ポケットモンスター ノース・サウス   作:wisterina

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第三十五話『セルピルはどこ?』

 夜のデミルシティは昼間と異なり静かだった。工業地帯の方は夜も稼働している工場があるが、道路の側線にある街灯といくつかの建物の灯りがあるだけで暗闇に近く、一つ一つの操業している工場の異なる音が聞こえるほど静かだった。

 その工業地帯でセロは町中を走っていた。工場の出入り口を覗いては隣の操業している工場にも覗いては引っ込むの繰り返しをしていた。それ見かけた作業員がセロに怒ったが、それでも彼は止めなかった。

 デミルジムで勝利した後、セロはセルピルを探し回っていたのだ。セロは先にポケモンセンターに戻っているのかと思ったがセルピルが戻った様子もなくセロは一雨降った町中を靴がずぶ濡れになるまで走り回っていた。

 それを繰り返しているうちに誰かにぶつかってしまい謝ると、その人物はジムリーダーのハサンだった。

 

「セロ君ではないですか。セルピルちゃんは見つかったのですか?」

 

 セロは首を横に振った。ハサンも三つのジムを突破したセルピルに渡す道具を渡すために一度奥に引っ込み、戻ってみるとセルピルの姿がなくセロのジム戦を終えた後同じく探し回っていた。

 

「そうですか。連絡もつかないのですか?」

「うん。ポケナビツーで何度も電話してもセルピル全く出なくて。昼前にはちゃんと出たんですよ、完勝して終わった後って言ってたから」

 

 それ以降全く連絡が取れないあたり、もしや何か事件に巻き込まれた可能性が高まる。ポケモン誘拐事件か、あるいはセルピルがフリーの怪しい動きを目撃したかと考えるだけでセロは悪寒がしてきた。

 ハサンは、ポケナビツーを見て少し貸してくれないかと頼み、セロはハサンにそれを渡した。

 

「セロ君。ポケナビツーでセルピルちゃんと電話交換をしたとき、他にも何か登録したかい?」

「うん。たしか、GPSによるお互いのポケナビツーの位置の把握ってメッセージがあったからとりあえず押したけど」

「なら、これでセルピルちゃんの場所がわかりますな。ポケナビツー同士が位置情報システムを交換すれば、お互いのポケナビツーの位置がわかりますので」

 

 それを知ってセロは、ようやくセルピルの居場所が見つかるのだと安心した。そしてハサンがポケナビツーを操作してセルピルの位置情報を見ると、ハサンの顔が見る見るうちに変化し顔をしかめた。

 気になったセロは、一気に不安になりハサンに声をかけた。

 

「ハサンさん?どうしたんですか?」

「……どういうことだ。これはいったい」

 

 ハサンは、セロの声に気付かず手が震えだして深刻そうな顔をする。そして、ハサンは自分の携帯電話を取り出し、どこかに電話を掛けるとすぐに走り出した。

 

「セロ君!ポケナビツーを借りていくよ」

「ま、待ってよ!?何があったの?セルピルはどこにいるの!?何か僕に手伝えることは!」

「駄目だ!!これは一般人の手に負える案件ではない!すぐにポケモンセンターに戻りなさい!!」

 

 その時のハサンの顔は、いつもの物腰柔らかな顔でもジム戦の時の興奮したものでもない、何か鬼気迫る状況にあったかのように目がカッと目開きセロを睨んでいた。そして、ハサンはそのままポケナビツーを持って行ったまま暗闇へと消えていった。

 一人取り残されたセロは、自分が何もできない無力感と何も教えてくれないハサンへのやり場のない怒りを電柱にぶつけた。

 

「どうして、どうして教えてくれないの。どう見ても、セルピルが危ない目にあっているはずなのに、なんで教えてくれないんだよ……ちくしょー!!」

 

 セロの怒声が工業地帯に響くが、その悔しさを慰める者は誰もいなかった。

 

 

 

 一方ファトゥラシティのカタス社の情報処理第二課にいたヘレネとポルックは、画面に映っている一つの点を見て訝しんでいた。ヘレネは、職員に画面にあるそれを指しながら疑問を呈した。

 

「おかしいです。GPSの故障ではないのですか」

「そんなはずはありません。自分も何度もバクかなと何度もデバック作業しましたが、やはりこれが正しい情報のようで」

 

 職員は、説明をしたがその方面の知識に疎い二人には理解できなかった。しかし、もっと理解しがたいことが目の前にある。セルピルの持っているはずのポケナビツーの位置を示す点がデミルシティではなく、タッシーマシティのすぐ近くの海の上にポツンと浮かんでいたのだ。

