ヤイナギステーションはあまりにもさびれた場所だった。駅舎もなくただ長いホームと待避線だけがあるだけだった。乗務員が食堂車への詰め込み作業や客車の点検をする間、乗客は全員列車から降ろされたのだが、草原と沈む赤い夕陽以外本当に何もない場所なのでセルピルとセロは暇を持て余していた。
列車が停車して数分すると、後方から切り離された車掌車とほかの客車を後ろから押し牽いてくる電気機関車がやってきた。駅員の誘導でゆっくりと近づいてくる客車が連結器を開きオリニア急行と連結する。
そして、先ほどの勝ち抜き戦で敗退したトレーナーがぞろぞろと白服の車掌から荷物を受け取って、車掌車の後ろに連結された客車に乗り込むと、今度は車掌車と敗退したトレーナーたちを乗せた客車が連結器から切り離されていく。そのまま客車は電気機関車に牽かれてファトゥラシティ方面へと走り去っていった。
駅員がそれを見届け、出発の笛を鳴らして乗客たちを急かすように乗り込ませると、オリニア急行は再び動き出す。目指すは中央都市。ポケモンリーグ本会場がある大都市だ。
客車の入れ替えというめったに見られないものを見た二人であったが、先ほどの光景を語るよりも食い気だった。もう外は日が最も焼ける色をしている時間、六時を回っていた。
「僕もうおなかペコペコ」
「セロったら、確かにあれからお昼の弁当しかお腹にいれていないものね」
そういって、セルピルが食堂車への扉に手をかけようとすると、光沢のある緑の木のような扉が自動的に横にスライドする。そこは、まるで高級レストランが丸まる一軒入ったようなところだった。
上にはシャンデラを模した形をしたシャンデリアがいくつもぶら下がり、テーブルは白いシーツが掛けられたテーブルにはヒトモシ型のキャンドルが焚かれ、マダツボミの花瓶に花が生けてあり高級感を醸し出していた。明らかに小学生が入るような場所とは場違いでセルピルは回れ右しようとするが、奥にいたシェフが二人の下に駆け寄ってきた。しかもそのシェフと言うのが先ほどセルピルの試験官を務めていたのだから居心地が悪い。
「オーゥ、先ほどのお客サマではないデスか。ささ、遠慮なさらずお席にお着き下サイ」
満月のようにまん丸としたシェフの朗らかな笑顔にセルピルは気圧され、言われるがままセロと共にテーブルに着いた。メニューが二人の手に渡されると、『アンキモのチーゴの実とフォアグラのソースかけ』や『熟成ミルタンクのミルクヨーグルトに漬けた豚肉のソテー』といった横に長く、言葉の表現からしてカロス地方の高級料理の名前がずらりと並んでいた。セルピルはどれがおいしそうなのか見当もつかず、ましてやこんな高級料理を自分が選ぶことになるとは思いもよらなかった。なにせ左右に置かれたフォークとナイフとスプーンの内、どれを先に取ればいいとかの作法とか全く知らないのだ。
セロがぱたんとメニューを机の上に降ろすと、シェフに顔を向ける。そうだセロが決めた料理を注文してしまおうと思いつき、セロの注文する料理の名前に耳を傾ける。
「僕、オムライスで!」
なんでよ!とセルピルは心の中で叫び、顔を突っ伏した。
まさかメニューに載っていない――しかも完全に庶民的な料理という斜め上のものを注文したのだから驚きを通り越して呆れた。
「セロ、こんな高級な食堂車でオムライスなんて出るわけないでしょ」
「え~、だって全然わからないから一番食べられているものが食べたいもん」
「ムッシュ、いいですよ。カロスで有名なオムレツをアレンジしたオムライスを特別にお作りいたしまショウ。お客サマも一緒でよろしいデスカ?」
まさか本当に作ってくれるとは思わずセルピルとポカンと口を開けたままになったが、やはりこのメニューの中から選ぶ勇気は出ず。セロと同じものを選んだ。
料理を選ぶだけで一苦労したセルピルだが、セロはと言うと「カロス風の料理って何だろうね。楽しみ」と相変わらず呑気だ。
「お疲れ様セルピルちゃん」
