死の支配者と王種の竜人の異世界冒険譚   作:Mr. KG

7 / 8
最近、まだ学生なのに抜け毛の目立つ作者です。
オーバーロードの2期が始まった……などと思っていたらもう終わってしまって時間の流れの早さを感じます。前回の投稿からもうすぐ、7ヶ月なんですねぇ……。更にはオーバーロード3期まで始まりましたし。

2期で番外席次の容姿を見て何か違うと感じたのは私だけじゃないはず。他は六腕の読み方とか。お前らろくわんじゃなかったの⁈

今回強めのアンチ要素が出てきます。ご注意を。


5話 戦闘と暗躍

 ガゼフは雄叫びを挙げて馬を走らせる。生きて帰れないことなど理解して、しかし、その心中に恐怖など微塵も無い。頭にあるのは、ただ王国戦士長として村人達が逃げる時間を稼ぐこと、そして自慢の部下達を死なせないよう逃がすことのみ。それ以外の余計なことを考えながら戦える程器用では無い。

 スレイン法国の魔法詠唱者達へ突撃していきながらも包囲網を観察し薄いところ及び指揮官を見極める。そして見つけたのは頰に傷のある金髪の男。他の魔法詠唱者達が従える天使とは明らかに違う天使を従え、全体を見渡せる位置にいる。

 その姿を確認したガゼフは弓に矢をつがえ放つと、途中で不可視の何かがあるかのように勢いが弱まりながらもそれを貫き指揮官へと飛んで行く。

 それを見た指揮官は驚いたように目を見開くが、即座に躱す。

 

(魔法か!)

 

 そう判断したガゼフは即座に弓を捨て、剣を抜く。このまま弓で戦ったとしてもシャーナのおかげで魔法の防御は貫けるだろうが、当たらないのならば只の矢と変わらない。寧ろ防御を貫けるからといって弓に頼った結果剣にかけられた魔法が切れたとなれば、武技が使えるガゼフはともかく部下達はなす(すべ)が無くなってしまう。

 戦士達も同様に弓を捨てて剣を抜き、突撃する。

 すると、法国の魔法詠唱者がお返しとばかりにガゼフに魔法を使う。その瞬間、馬が小さく悲鳴を挙げ減速するが、疾走を止めることはない。

 その様子を見た魔法詠唱者達は効果が見込めないと判断したようで、代わりに形成されるのは天使の包囲網。

 ガゼフは心中で魔法をかけてくれたシャーナに感謝しつつも飛んできた天使を一刀のもとに斬り捨て勢いのまま突撃し、指揮官を目指す。しかし、敵も精鋭、即座に天使を再召喚し、ガゼフを囲むように配置しタイミングをずらして攻めてくる。

 絶妙な時間差攻撃だが、ガゼフとて伊達や酔狂で王国戦士長という役職に就いているわけではない。(かわ)し、捌き、受け、包囲を突破して斬り捨てる中、その進撃は止まらない。

 後ろでは部下の戦士達が事前にガゼフが言った通り二人一組でフォローし合い天使と戦っている。

 次第に乱戦となり、ガゼフは馬の背から前方へと跳躍し、そのまま自分を強化する武技を使用して相手の指揮官を目指し走り出す。

 

 

 

 

「ふむ、それなりにやるか」

 

 それを上空にてレイヴナントに借りた複数体の霊体系アンデッドを透明化させて侍らせ、白翼を羽ばたかせて俯瞰するザッハークが呟く。その表情は人形の如き無。ナザリックに居る時のザッハークを知るギルメン達が見れば、まず間違いなく瓜二つの別人だと判断するだろう程におおよそ人間味というものが見受けられないその顔は、しかし、ザッハークの素であった。

 飛行しているとはいえ高度は10mも無いというのに、その場にいる誰一人としてザッハークの存在に気付くことは無い。その訳はザッハークのスキルの一つにある。

 隠密系の最上位スキルであり、探知系の世界級アイテムや一部のフィールドエフェクト等の限られた手段以外ではどんなスキルや魔法であろうとも発見することの出来なくなるというそれは、気配隠匿状態で武器を装備したり魔法を行使しようとすると只の透明化となるが、無手で種族特性により飛行するザッハークを捉えるのはほぼ不可能と言っていい。

