ポケットモンスター ノース・サウス   作:wisterina

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第四十七話『脱出 フリーの秘密基地』

 基地の通路を逃げ回るセルピルたち、部屋に隠れるよりもこうやって脱出口を見つけるまで逃げ回る方が最善だと考えたが、次々と異変に気付いた団員たちがセルピル一行の前に現れ妨害をしてくる。

 

「シャドーボール」

「だくりゅう!」

「レレイ!!」

 

 ギルガルドが、ラグラージが、そしてエレキッドがそれぞれ攻撃をして道を切り開く。だが、追いかけるメデューサとフリーの団員達は後ろから反撃できないセルピルを狙いすまして攻撃してくる。

 

「全軍、あいつに向かって攻撃!サイコキネシス!」

 

 あの清らかな声はどこへ行ったかと思えるほどの乱雑な声を振りまくメデューサは、それに違わないほどの卑劣な戦術を採る。

 

「ギルガルド、キングシールド。シールドフォルムチェンジ。セルピルを守れ」

 

 カラマネロのサイコキネシスをギルガルドは楯を前に出すシールドフォルムにチェンジしてセルピルを攻撃から守る。

 

「ありがとう、アレクサンダー、ギルガルド」

 

 だが、アレクサンダーは返事を返してこなかった。見ると、前の方でアレクサンダーはサーナイトまで繰り出しているという状況だった。そこまで手が回らない状況に陥っていたのだ。

 

「ちっ、黒服部隊!?」

 

 テオドールが舌打ちをするの見て前を向くと、そこには仮面をかぶったセルピルよりも背の低い二人の黒服を着たフリーの団員が通路を塞いでいた。

 

「おお、どこの黒服か知らないけれど、お前たちその者たちを捕えなさい」

 

 メデューサが歓喜の声を上げて、セルピルたちの前にいる黒服部隊に命令する。そして目の前の二人は同時にラグラージやサーナイトたちを飛び越え、セルピルの方へと飛んでいく。ギルガルドがブレードフォルムに変形して抑え込もうとするが、ギルガルドの攻撃を黒服部隊の二人はするりとかわしてギルガルドの間を抜けていく。

 

「ザングース」

「ハブネーク」

 

 その二体のポケモンを繰り出したときセルピルがこの黒服の団員は岩の旧市街で見たあの二人だと気づいた。黒服部隊のポケモン二体がセルピルの真横に降り立つと、()()()()()()()()()追ってくるカラマネロとグラエナたちに飛び掛かった。

 

「きりさくです」

「ポイズンテールです」

 

 二匹の宿敵であるはずのポケモンは息ぴったりに互いに争わず、目の前のグラエナや団員たちを倒していく。

 

「ど、どうして?」

「早く行くのです。捕まりたいのですか」

「とっとと行くのです。ずっとここに留まるつもりなのですか」

 

 目の前の黒服の二人は淡々とした声でセルピルに命令する。言われるがまま、セルピルは足を前に運ぼうとする。すると、倒れて帽子で素顔が隠れていたとある団員の顔を見てセルピルは体が止まった。

 

「何をしているのですか!早く行くのです!」

「う、うん」

 

 女声の黒服にけしかけられてセルピルたちは先へと進んでいく。

 

「な、なぜ、なぜ!!あなたたちはフリーの部隊でしょうが!!なぜ味方に攻撃をするのですか!!裏切者め!!」

 

 メデューサは、キーっと金切り声を上げて裏切者と罵るが、二人は仮面の上からでもわかるほど全くといって動揺している気配はなかった。

 

「勘違いしないでほしいです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのです」

「それに、()()()()()()()()()()()!!」

 

 

 

 セルピルは走りながら先ほど見えた団員の顔を思い出していた。間違いなかった。あの団員は、劇場でセルピルを罵倒した人だった。それがフリーの団員にいたということは、あの一斉の罵倒や批判は()()()()()()。セルピルを追い込むためにフリーが差し向けた役者だったのだ。

 もしそうならばと、セルピルはボールを取り出して今なら投げられるかと思った。確かに前よりも二重に見える様子は減っていて幻聴も聞こえていなかったものの、前のように投げれる状態ではなかった。だが、それでも自分が改善の方向に向かっているということが実感できていた。

