元々はこの話に謝罪会見が含まれていたのですが、それを無くす為にここまで掛かってしまいました。申し訳ありませんでした。
ルイズとパチュリーの二人は、モンモランシーの作業が一段落つくまで室内で待たされていた。
ああいらっしゃい、ちょっと待っててね、と言ったっきりだ。
香水やら水薬を調合中だったらしいモンモランシーは完璧な仕事モードへと突入してしまい、ルイズ達二人は完全に放置された。客人のことなど全く目に入っていない様子で、せっせと作業を進めている。
ところでこの部屋だが……とても貴族令嬢の居室とは思えなかった。難しい本しか並べられていないエレオノール姉様の部屋の方が、まだ女性らしい。
何しろ、イタズラで忍び込んだルイズは知っているのだ。威圧的なタイトルの並ぶ書棚の中に一冊だけ、溜息が止まらない程に壮大なラブロマンスが紛れ込んでいる事を。これは、墓場まで持っていくと決めたルイズだけの秘密である。
モンモランシーの部屋はその点、完全な仕事場だった。職住接近というレベルではない。家具の配置からして、ベッドが仮眠のためにあるという事がわかる。
「ねえ、ルイズ。」
「なに?」
さすがのパチュリーも空気を読んでいるのか、声を潜めていた。
「彼女は一体、何をしているの?」
「何って、水薬の調合よ。貴女はやらないの?魔法だけだと治りにくいから薬品と併せて使うのが、こっちでは普通なのよ。」
「……成程。治しにくいから、ああいう壊し方をする訳ね。これは大変興味深いわ。」
突如として物騒な事を呟き始めたパチュリーに、ルイズは思わずギョッとなった。治癒薬の説明をした筈が何故、ぶっ壊す話にすり替わってしまうのだろうか。一体、この魔女には何度驚かされれば済むのだろう。
「……何を1人で納得しているのよ。」
「あのタバサっていう子の魔法、難易度の割に威力が低すぎたから、不思議に思っていたのよ。漸く、その謎が解けたわ。」
「あ、アレで威力が低いの?」
ルイズは思わず、悲鳴に近い声を上げてしまった。あの、直撃すれば大惨事間違いなしのライトニングとか、思い出すだけで下着が心配になるのだ。
「私があの規模で撃ったら、人体など原型を留めないでしょうね。」
これを聞いた瞬間、ルイズは唇を引きつらせた。
仮にルイズが教師で、パチュリーが生徒だったとすると、今のセリフはこんな感じになった筈だから。
《ミセス・ヴァリエール!タバサちゃんは確かに凄いです。でもでも、私の方がもっと凄い事が出来るんですよ?》
尻尾があったら、ブンブン振っていたのかもしれない。
……いや、そんな急に、初々しく自己アピールをされても、困っちゃうんだけど。
オマケにその内容が今更なものとあっては、尚更だ。
「……コ、コホン。ええっと……水臭いこと言わなくてもいいじゃない。貴女が天井ブチ抜いたメイジだってことは、とっくの昔に承知しているのよ?」
「その指摘は、本筋から逸れているわ。私が気がついたのは個人の資質の問題ではなく、魔法の背景にある、運用思想の違いなのよ。」
「まぁた難しいこと言い始めたわね……それってどういう事?そりゃ、精霊魔法に比べれば、系統魔法は非力でしょうけど……」
「単純な比較は、あまり意味がないと思うわ。何しろ精霊魔法では、回復が一瞬で済んでしまうから……同じ魔法を使う相手を無力化するには、殺すしかないのよ。だから必然的に、避けさせない、防がせない、致命的な攻撃魔法が発展したのでしょう。」
成る程、パチュリーが物騒なのはそういう理由か。確かに、どんな傷でもたちまち回復されてしまうのでは、やると決めた以上は一発で決めないと、痛い思いするだけになりそうだ。
「うわあ……私、系統魔法を使う世界に居て良かった!」
ルイズは、力が力を呼ぶという事を、改めて思い知った気分になった。強力な魔法も、良し悪しである。
「そうとも言えないんじゃない?」
「どういう事?」
「こちらの攻撃魔法は、実質的に肢体不自由者の製造になっている気がするのよ。敢えて半殺しにして、負担をかける事を重視しているように見えるわ。」
「ああ……その話には、嫌な思い出があるわ……」