反対側の席ですでに食事をとっていたスレイマンが声をかけた。スレイマンは上品に小さくナイフで切った肉のかけらを口に運んでいた。
「はい、あの再戦がなかったら敗者復活いきでした」
「まぁ、敗者復活といっても、実際は対戦する回数が一回多くなるだけで、ほとんど本選へ出場したのも同然なんだけどね」
「つまり、セルピルがさっきの再戦で負けてもどのみち同じってこと?」
「傍から見ればね。けど本選出場者は、この豪華な食堂車や一等車の部屋を自由に使えること。それに――おっとそろそろ自分の部屋がどんな様子か見てこないと、では二人ともごゆっくりどうぞ」
スレイマンが何かはぐらかしたような物言いで席を立つ、セルピルはそれが気になり呼びかけようとすると、シェフに阻まれてしまう。前菜が運ばれてきたのだ。
前菜をフォークでつまみ、次のサラダも口に運びながらセルピルはスレイマンが言いかけたことが頭に残っていて、料理を味わっていなかった。しかし、メインの料理が来たときには、こっちの世界に戻ってきた。
「お待たせしました。ヒヨク風オムレツにバターライスを包んだザロクの実ソースを添えてです」
重厚なオムレツとザロクの赤い実をつぶしたソースが、黄色のカーテンを左右に開いたときに見える夕日の太陽のようで見た目麗しく。何より焼きたての卵の甘い匂いがすでにお腹に食べ物が入っているはずなのに、食欲をそそる。
スプーンですくうと、バターライスとオムレツとソースの三重の層がきっちりと分かれている。それを一口、口に入れるとオムレツはふわっとスフレのように溶けて卵の旨味がバターライスと口の中で手を取り合い、ソースがそこに主役を押しのけず花を添えるように味を引き立てる。
そして二人は同時に。
「「おいしい!!」」
「メルシー」
食事を終え満足感に浸っていたセルピルに乗務員から十番と書かれたカードキーを渡された。どうやらそれがセルピルの部屋の番号だそうだ。
食堂車の隣の車両の通路を曲がった先のシャワー室とトイレの隣にある『十』と書かれた部屋の前でカードキーを挿す。
扉が自動で開くと、中はカーテンがついた大きな窓があり、窓の向こうでは青々と若い葉を枝の末まで生やした木々が朱に染まった光景が流れている。
部屋の半分を占めるほどのベッドは、外の景色と同じ赤のチェック柄の布団が敷いてあり、木目調のしっかりとしたつくりの机と箪笥が置かれてそれ以外の装飾品はおかれていない。別段狭くはないが個室としては十分な広さを持っていた。そして部屋の住人であるセルピルを差し置いて、セロがケロマツのようにベッドの上に飛び乗ると体がベッドの中に吸い込まれていく。
「うっわ、ふかふかだ。僕の家のより大きくし豪華かも」
「ちょっと、私のベッドなのよ。自分の部屋でやったら?」
「そしたらセルピルとお話しできないじゃん。ポケモンリーグに本当に行けることとかさ」
セロはベッドから身を起こすと、その横にセルピルがベッドに座る。
「セロ、私ね。さっきの再戦の前にハリカさんに会ってね。その話の中で気づかされたの、ポケモンリーグを勘違いしてた」
「どういうこと? 予選と本選との違い?」
「そうじゃないの。あのね、予選でトレーナーたちが駆け引きしたり、出し抜いたりとジム戦と違って戸惑っていたのこれがポケモンバトルなのかって?今までジム戦は、バトルに勝ちさえすればみんなにバッジが与えられる。だからこの予選もジム戦と同じように考えていた。けどポケモンリーグは、ほんの数十人しか相手にしてくれなくてそこでたった一つを目指す。ここはもうトレーナーを待っててくれるジム戦じゃないんだって、私はその洗礼を予選で受けてしまったの出し抜いて勝ち進まないといけないって」
セルピルがポケモンリーグの論理を答えると、セロは腕を組んで少し唸った。
「う~んそうか、僕もなにか今までと違ういなって思っていたけどそういうことなんだね。それに僕たち本選に行けると言っても後発組の中だし、先発組のトレーナーたちもどんな相手なのかわからないし、気を引き締めないと」
