名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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32.芸能人殺人事件3

「で、遺体の状況から見て事件性は?」

「皆無だろ」

「おかしいですね」

「何が?」

「首を吊る時に使った台になるようなものがありませんよ?」

「た、確かに……。それじゃあなにか? 君は殺人だと?」

「ええ。ところで、一香先輩の職業は?」

「マジシャンをやっていたみたいだよ」

「マジシャン……」

 聡美は宮木を思い出した。

 刑事は別の刑事に被害者の交友関係を洗い出すように指示した。

 やがて、眠そうな顔の宮木がやってくる。

 刑事の話によると、宮木と一香は同じマジックバーで働く同僚だという。

「一香が殺された?」

 宮木が現場へ入ってくる。

 変わり果てた一香の姿に、気が動転する宮木。

「いったい、誰がこんなことを……?」

「警部!」

 刑事が警部にヒソヒソと何かを話す。

「なんだって!?」

「どうしたんですか?」

 聡美の問いに刑事が答える。

「実は、被害者の友人関係を調べていたところ、二日前に事故で亡くなった坂宮 泉がいることが浮上したんだ」

「坂宮 泉ですって? さっき現場を見て来たばかりですよ」

「ほう」

「坂宮さんと一香先輩の関係は?」

「ご姉妹だよ。坂宮の本名は二宮だ。一香は泉の姉だ」

「何ですって!?」

 聡美は驚き戸惑う。その傍らで宮木が冷や汗を垂らしているが、彼女はそれに気づいていなかった。

(二つの事件、何か関連があるのだろうか……)

 聡美は考えた。

「あーれれー!」

 コナンが大声を出した。

「どうしたの、お……コナンくん?」

 コナンが聡美に衣服から千切れたボタンを渡した。

「これは?」

「あそこにあったんだ」

 コナンが棚の下を指差す。

「あの下に?」

「うん。これ、一香さんが犯人ともみ合いになったときに千切れたんじゃないかな? ひょっとしたら犯人のかも」

 聡美は警部にボタンを渡した。

「鑑識に回そう」

 警部が鑑識にボタンを渡した。

「ん?」

 聡美は棚の上の、倒れた写真立てに気づき、起こした。

 宮木と一香のツーショットが写っている。

「宮木さん、これは?」

「あ? ああ、それは一香と付き合ってたときの写真だよ」

「へえ……」

(うん?)

「宮木さん、あなたは坂宮さんと婚約している傍ら、一香先輩と付き合っていたんですか?」

「うん、まあね。と言っても、泉と婚約する前だけどね」

(まさか、そういうことなのか? だけど肝心の証拠が……。ええい! 出たとこ勝負だ!)

「刑事さん、一香先輩を殺害した犯人がわかりましたよ」

「何だって?」

「一香を殺した犯人?」

 宮木が聡美を見つめる。

「誰が一香を殺したんだ?」

「順を追って説明しましょう。宮木さん、あなたは最初、一香先輩と交際していた。しかし、坂宮さんの熱烈なアタックとプロポーズで、一香先輩と別れることにした。合ってますか?」

「ああ……」

「それを、宮木さんを奪われたと思った一香先輩は、坂宮さんを現場である病院の非常階段の踊り場へ誘い出し、婚約を解消させようとした。しかし、坂宮さんはそれには応じなかった。やがて二人はもみ合いになり、結果、一香先輩は坂宮さんを踊り場から突き飛ばし、転落させて殺してしまった」

「……………………」

「それに気づいた犯人は、一香先輩の部屋を訪れ、問い(ただ)し、激昂してもみ合いの末、一香先輩を首を絞めて殺してしまった。焦った犯人は、なんとか疑いをそらそうと思い、自殺を偽装するが、致命的なミスを犯しました。それは、自殺に使う台のようなものを用意することを忘れたことです。しかし、犯人はそれに気づかず、安心して自宅に帰りました」

「待ってくれ。坂宮は事故死だ」

 と、所轄署の警部が言う。

 聡美は首を横に振るった。

「いいえ、他殺なんです。そうですよね? 一香先輩を殺害した犯人の宮木さん!」

「なっ!? 証拠はあるのか?」

「まだあなたの家にあるんじゃないですか? ボタンの千切れた仕事着が」

 宮木はその場に崩れた。

「その通りだよ、女子高生探偵。全てあんたの言う通りだ……。悪いことはするものじゃないね」

「連行しろ」

 宮木は警察官によってパトカーで署まで連行されたという。

 


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