母がかつてその様な講釈を垂れたときに、幼いルイズは泣き出してしまった事がある。
みんな生きて帰って来る戦争と、みんな死んでしまう戦争。
どちらがマシかと問いかけられたのだ。
それは前者に決まっているだろう、と胸を張って答えた幼いルイズは、思いっきり頭を引っ叩かれた。
「全員が手足のない状態で帰ってきてみなさい。貴女は彼等を、どうするつもりですか?」
歴史を紐解けば、やっとの思いで帰ってきた傷病兵達を一箇所に集めて、虐殺してしまった敗戦国もあったそうだ。身体を張って命からがら帰国した者達に、それはあんまりな仕打ちに思えた。
しかしその肝心の祖国に彼等を賄う余裕がないのだから、救いようのない話である。
当時のルイズはその光景を想像してしまい、涙が止まらなくなった。
パチュリーの話からすると、彼女が得意とする精霊魔法を使って戦争をした場合は、みんな死んでしまう方の結末を迎えるのだろう。
なるほど、道理で。この世界でエルフに戦いを挑んだ者達の記録が、惨敗としか記されていない訳である。いや…敗北を知らせる生存者が残っただけマシなのか。
要するに、交戦規定が違いすぎるのだろう。系統魔法を使う側が戦闘不能な重症を負っても、精霊魔法を使う側にしてみれば苦もなく回復できる怪我に過ぎなければ、攻撃の手を緩める訳がない。そもそもの威力に開きがある以上、この差は大きいだろう。一方的な展開となった筈だ。
結局、母の問いかけと同じ結論に至るという事だろうか。
あの問い掛けも、どんな戦争もやってはダメだという顛末だった。
当時のルイズは、臆病者のような事を言い出す母を、泣き腫らした目で睨みつけたものだが……今ならあの時の母様の気持ちが、少しだけわかる気がした。
当時の母様は、厳しい顔で告げたものである。
「戦争は最悪の外交です。ですからやるからには、双方に最も犠牲の少ないやり方を選ぶ必要があります。」
戦う相手のことを心配してどうするのです、と叫び始めたルイズに、母の顔は失望に染まった。
「戦後の支配に影響するからです。貴族全員が死に絶えた国など、それこそ征服した価値がありませんからね。それとも貴女はまさか、勝つか負けるかも分からないギリギリの戦争をするつもりなのですか?」
そんな事を話しているのではない、と幼いルイズはいきり立った。
負けると分かっていても、立たねばならぬ時がある筈だ。
その際に都合の良い理屈を見つけるのは、卑怯者のやる事だ。
貴族のやる事じゃない!
その様に言い切ったルイズに、母は優しい顔で告げた。
「今の段階で、そこまで言えれば上出来です。ですが貴女が母になる前に、たった一人で千を超える敵と対峙せねばならなくなった時は、必ず私に相談なさい。どうすれば良いのかを、教えてあげましょう。」
そんなのおかしい、と幼いルイズは頬を膨らませた。
そんな起死回生の手段があるなら、常からみんなが知っておくべきじゃないかと。
だが、当時の母は答えをくれなかった。
出来れば教えたくない、とだけ言っていた。
思えば母様の扱う風の魔法は、系統魔法の範疇にない。という事は、まさか。
それとも、系統魔法だけでもそんな一騎当千な真似が可能なのだろうか?そっちの方が、答えに近い気がする。
やがて。
さすがにこちらへ気を回したモンモランシーが、椅子を勧めてきた。ルイズは図々しいだろうからと、立ったままでいた。パチュリーも、浮いたままでいる。まあ、それはいつもの事か。
「ええっとね?何で浮かない顔してるのよ。」
「……ちょっと、嫌な事思い出していたの。というよりも、アンタの集中力も凄まじいわね。何も聞こえてなかったんだ。」
ルイズは奇妙な関心の仕方をすると、モンモランシーに要件を告げた。
「物は相談なんだけど……精霊の涙を、少しばかり譲ってくれないかしら?勿論、相応の額は支払わせて抱くわ。」
「ええ?!それは流石にちょっと……」
やっぱり額の問題ではないのね。ルイズはやれやれと首を振ると……モンモランシーの顔つきが変化し始めたのに気がついた。
「い、いいえ……条件次第では、考えてあげなくもないわよ?」
「イキナリ掌返さないでよ。何なのよ、もう!」
