名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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25.公安の星川

「おい、遺体の身元は?」

「免許証では星川(ほしかわ) (わたる)、三十五歳となっておりましたが、職業不詳です」

 警察が殺人の線で動き始めた。

「山川刑事!」

「なんだい?」

 クリスに顔を向ける刑事。

「他殺だって気づいてたよね?」

「なんでそう思うんだい?」

「だって、さっき言ったでしょ? 犯人が……って」

「そうだったね。その通り、気づいてたさ」

「じゃあなんでその場で他殺で動こうって進言しなかったの?」

「それは……Need not to know、知る必要のないことだよ」

「おーい、何があったんだね?」

 クリスが聞き覚えのある声に振り返ると、目暮警部が駆けてきた。

「あ、あなたは本庁の目暮警部!」

「おう、山川くんか!」

ん?──目暮警部がクリスに気づく。

「君は?」

「くど……じゃなくて、江戸川 クリス。コナンの妹だよ」

「ほお! コナンくんにはこんなに可愛い妹くんがいたのか。で、ここで何があったんだね?」

「発砲事件ですよ、目暮警部」

「クリスくん、危険だから帰りなさい」

 目暮警部はそう言うと、遺体を見やった。

「自殺……いや、他殺か」

 どうやら目暮警部も気づいたようである。

「そういえば、クリスくん」

「なんですか?」

「君の声、どこかで聞いたことがあるようだけど……」

「き、気のせいですよ!」

 クリスは両手を顔の前で左右に振った。

 目暮警部は拳銃を見た。

「これは!?」

「どうしたんですか?」

「うちの組対課が押収した拳銃の一つだよ。紛失してたんだ」

(警察内部?)

 クリスはコナンにメールを送った。

 数分で返事が返って来た。

(やはりね。だけど、どうやって推理を披露するか……)

 クリスは目暮警部を見た。

(声真似ができるからって、流石に目暮警部を眠らせられないよね。仕方ない)

 クリスは刑事を誰もいない場所へ連れ出した。

「どうしたんだい、クリスちゃん?」

「被害者殺したの、あんたでしょ?」

「え?」

「被害者、公安の刑事。あなたと星川さんの間には何らかのトラブルがあった。それで殺害した。違う?」

「面白い。証拠は?」

「あんたは自分で犯人だって認めてるのよ。さっき私に犯人が……って。あれ、別に真相に気づいたわけではなく、自分が犯人で、まだ近くにいるってことを示していたんだ。私をパトカーに乗せたのは、一刻でも早く現場から離れるための口実。それといざという時に人質として捕らえるつもりだったんでしょ?」

「まるで見て来たような言い方だね。その通りだけど。でも、ちょっと行動が軽率じゃない?」

 刑事が拳銃を取り出す。

 クリスは腕時計型麻酔銃を構えた。

「山川さん」

 そこに現れたのは、ポアロでバイトする安室(あむろ) (とおる)だった。

「お、お前は降谷(ふるや)!」

「コナンくんから星川が殺されたって聞いてね。それで来てみたら、君がこの子に拳銃を向けている。どう言うこと?」

「くっ!」

 逃げ出す刑事。

 安室は先回りして刑事を捕まえると、柔道技で投げ飛ばした。

 気を失う刑事。

「何だ何だ? 何の騒ぎだ?」

 目暮警部がやって来た。

「安室くんじゃないかね。これは一体?」

「彼が星川さんを消し去ったみたいですよ」

「なんだって!?」

「それじゃあ、あとは任せますね」

 安室はそう言って立ち去った。

 クリスも目暮警部に一言伝えると、帰路に就いたのだった。

 


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