プリヤ世界に姉を入れてみた件 作:メルトリリス可愛いよメルトリリス
「問おう、貴方が私のマスターか?」
あぁ、私は夢を見ているのだろう。これは私が何度も見ている夢だ。
戸が完全に開ききり月明かりが差し込む土蔵。そこに一人の少女が立っていた。
それは
凛々しい表情、美味しそうに食事を取る彼女の表情、彼女の清廉潔白さを具現したような剣捌きを。そして……目の前に立ち塞がった黒く染まり反転した彼女。
それら全ての彼女との思い出が色褪せずに全てを思い出せる。
「召喚に従い参上した。これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。――ここに、契約は完了した」
あぁ、彼女とはこんな感じで出会ったんだっけ。
「……ぱい、先輩起きてください!」
私が感傷に浸っていると声が聞こえたと思うと私を現実に戻していく。
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「士乃先輩!また、居眠りしてたんですね……」
目を開けるとそこには発育の良くスタイル抜群、片目が隠れるボブカットがよく似合う私の後輩が机の横に立っていた。
「おはようマシュ。なんかとても懐かしい夢を見ていた気がするんだ」
「もう……全く先輩は……。イリヤちゃんや士郎さんが探しているの見て探しに来たら眠りこけていたので驚きましたよ……」
そう言いながら若干頬を膨らませ私怒っていますとアピールしているのは私のかわいい後輩であるマシュ・キリエライトだ。
彼女はイギリスからの留学生で半年前に知り合った。
ちなみに知り合った切っ掛けは不良に絡まれているところで士郎と一緒に買い物をしている際に出くわし、士郎の何時もの癖であるお節介で不良とマシュの間に割って入って一緒に逃げ出した事から始まる。
「ごめんね、埋め合わせは何か奢るからそれで許してね」
「そう言うのは良いので早く二人の元に向かってください。特にイリヤちゃんが怒っていましたよ」
「うげぇ……それはちょっとやだなぁ。これ以上イリヤを怒らせないように直ぐに行くね」
「はい、そうしてあげてください。イリヤちゃん達は校門前に居ますよ」
「ありがとう、マシュ!!」
私は部活があるマシュに見送られながら私は士郎とイリヤの居る校門に急いで向かうのだった。
余談だが穂群原学園の一部男子生徒達からは百合ップルだの百合夫婦だの言われていた。
が、言い始めた三枚目の某ワカメが二人に粛清されたのを切っ掛けに滅多なことでは言われなくなったらしいが今なお百合愛好家やレズぅな女子には根強い人気があるとか無いとか……。
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「士乃お姉ちゃん、おっそーい!!」
「士乃ねぇ……また居眠りしていたのか……」
私が校門に着くと案の定イリヤはご機嫌ななめで、士郎は若干呆れていた。
「ごめんごめん。そんなに怒らないでよーイリヤー」
「や、やめてよ……恥ずかしいしよぉ……」
私はイリヤを帽子の上から撫でながらそう言う。
ご機嫌ななめなイリヤの態度は一変し私の猫可愛がりに頬を赤らめながら恥ずかしがる。
「士乃ねぇ、いい加減にしないとイリヤにまた一週間位口聞いて貰えなくなるぞ……あと、居眠りは大概にしなよ」
「それは困るね。イリヤを弄れなくなるし。
あと、居眠りはねぇ……体質なんだろうけど唐突に吐き気を催すレベルの睡魔が襲ってくるから」
正直、居眠りは意識した対象に対して魔眼が発動するせいで何をするにも脳を必要以上に酷使しているからなのだが……如何せん私の特殊すぎる魔眼を封じれる魔眼殺しは中々ないと思うので現在は解決策なしだ。
「あははー……どの道私は弄られるんだね」
そんな私達双子の会話を聞いていたイリヤは遠い目で空を眺めている。
「さて、帰るとしましょうかね……。
イリヤ、今日は私が晩飯の当番だから好きなもの作ってあげるから機嫌治してくれる?」