 いつの間にか通路を抜けると、そこには様々な機械類が置いてある場所だった。そしてまたしても団員がいて、おまけにあのゴドー司教が三度セルピルたちと出くわしてしまった。

 

「また貴公らか!!断罪してくれる!!」

 

 ゴドー司教の目にセルピル一行の姿が映ると、雄たけびを上げてチャーレムとコジョンドを繰り出して迎撃をする。他の団員達もゴドー司教に続いてポケモンを繰り出し、アレクサンダーとテオドールのポケモンに襲い掛かる。

 

「お前は隠れてろ!」

「セルピルを守る」

 

 一斉に飛び掛かられた一行であるが、二人のポケモンたちは手際よく初動をさばき反撃を開始する。

 先手でラグラージがだくりゅうでフリーの団員ごと押し流し後続の攻撃を絶とうとする。ゴドー司教のコジョンドがその身軽さを活かした技とびはねるでサーナイトに襲い掛かるも、サーナイトはコジョンドが落ちてくる位置をみらいよちし、コジョンドはみらいよちの攻撃を受けてしまった。ギルガルドの方は、チャーレムのほのおのパンチを自慢の楯で防ぎながらシャドーボールを放ち、自身の剣の攻撃範囲まで距離を詰めるという大混戦を繰り広げていた。

 エレキッドも混戦する中をかいくぐってフリーのポケモンに向かって電撃を浴びせる。それを見た団員の一人が他の団員たちに伝える。

 

「あの邪魔なエレキッドを押さえつけろ!近づけさせるな!」

 

 団員たちの半数はエレキッドの方に攻撃を向けさせ、フリーの集中砲火がエレキッドに襲い掛かり、エレキッドは逃げ惑う。

 セルピルが物陰で隠れて見ると戦況は拮抗しているように見えるが、アレクサンダーとテオドールのポケモンたちは今まで連戦続きであるため疲労が見え始めている。すると、エレキッドを狙うように命令した団員のみが戦闘に参加せず、自分のポケモンと共に機械の方に下がらせ背後の機械のようなものを守っていた。

 あの機械がアキレス腱となっているのは明らかだった。だがテオドールもアレクサンダーも自分のことで手がいっぱいになっている。自分がポケモンを出せていれば、自分がポケモンに指示を出せれば、みんなを助けられるのにと思わずにいられず、自分が何もできないことにもどかしさを感じていた。

 エレキッドが、攻撃を避けのに精一杯で右往左往してあらぬところへと電撃を飛ばしているのを見てられずにいた。けど自分は何も指示も命令も出せない。ならせめてエレキッドを呼びかけてこっちに避難させるべきかと声を上げる。

 

「エレキッド!」

 

 その時、()()()()()()()()()()()()()()()()。あの動悸が衝動が全くと言っていいほど起きなかったのだ。セルピルはもしやと思い、息を吸ってエレキッドに言霊を放つ。

 

「…………エレキッド、あの機械に向かってエレキボール!」

「レイ!?レレレレレレキッド―!!」

 

 エレキッドはセルピルが命令を下したことに驚き、そしてその喜びを溢れさせ腕を今までにないほどグルグルと回転させ始める。するとどうだろうか、角から放出される電気が体中に帯電し始め、エレキッドの体は見る見るうちに大きくなっていく。

 

「エッレブー!!」

 

 エレキッドがエレブーに進化をとげ、進化により何倍もの威力に跳ね上がったエレキボールが機械に向かって放たれる。機械の前に立っておいたフリーのポケモンたちは防ぐことも避けることもままならず直撃を受けてしまった。

 黄色い閃光が一瞬あたりを覆うと、耳をつんざく爆音が後になって届き続いて衝撃波が到着してセルピルはその勢いにのまれていく。爆裂が収まりセルピルが顔を上げてみると、敵も味方も先ほどの爆裂に巻き込まれて休戦状態になっていた。そして爆発をさせたエレブーは、エレキッドの時と変わらず勝ち誇った表情で腕を上げてポーズをとっていた。

 

「やりすぎよエレブー。ふふ、あははは!」

 

 自分に纏わりついていたものが先ほどの爆発できれいに落ちたかのように、久方ぶりにセルピルは大きな口で笑った。それに合わせてエレブーも同じく大きな口で笑い始める。

 