モンモランシーはそんなルイズを他所に、早速とばかりにパチュリーへ話しかけていた。
「貴女、ルイズとそっくりなゴーレムを作る事が出来るんですって?それ、具体的にはどんな事が出来るの?」
「夜伽の類よ。今はもう、機能をリセットして眠りについているけれど。」
「リセットしたという事は……その、ルイズにソックリなそのゴーレムには、やらせようと思えば何でも出来るの?例えば、香水の調合とか、材料の採集とか!」
「ひょっとして手下にしたいの?まぁ、それなら可能よ。書物を読み込ませるタイプと、貴女が直接教えるタイプ、どちらがいいの?」
「ち、直接教えるのでお願いするわ!手数料は………売上の3割!い、いや……4割でどうかしら?!」
ははあ、成る程。そういう事か。
ルイズは納得した。
さすがは香水の二つ名を持つだけあって、調合バカだ。
交渉が下手くそ過ぎる。こんな事をしているから、腕前の割に清貧を貫くことになるのだ。
「あのね、モンモランシー。現物を見ずにそんな事約束しちゃっていいの?多分、貴女の思っているのと違うわよ。私に似ているとかそういう、可愛いレベルのものじゃあないから。」
「……う、そ、それもそうね。…………って!売上の4割って何よ!イキナリ足元見るなんて、ヒドイじゃないの!誠意を見せなさいよ、誠意を!3割にしておきなさい!」
「それは無償ではダメなの?」
「うわ〜〜〜い、やったぁ!えへへ、嬉しいなぁ。…………あ、あったり前でしょう?!初めっからそう言うのが、礼儀ってもんでしょうに!いちいち回りくどいのよ、貴女達は!」
パチュリーの素っ気ない一言に破顔したモンモランシーであったが、後付けで物凄く分かりやすい演技をし始めていた。
ルイズは最早、彼女の将来が本当に心配になってしまった。誰かしっかり者のアドバイザーがつかないと、良いように利益を掻っ攫われてしまうだろう。
「さて……それじゃあ、取り敢えずはルイズの言う通り、現物を見てもらおうかしら。この場に召喚して良いかしら?」
「もちろんいいけれど。どこに置いていたの?埋めちゃったりしていたら、ちょっとご遠慮願いたいわ。」
水薬を製造している施設なだけあって、さすがに泥だらけのゴーレムを招き入れる訳にはいかないのだろう。
それは確かに、ルイズとしてもご遠慮願いたいところである。全身が土に塗れたそっくりさんなど、軽いホラーである。
「ルイズの部屋に置いてあるから、心配は無用よ。」
「いやいや、ちょっと待ってよ。私の部屋のどこにそんなスペースがあったと言うのよ?」
ルイズは眉をひそめた。何も手狭だというのではない。
図らずも癇癪を起こして、メチャクチャにしてしまったのだ。その際にルイズ型ゴーレムが居れば、絶対に気がついた筈である。
「仲良く寝ていたのに、気がつかなかったの?貴女のソファーの下に居たわよ。」
ルイズはもう少しで、叫び出してしまうところだった。
ゴーレムが召喚されてそれをモンモランシー型に成型し直した後も、やっぱりモンモランシーは変だった。
「全っ然似てないじゃない!こんなの、使い物にならないわよ!」
クレーマーめ……
ルイズは意外と商魂逞しい事に安心しながらも、別な心配が生じて顔をしかめた。コレを見て似ていないという、モンモランシーの視力は大丈夫なのだろうか。
メガネをプレゼントした方が良いのではなかろうか。
しかしルイズの心配を他所に、クレームはより具体的なものになった。オマケにその指摘が予想外のものだからか、パチュリーも困惑している。
「良く見てよ!私の小指は、こんなに長くないの!」
「長い方が便利じゃないの?」
「ダメよ!そんな事は、とっくに克服しているの!私のノウハウが活きなくなっちゃうでしょうが!」
成る程。
何が違うって、手か。
職人の手という事か。
それはまあ、職人技なんて理解出来ないパチュリーには、気付けもしなくて当然だろう。
「顔なんてどうでもいいから、先ずは私の手足を忠実に再現して!変に美化されても、作業効率落ちちゃうだけよ!」
これは珍しい。
パチュリーがそんな事もあるのかという表情で、モンモランシーの手足を眺めているのだ。それに合わせてゴーレムを微調整をしている。何とも心温まる光景である。
