ポケットモンスター ノース・サウス   作:wisterina

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第四話『アイスの町ブッスシティ』

「お待たせしました。お預かりしましたポケモンは、みんな元気になりましたよ」

「ありがとうございます。ジョーイさん」

 ブッスシティの大通りに面している赤い屋根のポケモンセンターにて、白衣のジョーイさんから治療を受けたポケモンを受け取った。セルピルは、状態の確認をするためモンスターボールからポケモンを出した。

 ボールから出てきたコラッタは、体を一回ブルリと震えさせてポケモンセンターに入る前よりも元気な姿になっていた。セルピルは、傷の確認をするためにコラッタを抱きかかえた。

「うん。やけども傷もすっかり消えている。よかった~」

「あなたのコラッタ元気になってよかったですね」

「ううん。この子私のポケモンじゃないの。私の……クラスメイトのポケモンなんです」

 ジョーイさんへの返答にセルピルは、セロを友達と言わなかった。セロは、たまたまバトルしたクラスメイトという認識であるのだ。

「そうだ、ジョーイさん。ここでポケモントレーナーの申請とジムの挑戦の申請できますか?」

「ジムの申請もですか。珍しいわね。では、書類と学生証はお持ちですか?」

 珍しいという発言は、ブッスシティの立地に関係している。というのも、ラーレタウンやブッスシティは、周囲が山に囲まれアニヤ地方の南端に位置していることもありジムがある街からいずれも遠くこのあたりでジム挑戦の申請をする人はごくまれであったのだ。

 しかしセルピルには、そんなことに関心を持たなかった。ジョーイさんに書類と学生証を渡して、じっと書類の確認をされるとセルピルは、申請が拒否されたらどうしようと心臓の鼓動が大きくなるのが聞こえるほどドキドキしていた。今のセルピルは親が一切関知していない書類が通ってくれることを祈っていた。

「はい結構ですよ。それではトレーナーカードと証明書の発行をいたしますので少々お待ちください」

 ジョーイさんが書類を持って奥に入っていくのを見ると、セルピルはホッとし、ふらふらとポケモンセンターに置かれているチラシ置き場に移動した。

「せっかくブッスシティに立ち寄るんだからセロ君が来るまでに新しいアイス屋さんの情報探しておこっと。ブッスシティといえばアイス屋だよね」

 ブッスシティは、ラーレタウンにはない商業ビルや商店が多くあり、特に大型商業施設のブッスモールが目玉である。また、ブッスシティは川魚が豊富で加えて港町ラーレタウンに近いだけあり魚を保存する冷凍技術に長けていることもあり、それを応用したアイス屋がアニヤ地方で最も多い街でもある。

「う~ん。やっぱ夏だから新メニューやお店の情報があるなぁ。迷っちゃう。ブッスモールでアイス屋やめぐりもいいけど時間がかかるしねぇ」

 チラシを何枚も物色していると、ジョーイさんがセルピルを呼んだ。

「セルピルさんすみません。今ポケモンの治療でセンターが混雑していまして、手続きにもう少し時間がかかりそうなの」

 周りを見ると、セルピルがポケモンセンターに入る前よりも人の数を多くなっている。

「わかりました。私ブッスモールで時間をつぶしてきます。もしセロっていう男の子が着たら、私がブッスモールにいることを伝えてください。治療してもらったコラッタその子のなんです」

「はい。わかりました」

 

 

 夏休みということもあってブッスモールは、家族連れが多く広いモールの通路を子供達が走り回る姿が見られる。ブッスモールは、三階建てのビルに百以上の店が集まり日用品から家具・ポケモン関連の用品までそろい、食事もできると一日をそこで過ごせるほどの施設で二階と三階の中央が吹き抜けとなっていて、下の階の様子が見える構造になっている。

 ブッスモールは、迷惑にならない程度の大きさなら一匹までボールから外に出して一緒に買い物ができるため、イワンを一緒に連れている。セルピルも何度もここに家族や友達と行ってるためどこに何があるかを把握している。