「セルピル!治ったの?さっきエレキッドに、ううんエレブーに技を言ったよね!」

「うん。多分、治ったと思う」

 

 先ほどの爆風で所々煤がついているアレクサンダーが真っ先にセルピルに声をかけて、治ったことを喜びセルピルの体を抱きしめた。本日で二回目であるが、今回は自分が冷静であるため急に抱ついてくるアレクサンダーに驚きと恥ずかしさに心臓がどぎまぎしていた。

 さすがに敵地で呑気に抱き合っている二人にテオドールが激怒したので、すぐにアレクサンダーはセルピルから離れた。

 すると、ゴドー司教が腕の力だけで体を引きずりセルピルの下へと這いずってきた。ゴドー司教は、先ほどの爆風で髪がまた乱れその白い服が煤で真っ黒になり白い部分がどこにあるのかわからなくなっていた。

 

「また貴公は、ポケモンを操り支配するのか。バトルという人間が作り出した己の娯楽のための争いの場にポケモンを捕まえ命令するなど愚かだとは思わぬのか!?」

「エレキッドは、ううん。エレブーは私のポケモンじゃない。なぜか私についてくる()()()()()()()()。ずっと今までこの子は自分の意志で電撃を放っていたのよ」

 

 それを言うと、ゴドー司教は怒り狂うと予想していたが返ってきた反応は意外なものであった。まるで自分の信じている者に裏切られたかのような表情で、目を大きく見開き口が開いた状態になっていた。

 

「馬鹿な……あり得ぬ!?ポケモンが自ら、戦いを望むなど!!おまけに野生のポケモンが持ち主でない人間の、それも卑しきバトルの命令を聞くなど!!」

「本当よ。でなきゃこの子もこの基地に入る前にモンスターボールに入れていたわ」

 

 セルピルがゴドー司教にそう告げると、急いでその部屋から立ち去る。

 

 

 

 部屋から出て再び通路を走り始める一行。だが先ほどと様子が異なり、電灯が消えていたりドアが中途半端なところで開いたり、扉が開いたり閉じたりしている状態になっているのがあちこち見られた。

 先ほどの電撃で基地内の電気がショートを起こし機械が誤作動が起きていた。あちこちで団員たちが何が起こったのかわからない様子で、時たまに未だに団員服を着ているセルピルたちを見てどうなっているのだとろくに確かめようともしないこともあり基地内の混乱具合が露呈されていた。

 

「どうやら、さっきの電撃で施設がショートしたらしいな。この混乱に乗じて脱出を」

「テオちゃん?」

 

 通路の角を曲がろうとした時、背後から女性が誰かを呼んだ。それに真っ先に反応したのはテオドールだった。顔がばれないように帽子を深くかぶっていたテオドールが急にそれを脱ぎ捨て、女性の方へと駆け寄り抱き着いた。

 

「母さん!!」

 

 テオドールが抱き着いたのは、彼の母親であるソフィであった。テオドールは今まで見せていた厳つい目が消え、トレーナースクールにあったあの写真の子供のような表情で母親に泣きじゃくっていた。ソフィは泣きつき息子の頭にいくつもの痣ができている手を添えて抱擁する。

 

「ごめんね。一人にさせて、大丈夫だった?」

「それはこっちのセリフだよ!けど、母さんが助かってよかった。本当に、本当に……どこに母さんがいるのかずっと探していたのにわからなくて……」

「閉じ込められていた部屋の扉が急に開いて、隙を見て逃げ出したの」

 

 敵中で抱き合うなんてという無粋なことや間に入ることを二人はしなかった。ようやく再開した親子の仲を水を差すわけにはいかないと空気を読んだ。しかし、それを察しない輩が背後から迫っていた。

 

「ちょこまかと逃げて!!」

 

 追いかけてきたメデューサが手持ちからレパルダスを繰り出して背後から襲う。ギルガルドがレパルダスの攻撃を紙一重で防ぐとセルピルが前に出る。

 お返しをしたかった。今まで自分を守ってくれたポケモンたちをジムリーダーやトレーナーたちに今までできなかった分を。そしてポケモンたちを危険な目に合わせ、ポケモンたちを信頼できなくさせたフリーやメデューサに治った自分の姿を見せつけてやるために。

 

「大丈夫。できる!」

 

