ポケットモンスター ノース・サウス   作:wisterina

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第三十四話『再戦デミルジム 鋼鉄を破壊しろ!』

 その翌日、天気は久しぶりに雨が降りそうに淀んだ曇り空にセルピルはデミルジムの前に立っていた。セロはもう少し技の修行するからという理由で後から来るようだった。

 セルピルは、深く呼吸をしてドアの前に立つとドアが自動的に開く。目の前には、昨日と同じ受付嬢が立っていた。

 

「ジム戦の再戦お願いします」

「はい、対戦相手はいかがいたしましょうか?ジムトレーナーと副ジムリーダーともできますが」

 

 受付嬢は、昨日の敗戦を気遣って対戦相手の変更を勧めてきた。だが、それはお節介であった。セルピルはテーブルに手を置いてはっきりと告げる。

 

「ジムリーダーのハサンさんとの再戦で!」

「か、かしこまりました。会長をお呼びいたしますので、少々お待ちください」

 

 セルピルの気迫に満ちた声に驚いた受付嬢は体を震えさせ、受話器を取り手続きを行う。受付嬢が電話器に向かって何度も頭を下げ、受話器を置くとセルピルを案内した。

 バトルフィールドは昨日と変わらない状態だった。そして、ハサンの服装も昨日と同じ青のツナギで身を包んでいた。セルピルがフェンスを押してフィールドに入り、審判のいるところまで歩み寄る。

 だんだんとハサンの姿が近くなるにつれて、その大きさに委縮してしまいそうになる。元々の大きさもさることながら、惨敗を喫した相手ということもあり一種のトラウマのような鋼の壁が目の前にあるように感じた。

 

「おやま、昨日の今日だというのにまたも私に挑んでくれますとは」

「……昨日とは違いますよハサンさん」

 

 セルピルは静かに、内に抑えていた闘争心をむき出した。ハサンはセルピルのむき出しにした意気込みに細い目の片目が開いた。そして、審判が試合開始の宣言をする。

 

「それでは、挑戦者セルピルとジムリーダーミズナラのジム公式戦を行います!」

 

 セルピルがハサンのごつい手を握る。昨日と相変わらずごつごつと凹凸のある手だった。両者の握手が終わるとセルピルはトレーナーポジションへと入っていく。

 ジム公式戦に則ってハサンが先にポケモンを繰り出す。ボールから出てきたダイノーズがズシンという重い物音を立てると、すぐ周囲にチビノーズを展開させる。一方のセルピルは、ナライを繰り出すと試合が始まる。

 

「ナライ、じしん!!」

 

 ナライが前足で地面を踏みしめると、その小さな体にどこから爆発的な力が出てきたかと思えるほどパワーが地面に伝わり、地面が割れ始める。じしん、それは地面タイプ最強の技であり鋼と岩タイプのダイノーズにとっては致命傷となる物理攻撃だ。昨日の特訓でナライが覚えた技だ。

 地面が割れるほどの衝撃波が石像のように動かないダイノーズに向かって地面を揺るがせ、ついに地面が割れ始めた瞬間。

 

「でんじふゆうです」

 

 ハサンは余裕綽々の様子でダイノーズに命令すると、赤い鼻の先が変色し始めるとダイノーズの体が浮き上がりじしんを回避した。ダイノーズは全身から強い磁力を常時放っていて、ひとたびでんじふゆうを使うと磁力の力で地面から浮き上がり移動するのだ。

 昨日と同じ戦法にやられたセルピル。じしんの勢いならばでんじふゆうの前に倒せると思ったが詰めが甘かった。このダイノーズの地面技封じと限りなく高い耐久力で二体も倒されてしまったのだ。

 ダイノーズはお返しにと三体のチビノーズをナライの元に向かわせると、チビノーズそれぞれの体が一斉に光始め、ラスターカノンが発射された。ナライは光線を一本回避するが、残りの二本の光線を回避できず当たってしまう。

 セルピルはナライを交代させようとモンスターボールを取り出そうとした時、ダイノーズの本体の鼻の下の黒い部分が先ほどよりも()()()()()ことに気が付いた。セルピルは昨日の夜、図鑑で見たダイノーズの記述を思い出す。ダイノーズの鼻の下にあるものは砂鉄で、一番強い磁力がある鼻の部分に吸い付いたものだ。セルピルは少し考えるとハサンに質問した。