「うん。それに私には約束があるもの」
「約束って?」
そういえばセロにアレクサンダーとの約束のことを今まで話していなかったことを思い出し、セルピルは旅を始めるきっかけやアレクサンダーのことを話し始めた。
「へ~。昔の友達からの手紙が入った瓶がセルピルの下に長い時間かかって届いたんだ!すっごい偶然!なんか本の中の話が本当に起きたんだね」
言われてみると、確かに手紙が届いた当初はアレクサンダーからの手紙からだと思っていなくなんとも思わなかったが、瓶の手紙が遠くのそれも六年前に別れっぱなしなった友達からの手紙が届くなんてまさに本の中のお話のようなことだ。
「アレクサンダーとの約束を守るためにも本選を勝ち上がらないと」
「でも僕も負けないよ。ラっちやヨっちも……って あああ!そうだ忘れてた!レイレイを返さないと!」
「そうよ!ワマっちも返さないと……でもどうやって元に戻すの?手でこう、ボールを渡して完了ってなわけないし」
「たしか、ポケモンをまた交換するには据え置きパソコンでないといけないってポルックが言ってたけど」
「パソコンならたしか車掌車にあるって言ってたわ。そこにいきましょ」
二人はレイレイとワマっちを元の持ち主の下に返すために部屋を出て車掌車へと移動を始める。
食堂車、戦闘車を抜けて再び二等車に戻ってくると慌ただしい様子だった。
二等車のトレーナーと乗務員が総出で布団を運び、人の流れが行ったり来たりのてんやわんやした状態だった。人の波をすり抜けるとセルピルの目に、ハリカが他の人と同じように折りたたまれた布団を持ってコンパートメントに運び込む姿が見えた。
「あら、セルピルちゃんとセロくん。ひやかしに来たの?」
「そんなんじゃないよ。僕たちお互いのポケモンを交換したままで、元に戻しに車掌車へ行くんだ」
「ふ~んそうなのね。でも列車が到着する前にさっさと済ませなさいよ。この機会を逃したら後悔するわ」
「どういうこと?」
セルピルがハリカに
そんなに慌ててどうしたんだろうとセルピルとセロはトレーナーの背中を見て疑問に思った。そして振り返ってみるといつの間にかハリカの姿も人の波にのまれてどこかに行ってしまっていた。
二等車の後ろに新しく連結されたのは、アルコールとたばこの臭いが混じるバー車両だった。小学生の二人にはこの臭いはきつくおまけに車内に流れる大音量のロック調の音楽やビリヤードの玉が弾く音が耳障りで、早く抜け出したい一心で身を屈めて駆け抜けようとした。
ところが先頭を行っていたセルピルの頭が人の体にぶつかってしまった。顔を上げてみると片手を水平にお盆を持っていたウェイターが立ちふさがっていた。
「お客様、お飲み物はいかがですか?」
「先を急ぎたいの、そこをどいてください」
「ではお客様のお部屋番号だけでも。お飲み物を後で御持ちいたしますので」
セルピルが右に移動しようとすると、ウェイターも同じように動き、セルピルの行く手を遮った。ただでさえ、タバコとアルコールの臭いで腹の中がむかむかしているのにウェイターのいやらしい行動に一層ムカついたセルピルは、早く追っ払うために強い口調で自分の部屋の場所を告げた。
「一等車の十番の部屋!」
「かしこまりました」
すると、ウェイターはさっきの行動がウソの模様にすっと車内の脇に移動して連結部分にへと通させた。
そそくさと逃げるように連結部分への扉を開けて車掌車へ入ると、二人はたまった臭いにおいを吐いて鼻の中にきれいな空気を取り込む。
「すっごい臭かったねセルピル。大人の人ってあんな中でも平気なんだね。鼻の中に防護マスクみたいなものでもつけているみたい」
「でももう二度と……ってもう一度帰りに通らないといけないから三度目は絶対に行かないわ」
セルピルが先ほどの車両について文句を言うと、車掌の前に置かれたパソコンに手を付ける。白服の車掌は相変わらず白のコートのような車掌服を着て、不気味な笑顔をつくっている。