 ザッハークが結果の見えている場に態々(わざわざ)時間を割いているのは、"ある物"を待っているためだ。

 それは、可能性は高いが、100%とは言えない。だが、上手くやれば大きな利益となることは間違いない。今の所、来る様子は無いが今回の主目的であるスレイン法国の特殊部隊の捕縛は村の周りに残っていた者達を隠密能力に長けたモンスターによって終えており、後は金髪の指揮官──確かニグ何とかと呼ばれていた──が率いる本隊だけでやろうと思えば今すぐにでも出来る。実際今も戦場の周りに不可視のモンスター達がいるのだ。

 ザッハークが"ある物"を待ちつつ、ついでに目的の一つである王国戦士長の実力や武技というものを確認していると、不意に戦況が変動する。

 ガゼフと他の戦士達の強化魔法が切れたのだ。

 スレイン法国の魔法詠唱者達は、天使による物量で持久戦を展開、ガゼフ達は攻めきれず魔法が切れたその瞬間にガゼフを相手取る天使達はそのままに、攻勢に回った他の天使達によりたちまち戦士達は地に伏して地面を赤く染めていく。

 それとともにガゼフを相手取る天使が増えていき、魔法が叩き込まれていく。

 

「ガハッ!」

 

 そしてついにダメージが限界に来たようで、決して少なくない量の血液を吐き出し膝をつく。その眼は未だ燃え上がるような執念を宿しているガゼフだが、部下は全員倒れ伏し、自身は満身創痍で逆転の目など皆無に等しい。そこに追い打ちをかけるように指揮官の冷静な指示が放たれ、天使が迫る。

 状況は既に絶体絶命。ガゼフ・ストロノーフの死は最早抗えぬ結末だろう。

 

「なぁぁぁぁめぇぇぇるぅぅぅなぁぁぁぁ!!!」

 

 それでも、そんな不屈の意志を感じさせる雄叫びを挙げフラつきながらも立ち上がる。今にも倒れそうなほどに満身創痍ながら、圧倒的な意志力から放たれる迫力は陽光聖典の兵が思わず後ずさり、天使の動きを止める程。

 

「大した男だ。だが、貴様に何ができる。既に死に体ではないか」

 

 しかし、それでも敵の指揮官は動じない。そして指揮官の冷静な言葉によって落ち着きを取り戻した兵達により動きを取り戻した天使が迫る。

 

 

 

(……この程度か)

 

 迫る天使を瀕死の体で何とか斬り払っていくガゼフのことを、ザッハークは極寒の無表情で見下ろす。

 この光景はザッハークにとって予想の範疇を何ら外れるものではない。

 例え、カリスマに溢れ、高い政治能力を持つ優れた為政者やあらゆる敵を打ち倒す無双の豪傑が居たとしても、全てを救うことなど不可能なのだ。だからこそ、救うか救わないかの取捨選択をすべきであり、王国戦士長という国防の要は村の二つ三つなど切り捨ててでも生かすべき存在だ。

 無論、事は国の面目に関わる以上兵は出さなければならないだろうが、王国から見える部分で判断すれば、戦士長を動かす必要性は無い。

 だというのに、自分の価値を理解せず無謀にも死地に飛び込むなど、ザッハークからすれば合理を解さぬ阿保でしかなく───

 

「ごふっ!」

 

 だからこうなる。

 例え限界を超えて立ち上がろうと満身創痍であることには変わりなく、加えて相手は一人一人が精鋭で数もそれなりに多い。先ほどの焼き直しのようにガゼフは倒れ伏し、天使が迫る。

 しかし、その先まで同じとはいかない。突如天使達がほぼ同時に斬り伏せられて消滅する。

 

「遅くなったようで申し訳ない、ガゼフ殿」

 

 天使達を斬り伏せ、ガゼフの前に現れたのは純白の鎧を纏った騎士。沈む夕陽を照り返して光り輝くその姿はその場に立つ誰もに息を呑ませる。

 少し遅れて降り立つのは、双頭の黒竜を従え一切の光を呑み込む闇のような漆黒の艶髪を風に揺らした美女。

 城塞の如き静かな威圧感を放つ騎士、冷たくも凛々しい底知れぬ美女、その見た目だけで内に秘めた絶大な力が伺える異形の黒竜に魔法詠唱者達がたたらを踏むように数歩後ずさる。それは指揮官も同様で、余裕に満ちていた顔は冷や汗を流している。彼我の戦力差を判断できる能力は指揮官の必須条件の一つ。幸か不幸かで言うなら限りなく不幸に近い幸と言ったところか、この瞬間、彼はザッハークの目に極僅かなりとも留まることとなった。