それに。モンモランシーはもう、製造だけやって販売はやめた方が良いという事が分かった。
ルイズもあまり詳しくはないが、これはもう完全に技術畑の人間の会話だろうと思えた。
この構造だとあの動作をする時に不便だとか。ここはこうしてくれる方が現在より負荷が減るだとか。
おまけに熱が入って、周りが見えなくなっている。
その………何と言うか。
この場にギーシュが居なくて本当に良かった。結構とんでもない格好になっているのである。
「……って、ルイズ?!アンタは、何を顔を赤らめて……キ、キャア?!何見てんのよ、エッチ‼︎アンタ、そっちの趣味があったの?!私はお断りだからね!全く………罪な女も楽ではないわ!」
「……パチュリー、よく見ておいて。こういうのを理不尽と言うのよ。」
ルイズは何だかよくわからない薬品を投げつけられて、最早反論する気力すら失せていた。勿論その薬品はビーカーごと丁寧に受け止めて、そっと元の位置に戻してある。
これ以上モンモランシーのよく分からないお怒りを買うつもりは無かったので、パッと見では喰らった様に見える演技もしておいた。
段々と芸が細かくなっているのであった。
そうして。
最終的には、モンモランシーを一回り小さくした妹の様なゴーレムとなった。背の低さは台座を設けることでカバーし、今よりも小さい手できめ細やかな作業が出来る様にしたらしい。
ちなみに背が小さいだけで、その気になればモンモランシーの非力な腕の10倍の力は発揮出来るとか。原料採集の折には、ボディーガードとしての役割も果たせるそうだ。便利なものである。
その身体と綺麗な髪形こそ小柄なモンモランシーではあるが、その顔はノッペラボウさんである。
モデルとなった彼女本人のような愛くるしい顔は勿論のこと、他人の空似もまた困るからである。一目でゴーレムと分かるようにしたのであった。
そうしてルイズとパチュリーは、喜色満面なモンモランシーから精霊の涙の入った瓶を譲り受けた。
精霊の涙は本来、ものすごく高価なものである。
それを譲り受ける際、ゴーレムと引き換えで良いと言われたルイズは流石に難色を示した。しかし何と、パチュリーがアッサリと受け取ってしまった。
「有り難く頂くわね。」
……何だか、ちょっと不機嫌なようで怖かった。
ルイズは荒れ放題になった部屋に戻って来ると、念力をフル活用して手早く部屋の体裁を整えた。
流石にもう……ベッドは廃棄処分にするしか無かった。一応、窓の外に吹っ飛んでしまったものを引っ張り上げたのだが。魔法を使えなかったら、大仕事になってしまうところだった。
「さて。さっきはどうして、不機嫌そうだったの?」
「涙なんてとんでもない、これは、精霊の肉体のものじゃない。瓶詰めにされているのが、ちょっと哀れに思えたのよ。」
「……私には、普通の水にしか見えないんだけど。」
「意思が通っていないからね。今でこそその有様だけれど、放っておけばいずれは無に還って、新たな生命として旅立つ筈よ。貴女が魔力を注ぎ込めば………貴女が産み出した生命として、始まりを迎えることになる筈。」
それを聞いたとき、ルイズは感動に心が震えた。
しかし、流石に。
話が大き過ぎる。
ペットを飼うのとは訳が違うのだ。かなり語弊はあるが……親になるという事ではないか。それはさすがに、無茶な話である。
新たな魔法を使いたい、その向上心は何ら非難されるものではないが……さすがに輪廻に向かう命を頼ってまでする事とは思えない。
「迷っているようね、ルイズ。けれどもこの話は貴女が迎え入れるべきだと思うわ。あの子に返して水薬にして貰うのも一つのやり方だけれど。言い方を変えればそれは、数人の為にしかならないわ。貴女が水の精霊魔法を使いこなせるようになれば……」
「私もひょっとして……重症の人をすぐに助けてあげたり出来るようになるの?」
「その程度の小技、いちいち意識するまでも無いわね。人にとって大地が父親なら、水は母親みたいなものじゃない。」
すごい凄い、これは……とうとう、爆発魔ルイズから、治癒士ルイズへ昇格である。
そうよ、そうよ!正しく!そういうメイジになりたかったのよ!