二人がそれぞれ交換したポケモンが入ったボールの開閉スイッチにケーブルを差してポケモン交換を作動させる。交換は滞りなく終わり、二人は元の主人の下に戻ったボールを手にする。
「これで元の通りね。ねえセロ、あなたの部屋何両目の何号?」
「一番だよ。一番乗りだから一番端の部屋なんだってほら」
セロがカードキーをセルピルに見せつけた。そこには確かに一と言う番号が金文字で刻まれていた。しかしセルピルはその表示に疑問を持った。
「
部屋の番号でなく車両に違和感を感じたのだ。
「えっ?でも先頭車両を含めば二号車であっても変じゃないよ」
「ううん、おかしいわ。だって私この列車に乗る前に外から車両一つづつ見ていたわ。その時ほかに車両があったわよ。たしか……そう黒のラインが入った客車があったわ」
車両の入換でオリニア急行の編成は随分と変わったが、二等車より前の編成は変わってない。二階建ての客車の戦闘車は、次が食堂車、そしてセルピルの記憶では赤のラインがあった客車は一等車が二両。そしてその先に一つ黒の車両があった。
「そしてさっきの本選行きは決まっているはずのトレーナーさん。そしてハリカさんの言葉。もしかして黒のラインの車両でなにか本選に関係することが起こっているんじゃ」
すると二人の背後でパチパチと小さく拍手が鳴るのを聞いて振り向くと白服の車掌が手を叩いていた。そして車掌が拍手をやめると手を下げて一礼した。
「はい、ご明察デス。一号車にはぼくの兄ノボリがイマス。そしてぼくはクダリと申しマス。ぼくたち兄弟はここのポケモンリーグのスポンサーの要請で、イッシュ地方からこの地方のポケモンリーグ予選の運行とシード枠選考を務めておりマス」
シード枠。そんな情報をつかんでいなかった二人は目を丸くした。
「それっていつまで!?」
「列車が到着するマデです。オリニア急行が中央都市駅に 到着するマデあと」
クダリが袖を引いて腕時計を確認すると、現在時刻を淡々と告げた。
「現在時刻二十時三十一分十六秒、中央都市駅到着マデ十二時間九分と四十四秒デス」
先を越された二人は大急ぎでで黒の車両へと向かうため車内を駆け抜ける二人。一等車を抜け奥の扉を開くと、そこには四人ほどのトレーナーがぐったりと焦燥しきった顔で膝をついていた。そしてその中にはスレイマンの姿もあった。
「抜け駆けですかスレイマンさん?」
「僕を聖人か何かと思ったかい?生憎私もハリカさんと同じだよ。いや、むしろ彼女の方がはっきりと出し抜くことを示したから彼女の方が立派かもしれないね」
だが、セルピルはスレイマンの行動を憎く思わなかった。ここは相手をいかに出し抜くかがカギとなる場所ポケモンリーグなのだから。そしてその出し抜くための関門たるシード枠を争う門番が車両の奥に佇んでいた。
車掌のクダリと同じコートのような服装を黒に塗り替えたもので、顔はクダリと反対に仏頂面で二人を迎えている。
「さて、次の目的地は中央都市本選となりますが。あなたさまの実力で行き先変更を考えております」
「シード枠だよね。それって何人までなの?」
「計二名様までとなります。まだ枠は埋まっておりません」
十人のうち二人までしか進めない、そしてそのトレーナーたちが死屍累々の状態で倒れているからして一筋縄ではシード枠をつかめないのは明らかだ。
「「私(僕)挑戦します!」」
セロが同時にノボリに対して挑戦を申し込んだことにセルピルは目をぱちぱちさせた。
「ちょっと私が先に言ったから私が先にバトルするのよ」
「え~、僕の方が早かったよ。例えセルピルでも譲れないもん」
「まだ枠空いているから私が先でもいいでしょ!」
二人がどちらが先にノボリとバトルするかを舌戦による場外戦を繰り広げようとしていた時、ノボリが二人の間に入って制止させる。
