ルイズと動く図書館   作:アウトウォーズ

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日常パートに入る前の、一コマです。


客人は使い魔を名乗っており…

 

 

達成感が晴れた瞬間に、ルイズは顔色を変えた。

 

そう言えば、パチュリーは使い魔としてこの場に召喚された事になる訳だが…。説得に必死になる余り、ルイズ自身がそこのところを失念していたのである。ましてやこの、興味の無い事は一顧だにしなさそうなパチュリーが、気を利かせて考えてくれているとも思えない。

 

どうすれば良いんだ?

 

普通に考えれば、この後にコントラクト・サーヴァントを交わすことになる訳だが…。

ちょっとその場面を想像してしまい、ルイズは頭痛を覚えた。

 

いやいや、どう考えてもブチ切れるだろう。パチュリーが挨拶で接吻する文化圏に属していようが、そんなのに染まっている筈が無い。怒り始めた彼女が攻撃用の魔法でも使い始めたら、手のつけようが無くなる。大惨事間違い無しだ。

そうはならなかったとしても、それはそれで恐ろしかった。何となく、本で得た知識そのままに、興味本位で舌とか入れて来そうな気がするのだ。その拍子にあのお茶目なナイトキャップが落ちて、妙に色気のある紫の髪がハラリと頬にでも触れたら…。新世界への扉を開いてしまいそうだ。

 

どっちに転んだって完全に詰みじゃないか、コレ。一体どうしろと?なんとか、上手く流す方法は無いものだろうか…と、そこまで考えて、ルイズは独りごちた。

 

「そもそも、使い魔として呼んだ覚えは無いのよね。」

 

それはね?確かにね?呪文はそう唱えましたよ。だって私、初心者だもん。教科書通りにやるしかないじゃない。

 

しかし、ルイズが必死に此方へ来いと訴えたのは、一人の人間としての呼び掛けだ。使い魔云々は、関係ない。

そもそも使い魔に収まる器か?アレが。主人と揃って仲良く、今更レベルの授業を受けさせろとでも?

そんなのは、あのまま引き篭もらせておくよりもタチが悪いだろうに。

 

パチュリーは、ルイズの大切なゲストなのである。

使い魔なんて烏滸がましい。恩人を自分に縛り付けるなんて、とんでもない。

そもそもホストとして、嬉しさの悲鳴を上げさせてやると、約束したのである。パチュリーにはこの世界で果たすべき、多くの素晴らしい出会いがある筈なのだから。それを手助けせねばならない。

 

手近な所では、王立魔法研究所にいるエレオノール姉様なんかどうだろうか。パチュリーの持つ魔法技術と、アカデミーの研究成果を交換こして貰うんだ。魔法が大好きなパチュリーにとって、これ程喜ばしい事も無いだろうに。

他には、そう。あのおっかない、マザリーニ枢機卿を紹介しても良いかも知れない。パチュリーにとっても、良い社会勉強になる筈だ。

 

「これから忙しくなるわね…」

 

ルイズは思わずそう溢してしまい、いやいや、弱気になるな、と自分に喝を入れた。

 

他にも色々な人を、様々な土地を紹介してあげないと。家族は勿論のこと、この国の王家、友好国の人々も紹介してあげたい。

ヴァリエール家の、正式な客人として。

ルイズの恩人として。

 

ルイズは休学してでも、このくらいはするつもりだった。

パチュリーを此方へ引きずり込んだのは、間違い無くルイズ自身だからだ。元より帰る手段くらいはパチュリーがどうにでも用意しそうなので、あまり重くは考えていないのだが…コレがルイズなりのケジメである。

 

こうしたことを、ルイズが心に決めた直後の事である。

彼女は真っ先に、ツキから見放された。

 

「ミス、貴女は一体…」

 

「ルイズの使い魔です。」

 

コルベールの問い掛けに対して、パチュリーが即答してしまったのである。

ちょっと、テキトウな事言わないで?!話し掛けられたからって、知らない人にホイホイ答えちゃダメよ!!