 指揮官を僅かに目に留めたザッハークは考える。地上では既にガゼフはアジ・ダハーカとフィリアにより村まで運ばれ、僅かな間に天使は全滅、魔法詠唱者も幾人か意識を刈り取られている。このまま待っていたところで、望むものは来ない可能性が高いと判断したザッハークが帰還しようと転移門を開こうとしたところで、聞き逃せない声が耳朶(じだ)を打つ。

 

「時間を稼げ!最高位天使を召喚する!」

 

(最高位天使だと?)

 

 その言葉を聞いて浮かぶのは熾天使(セラフ)級天使。指揮官が呼び出すのであれば、レベルと従えていた天使から大したことは無いと捨て置いたのだが、魔封じの水晶となれば話は別だ。もし召喚された天使が至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)などであれば、アンデッドのモモンガ単独では(いささ)か分が悪い。

 いざという時は介入する為にザッハークは高度を落とし、そして召喚された存在に言葉を失った。

 

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)……だと…?」

 

 ザッハークの思いを代弁するモモンガの言葉を畏れと取ったようで、余裕を取り戻した指揮官が自分達の有利を誇示するかのように高らかに告げる。

 

「ほう、知っていたか! その通りだ。誇るがいい、貴様は最高位天使を出すに値すると判断した! 本来であれば貴様のような強き戦士は我らが同胞として迎え入れたいところだが、許せ。今回はそういう訳にはいかん。だが、私は覚えておくぞ、モモンという偉大なる戦士の名を」

 

 そう言い放ち、天使に攻撃を命じる。しかし、その余裕の表情は一瞬にして反転することとなる。

 

「下らん」

 

 モモンガの一刀で威光の主天使が消滅したことによって。

 

「バ……バカな……」

 

 正に絶句。零れ落ちた否定の言葉はしかし、現実を示すかのような冷たい風に散らされ、虚しく消え去る。同時に沈み行く太陽は、薄闇に覆われた空の闇色を強めていく。

 瞬きも忘れて目を充血するほど見開く指揮官のみならず、顔を隠した部下さえも雰囲気だけで分かるほどに驚嘆とそれ以上の絶望に支配されていた。

 

「ッ! 総員撤退!」

 

 何とか我に返った指揮官が部下へと指示を出しながら、懐から取り出した手の平サイズの球体を地面に叩きつけ、少し遅れて部下達が追従する。

 地面に叩きつけられた球体は破裂し、煙幕を作り出す。その煙幕は魔法でも使われているのか、その場に壁のように留まり姿を覆い隠し、その隙にスレイン法国の部隊は迅速に撤退していく。

 

(帰るか。今回は無駄足だったようだな)

 

 その一部始終を見ていたザッハークは冷静にそう判断を下す。結果的にはプラスであったが、無駄になった時間の分、マイナスも大きい。観戦に費やした無駄な時間を使えば、一体どれほど仕事が進んだだろうか。

 無表情のままに僅かな溜息を一つこぼしながらも周辺に潜ませていた魔物に捕縛を命じて、帰った後の仕事について思考を一瞬で切り替え、ザッハークは転移門を開く。

 と、その瞬間──

 

「む、来たか」

 

 “それ”が飛んできた方へと振り返り、僅かに喜色と驚きを帯びた声音でポツリと呟く。

 ザッハークが待っていた“それ”はスレイン法国からの監視魔法。数の少ない特殊部隊であれば、裏切りや未知の脅威による全滅の可能性を考えてその程度の備えはあるだろう、という考えからモモンガに対監視魔法用の攻勢防壁を解除してもらい、監視魔法の範囲内で待ち続けていた。常時ではないという不合理さに対して瞬間的に頭によぎる考察を横に置き、口元に(かす)かな弧を描いたザッハークはスキルを発動する。

 発動したスキルの効果は格下の行使した魔法の支配。とは言っても、それはあくまでフレーバーテキストであり、ユグドラシルでは相手が魔法を行使してから、いくつかあるコマンドを選択して効果を発揮するという使いづらいスキルだった。

