俺は彼女を知っていて、彼女は俺を知ってる 作:ローマ戦隊あるば☆ろんが
俺は彼女を知っていて、彼女は俺を知ってる
中学受験に於いてまずまずの結果を出して入学した、とある一貫校。
家から近くも無く遠くもなく30分と少しで到着するようなそんな距離で、3年以上もの間、家と学校とを行き来すると気がつくことがある。
皆さんも身についていただろう。どのタイミングで電車が来るか、どの時間だと友人が乗っているだろうか、などなど
端的に言えばステキなタイミングというヤツだ。
俺という存在はこの身についたこのステキなタイミングの存在を、8時過ぎの登校を目指す為にどの時間まで寝て居られるか、この一片に集中させていた。
寝ぼけ眼で着替えつつ、パンを食して駅へ向かう。
この週5日続くルーティンワーク、何と甘美な響きな事か、街路樹の葉は登り行く太陽に照らされて程よい木陰を作り出す。
よほどの事がない限り、朝の眠気は駅まで続くこの街路樹が取っ払ってくれるのだ。
いつもなら、眠気に支配された思い足取りを朝の空気に浸しつつ駅へと急ぐ。
頭の中では御託を並べつつも、何時もの電車は遅刻確定の3本前、あまり悠長にはしていられない。
だがしかし、今日ばっかりは歩いて向かう。
なぜならば、多くの生徒が使う山手線は現在遅延中。
学校側は授業の開始時刻を30分遅らせるという英断を下したのだ。
だが、私はこの学校に於けるマイノリティーである地下鉄利用者、全くもって影響はない。
ビバ都会
こう呑気に考えつつも駅では振り替えのせいか普段より多くなった人の波にうんざりとした気分である。
案内版やアナウンスを見聞きするかぎり、
組織的犯罪組織、悪の秘密結社という存在の期限はいつになるかは知らないが、現代社会の教科書を見る限り、江戸時代以前から存在している。
にしても彼ら悪の秘密結社様は実に我々の為になる存在だ。
なにせこうして時々我々にモラトリアムの時間を下さる。
学生身分としては願わくば、明日も明後日も休日以外はだいたい活動してもらいたいものだ。
しかし、このモラトリアムの邪魔をするのが何といっても
ごく稀に産まれる才能持ちとか言われるような連中が主にヒーローの担い手で、活動内容は落し物探しから戦隊モノまで幅広くあるが、何と言っても闘う系のヤツはダメだ。
学生身分の数少ないモラトリアムの時間をもめちゃくちゃにしてしまう存在だからだ。
だが、俺も大人になったら担当者様の身分になりたいもんだ。
なにせ公務員だぜ特技を活かせさえすれば基本リストラなしの天職
だけども俺にゃぁ生憎誇れる特技は特に無いのだ
…世の中は理不尽なことだらけである。
こうも混み合っているとスマホも碌に出来ない。
こうも暇だと何かこう、非日常な事は起きやしないか、こう考えてしまう。
実際のところこの電車の遅延はこの都会で起こり得る最大限の非日常だが私はそもそもこんな事態を望んでいると訳ではない。
例えばアニメやラノベのように、空から女の子が降ってきたり(2次でも可)、突然美少女と身体が入れ替わっていたり、転生したり、
と、挙げればきりはないだろう。
私といえば花の思春期をドブに捨てる男子高校生、女子という存在をかれこれ4年ほど認知していない。
何かこう、4年の間に異性という存在から全くもって遠ざかっていいる。
ぶっちゃっけて言えば女子という存在は怖くて仕方がない。野郎ばかりの学校生活というものは往々にしてオタク話が蔓延る世界。
今の俺には友人と部活と2次元だけあればいい。
だがしかし、なんとも味気ない青春時代ではないだろうか。
友人とバカ騒ぎしても充分以上に楽しいのだが、
たまには、いや、非日常である今日くらい眼福な思いをしたいものだ。
悪の秘密結社だったり、美少女のエアボーンしかり、何かしらのハリウッド的、2次元的な事でも起きないだろうか、
だが私は知っている。
何せ私は今フラグは立てたのだから
と、まあ下らない妄想も束の間で、やって来た電車に脚を踏み入れたその時である。
どえらい美人がそこにいた。
黒のセーラー服に学校指定のカバンだろうか、制服ってのは3次元じゃ個性を消すものだとばかり思っていたが、彼女は違う、制服を持ってしても有り余る個性に清楚な雰囲気。
立ち振る舞いにもその雰囲気が現れていて、今急いでるらしく時々時間を確認してる様子でさえ、イカにもお嬢様とわかるほどに品を感じられる。