 セルピルは手が震えるも、モンスターボールの開閉スイッチを押す。

 

「ニチャモ、かわらわり!!」

「チャモ!!」

 

 ボールから飛び出したニチャモが、得意の脚力でギルガルドを飛び越えレパルダスの背中に手刀を叩き込む。弱点の格闘技を喰らったレパルダスは体が地面に伏っしたまま動かなかった。

 セルピルが再び技を指示できたことにニチャモは喜びの咆哮と共に口から炎が舞い上がる。その炎が体に纏わりそれが収まるとバシャーモに進化していた。

 

「な、なぜ!?なぜですの!?貴方は、私が、壊したはず。カラマネロ、バシャーモを倒してしまいなさい!」

 

 メデューサの背後に控えていたカラマネロが前に出て、触手をフックのようにニチャモに叩き込もうとする。だが、進化したニチャモはワカシャモの時よりも身軽にカラマネロの攻撃を避け次々とかわし、逆に新技ブレイズキックをお見舞される状況になっていた。

 ブレイズキックを喰らったものの弱点が少ないカラマネロは未だに倒れていなかった。

 

「サーナイト、ムーンフォース」

 

 静かにそして的確な判断の下アレクサンダーがカラマネロの弱点であるフェアリー技を繰り出すように指示すると、呼応してサーナイトの体内に生成された月のエネルギーが一気に放出される。弱点を突かれたカラマネロはメデューサを巻き込んで後ろに倒れこんだ。

 メデューサは重さ五十キロ近くあるカラマネロを起こすことができず団員たちに助けを求めていたが、その場に団員は一人もいなかった。

 

「ポケモンを洗脳する機械をつくって、自作自演の演技で周りの意見だと言いふらしてトレーナーにポケモンを持たせなくさせるなんて、最悪の悪党よ!」

「母さんを苛めた罰だ。しばらくそこで反省しておくんだな」

 

 セルピルとテオドールがもがいているメデューサにそう言い残して、先にソフィと共に逃げていったアレクサンダーの後を追う。

 メデューサは、逃げていったセルピルたちに恨みごとをのべつ幕無しに言い続けた。その陰で一人の男が先ほどのやり取りを聞いていた。

 

「ポケモンを洗脳する機械?自作自演?我らがしてきたことは一体?」

 

 

 

 迷いに迷た挙句ようやく基地の外に出ると、朝日が海から顔をのぞかせていた。そしてそぐそばではいくつもの客船や貨物船が停泊している港がすぐそこに見えていた。セルピルがポケナビツーを起動して場所を確認すると、セルピルが向かう予定のクローニーシティの港であった。

 団員服を脱ぎ捨て、ソフィも含めた四人はコキノス島行きの船のある桟橋へと走っていく。タラップには出港時刻が刻まれていて、あと数分で出港する時刻になっていた。

 

「ここからコキノス島へ行けるよ。僕はシャムロックさんと合流してセルピルの無事の報告とテオドールのお母さんを安全な場所へ避難させるよ」

「ああ、お前ならジムリーダーに顔が効く。母さんを頼んだ。その代わりに、コキノス島までは俺がセルピルを守る」

 

 二人は拳を前に出してこつんと誓いのポーズをとると、アレクサンダーがセルピルの方を向く。

 

「うん。ごめんねセルピル。コキノス島まで君は守れなくて」

「ううん、ここまで来れたもの。基地でもあなたの腕がなければ危なかったし」

「僕はバトル以外はだめだよ。ほんと、てんでダメ。バトルするって約束も未だにできなないし。でもアニヤに帰っても、僕のこと覚えていてね。今度は名前を憶えているから君に直接手紙を出せるからこっそりと送れるよ」

 

 セルピルはアニヤとオリントの連絡手段の状況を思い出した。アニヤとオリントには直接回線がつながってなく、手紙でしか交流できないことを。だからすぐに連絡ができない。なら、今ここで挑戦状のことを言おうとセルピルは意を決する。

 

「あのね、アレクサンダー。実は」

 

 セルピルは挑戦状が届いたと言ったものの、重要である後半部分が汽笛にかき消されて伝えられなかった。

 

「船が出る。行くぞセルピル」

 

 テオドールに手を引かれ、なし崩しにセルピルは船に乗ってしまった。アレクサンダーに真実を伝えることもままならないまま。

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