階にいるって聞いてますか?」

「ううん。そんな連絡入ってないわよ」

 

 ますますおかしいと考えセルピルは、様子を見てくるといって通路の角を曲がっていく。そこには、通路の真ん中にぽっかりと人一人分は入れるほどの大きさの穴があった。周りのポケモンたちが不思議そうに穴を見つめていたのでどうやらポケモンが掘った穴ではなさそうだ。

 セルピルはアイスを呼んで来ようと後ろを振り返ると、白い服で身を包んだフリーの男性団員がそこにいた。

 

「な、なんだお前は!?」

「フリー!?」

 

 セルピルは驚いてしまい、フリーの団員がセルピルやポケモンたちを押しのけて穴の中へ入っていくのを止めることができなかった。

 

「セルピルちゃん!?どうしたの?」

 

 大声を聞きつけて、アイスが穴の所まで走ってきた。

 

「フリーです。フリーの団員がいました。この穴の中へ逃げていきました」

「ええっ!?どうしよう。私ポケモン持っていないよ」

「でしたらアイスさん。博士たちを呼んできてください」

 

 アイスは言われる通り博士たちを呼ぶために電話をかけた。この穴の大きさだと、イワンが自分を抱えて入ることができないと判断してむーんを出して、先に穴の中へ入れた。

 

「むーん。わたほうし」

 

 むーんは、地面にわたほうしを放出させ、セルピルはそこに向かってダイブする。わたほうしがクッションとなりしりもちをつくことなく下に降りられた。セルピルはむーんを抱えてあたりを見回すと、さっき見たフリーの団員を見つけた。相手もセルピルを見つけたようで一目散に逃げ出すのを見て追いかけた。

 歩幅が異なるためかだんだんと距離が離れていく。だが、その向こうに何人かフリーの集団がいるのを見つけた。

 

「な、なんだ?ヘルガー!」

 

 黒い服に仮面をつけた団員は、ヘルガーを繰り出した。ヘルガーは、セルピルに向かってかえんほうしゃを放つ。紙一重でかわしやけどなどは受けなかった。

 すると仮面の団員の前に、同じ黒い服の仮面の団員が二人現れた。背はセルピルよりも少し低いぐらいで二人とも同じぐらいの高さだった。

 

「ザングース」

「ハブネーク」

 

 年若い男女の冷淡な声が仮面の奥から出ると、ボールから白と赤の毛で覆われたポケモンザングースと紫色の毒々しいヘビハブネークの姿が現す。ザングースは爪でハブネークはしっぽでセルピルに向けて同時に攻撃しようとする。

 ポケモンが腕の中にいるむーんだけでもう一匹出す余裕もなく、やられると心臓が一瞬止まりかけた。

 

「ヨっち急げ!」

 

 セルピルの背中がグイっと強い力で引っ張られ、二匹の攻撃を回避することができた。その正体はハーデリアで、その持ち主であるセロがセルピルの後ろに立っていた。

 

「セルピル大丈夫?怪我とかしていない?」

 

 セロが必死で心配してくれたのでセルピルは大丈夫と言った。セルピル自身、セロという安心できる存在が来てくれたおかげで気持ちが落ち着いていた。

 

「排除しますです」

「排除するのです」

 

 まるで感情がないかのように淡々とした声で、二人はそれぞれの手持ちに命令をする。

 

「セルピル気を付けて、あの二人すっごいやり手だよ!」

「うん。あのフリーの二人息ぴったりで攻撃してきたしね」

「違うよ。ザングースとハブネークを同時に出して同士討ちをしないなんてとんでもないことだよ!」

 

 そう、セロが指摘したとおりである。ザングースとハブネークは、細胞に刻まれているほど宿敵の間柄で目が合っただけですぐに戦いを始めるほどの因縁の仲なのだ。だが、その二匹は対立もせずしかも互いをけん制する気配もなく共に戦う姿勢をとっているのだ。

 

「これぞ教化による力です」

「教化によって因縁の敵も友となり、共に目の前の敵と戦えるのです」

 

 団員の二人は先ほどの冷淡な口調からどこか自慢げに話すような口調に変わっていた。セルピルは、ハブネークとの相性が良いナライを繰り出した。

 

「セルピル、僕はザングースを!」

「いいわ。そっちは頼むわ」

 

 ザングースがブレイクブローでハーデリアを刻もうと奮戦し、ハーデリアも負けじととっしんでザングースにぶつかる。ハブネークはポイズンテールで、ナライに毒の液がついたしっぽを叩きつけるが、幸いにもナライは毒にかからなかった。

 

「じならし!」

 

 ナライがお返しにと、地面を大きく揺らす。すると、地面があちこち割れ始め、フリーの団員だけでなくセルピルとセロも地面の割れ目に落ちてしまった。

 セルピルは落下の衝撃を和らげるために腕に抱いているむーんにわたほうしをまた命じた。

 

「モンンンンモ!!」

 