 エスカレータを上がりブッスモールの入り口に入ったセルピルは、さっそくフードコート……ではなく、旅の用品店へ入っていった。イワンは、アイス屋に行くんじゃないのと言いたげに首をかしげた。

「イワン、アイスを食べるのはオマケなの。ここに入ったのは、足りない旅の装備の買い足しにきたの。寝袋お母さんに取り上げられたからね」

 それを聞いても、イワンはまだ理解できてなかった。イワンの頭の中では、セルピルはスヨルタウンまで行くものだと思っていたのだ。レジで支払いを終えると、イワンを手招きして呼び今度こそフードコートへと歩き出した。

 フードコートにつくと、席はほぼ満杯で売り場もすべて行列ができるほど混雑していた。

 セルピルは、人ごみを避けてアイス屋の行列に並び、冷凍庫のショーケースにあるきのみやチョコレートで青や黄緑・チョコレート色と色とりどりのアイスを品定めた。一番端にはアニヤ地方名物の伸びるアイスも店員がアイスを伸ばしながら販売していた。ショーケースの一番端に新商品というシールが張られた赤と黄緑が混ざり合あったアイスを見つけた。プレートの注意書きに『辛!』と書かれより一層セルピルの興味がわいた。

「すみません。このマトマとオボンの刺激アイスとオレン味ポケモン用のアイスを下さい」

「はい、かしこまりました。マトマとオボンの刺激アイスは本当に辛いので十分に水の用意をしてください」

 笑顔で注文を受けたまわると、定員さんがディッシャーで冷凍庫に入っているアイスをすくい、それをカップに注文のアイスを受け取ろうとしたその時、フードコート全体に響くほどのキーンとなるマイク音が聞こえた。

「お集まりの紳士・淑女の皆様こんにちは!」

 フードコートにいた全員が拡声器で響いてきた女性の声の方に振り向いた。セルピルは、店側のサプライズかなにかと思ったが、店員の方も聞かされていなかったのか突然の事で呆けいていた。振り向いてみると、白の服で統一された六人の集団がフードコートの入り口付近で横一列に整列していた。

 その中で真ん中の拡声器を持った女性がひときわ目立つ格好であった。色はその集団と同じ白で左腕に腕章をつけているが、つり上がった眼鏡をかけ、白のシャツに羽織ってる上のジャケットの襟元には羽が装飾されてよく見ればラメも入っていると下の何の変哲もないスーツスカートが逆に異彩を放って見える。

「わたくし、ステンノーと申します。両翼におられますこの者達はわたし達の同翼『フリー』の一員でございます」

 拡声器でキンキンとしながらさらに輪をかけてキンキン声の高音を出しているステンノーの声にフードコートにいた人たちの大半がうんざりしていた。

「わたし達フリーは、ポケモンを愛し人を愛すし、両者の関係を守護する団体でございます」

 ステンノーが団体の成り立ちや構成など長々としたつまらない前口上が始まり、楽しみを壊されたセルピルは買ったアイスを持ってフードコートから出ようとした。

「あっら!? そこのお嬢さん。とてもかわいらしいイワンコをお連れしていますねぇ」

 ステンノーがこちらを振り向いたとき、狙われたと苦虫をつぶした顔をした。ステンノーがセルピルのほうへ近づき、イワンを何も言わずに抱き上げた。その態度を見て、なんて自分勝手なとイライラが積もり積もる。

「あっら大人しいイワンコちゃんですね」

 イワンは、嫌がっている様子を見せているのにステンノーは気づいていないのか自分のほうからイワンに頬ずりした。

「あっら! そのアイスイワンコちゃんのですか? ちょっと食べさせてもいい?」

 セルピルの了承も得ずに、セルピルからアイスを取り上げた。しかし、セルピルは気づいた。ステンノーが取り上げたのはオレン味のアイスでなくマトマとオボンの辛いアイスだった。イワンは辛いマトマが苦手だ。一口でも食べたらイワンは辛さで大暴れしてしまう。