ルイズは思わず、飛び跳ねてしまいそうだった。慌てて色々と見落としがないのか考えてしまうが……この場合は全く、当てはまるものがない。
それでも恐る恐る、パチュリーに聞いてみた。
「ねえ……そんなに、都合よくいくものなの?精霊魔法ってそもそも、とっても難しいんでしょう?」
「どうやら自信がないみたいだけども……そんなの関係無いわ。これほど高位な精霊の肉体を、この量。そこに貴女の魔力が合わされば、私のレベルにはすぐさま到達するでしょう。」
「そんなにスゴイものなのね……」
そうしてルイズは、ラグドリアン湖の精霊の一部が収まった瓶の蓋を開けた。
思わず、ほへ〜と見つめてしまうが、やはり無色透明な普通の水である。
「……で?魔力を渡すって、どうすればいいの?」
「そこから教えないとダメなの?だから、捨食を極めろとあれ程……」
「し、仕方がないじゃない!今更イヤよ、この上お預け喰らうなんて!こ、この子は私が、立派に育てるんだから!」
「だったらもう、飲んじゃいなさいよ。」
パチュリーの投げやりな言い方は、面倒臭くなった様にも聞こえた。しかし、さすがは精霊魔法の寵児か、それらしい事を宣うのであった。
「普通は、そのままでは服用しないのでしょう?効果が強すぎて、下手をしなくても劇薬になってしまうから。おそらく膨大な魔力が流れ込む事に、体が拒絶反応を起こしてしまうのでしょう。けれども、貴女は普通な存在ではない。」
「だったら何の問題も無い筈だ、と。」
ルイズはその瓶を見つめると、フッと微笑んだ。
既に迷いなど無かった。
「それじゃあ……これから、よろしくね。」
モンモランシーは、再びノックされた扉を開いた。
「はいはい、今日は千客万来ね。」
「ち、治癒の魔法を……教えて、下さい。」
兎のような目をしたルイズが居た。
詳しい事情を聞くと、手を怪我した猫を治癒しようとしてみたところ、溶け出すわ絶叫されるわで、阿鼻叫喚の地獄みたいな事になってしまったらしい。
パチュリーに原因を聞くと、マーキュリーポイズンという水分を毒に変える魔法を使ってしまったとか。
それもそうか。
ルイズはこれまで意図せずして、爆発という破壊的な魔法しか使って来なかった。いきなり真逆な事をやろうとしても、染み付いた感覚はそうそう抜けるものではない。
この点で、パチュリー・ノーレッジは全くの役立たずだった。彼女は技術もあり知識もあるが、失敗に関するノウハウが全く無いからだ。彼女の目には、成功する条件が揃っているのに失敗してしまうという現象はある意味で器用に映る様で、逆に失敗を再現しようとして来るのだ。失敗に苦しむ生徒として、これ程傷つく事もない。
ルイズはせっかくヒーラーとしての第一歩を踏み出そうと頑張ったのに、無能な教員のせいでマーキュリーポイズンの腕前ばかりが上達してしまった。パチュリー先生としては、とっても満足しているそうだ。
そうしてルイズは文字通り泣きながら、モンモランシー先生の部屋へ逃亡して来たのである。
因みにタバサ先生は、パチュリー先生と同じくらい論外だ。
「その身で喰らって覚えた事しか、実戦では役に立たない」
とか何とか言って来そうなのだ。
回復を喰らってみるという事は……回復が必要な状態へと強制的に陥らせるという事を意味している。冗談ではない。
魔法の腕前や理屈に秀でた専門家よりも、普通に失敗して成功まで漕ぎ着けていそうなメイジの指導が、何よりも求められていた。
こうして、ルイズが回復魔法を覚えるのには物凄い苦労を必要とした。モンモランシーの部屋に一ヶ月近くコツコツと通って、漸くものにする事が出来た。
ルイズはその性格に反して、相当に攻撃に特化したメイジである事を証明してしまったのである。
回復魔法の習得が亀の様な進捗を見せる一方で、爆発魔法の呪文解読は順調に進んでいったからである。
今後はこういう改竄をしないよう、気をつけます。
フーケ編は問題なく進められると思うのですが、恐らく今後の地雷はワルドさんになると思います。
私的には、るろ剣の四乃森蒼紫、スラムダンクの三井寿みたいな感じで行きたいと思っているのですが。ここらへん、どうでしょうか。