 むーんは、あたり構わずわたほうしをまき散らし、セロやセルピル、ポケモンたちだけでなくフリーの団員にもわたほうしをまき散らしていた。わたほうしが地面につき一安心したと思ったが、また地面がひび割れセルピルたちはもう一層下の階へと落ちていった。

 また地面に落ち、ひび割れるような音が止んだのを確認してセルピルたちは一安心した。

 

「な、なんじゃお前たちは!?フ、フリーか?大事な遺跡を荒らすとは許せん!」

 

 白い壁の向こうで、ハギス博士が声を荒げた声が聞こえた。

 

「セルピル、これ雪と氷の壁だ」

 

 セロが壁を触ってみると、白い壁と思われた雪が取れその向こう側が見えていた。セルピルたちは地下に来てしまったようだ。気温が一気に下がり、吐息も白くなっていた。

 氷の壁からは薄っすらであるが、博士がボールからモココを繰りだしてフリーの団員相手にでんきショックを喰らわせて退散させていた。

 

「セルピル、セロ大丈夫?」

 

 上からミュケーナ博士の声が聞こえ上を見上げてみると、博士はフワンテにつかまりゆっくりと降りてきていた。ミュケーナ博士は電話で、向こう側にいるハギス博士たち一行にいるドリュウズのメタルクローで氷の壁を壊し合流できた。

 

「な、なんと。これは……」

 

 ハギス博士がセルピルたちがいる部屋の中に入るや否や、声を詰まらせて壁の方を見ていた。セルピルたちがハギス博士が見ている方向を向くと、そこには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が戦っている姿を描いたモザイク画が壁一面に描かれていた。

 ミュケーナ博士は、壁の方に歩み寄りその下に刻まれていたものをじっと見つめた後一つ一つ解読していった。

 

「コオリノリュウヒノカミノケッセン。センソウノシュウエン。大発見よ。旧市街の人が使っていた文字に百年戦争の二匹のポケモンの姿を描いたモザイク画よ!」

 

 博士は興奮気味に震える声で大発見という言葉を発したと同時に、研究者たちは一斉にざわつき始めた。その隙を見てセロがこっそりとポケナビツーで壁画を撮っていたのをセルピルは見逃さなかった。

 

「分厚い氷の壁で横の部屋が塞がれて見えなかったのか。しかし、この左右非対称のポケモンは間違いなく……キュレムだ。それにこっちの赤いポケモンも神とあるのだな。だとしたらアッラー山の……」

 

 ハギス博士がぶつぶつと何か考えていたがセルピルは早くここから出たかったのだ。半袖では、この寒い地下にいつまでもいるのは寒すぎてつらいのだ。

 

 

 

 岩の旧市街から朝日の洞窟へと逃げ出すことができた三人とヘルガー。その一人の仮面の男はゼーゼーと息を切らしていた。その様子を見てポルックとヘレネは仮面の上から呆れた口調で言った。

 

「まったく、少し走ったぐらいで息が切れるとは」

「もう少し運動したほうがよいのではないですか?それでもアニヤのフリーを率いるボスなのですか?」

 

 ヘルメスは、仮面の中にたまった汗を拭くために仮面を取り持っていたタオルで、顔じゅうについていたものと仮面の中で水たまりになっている汗と拭きとり始める。

 

「俺は、デスクワークが基本なんだ。ハァ。移動も車で通勤しているから仕方がないだろう。それに、俺は、社内政治で勝ち残ったんだ。フリーとつながっていることも出世のためにやったんだよ!」

 

 ヘルメスはいつもの口調ではない話し方をするほど悪態をついた。ヘルメスを落ち着かせるためにポルックが懐からボンドリンクを渡した。ヘルメスはそれを受け取りカラカラになったのどを潤す。

 

「大体、()()()は何をやっていたんだ!?調査不足だ!トレーナーはみんな地下に行っているはずだって報告したのに。おかげで俺のヘルガーを出す羽目になったんだぞ。もし体毛を調べてみろ!カタス社の社長がフリーとつながっていることがばれてしまう!」

 

 ヘルメスは少し落ち着くと、半分ぐらい飲んだ残りのボンドリンクをヘルガーに飲ませた。

 

「確かに、この失態を犯したのは内通者のミスです」

 

 ヘレネもヘルメスの意見に同意であった。万が一のことも考えての黒服部隊の配備であるのに、他のフリーの団員がバラバラになるほどの損害である。あそこにセルピルがいたなどの問題ではない、地理に明るく研究者たちの誘導ができる立場なのに報告をミスした内通者の責任だ。

 

「ステンノー司教に人選ミスと文句を言う必要がありますね」

「とにかく、他のフリーの団員たちの安否確認をした後撤収だ。お前たちも他の黒服部隊の確認をしろ」

 

 ヘルメスがそう言い捨て、ヘルガーをボールに戻し各自安否確認に努め、フリーの合同調査は失敗に終わった。

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