「高木刑事、目暮警部たちを」
「うん」
高木刑事が目暮警部たちを呼んだ。
「それで、君たちが第一発見者なのかね?」
「はい」
「まいどまいど事件に遭遇するとは、どう言う体質なんだ、聡美くんは」
で──と、続ける目暮警部。「怪しい人物とかは?」
「いいえ」
と、聡美。
「高木、お前は確か、荻田 鉄平に話を聞きに来たのではないか?」
「荻田はいませんでした」
「そうか……」
「警部!」
千葉刑事がやって来る。
「どうした?」
「被害者の身元が判明しました。荻田の奥さんだそうです。名前は
「旦那はどこ行ったんだ?」
「それが、一週間前からいないようですよ。近所で聴き込んだら、引っ越した、と。それと、監察医からの報告で、遺体は死後一週間ほど経っているようです」
「どこへ引っ越したんだ?」
「さあ?」
目暮警部は考え込んだ。
「とりあえず、都内の引越し業社を当たってみます」
千葉刑事が去ってゆく。
(被害者の晶子さん、どこかで……)
聡美は俯いて考え込む。
「聡美さん、何を考えてるんだい?」
高木刑事が訊ねる。
「あ!」
聡美はスマホを取り出し、荻田 晶子と検索した。
検察庁のホームページが出て来る。
「やはりな」
「何が、やはり、なの?」
「高木刑事、被害者の晶子さん、検察官のようですよ」
「検察官?」
「あらゆる事件も被告が必ず有罪になることで有名です」
「その話なら私も知ってるよ」
と、目暮警部。
「それどころか、一緒に捜査したこともある」
「事件の被告人から恨みを抱かれて殺されたのかもしれませんね」
「よし、交友関係を洗うぞ」
捜査員たちは晶子の交友関係を洗いに向かう。だが──。
「容疑者が浮上しない!?」
目暮警部が驚く。
「どういうことなんだ、それは?」
「容疑者より、旦那を捜す方が近道では?」
と、聡美。
「旦那についても、都外の道府県警に捜索してもらいましたが、いずれも発見されず」
「渡航してるんじゃ?」
「それに関しては照会をかけています。そろそろ連絡が来る頃かと」
捜査員の電話が鳴った。
「はい」
捜査員が応答している。
電話を終えた捜査員が、「アメリカに渡航しているようです」と、発言した。
その後、鉄平は犯罪人引き渡し条約により、アメリカから日本に引き渡され、逮捕された。
取り調べで、鉄平は警察学校の教官と検事の晶子を殺害したことを認めた。
鉄平は送検され、後日、刑事裁判所で裁判が行われたという。
参審とも判決は有罪で、鉄平は小菅刑務所に入れられた。
鉄平は二人の人間を殺したため、死刑が確定した。