「目標、Aポイントまで距離八十―」
ウォール・ロゼ壁上。
グレイスの声を聞きながらミハエルはバレットのスコープを覗く。
そこには我が物顔で陥落したシガンシナの街を闊歩する巨人の姿が映っている。
「距離―70、60、50、40…」
グレイスのカウントダウンと共に巨人の姿がだんだんと近づいてくる。
ミハエルは息を呑みながらその時を待つ。
「30…20…10」
ゼロというグレイスのカウトと共に巨人が地面を足につけた瞬間。
地面が大きく盛り上がり爆発が起こる。
それと同時に巨人の足が吹き飛ばされる。
その原因となったのはミハエル達、技術兵団が昨晩に設置した爆発物が原因である。
対戦車地雷の構造を利用した対巨人用の地雷である。
巨人がいない夜間に荷馬車が通る中央道を外して設置しておいたものだ。
当たり前であるが巨人に対してはこの程度の傷を与えた事などは何の意味もなさない。
そのようなことはミハエル自身も承知している。
では何のために地雷を作り、設置したのかと問われればその理由はミハエルの覗くスコープの中にある。
先ほど足を吹き飛ばされた巨人が前のめりに倒れている。
弱点であるうなじは見せた状態である。
巨人が倒れ込むと同時に砲撃に似た音と共に、スコープ内の巨人のうなじが吹き飛ぶ。
銃声の方に目をやるミハエル。
そこにいたのはミハエル同様にバレットを構えた男性。
開発兵団の後見人であると同時に駐屯兵団の司令官であるドット・ピクシシの姿があった。
話は今より一週間前に遡る。
「うなじに弾がなかなか当たらないか…」
手に持った紙束を見ながらミハエルは呟く。
ミハエルの開発したバレットの試作品が作られ、駐屯兵団により試射が行われたのだ。
ミハエルが見ているのはその時の報告書である。
曰わく、バレットの反動が大きすぎるために巨人を上手く狙撃することができないとのことだった。
一応、三脚をつけてはいるがそれでも激しい反動は押さえきれるものではない。
おまけに、ゆっくりとはいえ動いている巨人に命中させるのはなかなか難しいとの事だった。
「どうする?口径と銃弾を小型化する?」
隣で報告書を見ていたグレイスの言葉にミハエルは首を横に振る。
「それは駄目だ」
とミハエルは答える。
一撃で巨人を葬る銃がバレットの開発コンセプトである。
口径を小さくすればそれが叶わないからだ。
「ならどうするのよ?」
「うーん」
顎に手を当てて悩むミハエル。
ミハエル自身は生前に従軍経験がありバレットでの狙撃は経験している。
だがやはり反動が強く、動く獲物を狙撃するのは難しい印象を抱いたのだ。
「せめて…巨人が動かないでいてくれたらなー」
「そうか!!!」
ポツリとグレイスが呟いた言葉にミハエルは立ち上がり叫ぶ。
「いっ、いきなりどうしたのよ?」
いきなり立ち上がったミハエルにグレイスは目を円くする。
「動いてる状態が狙いにくいなら足を止めてしまえば良いんだよ!!」
「はいっ?」
嬉しそうに叫ぶミハエルに首を傾げるグレイスであった。
このような経緯を経て開発されたのが対巨人用の地雷である。
今回、地雷に興味を持ったピクシスが自らその性能テストに参加したいと言ってきたのだ。
「ふむ、銃を小型化するのでは無く巨人の足を潰して狙いを付けやすくするとはなかなか良い着眼点だ」
ピクシスがスコープから顔を離してそう評価をする。
「「ありがとうございます」」
ピクシスの言葉にミハエルとグレイスは頭を下げる。
実を言えばピクシスが開発兵団の開発した兵器の運用テストに顔を出すのは今回が初めてではない。
ウォールロゼ中央にある開発兵団の屯所に一週間に一度の割合で顔を出している。
そのせいもあってか技術兵団は軍内外問わず注目を浴びるようになっていたのだ。
「二人とも兵団に入って半年しか立たぬと言うのに良く頑張っておるな…。
何か要望があれば聞こう」
ピクシスの言葉にミハエルは顎に手を当てて考える。
『このまま本格的に巨人を一撃で葬れる携帯火器の開発に乗り出す許可を取るべきか…』
実を言うとどのような武器を造ろうかと言う案はミハエルの頭の中では出来ている。
だがそれで鎧の巨人や超大型巨人を仕留める事が出来るかどうか…。
まだ一抹の不安も残る。
『まだあれの開発には気がな気がするしな…』
そう考えたミハエルはある提案をピクシスへと出すことにした。
「それでは司令に一つお願いしたいことがあるのですが…」
以前より大分、間が空きましたが贖罪の転生者第二話となります。
既に頭の中ではラストの大まかな構想は出来ており、今後はそれに向かった進んでいこうと思っておりますので今後の展開をお楽しみください