進撃の巨人~贖罪の転生者~   作:灰音穂乃香

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最終話『巨人のいる世界でー』

壁の外に広がる森林、ミハエルとグレイスは調査兵団の壁外調査に随行していた。

ミハエルの作った対巨人用兵器の作動試験を行うためである。

 

先日、ピクシスに無理を承知で頼み壁外調査に随行する許可を得たのだ。

荷馬車に乗る彼らの前方では立体軌道装置による三次元的な動きを用いてその人物が巨人へと肉薄、すぐ様にブレードを振るいうなじを切りとばす。

うなじを斬り飛ばされた巨人が倒れるよりも早く、ワイヤーを打ち込みその人物‐即ちリヴァイ兵長は五十体目となる巨人へと肉薄する。

彼が手に持つのは既存の硬質ブレードと同型のものと同じような形状のものであった。

だが、この刀身こそがミハエル達が技術班と共に新たに作りあげた刀身であった…。

 

「うへぇ…」

 

先行するリヴァイを荷馬車に乗りながら見ていたグレイスが感嘆の声を漏らす。

彼女が声を漏らす理由はリヴァイの技術だけでは無く、彼が手にするブレードの耐久性と切れ味にも向けられていた。

現在、リヴァイは五十体以上の巨人を葬っているにも関わらず一度も刃もガスも交換を行っていないのだ。

これは彼の使用しているブレードの材質が従来ものと異なるからだ。

その素材とはステンレス鋼―クロムやニッケルなどを混ぜた鋼であった。

この通常の鋼よりも頑丈で軽い金属を用いることによって持ち運ぶ替え刃の量が少なくなったのだ。

更に彼がガスを交換していないのも理由がある。

立体軌道を用いるリヴァイが腰に付けている替えの刀身を納める鞘、そのサイズが従来のものより小さいのだ。

それによって一度に持ち歩けるボンベの量が増え、更にボンベとノズルの間に三叉弁を設ける事により、ノズルをボンベへと付け替える手間を省いたのだ。

この装備はリヴァイのみならず、調査兵団のメンバー全員に行き渡っている。

より、多くの人間から意見を聞くためである。

 

「………」

 

前方のリヴァイ班が巨人を駆逐していくのを見ながらミハエルは何か奇妙な予感を感じていた。

怖気が背筋を這い上がるような嫌悪感を感じるのである。

彼の前世での経験を含めてこのような嫌な予感は大抵、当たっていた。

 

「ミハエル!」

 

グレイスの叫ぶ声と共にミハエルは幌から身を乗り出して上空を見上げる。

空には黒い煙弾が上がっている。

それは即ち、奇行種が近づいている事を示していた。

更に状況を確認するためにバレットのスコープとして使用する望遠鏡を覗くが、巨人が排出したと思われる大量の水蒸気が視界を遮っていた。

時折打ち上げられる煙弾が巨人が自分達に向かってきている事を知らせていた。

だが、スコープは湿気で曇り始めており狙撃は難しいと思えた。

 

「グレイス、手綱を頼む!」

 

そう言ってミハエルも後続に奇行種の存在を告げるために煙弾を放ち、直ぐ様に荷台へと向かうと積んであった木箱を開け、中身を数十秒程で組み立てる。

組み上がったのはボルトアクションタイプのバレットだ。

バレット、M82A1の威力はそのままにセミオート機構を廃してボルトアクション形式を取った事により命中精度を高めたもなだ。

 

ミハエルがバレットを組み上げると同時にミハエルの後方にいた隊からの煙弾を確認する、それと同時に声高らかに叫ぶ。

「ここでで奇行種を撃つ!グレイス!馬車を止めて信号弾を撃て!!」

 

「了解っ!!!!」

 

ミハエルの号令と共にグレイスが馬車を止め赤の煙弾を放つ。

その場で奇行種を迎撃することを告げるためのものだ。

それと同時に巨人の身体から貫通した銃弾で味方に被害が出ないように団員達を下がらせる事も目的としている。

 

それを確認するとミハエルはバレットを地面に固定させると腹這いになる。

同時にミハエルの目に背中から大量の蒸気を噴出させ、トカゲのように地面を這いながら向かってくる巨人の姿を捉える事が出来た。

 

『ちっ…四足歩行か!』

 

ミハエルは心の中でそう毒づくと肉眼を頼りに巨人に狙いを付ける。

 

二足で歩行する巨人とは違い、四本足で進んでくる巨人の場合は銃を用いてうなじを狙うのはかなり困難だ。

 

『どうする?…足を吹っ飛ばして動きを封じた状態で調査兵団に立体起動装置で…うなじを切り落としてもらうか…?

いや…待てよ…』

 

何かを思いついたのかミハエルは背嚢から筒状のそれ出してグレイスと馬車を百メートル程下がらせる。

同時に、折り畳まれていたフロントサイトとリアサイトを展開、筒を引き伸ばすとしゃがみ込み肩に担ぎ狙いを定める。

 

奇行種との距離は200メートル余り、それ‐M72E10…対戦車用ロケットランチャーの射程には充分すぎる。

 

「くたばれ!」

 

叫び安全装置を解除、上部のトリガーを押し込む。

 

瞬間、弾道を安定させるための六枚の翼を展開させた弾薬が火を吹きながら奇行種の顔面に直撃、爆発する。

毎秒に145m進む砲弾は一瞬で奇行種との距離を0にすると、その頭蓋を貫通、信管を作動させて砲弾内の形成炸薬を爆発させたのである。

 

「つっ!」

 

巻き起こる爆風にミハエルは地面を転がりながらも確かに見た。

 

内部からの爆発によって頭部とうなじを吹き飛ばされ地に付した巨人の姿を―。

 

 

 

 

一ヶ月後。

 

「うわー」

 

どこまでも広がる地平線にグレイスは籠のようなものから身を乗り出し、感嘆の声を漏らす。

現在、ミハエルとグレがいるのは上空数百メートルの地点である。

 

どのような方法を用いて二人がこのような場所へ来たかと問われると、ミハエル達が乗る籠のようなものを使用しているからだ。

 

風船と籠とバーナーが一緒になったようなそれは熱気球である。

熱気球は風船の下に取り付けられているバーナーで熱し、外気との比重の違いにより発生する浮力で上昇するものである。

 

これを開発した理由は上空から巨人の動きを偵察するためである。

 

 そしてミハエルが気球を開発したのはもう一つ理由がある。

 

「グレイス」

 

早鐘を撃つ心臓を落ち着かせるとミハエルはグレイスに声をかける。

 

「んっ?」

 

振り向いたグレイスにミハエルは喉を唾液で塗らすと言葉を継ぐ。

 

「これからも俺の隣で…俺の事を支えてくれないか…」

 

「えっ?」

 

壁外調査を終えてから考えた言葉にグレイスが目を円くする。

「まぁ…その…俺と…結婚してくれないか?」

 

「………」

 

絞り出すように告げた言葉にグレイスが気恥ずかしそうに俯く。

 

そしてー。

 

「こちらこそ…よろしく」

 

顔を上げたグレイスは顔を赤くしてそう答えたのであった…。

 

 




前作より無茶苦茶遅れて進撃の巨人~贖罪の転生者~第三話(最終話)を上げさせて貰いました。
本来ならば新規に四話として物語を書く予定でしたが文字数が少なかったため、このような形を取らせて貰いました。

今まで、応援してくださった皆様ありがとうございました。


この度、進撃の巨人~贖罪の転生者~の方を完結させて頂きました。
応援してくださった皆さん、ありがとうございました。
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