 

「ハサンさん、ここのフィールドの土ってどこの土で直しているのですか?」

「鉄鉱石を掘った後の土を再利用しているのですよ。そのまま捨てるのはもったいないですからな」

 

 それを聞いて、セルピルは何かを思いつきナライに技を指示する。

 

「あなをほるよ!」

 

 ナライは言われるがまま穴を掘った。すると、セルピルは時間も経たないうちにナライに命令した。

 

「ナライ、顔を出したあと、また穴を掘って!」

 

 ナライは言われる通り顔を出した後、すぐに地面に潜った。チビノーズ達はナライが顔を出した瞬間を狙って、トライアタックの三色光線をそれぞれのチビノーズ達が発射する。ナライはナックラーとしての習性で、素早く顔を出して再び潜る作業はお手の物で、トライアタックを回避し続けた。

 

「おやま、流石に地面の中では素早いナックラーですな。ですが、地面技は今のダイノーズには効きませんよ」

「ハサンさん。本体の方に何か気付きませんか」

 

 セルピルが指摘した通り、ダイノーズの方に少し異変が起きていた。ダイノーズの鼻の下にあった()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。セルピルの予想だった。砂鉄も重い鉄の一種、そして、フィールドの地面は鉄のもとになる石からとれたところの土から持って来ているならば、砂鉄は豊富にある。そしてナライのあなをほるで土を外に出して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と踏んだのだ。

 ダイノーズの体は、セルピルの読み通り重さに加えて砂鉄で磁力が阻害されて、地面から反発する力が弱まり地面に落ちようとしている。ダイノーズは、磁力を鼻の方に寄せて砂鉄を取ろうとするが、一気に集めすぎたためバランスを崩し顔の方から地面に向かって転倒した。

 そして、地面の中から見えたダイノーズの目に飛び込んだのは、地面に潜っていたナライの姿だった。ナライは、何十倍もの体重もあるダイノーズを持ち前の怪力で持ち上げ地面からたたき出す。その勢いで吹き飛ばされたダイノーズは空中に飛び出すと、重力に従って落下する。

 チビノーズ達が、慌てて本体を守ろうとラスターカノンを乱れ撃ちするがもう遅かった。

 

「いっけー!!とどめのじしん!!」

 

 穴から飛び出したナライはそのままダイノーズに飛び掛かり、ダイノーズの体でじしん攻撃を喰らわせる。本来地面に与えるほどの威力の物をぶつけられたダイノーズは目を伏せってしまい、チビノーズたちが空中から地面に落ちていった。

「やりますねセルピルさん。苦戦した私のダイノーズを一匹も倒されずに破るとは」

 

 ハサンがセルピルに感心してダイノーズをボールに戻すと、すぐに別のポケモンを繰り出した。繰り出したのは、ジムの天井に着くほどの巨体と光り輝く色彩を持つハガネールだった。

 セルピルにとって、ハサンのハガネールは初対戦だ。もし順当にいけば次に出てくるのはあのギギギアルに違いない。難敵であったダイノーズが倒れた今、セルピルは、ナライを続投させて他の温存させようと決めた。

 

「ハガネール、まずはボディパージ」

 

 ハガネールは、周りについていた古い外皮の鋼を外す。ナライは隙を逃さずじしんを起こし、地面の衝撃波がハガネールに襲い掛かる。

 

「飛べぇい!!」

 

 ハガネールは、その巨体に似合わないほどの軽やかさで飛び上がった。ボディパージは体の古く無駄になった体の部分を剥離させて身を軽くさせる技で、ハガネールはその巨体を身軽にさせたのだ。そのまま落下しながら、ナライに向かってかみくだく攻撃を仕掛ける。

 ナライは、すぐさま先ほど掘った穴に潜り回避したが、ハガネールは諦めずそのままナライの掘った穴へ潜っていく。

 一時、身を地面の中に隠したナライが安心したのもつかの間、背後からハガネールがかみくだく攻撃を繰り出そうとナライに噛みついてくる。ナライは逃げようと穴を掘り進めるが、ハガネールはしつこく追いかけていく。ハガネールの目は真っ暗な地中でも見える目を持ちナライが進む方向を読んでいるのだ。