そう、イリヤに問いかけるとさっきまでの暗い顔が一変し太陽のように眩しい笑顔に変わる。
「本当に!!じゃあねっ、ハンバーグ食べたーい」
「ほいほい、じゃあ冷蔵庫にはひき肉無かったはずだから買って帰ろうか。あ、士郎は手伝いなさい」
「はぁ……。分かったよ、志乃ねぇ」
そんなやり取りをしながら私達は何時のように帰り道を3人で帰るのだった。
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士郎とイリヤ、そしてセラやリズとで夕食を取り片付けが終わった後、私は何時もの日課である魔術の鍛練をするため郊外にある林に居た。
もちろん、家族にすら自分が魔術使いであることは伝えていないので家で鍛練をするわけにはいかない。
何故か、昔の自分の残滓が家で魔術を行使してはいけないと訴えているのだ。
だから、ランニングすると言って夜の二時間程度ここに来て鍛練を続けているのだ。
「
十分に準備体操を終え魔術回路を開く。基礎中の基礎である強化魔術を身体に念入りに施す。
そして、その状態で徒手格闘のシャドーを繰り返す。強化魔術を施した状態で素振りをしているので、腕や脚を振るう度にまるでプロ野球選手が全力でバットを振った様に空気が揺さぶられた音が鳴り響く。
そもそも私は昔の自分の事を殆んど覚えていない。
だけども、受け継いだものは多い。
それは基礎的な魔術の知識であったり、特殊すぎる私固有の投影魔術であったり、それの大本である魔術の最奥である大禁呪。更にはそれを運用する方法。
そして……もっとも重要な事である最強の自分のイメージと自身の完成形。
目指すべき場所が分かっていてそこまでの道のりが示されているのなら少しずつでも進めばいいのだ。
そして、20分程で徒手格闘を一通り終えるとここからが本番だ。
「
私やアーチャーが扱う夫婦剣、干将・莫耶を投影すると両手に馴染みある重みが加わる。
双剣をしっかりと握り締め、振るう内にどんどんと理想の動きと自分の動きが重なっていき、無駄の無い洗練された動きに変わっていく。
無論、イメージするのは完成形であるアーチャーだ。
何せまえの自分は奴の腕を移植されてアイツに侵食されていたのだから手に取るように分かるし、アイツは
今はアイツの動きとの差が無くなる様にするだけ。いずれは追い越してやるけど。
そして、しばらく剣を振るうと腕時計のアラームがなり帰る時刻を告げる。
「ふぅ……今日はここまで。さて、帰るとしますか」
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冬木市を二分するように流れる未遠川に掛かる冬木大橋。私は何時もの通り家に戻るのだが普段とは様子が全く違った。
なんと……その上空で二人の魔術師?が激しい戦いを繰り広げていたのだ……。
「………なんでさ。あの格好ってイリヤが好きな魔法少女って奴?そ、そう言う礼装かも知れないけど……。しかも……あの紅い猫耳は凛じゃないか?」
目を強化して何処のバカか確認した私は非常に後悔した。
その正体の片割れが中学まで同級生で卒業と同時にイギリスに留学した遠坂凛。
彼女の趣味とは思えない猫耳装備の紅い魔法少女姿。それさえも個人的には衝撃だったのに自分の容姿に余り関心が無い私でさえ殺意を沸くぐらいスタイルの良い金髪美女(狐耳装備の蒼い魔法少女)と常識はずれの死闘を繰り広げていたら誰だって絶句すると思うんだ。
「うん、これは夢だ。そうだ……これは悪い夢なんd……っ?!」
友人が魔法少女の格好をしながら殺し合いを繰り広げている現実から目を反らし絶賛現実逃避をしている状況かた私を現実に戻したのは二人が懐から取り出したカード状の礼装だった。
間違えない……私はアイツの腕を移植されていた身だ。そんな私だから断言できる。遠坂が持っていたカードは……
「どうして……どうしてあのカードからアイツの霊基が感じられるんだ……」