 

と、声を大にして言いたいのであるが…二人はドンドン会話を進めて行ってしまう。考えを纏め切れないルイズに、ついて行けよう筈も無い。

 

「そ、そうですか…。いや、申し遅れました。私、このトリステイン魔法学院で教員を務める、ジャン・コルベールと申します。」

 

「ああ、ひょっとして貴方がルイズの言ってた先生?」

 

「ええ、そうですが。ミス・ヴァリエールとはお知り合いで?……私の顔に何か?」

 

「ルイズから話は聞いていましたが……随分と若いので驚きました。」

 

「私が、若い?……まあ、流石はミス・ヴァリエールの使い魔ということでしょうか。想像が追いつきませんな、コレは。」

 

チョット、どういう意味よ、ソレは?

 

ルイズが憤っている間に、コルベールは授業の締めくくりに入ってしまった。この子大丈夫か、とかひょっとすると少女に見えるだけの婆さんなのか、といったパチュリーに関する疑問は全て後回しにするようだ。

 

「ミス・ヴァリエール、それでは使い魔との契約を。」

 

クソっ!ツケ入る隙が無かった!

ルイズは必死に表情に出すまいとしながら、渋々とパチュリーとの間隔を詰め…これからの事を話し合おうとした。

 

その時の事である。

 

「契約なら、もう済ませましたよ。ルイズが私の全要求に応じ、私の行動に無限責任を負うという条件で、合意に至っています。」

 

「エッ?」

 

ルイズは思わず、間抜けな声を出してしまった。何を言ってるんだ?そんな事は話し合った事もなければ、頷いた覚えも無い。まぁ…結果として同じ事はするつもりなのであるが。

 

と言うよりも、何で世間知らずなクセして、こういう変な知識があるのよ!無限責任って、嫌な予感しかしないんだけど?!…って、そうか!本か!一体どこのアホ作者の著作だよ!無駄知恵授けやがって!

 

いやいや、落ち着け、私。

ルイズは、心の中で小休止をとった。考えを、目の前の事に向けたのである。

そもそも、契約とはそういうものではない。

 

キスだ。

 

ああ、睫毛長いなぁ…って、無駄に美人なのよアンタは!真剣な顔してコッチ見ないで!意識しちゃう、意識しちゃうから!

ルイズが妙にアタフタとし始めた、その時の事だった。

 

『適当に話合わせて、後は任せなさい。』

 

パチュリーが、あのよく分からない魔法で話掛けて来たのである。ルイズには、返答のしようがない。

任せられるかド阿呆!と思いながらも黙らざるを得ない状況下で、コルベール検閲が入ってくれた。

 

「いやいや、コントラクト・サーヴァントはそういうものでは無くてですね。確立した呪文と動作があるのですよ。」

 

「それは不要です。確か、感覚を共有させる魔法ですよね?それならもう、出来てますから。」

 

フザッケンナ!それはアンタしか出来てないでしょうが?!共有の意味調べて、出直して来なさいよ!

と、言いたくても言えないのがルイズの立場である。

 

「本当ですか?ミス・ヴァリエール?」

 

「ええ、まぁ…一方通行だったりするんですが…」

 

ルイズは最早、成り行きに任せようと思い始めていた。

ここでヘタに茶々を入れれば、パチュリーの折角の奮闘が無駄になってしまうからだ。

ルイズが魔法的な初心者なら、パチュリーは社会的初心者だ。それが、助け舟を断ってまで、独力で解決に至らんとしているのである。

ルイズとしては、ここはもう大きく構えるしか無い。その後で、じっくり腰を据えて皆で話し合おう。

 

「そうですか…それでもまあ、口頭での会話が可能な以上、不自由はせんでしょうな。いやはや、ミス・ヴァリエール!貴女は一体いつ、こんな立派なメイジとお知り合いになられたのです?これでは私の立つ瀬がありませんぞ。」

 

ワッハッハと人の良い笑顔を浮かべるコルベールが、ルイズには眩しくて堪らなかった。思えばこの人の、この不器用な笑顔と振る舞いには、これまで何度も救われて来たのである。

 

だが、願わくば自分の使い魔と認定して欲しくなかった。パチュリーが、一人のメイジとしてより広くこの世界と向き合う機会を奪ってしまう事になるからだ。だがそれは、ルイズの身勝手と言うものなのだろうか?