 あまりにもしつこくハガネールが追いかけてくるものだからナライは、地上に退避しようとする。だが、それを逃さずハガネールは速度を速め、アイアンヘッドで追撃する。ナライが地面から出た瞬間、ハガネールの大きな頭から繰り出したアイアンヘッドがぶつかり勢いよく吹っ飛ばされた。

 幸いにも戦闘不能までにはされなかったナライだが、体がひっくり返り重い頭のせいで戻らなくなるのを見てセルピルはナライを交代させた。

 

「昨日のリベンジよ。むーん」

 

 セルピルが次に出したのは、むーんだった。フェアリータイプがあるむーんにとって一度鋼技を喰らったらひとたまりもないが、昨日のリベンジと地面があのハガネールの独壇場となっている今、このむーんが唯一の対抗戦力なのだ。

 

「モンメンですか。厄介ですな一撃で決めさせましょう。アイアンヘッド!!」

 

 ハガネールがむーんに向かって飛び掛かる。すると、むーんの体の綿がどんどんと肥大化し始める。モンメンの特性いたずらごころにより、アイアンヘッドより早く技を出せ攻撃を受け止めた。 

 

「どうですか。むーんのコットンガード。これなら弱点でも大したダメージじゃありません」

 

 コットンガード、自身の綿を最大まで膨らませて防御力を上げて防壁と化す技。これを知ったセルピルは集中的にむーんを鍛えてこの技を習得させた。これによりハガネールはむーんに大ダメージを与えることができなくなった。

「おまけに、()()()()()()()()()()()()()()()()ハサンさん」

 

 セルピルの指摘通り、ジム公式戦のルールでジムリーダーはハガネールを交代させることができず、技による強制交代もできない。物理攻撃しか持たないハガネールをこのまま()()()()()()()()()()

 昨日の敗戦の後に対鋼対策のコットンガードを覚えさせ、しかも対戦ルールにまで戦術に加えるセルピルの行動と巧みさにハサンは汗を流した。

 

「やりますねセルピルさん。ですが、その綿破るまでだ!連続アイアンヘッド!!」

 

 ハサンが吼えた。それに呼応するように、ハガネールは綿に向かって硬化させた極大の頭から放たれるアイアンヘッドを繰り返してぶつける。だが、それがハサンの冷静さを欠いた結果となった。

 すでに、コットンガードの中に仕掛けたものが花開こうとしていた。ハガネールの体にやどりぎのタネが萌え始めていたのだ。それでも、ハガネールはアイアンヘッドを止めない。他の攻撃技が物理系統の地面技しかなく、しかも今のむーんにとってほとんど効果がないためこれしか方法がないのだ。

 だが、それを嘲笑うかのようにむーんは自分の綿の中からあるものを取り出す。それは体力を回復させる持ち物()()()()()だった。昨日、二人が相談して買ってきたポケモンに持たせる持ち物の一つだった。たべのこしとやどりぎのタネのコンボで減った体力をすぐに回復させる戦術なのだ。

 

「さあ、むーん。ギガドレインよ!」

 

 だが、むーんはゆっくりとたべのこしを貪っていた。いつものむーんの悪いところが出て締まらなかったが、もう一度ギガドレインを命令すると、むーんはやっと技を出してくれた。

 やどりぎのタネにギガドレインの追撃にじわりじわりと弱まり始め、ついにアイアンヘッドを止めるとそのまま横倒しになった。審判が確認すると、ハガネールは戦闘不能になっていた。

 

「ご苦労様ですハガネール。素晴らしいですセルピルさん、最初の朝日の洞窟で見かけた時からだいぶ成長しましたね。さぁ最後のポケモンですよ!ギギギアル、セルピルさんのポケモンを倒すのです!!」

 

 ハサンは強めの口調で、昨日敗北を決定づけたギギギアルを繰り出す。セルピルはむーんを戻し、ニチャモを繰り出す。

 