 

「何か事件に巻き込まれているのではないのでしょうか?」

 

 職員が何気なく放った言葉にポルックが横を向いたときにはすでにヘレネの姿がなかった。

 

「あれ、ヘレネちゃんは?」

「……!もう一度、ポケナビツーの位置の確認と情報を送ってください。失礼します」

 

 そう言い残すと、ポルックも職員の前から消えていった。職員たちは、黒服部隊にいつも驚かされているが、特にあの二人の姿を消す様はさながら忍者のようだったといつも話のタネになっているのだ。

 さて、そのポルックであるが、ヘレネを追いかけるために会社内部に張り巡らされている通気口兼黒服部隊専用口の中を通っていた。機密部隊である黒服部隊のほとんどは十代前半の若年層で構成されていて、機密の維持と大人で構成されている警察関係に入ってこれないようにこの内部を通って社内を移動している。

 ポルックは通期口内を這いずりながら耳を澄ませて、ヘレネがいる場所を探し当てようとする。すると、次の角の方でダクトが外れるような音が聞こえ、ポルックはその角を曲がり進んでいく。

 予想通り、ダクトがなくなっていてまもなく誰かがそれを塞ごうとしていた。

 

「ヘレネ、待つのです!」

 

 ポルックの声が通気口の風と共に外に送られると、外にいる人物はぴくッと手を止めた。その瞬間をついてポルックは外に出ると、外にいた人物を捕まえた。ポルックの予想通り、その人物はヘレネだった。

 

「ヘレネ、何を慌てているのですか!?セルピルは、もう我々と何も関係ないではないですか!」

 

 誰もいない電気もついていない会議室で、ヘレネの胸倉をつかんで喚くポルックの声が反響する。

 

「ですが、一度監視対象となった者が再び怪しい動きをしているからには調査をしなければ」

「嘘です。ヘレネは嘘をついているのです。()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 ヘレネは、この会議室で一度もポルックから目を背けていた。いつも一緒にいるからわかることだった。そして、ヘレネが隠密としてあるまじき感情が生まれていたのに気付いた。

 それは、『()』だ。それを許しているのは、ボスとポケモンと彼ら二人のみだけだ。ではなにが、ヘレネがセルピルへの情を動かしたのだろうかと思考を巡らせると、一番セルピルと接触したのはヴァディタウンの時だ。

 帰りの列車の切符を譲ってもらったことだろうか、いやそれはただラッキーだと感じていただけだ。パンケーキを食べたことも違う。礼拝堂の時も違う。だとしたら、ポケモンバトルの時だと思った。

 確かに、あの時は自分もヘレネもセロの挑発に触発され、変装を忘れて素のまま本気を出していた。まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に心を動かされたのかと驚愕した。だが、どれだけ原因を探ってもヘレネは口を割らないのをポルックは知っていた。

 ポルックは、情について何も問わずに、セルピルのことだけを話す。

 

「フリー本部がセルピルを誘拐したというのですか?確かに一時監視対象でしたし、岩の旧市街での調査を邪魔されました。ですが、そこまでする必要があるのですか?いったい何の利益があるというのですか」

「わからないのです。フリーがやった証拠もありません。ですが。ですが」

 

 ヘレネは感情を震わせていた。こんなにポルック以外の一人の人物に本当の感情を表したのは初めてだった。唯一の親族が打ちひしがれているのを見ていられず、ポルックは覚悟を決めた。

 

「わかったのです。我々はいつでも一緒です。それに、孤児であった我々を拾ってくれましたのはフリーではなく、ボスなのです」

「ポルック、流石我が弟なのです!!」

 

 ヘレネは、むき出しの感情のままポルックに抱き着いた。ポルックは、慣れた手つきでヘレネの頭をさする。

 

「わがままな妹を支えるのも兄の役目なのです」

 

 二人はいつものように兄姉問答を交えながら支え合うと、ポルックの持っている端末から小さな電子音がなり確認すると、セルピルがどこへ向かうのかの予測ルートが書かれた図面が浮かび上がっていた。

 

「行きますよポルック。監視再開です」

「ええ、行きますよヘレネ。目的地は」

 

 二人は同じタイミングで同時に同じ目的地の場所の名称を放つ。それは、双子の生まれた地であり、フリーの本部がある場所にして、アニヤ地方より北西の所にある場所。

 

「「オリント地方です」」




今話で第二章は終わりです。
次章からは、隣の地方オリント地方編となります。
物語は半分を折り返し、伏線を回収する章となります。
更新ペースはいつも通りに、されど内容も描写もより一層濃くしていきますのでお楽しみに。
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