 しかし、この世界へと転移してから効果が変わっているスキルがいくつかあり、このスキルもその一つ。つまり、行使した者が格下であれば、問答無用で支配出来るのだ。

 即座に支配した魔法を使って行使した相手を逆に覗き見る。

 その先は屋根の無い神殿らしき場所。そこにいる人物は見たところ全員女性であり、中央に最早裸と大して変わらないような薄衣に身を包んだ少女、その少女の周りに神官らしき人物が複数に、他の者より位が高いと見える老婆が一人。そして、最も多い神秘さを損なわないような意匠の鎧を身につけている衛兵と思われる女性達。

 微動だにしない中央の少女を除き、何やら狼狽した様子なのは魔法が発動していないためだろう。

 その様子を確認したザッハークは転移門を開き、様子見として連れていた霊体系アンデッドを三体送る。

 衛兵の女性達は突如空間に開いた不気味な闇のような穴に警戒態勢に入り、そこから現れたアンデッドへと斬りかかる。しかし全く効果がなく、スキルにより次々と麻痺状態にされてザッハークが援軍を送ろうか、と考えることも無く全滅した。

 

「………冗談だろう?」

 

 思わずそんな呟きが口から滑り落ちる。送ったアンデッドは、厄介なスキルこそ持つものの、プレアデスで最もレベルが低いシズでも倒せる程度の、連れていた中で最弱のモンスターだ。だというのに手も足も出ずに全滅とは、想定より二段階ほど下回った。

 思わず天を仰ぎ、しかし直後に切り替えてアンデッドを引き連れて転移門をくぐる。

 その先で、偽装でもなんでもなく本当に全滅している惨状を目の当たりにしてため息を吐き、アンデッド達に人員及びアイテムの回収を命じる。命令を受けて神殿に存在するものを騒霊(ポルターガイスト)種のスキルを使用して新たにナザリック近くに開けた転移門へと根こそぎ運び終えたことを確認したザッハークは魔法を一つ行使する。

 発動したのは《爆裂(エクスプロージョン)》。パッシブスキルにより無詠唱化と三重最強化が付与されているそれは、原型も残さず神殿を吹き飛ばす。直後にスキル《中位眷属創造》を行使して作り出された眷属の黒竜にスキルにより、ワールド系職業、又はアイテムを所持していない、レベルが下の相手からの攻撃の無効化をはじめとする他幾つかの隠し職業に就くことで手に入る耐性を付与し、魔法で視覚と聴覚を共有する。

 

「死ぬまで暴れろ」

 

端的な指示に咆哮で応え、黒竜が駆動する。

 

「さて、貴様らの手の内、見せてもらうぞ」

 

 無感情な言葉を残し、ザッハークは指輪によりナザリックへと帰還した。




ウチのニグンさんは少し優秀になっています。原作ではあれでしたが、エリートですしこのぐらいは出来るかな、と。
次話は法国サイドからスタートです。
それではオリキャラの紹介をどうぞ。

名前:ドレイク【Drake】
異形種
異名:赤の武士(もののふ)
属性:中立(カルマ値:0)
役職ナザリック地下大墳墓領域守護者
住居:ナザリック地下大墳墓第六階層武家屋敷
身長:270cm
種族
竜人(ドラゴノイド)──Lv10
竜人の戦士(ドラゴノイド・ウォリアー)──Lv10
職業
サムライ──Lv10
ケンセイ──Lv10
ソードマスター──Lv5、など

種族レベル20+職業レベル80=100

ザッハークが制作したNPC4号。忍者のサイゾウに対し侍としてキャラメイクをされている。侍だが、サイゾウと同様に語尾にござるはつかない上、一人称は『俺』である。
カルマ値0は他の従者系NPCと同じ理由。侍ではあるが、創造主の価値観から“現実の侍”としてキャラメイクをされているため、一騎打ちも好むが、奇襲、奸計、多対一等も勝利の為に容認出来る。
容姿は2mを超える赤い鱗の竜人。プロット的には登場予定の無い人間態は目付きの鋭い大柄で野生的なイケメン。
職業は戦士系で統一されており、近接戦闘はカーミラと並びザッハークが作成したNPC最強。

武家屋敷
第六階層にあるドレイクの守護領域。サイゾウの守護領域である忍者屋敷とはアンフィテアトルムを挟んで反対側に位置する。
内部は忍者屋敷とは違いトラップの類いはあまり無いが、複数人では戦い辛い上に射線を通しづらい構造で、戦士系の高レベルモンスターが複数体うろついている。

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