「ほう、ギギギアルの相手までもリターンマッチというわけか」

「そうです。昨日のニチャモとは違いますよ」

 

 審判が試合再開を合図すると、ギギギアルはちびギアの回転速度を上げてギアチェンジをして回転力を上げる。

 

「ワイルドボルト!!」

 

 ちびギアの回転数が跳ね上がると、ギギギアルの体から電気が発生すると、そのままニチャモに向かって体当たりする。ニチャモがギギギアルのワイルドボルトをダメージを喰らいながら受け止めると右腕を上げる。

 

「かわらわり!」

 

 振り下ろされた腕が、ギギギアルの歯車の部分に直撃する。ダゲキに教えてもらったかわらわりがさっそく役に立った。ワイルドボルトの反動と、高い攻撃力を持つかわらわりの攻撃を受けたギギギアルだが、鋼タイプ特有の防御力は伊達ではなく耐えきった。

 

「ギギギアル、そのまま受け止めなさい。ギアソーサー!」

 

 ギギギアルは、ニチャモのかわらわりを受け止めたままちびギアを一匹分離させ、ニチャモの腕を挟むとそのまま回転する。ギアに挟まれたニチャモのもだえ苦しむ叫びがフィールド内に響く。

 

「頑張ってニチャモ、かえんほうしゃよ!」

 

 ニチャモは痛みを食いしばり、口からかえんほうしゃを放ちちびギアにダメージを与えて引きはがす。

 

「やりますね。ではこれはどうです。はかいこうせん!!」

 

 ギギギアルとちびギアが回転を速めると赤いコアがその色を際立せる。昨日ニチャモが倒されたものと同じものだとセルピルは理解した。

 

「ニチャモ、かえんほうしゃで迎え撃って!」

 

 はかいこうせんの準備ができると、ギギギアルのコアから放たれた閃光が飛び出す。同時にニチャモの口からかえんほうしゃが放出してはかいこうせんを向かう撃つ。はかいこうせんとかえんほうしゃが同時にぶつかると、爆煙がフィールド一面に広がり始める。

 ギギギアルは、はかいこうせんの発射の反動でしばらく動けなくなった。だが、爆煙から飛び出た一つの影にハサンとギギギアルは目を開けた。

 ニチャモが大きなダメージもなく動けていたのだ。

 

「なに!?はかいこうせんを封殺したのか!?」

 

 最強威力のはかいこうせんをどうやって封殺したことにハサンは驚いていたが、理由はあった。それは、ニチャモの持ち物であるもくたんだ。もくたんで炎タイプ技のかえんほうしゃの威力を向上させはかいこうせんを封殺できたのだ。

 

「かえんほうしゃ!!」

 

 ニチャモがとどめのかえんほうしゃをギギギアルに浴びせ続け、ギギギアルの体は真っ赤に燃え始める。

 ニチャモは様子をうかがいながら、まだギギギアルが動くならとすぐにでもかわらわりの準備をする。だが、雌雄は決した。火が鎮火するともうギギギアルのコアは白くなりギアも止まっていたのだ。

 

「いや、お見事ですな。セルピルさん」

 

 ハサンが元の物腰柔らかな口調に戻り、拍手をしてセルピルを褒め称えた。そして、セルピルに近寄り手に持っていたものを渡した。

 

「デミルジム攻略の証のメタルバッジですよ」

 

 昨日の敗戦から乗り越えて勝ち取ったバッジに、セルピルは思わず飛び跳ねてしまうほど喜びを爆発させる。

 その様子を見てハサンはうんうんと微笑ましげに見ていると、横からジムトレーナーらしき人がハサンの耳元で何か報告した。報告を受けたハサンはセルピルを呼ぶ。

 

「セルピルさん、次のカリチィンシティのジムが緊急事態でジムトレーナーともども不在だそうです」

 

 それを聞いたセルピルは動きを止め、なんてことだと不服に感じた。ファトゥラシティだけでなくカリチィンシティまでもジム戦ができないなんてとジムとして大丈夫なのかと思ったが、連絡があっただけましだと自分を宥めさせた。

 