 

思えばこの物臭メイジが、利他心など持ち合わせている筈も無い。それならとっくの昔に、何処ぞで聖人扱いされているだろう。そこはもう、自分が教えてあげるしか無いと言うのだろうか…。

無茶言わないでくれ…

 

と。

 

「おお、危うく忘れる所でした。よろしければ、使い魔のルーンを見せて頂けませんか?」

 

「使い魔の…何ですって?」

 

パチュリーから『聞いてないわよ、そんなの』という声が届き、ルイズは思わずガッツポーズをとりそうになった。

そうだ、その手があるじゃないか!

と、一瞬思ったのだが…

 

「それは一体、どういうものですか?」

 

「おお、これは失敬。失言です、忘れて下さい。使い魔の身体の表面に現れる、ルーン記号の事を指すのですが…女性に素肌を晒せとは、とんだご無礼を。」

 

ルイズも思わず、安堵した。

パチュリーには羞恥心とか無さそうだから、この場で服を脱ぐくらいは躊躇いもしないだろう。そうなったら、ルイズが引っ叩いてでも止める必要があった。出来れば御免被りたい役割である。

 

まぁ、何はともあれコレで丸く収まるだろう。

医務室でパチュリーの全身にルーンが無い事が分かれば、流石に話し合いの場が持たれる筈だ。誠心誠意お願いすれば、後はルイズの考え通りに事が運ぶ筈だ。

 

これはこれで、パチュリーにとっては良い経験となった事だろう。思い通りに行かない事を知るのは、大事な社会勉強である。

 

この様に、ルイズが完全に油断し切った後の事であった。

 

「ルーン記号って言えば…こんな感じですか?」

 

ルイズは呆気に取られた。

パチュリーが、白魚の様なその人差し指で、手の甲に何やら書き付け始めたからだ。見てるだけで背筋が泡立つ様な絶妙なタッチで指が踊ると、その軌跡が爛々と光り輝き始めたのである。

それは線となり文字となり、魔法陣と呼ばれる術式を型どり始めた。

 

その描写速度たるや、これまた神業の領域であった。目にも止まらぬ速さで、文字による複雑な図形が形成されてしまったのである。

 

…魔法の事になると、指先くらいは動かすのね。

 

この様に、ルイズが思わずこの場の空気を忘れて魅入ってしまう程の、小さな芸術だった。

 

「おお!コレは……初めて見るルーンの図形です。」

 

コルベールの唸り声が上がり、ルイズは正気に立ち返った。

不味い。非常に嫌な予感がする…。恩師が、パチュリーに負けず劣らずの変人研究者であることを忘れていたのである。

 

ルイズは今、全く別な角度からこの出来事を見つめていた。

 

パチュリー・ノーレッジにとって、これは初めての交渉ごとだ。この結果が、魔法技術で誤魔化せば何とかなる、という教訓に繋がってしまったら、末恐ろしいことこの上ない。

これを機に、絶対味をしめてしまうだろう。

 

即刻、中止させる必要がある。

 

「ミスタ・コルベール?私の使い魔の手をマジマジと覗き込むのは、少々破廉恥じゃありませんか?それとね、パチュリー!アンタ、どれだけ自由を謳歌すれば気が済むのよ?!少しは慎みなさいよ!」

 

ルイズは、胸を張って一喝した。

これで少しは、平常心を取り戻す事だろう、という願いを込めて。

 

しかし…彼女はナメていた。研究者のひたむきさと諦めの悪さを、完全に過小評価していたのである。

 

「いやいや、そうは仰いましてもな、ミス・ヴァリエール。せめてスケッチだけでも…」

 

「それなら、もっと簡単な方がいいですよね?それとこれ、図形じゃなくて文字ですから、もっとよく見て下さい。」

 

「おお、す、素晴らしい…」

 

パチュリーはそうとだけ言うと本を持つ手を入れ替え、書き指と手の甲を逆にして、先程よりも簡素な魔法陣を描き始めた。器用なものである。

 

ルイズには、パチュリーのやっていることが信じられなかった。

一体これは、どういうつもりなの?!私の使い魔を名乗っておいて、私より先にミスタ・コルベールに気を利かせるなんて!アンタは、どんだけ魔法バカなのよ!

