米花中央署の捜査員が米花中央病院の女子トイレを調べている。
一通り調べ終わったところで、聡美が中に入る。
個室は血の海。
被害者の名は、
死因は鋭利な刃物で滅多刺しにされたことによるショック死。
遺体には争った形跡がなく、病院の医師によると、事前にクロロフォルムで眠らされてから、殺されたのではないかとのことだった。
また、死亡推定時刻は悲鳴の聞こえたのとほぼ同時刻であると判明している。
「吉崎警部!」
刑事がやってきて報告する。
「死亡推定時刻に病院を出入りした人物はいませんでした」
「そうか」
「吉崎警部」
と、聡美。
「なにかね?」
「あれは?」
女子トイレの外についている防犯カメラを指差す聡美。
「あれに誰か映ってないですかね」
カメラは女子トイレの入り口を映していた。
「なんで女子トイレを映しているんだろうな」
吉崎警部は疑問符を浮かべた。
後で病院関係者に聞いてみると、以前、男性が侵入し、隠しカメラを使って女性が用を足すところを盗撮する騒ぎがあり、設置したとのことだ。
盗撮犯は病院の職員で、事件が発覚してからは依願退職という形で解雇されていた。その犯人を内部調査で突き止めたのが、どうやら今回の被害者であるようだ。
警察は盗撮犯を調べた。
男は病院を解雇されたあと、いくつか再就職先を当たったが、退職の理由によりどこも受け入れてもらえず、自殺をしていることがわかった。
一方、防犯カメラの映像には、第一発見者の女性が入り、騒ぎを聞きつけてみんながやってくるのが映っていた。
第一発見者の他、被害者以外は映っていない。
「状況的にはあの人だな」
と、コナン。
聡美は遺体が発見された個室に入る。
(私の推理通りなら、ここに……)
聡美は天井の蓋を開けた。
(やっぱりね)
聡美は天井裏から血だらけのレインコートを取り出した。
「なんかあったか?」
「うん、こんなのが」
聡美はコナンにレインコートを示すと、それを警察に渡した。
「あ、警部さん」
「なんだね?」
「お願いがあるんですけど、天井裏を塞ぐ蓋の指紋を採取してもらえますか?」
「構わんが、どうして?」
「犯人の指紋が採取できるはずです」
その時、犯人は焦った。
何か、何か危機的状況を打開する策はないか、と。
聡美の指示で、鑑識が再度現場を調べる。
天井裏の蓋から聡美とそれ以外の人物の指紋が採取された。その中から、レインコートについている指紋が検出された。
聡美は第一発見者の女性に声をかけた。
「犯人は、あなたですね?」
「な、なに言ってるんですか?」
「あなたの指紋、採取させてもらえませんか?」
「そ、それは……」
女性は両手を後ろに回す。
「さっき刑事さんがクロロなんとかって薬品を使ったって言ってたけど、その薬品の入手経路は?」
「あなた、看護師ですよね?」
「え?」
「
驚き戸惑う女性、もとい佳代子。
「すみません、佳代子さん。先ほど刑事さんにお願いして、防犯カメラの映像を病院に確認してもらったんです。そしたら、あなたがこの病院の看護師だということがわかりましてね。あ、レインコート、あなたの指紋が検出されてるはずですよ?」
「くっ……!」
苦虫を噛み潰したような表情になる佳代子。
「連れて行け!」
吉崎警部の指示で警察官が佳代子を米花中央署に連行した。
その後、佳代子は殺人の罪を認め、事件の全容を語った。