プリヤ世界に姉を入れてみた件 作:メルトリリス可愛いよメルトリリス
「シロウ……強くなりましたね……」
渾身の一撃が黒く染まり在り方さえも反転したセイバーを捕らえる。
そして、彼女に致命傷を与えることができた。だが、自分に許されたのはそこまでだった。
限界を超えた魔術の行使、移植されたアイツの腕の解放に自分の身体が先にガタが来てしまっている。
目の前に居る致命傷で動けないセイバーに止めを刺し、たった一人で桜と対峙している遠坂を助けなければならない。
だが、己の身体は鉛のように動かず意識は徐々に遠退いていくばかりだ。
「……いえ、それは違いましたね。貴方は、初めから強かった」
それは違うと反論したかった。セイバーが居てくれたからここまでやってこれたのだ。未熟な自分だけなら直ぐにでも死んでいたはずだ、と。
薄れ行く意識のなかでもそれだけははっきりと言える。
セイバーは俺が既に終わっていることを理解し、背を向ける。
「……ではシロウ。私の勝ちですね」
そして、大聖杯のある大空洞へ向かっていった。
あぁ……そうだ。今回も勝てなかった。この身は捨て身の特攻でようやくセイバーに届きはした。しかし越えることは出来なかった。
そんなセイバーを傍目に見ながら俺は深い闇のなかに沈み込むように意識を手離した。
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何れぐらい時間が経っただろうか。
時間の感覚さえ曖昧になってしまう程に何処かで漂っていた様な記憶がある。そこで常に感じていたのは『死』だった。
そんな感覚に浸っていると大切な何かが削ぎ落とされていく感覚と共に思い出せない事が多くなっていく。
自分がエ■ヤシ■■だと言うことさえも。
だが、失われていく物の中でも忘れない物は確かに有ったんだ。
セイバーの事や
そして、自分と言う存在さえ曖昧になりそれしか思い出せない程に磨耗した頃、突如そんな世界に光が差し込んだ感覚と共に何処かに強く引っ張られていく。
そして、何処かに浮上していく感覚と共に意識が一旦途切れる様な感覚を覚えた。
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身体が重く、微かな消毒液のアルコールの匂いが鼻を刺激する。
久々に生を感じさせる感覚がそれだった。ここが現実なのだと確信を持って目を開く。
「……ぁ」
そこは予想通り何処かの病院の一室だった。
良くある個室の病室で誰かが定期的に見舞いに来てくれているのか花瓶にはまだ枯れていない花が活けてあった。
たったそれだけの風景。
それを見て思わず涙が溢れてきた。自分が居たあの死に満ちた空間から出れただけでこんなにも世界が美しく見える。
そして、しばらく涙を流しながらドアの開く音と共に誰かが入ってくる気配がした。
「……っ。嘘……士乃ちゃんが起きてる?た、大変!先生とご家族に連絡しなきゃ!」
看護師と思わし女性がそう叫びながら病室を慌ただしく出ていく。
はて……士乃?自分の名前はそんな名前だっただろうか?あの空間に居たせいで曖昧だが自分の名前は似てはいたが違う名前だったような気がする。
そう思い、ベッドに有った名札を見てみるとそこには『氏名:衛宮士乃 性別:女 年齢:10歳』と記されていた。そして、ドアの横に有った水場の上に有った鏡で自分の姿を見てみると少し痩せすぎだが何処か親近感のある茶髪の少女が写っている。
「あははは……なんでさ……」
そんな自分の姿を見て自分の口から自然とそんな言葉が漏れていた。
そして、暫くしてから医者や看護師がたくさんやって来て脈拍やら初歩的な検査を受けている。
医者や看護師は奇跡だと口々に言っているおり、時折良く頑張ったねと涙ながらに声を掛けてくれる。ただ、自分がどんな状況に有ったのか全く知らないので愛想笑いで感謝を言う位しか自分には出来なかった。
一通り検査が終わったあと、看護師の一人が医者に何かを耳打ちしていた。
その後、直ぐに医者や看護師が病室から出ていく。
どうやら、自分の家族が面会に来るそうだ。
「しかし……家族なんて……死んだ爺さんしかいないのにな……」
不意にそう口から言葉が出る。
しかし、今の自分にはその爺さんが誰の事かさえも思い出せない。
とても尊敬して憧れていた誰か、そしてその人の夢であった正義の味方になると言う夢を受け継いだとしか分からない事に苛立ちを覚えるほどに。
そして、複数の足音が此方に向かってくる。
「姉ちゃん!」
そんな声と共に飛び込んできた今の自分と同年代の少年。私はその姿を見て頭を鈍器で殴られた様な感覚を覚えた。
その少年は何と言うか……かつての思い出せないはずのセイバーと出会う前の自分だと確信を持ててしまう。
そして、自覚する。
目の前の
それを自覚した瞬間、この身体の本当の持ち主だった衛宮士乃の記憶が流れ込み、削ぎ落とされた空っぽの自分を埋めていく。
補充された記憶が自分をかつての■ミ■■ロウから衛宮士乃へと変えていく。
「うん……久しぶりだね、士郎?
気が付けばいつの間にか自身の一人称まで変わっていることに気が付き内心苦笑する。
この身体の元の持ち主である衛宮士乃は目び前に居る士郎ともう一人の大切な妹を助けるために身を挺して暴走車から護ったのだ。
そんな背景が有るのか士郎は泣きながら謝ってくる。
「姉ちゃん! ごめんなさい! 俺のせいで!」
「ううん、私は士郎達のせいだと思ってないよ。寧ろしくじったのは私。」
「でも、姉ちゃんは俺のせいでっ!」
「士郎。私は自分がしたことに対して後悔はしてないの。寧ろ……貴方達を助けれて安堵してる位だしね」
「………。 はぁ……姉ちゃんは何時もそうだ」
そんな士郎に流れ込んできた今は亡き本物の士乃の想いを告げる。
そして、士郎に遅れてよく知った人達が病室に入ってきた。
「士乃っ!!」
その中の一人、私と士郎の義理の母親であるアイリお義母さんが私を優しく抱き締める。
「アイリお母さん。ただいま……」
「えぇ、おかえりなさい……」
アイリお母さんはそんな自分に対して涙を流しながらも笑ってそう返してくれた。
そして、そんな私たちを微笑ましい表情で見ていたお父さんの切嗣も私に声をかけてくれた。
「士乃、お帰り。良く戻ってきてくれたね……。事故の報せを聞いた時に僕もアイリも生きた心地がしなかったんだぞ。 こんな遅い時間だからイリヤは連れてこれなかったんだ。すまないね」
「ごめんなさい……じ……お父さん。それはしょうがないよ。イリヤはまだ小さいから……」
ん?今私はお父さんの事を別の言い方で言いかけたような?もしかしてだけども前の自分がそう呼んでいたのかもしれないが今は思い出せない。
改めて、今の自分は幸せものだと思う。義理ではあるが両親がいて双子の弟の士郎と義理の妹のイリヤが居る。
前の自分は家族なんて居なかったような気がするしね。
そして、しばらくの間みんなと話をして体力を使い果たしたのか私は倒れ込むように意識を手離した。
腕士郎inぐだ子。クラスカード回収に介入するためにはこれぐらいしないとダメかなと思ってやってしまった……。