「そういうわけですから、しばらくデミルシティで待っててください。幸いデミルシティは、ジムトレーナーだけでなく発散がてらにポケモンバトルを申し込んでくる人たちがいっぱいいますのでよい特訓になりますよ。それにセルピルさんに次のジムに行く前に渡したいものがありますし」

 

 セルピルは、昨日ユタが言づけしたことはこのことなのかと思い出していた。

 

「渡したいものって何ですか?」

「それはお楽しみです。すぐに取りに参りますので少しだけ待っててくれますか」

 

 ハサンが関係者専用扉に入って出ていくと、セルピルも昨日言われた通りジムの横脇へと向かった。

 

 ジムの横脇は、人の往来もなく寂しげだった。一本のわき道の建物の壁にクーラーの室外機があるだけで、しかもそれが稼働しているから表よりも暑く感じる。加えて雨が降り始めて湿気てきて蒸し暑く、セルピルは早く来ないかなとシャツを扇ぎながら待っていた。

 別にこんな蒸し暑いところを待ち合わせの場所にしなくてもジムの中で渡せばいいのにと不機嫌にしていた時に、ポケナビツーが鳴った。電話の主はセロだった。

 

『セルピル。ジム戦どうだった?』

「昨日の借りを返したわ。一匹も倒されずにメタルバッジゲットしたわ」

 

 それを聞いたセロは、電話の向こうでもわかるほどの喜びの声を上げた。

 

『凄い!やっぱりセルピルは凄いや。僕もこうしちゃいられない。すぐにジムに向かうから待っててね』

 

 セルピルが修行の経過などを心配する暇もなく、セロは勢いよく電話を切った。相変わらず威勢と元気がいいのだからと思ったセルピルだが、セロならきっと勝つとどこかで思ってしまっていた。やはり、旅に出て初めて戦った時から一番多く戦っている相手であり、今日までずっと一緒にいた友達という相手だからか、セロを心のどこかで信じていた。

 思えばセロの元気にセルピルは前へ進めることができたと思い返した。ヴァディタウンで幽霊に怖がっていた時真っ先に手をつないでくれた時、岩の旧市街の時などピンチがあったが、セロがすぐに駆けつけてきた。セルピルにとって彼は、すでに気を許した友達であり負けられないライバルの関係になっていた。

 いよいよバッジは三つ目、次のジムがあるカリチィンシティはすぐ近くの川を上ったところにあり、鉄道でファトゥラシティへ戻ることができるが、ハサンさんから言われた通り、すぐにジム戦ができないので時間をつぶす必要がある。

 

「しょうがない。タッシーマシティまで一緒に行っちゃおうか」

 

 もともとカリチィンシティから先は全くの未定であり、悩む時間もなくセルピルは答えを紡いだ。セロは、タッシーマシティを初めて訪れると思うからジムの場所がわからないと予想し、案内がてら応援したい気持ちと、ずっと同じ町に留まり続けると自分を探している両親に見つかってしまうリスクの回避も兼ねての考えであった。

 そういえばレイは今頃どうしているだろうかとセルピルが、ポケナビツーの履歴からレイに電話をかけようと画面に指を押そうとする。

 突然、セルピルの体に一瞬全身をはじけるような痛みが貫いた。ショックに体への負担が耐え切れずセルピルは気絶しうつ伏せに倒れてしまう。

 

 セルピルにでんきショックを浴びせたレアコイルは、ゆっくりと主人の元へと戻っていく。その主人セルピルが動かないことを確認すると、どこかに電話をかけ始めた。

 

「はい、気絶させました。手はずどおりにいたしますので、教化の方は本部の方でお願いしております。前回のような失態はいたしません。()()()()()()()

 

 主人は電話が切られる音を確認すると、蔑むような目でセルピルを見下す。

 

「まったく、こんなにあっさり引っ掛かるとは所詮は子供。まあまさか勝つとは思わなかったけどな。私の、教団への機嫌を直すためだ悪く思わないでくれ、セルピルちゃん」

 

 そこには雨に降られて、顔に雫が落ちても微動だにしないユタの姿がそこにあった。




君は知るだろう
本当の悲劇は絶望によって生まれるのではないことを
希望の中から叩き落されることこそ悲劇だということを
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