「では同時に相手をいたしましょう。それぞれシングルバトルの三対三で。ダイヤの筋も鉄道員としての技能ですので」
これはとてもラッキーだとセルピルは思った。二人相手に同時にバトルをするというハンデを手にした。
ノボリがトレーナーポジションに立つとセルピルに対してシャンデラを、セロにはダストダスを繰り出してきた。これに対抗するにセルピルはイワンをセロはラっちをくりだす。
バトル開始の合図が始めると、ノボリが二匹のポケモンに対してそれぞれ攻撃を命じる。
「ダストダス、ダストシュート。シャンデラはねっぷうでお願いします」
ダストダスが黒く泥のようなヘドロとゴミの塊を、シャンデラが体のガラス部分から熱を吐き出して二体に降り注がれる。
二体がそれぞれ端に移動して躱そうとするが、ラっちのまわりにはゴミの塊が砦のように行く手を遮られ囲まれてしまい。イワンの周りもシャンデラの熱風が熱の壁を形成させて逃げ道も征く手も遮らせる。
ねっぷうの壁が縮まりイワンを囲い込み熱で締め上げられる。ラっちもゴミの砦を抜け出すことができず、止めと言わんばかりにダストダスが大きめのダストシュートを砦の中に囚われたラっちの中にへと放り込む。
二匹の断末魔が叫びを上げると、ラっちもイワンも一撃で撃破されてしまった。
「しゅ、瞬殺!?」
「何もできなかった……これがイッシュ地方の……すっごくワクワクする!」
自分のポケモンがやられたにも関わらず逆に喜ぶセロの姿に何をのんきな!と喉の奥で叫びそうになるセルピル。イワンをボールに戻すと次のポケモンをフィールドに出す。
「感心している場合じゃないわよセロ、次のポケモン出さないと。突破して勝ち取ってやるわ。シード枠!」
そして同時にノボリのポケモンに向けて技を向ける。
部屋の窓の風景がすっかり灯りの一つも見えなく鳴った時間帯に、二人は十番のセルピルの部屋でぐったりとベッドの上で倒れていた。
「負けた」
「負けちゃったね」
あのバトルで二人はあっさりと二人同時にというハンデがありながら負けてしまった。ポケモンを別のメンバーに入れ替えて再戦したが結果は同じだった。
トレーナーの実力もさることながらあのノボリの同時に別々の指示を飛ばす技能に二人の実力が到底及ばなかった。
二人は先ほどのバー車のウェイターが持ってきてくれたドリンクを飲みながら、お互いをけなすことなく、先ほどのバトルの反省を行っていた。
「あのギギギアル、ハサンさんのよりも強かったわ。絶対レベルが上よあれ」
「うん。他のトレーナーたちが未だに突破できていないから、あの人たちもしかして四天王級の実力があるんじゃないの?それに白の車掌のクダリさんも兄弟だし強いかもしれないね」
「兄弟と言えば、ふぁあ。ポルックとヘレネちゃんはあのあとどうなったの?私、綿の城以降二人の話耳にしてなくて」
セルピルがあくび一つ出しながらセロに尋ねた。長いこと病院で凍傷した手足の治療に取り組んでいて、姉弟の情報が手に入らなかったのだ。だが、セロは首を横に振っていて知らない様子だった。
「実は僕もわからないんだ。捜索願は出しているけど警察もフリーの残党掃討とかでかかりっきりみたいで。でも、案外この列車に乗り込んでいるかも。変装して」
「かもねぇ~、ふぁ眠い」
「僕も、バトル疲れかな。僕も自分の部屋で寝るよお休みセルピル。明日は……中央都市だね」
「うん。頑張ろうねセロ。私も負けない………から……」
瞼がだんだん重くなりセロが部屋から出ていく後姿をぼんやりと薄れゆく意識の中見送りセルピルはそのまま夢の中へといざなわれた。
――体が痛い。
全身を締め付けられる痛みの電気信号が全身を駆け巡り、セルピルは目を強引に開いた。見ると自分の体がベッドの上から宙に浮き天井に磔にされていた。
そしてセルピルを磔にしている張本人はスリーパーを引き連れて、あのキンキンと煩わしい声でセルピルを憎たらしい目で眼鏡の奥から見ていた。
「あっら、やっと起きましたわ。あなたを探すのに苦労しました」
「