 

妙な怒りを覚えてしまったものだが、それでもコレだけは指摘せざるを得まい。

 

「今の見ました?!いや、聞くのも烏滸がましい!ハッキリ見ていましたよね、ミスタ・コルベール!今、即席で書き上げていたじゃないですか!こんなの、完全なインチキですよ!キッパリと、使い魔のルーンじゃないって、宣言して下さい!」

 

「…いいえ、そうとは言い切れません。彼女の指の動きと、ルーンとの対応関係は、詳細な検証が必要です。時差を置いて発動する特殊なルーンである可能性も否定出来ず……」

 

「調子いいこと言わないで下さいよ?!やめて下さい、こんな、年頃の女の子に弱み握られた中年みたいな真似!何か、やましい所でもあるんじゃないかと疑われちゃいますよ?!」

 

「私はそういうの、全然気にしないわよ。」

 

「アンタは少し、黙ってなさい!」

 

嫌だ、もう疲れた。何なんだこれ。

ルイズは大きく肩で息を吸い、もういいですよね?とコルベールを睨みつけた。流石に彼も、わかってくれることだろう。

 

「オホン、失礼致しました。それではミス・ノーレッジは無事、ミス・ヴァリエールの使い魔となられた事が確認できましたので、本日の授業はこれまでと致したいと思います。」

 

「は、話聞いてましたか?一体何を…」

 

「ミス・ヴァリエール!これは、伝統なのです。使い魔と主人は、一心同体!主人が使い魔を受け入れずして、一体誰が彼女を受け止めると言うのです!

それでは、私はこれからこの魔法陣の解析に取り掛からねばならないので…午後の授業は休講とさせて頂きます!」

 

颯爽と歩み去るコルベールの背中を、ルイズは呆然として見送った。

 

おい、バカ!何の真似だ?!

よりによって教師が、不正を認めてどうするんだ?!

児童買春より罪深いぞ、おい!!

…いや、それよりも…アンタはアンタで笑ってるんじゃないわよ!

 

ルイズはパチュリーを睨みつけた。全ての元凶を。

いや、彼女に罪は無いのか。ダメな大人と、非力なメイジに出会ったばかりに、悪徳を真っ先に覚えてしまうとは。

 

いや、それより大事な事があるか。

 

「全く…アンタね、笑う時くらいは表情作りなさいよ。」

 

ルイズは今、似通っていると聞かされたばかりのパチュリーの魔力が、小幅な上下動を繰り返すのを感じていた。

 

全く、何て事だ。

せめて、表情筋くらいは使いこなして欲しい。顔で笑わずに魔力で笑うなんて……一体どこまでこのメイジは…メイジなんだ。生粋すぎる。魔力の無駄使いだ。

 

段々とそれに毒されている自分を感じて、ルイズはますます鬱屈とした気分になるのであった。

 

 

 

 

 

「おい、ゼロのルイズ!メイジが召喚出来たからって、調子に乗るなよ?!」

 

「そいつにレビテーションで送って貰うんだな!」

 

「オマエは所詮、使い魔以下なんだよ!」

 

コルベールが風の様に居なくなった広場は、暫く白けた雰囲気に包まれていた。誰もが目の前の事態に置いてけぼりになっていたからだ。

そうして漸く、ザワザワと喧騒が戻り始めたと思ったら、コレである。

 

だが、ルイズはまさか自分に対する嘲笑を、これ程頼もしく感じてしまう日が来る事になるとは思わなかった。別に妙な性癖に目覚めた訳ではない。

 

ルイズはコルベールの後をついて行こうとしたパチュリーを、この場に留まらせていた。大事な話があるから、と。そのキッカケとして、いまの自分への同級生達の評価がとても大切な役割を果たすのだ。

 

「パチュリー、今のを聞いた?」

 

「ええ。普通、こういう場合は怒ったりするんでしょう?ああ、私の魔法を見たいなら、全機撃墜するわよ。楽しそうよね。」

 

「あのね、そういう事じゃないの。言い方に問題こそあれ、彼等の言い分は正しいのよ。私は所詮、彼等以下のメイジなの。」

 

「それで?愚痴を言いたいの?」

 