 ステンノーが「あ~ん」という撫で声を出してイワンにそれを食べさせようとその時、セルピルがステンノーの持っていたアイスカップを払いのけた。カップは宙を一回転して飛びステンノーの口の中へと飛びこんだ。

「か!かっらーい!!」

 フードコートだけでなくモール全体にまで響くほどの甲高い声が悲鳴と叫びをもって広がった。ゴニョニョのさわぐと間違うようなそれを聞きつけた警備員が六人ほどフードコートに集まった。

「誰かゴニョニョにさわぐを使いましたか?!」

「警備員さん。この人達が無許可で宣伝活動して迷惑していたんです。さっきも叫び声は、あの女性が叫んだものなんです」

 警備員が叫び声の発生源を探していると、近くにいた店員がフリーの団員を指差した。一方フリーの団員達は、マトマとオボンのアイスの辛さで唇が真っ赤に変色したステンノーに大量の水を飲ませて介抱していた。周囲の目が冷ややかなのもお構いなく給水所から水を汲んでは飲ませを繰り返していた。

「は! っひ! あっら! 水おっもい!」

「あんた達何やっているんだ。ちょっと事務所まで来なさい!」

 警備員がフリーの団員を連行しようとしている隙に、セルピルとイワンはこっそりとフードコートを抜け出した。アイスは、イワンのものだけになりしかも一部が溶けかけて液体になりかけていた。

「ごめんねイワン。私がちゃんと守れなかったからいやな思いさせて。はいアイス全部溶けないうちに食べて」

「クワン」

 セルピルが差し出したアイスを、イワンは鼻でつき帰した。イワンは、アイスがなくなったセルピルに譲ろうとしたのだ。

「これは、イワンのだし、ポケモン用に作られているから私は食べられないよ」

 イワンは、セルピルの言うとおりにして再び差し出されたアイスをなめ始めた。

「セルピル~」

 通路の向こう側から、ややのんびりとした口調でセルピルを呼ぶ声が聞こえた。顔を上げると、セロが人混みを掻き分けて自分の所在を手を振りながらアピールして近づいてきていた。セルピルは、すぐさまボールを取り出し、そこから預かったコラッタを出した。

「コラッタ! 傷もやけどもない。元気になってよかった。ありがとうセルピル」

「お礼なんて、私がバトルでやけどを負わせたんだから」

「そうそう、ジョーイさんにセルピルに渡してほしいってこれ預かってたんだ」

 セロは、モンスターボールのマークが入った封筒を渡した。セルピルは、まずいと思った。これは間違いなくジムに挑戦する資料が入っている。おそらくジョーイさんが知り合いだからと渡してしまったのだろう。このことがセロにばれてしまったら両親に伝わってしまう。そう思ってセルピルは、まだアイスをなめているイワンを器用にカップごと抱えて一目散に走り出した。

「あ、ありがとうセロ君。じゃあ、私急ぐから!」

 通りいく人々を掻き分けくだりのエスカレータを駆け下りて、モールから出た。セルピルは、呼吸を整えてイワンをおろし、封筒の中身を確認すると、ポケモントレーナーの証であるトレーナーカードとジム挑戦の証明書とバッジケースが入っていた。太陽の光で七色に輝くバッジケースを今までの日常から旅立つ切符を手にしたかのようにしげしげと見とれた。

「いよいよだ。私の旅はこれから始まるんだ」

 

 

 一方で、全速力で走っていったセルピルを尻目にセロは、コラッタを腕に抱きかかえて唖然としていった。それは、セルピルの足の速さに呆然としていたわけではなかった。

「いっがいだな。セルピルがジムめぐりだなんて……ということはセルピルが」

 セロは、指で数回あごを摩るとしばらく目を閉じてその場で立ち止まった。そして、よしっといった後モールから出て急いでポケモンセンターに入っていった。

 戦いの期限まで後、五十四日。

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