実に眼福、眼福。
そんな美人が、今まさに俺氏の横に立っているのである。
言うなればこう、3次に対する認識が変わったと言っても過言では無い。
ドルオタの友人の言葉ではないが"
もし俺が共学にでも通っているものならば一瞬で恋しただろう、
だが俺は華の男子校生、この経験は3次元への認識が変わっただけに過ぎない。
一言で言うならば、"世界は時々バグってる"こう思う程度には、だ。
願わくば毎日同じ電車に乗ってたいモノである、
しかし、俺とおおよそ同じタイミングで乗ってくるのは、背景と化したサラリーマン数十人と、友人1〜5、2年前からの馴染みの名も知らぬブサ子(仮名)にどこぞの学生諸君のみ。
このブサ子(仮名)ってのが一番の問題だ、顔さえ見なきゃ学生諸君に仲間入りさせても良いかもだが、
生憎顔がアレなのだ、どこぞの動画サイトで見るようなクッソ不細工なのだ。
それこそ何者かの変装の類を疑うレベルである。
しかもこのブサ子、伊達に振る舞いだけは美人っぽいのであるから手に余のだ。
顔さえ見なきゃ美人。ある種のギャップを感じさせる存在なのだ。
願わくはブサ子と変わって貰いたいものだ、
別に何するってワケじゃ無のであるが。
なにせ俺のコミニュケーション能力といえば男子校仕込みの本物、中高一貫で鍛えられた影響か異性何ぞはロクに話せないのである。
日々を幸せに…高校生活の後半戦くらいは、毎朝を眼福に過ごしたい。切実にそう思った。
『いつもの駅でいつも会う
セイラー服のお下げ髪』
と、言った具合に俺は日々を過ごしたいのだ。
ま、叶わぬ夢を語ってもしょうがないのであり、俺は未来のためにも学業に専念しようかと思う。
異性に対する夢、願望を、いとも容易く諦められるのも男子校生の特技だろう。
しかし、朝から美人を見るという非日常的体験は、思春期真っ只中の男子的に、モラトリアムを過ごそうだなんて気持ちは吹き飛んでしまう。
なにせ男子校、異性にはとことん弱いのである。
ビバ、オアシス
グッバイ、マイオアシス。
そして彼女は幸運なことに俺と同じ駅で降りた。
切実に嬉しく感じる、俺は確かに2次の方が好きだ、しかし今日一日くらいは頑張ろう、(たまには)3次元も悪くない。そういう気分になった。
別嬪さんに会ったからかどうかは知らないが、
いつもはクタクタで魂すら抜けかけるような部活帰りもなぜか今日は心地いい
俺はこう見えても運動部で、部長なんて役回りをしている。
地味目の運動部だが後輩もキチンといるし顧問は…見た目がアレだが面倒見はいい。
キチンと青春やってるなとは感じる。
…しかし此処は男子校だ。
夕暮れの中、涼しくなった街を悠々と、気持ちよく歩くなんていつ振りだろうか、
街路樹の葉が紅に照らされて輝く様に素直な美しさを感じるくらいには久々の満足感を感じる。
本当に今日は色々と満たされているそんな気さえしたのだ。
そして自宅へと戻ると、リビングで流れているTVのニュースが目がついた。
番組では今朝の
コメンテーターや解説者の批判的見解にも納得はいくが、学生身分としては釈然としない気分だ。
そして画面は切り替わり、報道のヘリから撮った今朝の戦闘映像が流れる、線路上でそれこそ戦隊モノばりの派手な動きの秘密結社は、自然と応援したくなるくらいにはテンプレに忠実である。
これに対するは23区の北部を統べる3代目、若手の
これまたテンプレに忠実な真っ赤なヘルメットに、赤を基調としたコスチューム。
北区を活動拠点としてるだけあって桜をモチーフにピンクにしたかったらしいが、代々受け継ぐモノなので男女兼用って点から赤に落ち着いたらしいソレである。
だが今日ばっかりは何か違う。
コスチュームの類はなく、ヒーローと言えるのは赤いヘルメットだけなのだ、このヒーローは…
非番からの
華奢な身体にセイラー服、そしてゴツいヘルメット。
ミスマッチさが中々にイイと感じてしまった。
だがしかし、私はこの
何秒か頭を巡らせて思い出したそれは、今朝の
急いでそうな表情も、同じ駅で降りた理由も全て想像付く終いにゃ、あの学校指定らしいカバンが置いてある上に中身であろうか、コスチュームの類が露出して見える。
俺は思わず呟いた。
「あっ…」
「それでイイのか
と、