ルイズは大きく息を吸った。まあ、当たり前か。そんなのを気にするタマには見えない。

ハッキリ言わなければ、分かるはずも無いか。

 

「私はね、貴女を客人としてもてなしたかったのよ。人並み以下の私の使い魔なんて、貴女に失礼じゃない。…そもそも何で勝手に、私の使い魔だなんて言い出しちゃったのよ?」

 

「礼儀なんてどうでもいいわよ。見知った貴女の庇護下でこの世界を研究するのが、一番手っ取り早いからよ。」

 

「もっと研究に適した場所や施設は、いくらでも用意してあげられたのよ?こんな事偉そうに言いたくないけど……私の家はそれなりの権力と財力があるから。」

 

「別に良いわよ、面倒臭い。サモン・サーヴァントを改良出来たら、研究は場所を問わず行える事になるわ。私の居る所が、研究施設となるのよ。」

 

「……まぁ、貴女ならそう言うと思ったわ。」

 

ルイズは段々と、常識外な事を言い始めるこのメイジが気に入り始めていた。実際に一緒になって色々とやれば、それはこの上ない素晴らしい経験となるだろう。

だが…きっとそんな愉快な気持ちにはなれない。

だからこそこれだけイライラするのだ。

 

「あのね、そういう事じゃないの。貴女は使い魔の意味を知らないのよ。使い魔には人権が無いの。だから貴女がこれからやる事なす事の全てが、私のものと見做されちゃうのよ。コレが、どういう事かわかる?」

 

「いい事だらけじゃない。貴女は私を保護して、私の成果で得をするんでしょう?何が問題なの?」

 

「誇りの問題よ。私はこれから、貴女の手柄を横取りしちゃうの。これがきっと、泥棒の始まりよ。貴女の手柄の上に胡座をかくなんて、真っ平御免なのに。貴女には私の使い魔としてではなくて、一人のメイジとして、この世界に向き合って欲しかったのよ……」

 

「興味無いわね。元より貴女の使い魔なんて、身分証としか思っていないわ。今も昔も、私は私よ。貴女も貴女でしょうに。たかだか一つの魔法に、囚われ過ぎなのよ。こういう場合、何と言うのかしらね。御愁傷様?」

 

クッソ、本当に歯に衣着せぬ物言いしかしないわよね。

もう慣れたけど。

 

「貴女にとってはたかだか一つかも知れないけどね、私にとってはまだまだたった一つの大事な魔法なの。だから、それを成功させるのを手伝ってくれた貴女が、私の使い魔だなんて認識されるのは嫌なのよ。貴女の名誉を傷つけられて、何も言い返せないなんて…」

 

この時再び、パチュリーが笑ったのが分かった。例の魔力のアレである。

しかし、何て失礼な奴何だ。私が憤っているのは、貴女の……いや、ひょっとして自分の無力さに腹を立てているだけなのか?

 

「ルイズ、今の気持ちを忘れない事ね。その感情は、これ以降は味わえないものだから。それ自体はとても貴重なものよ。」

 

ルイズには、この相手の言わんとしている事がわからなかった。

 

「何を言ってるの?そんな簡単に魔法が使える様になるなら、苦労はしないわよ。」

 

「召喚のときの事を忘れたの?貴女と私の魔力は、極めて相性が良い。だから、私が補助すれば貴女は失敗しないわ。その感覚を元に練習を重ねれば、自力での運用は充分に可能でしょう。そして何よりも、私の使える魔法は貴女にも使えておかしくない。」

 

ルイズは思わず、声が震えた。

 

「…わ、わけ分かんないわよ。貴女の使える魔法の一体どれ程が私に…」

 

「理論的には全てよ。今私がやってるみたいな単なる魔力の操作から、習得済みの精霊魔法。そして、これから習得するこの世界の魔法も。」

 

まぁ、後半部分は大見得切って終わるかも知れないわね。

その様に締め括られて、ルイズの震えは一層抑える事が出来なくなり始めた。パチュリーが、柄にもなく冗談を言ったからではない。

 

ルイズは思い出したのだ。

これは、初めて魔法を習い始めた時に感じた震えと、全く同じものだった。

 

これから私は、メイジになれるんだ。

 

そう思った時のあの感動が、深く彼女を揺り動かし始めていた。

 

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