高木と佐藤の調査で、本村 花の本人による硫化水素の入手経路は存在しないことがわかった。その代わりに、本村のスマホで「確実に人を殺す方法」というワードが検索されているのが判明した。
「——ということです、目暮警部」
(花さんは誰かを殺そうとしていたのか)
高木の言葉に聡美はそう推察した。
「高木、佐藤、本村が殺害しようとした人物を捜し出せ。亡くなってる可能性もあるからな」
目暮の指示に、高木と佐藤が駆けっていった。
その後、高木と佐藤の迅速な捜索により、
聡美と目暮も、大林の自宅へ急行した。
「え、花が俺を殺そうとしてたって?」
「ええ。これまでの聞き込みの結果、そうとしか思えなくて」
佐藤が大林の通信履歴の写しを取り出しながら言った。
「大林さん、あなた、インターネットからこのサイトにアクセスしてますね」
続いて高木が口を開く。
「大林さん、あなたはこのサイトで、硫化水素を購入した」
「硫化水素?」
疑問符を浮かべる大林。
「あなたはその硫化水素を使って、本村 花さんを殺害したのではないですか?」
そう訊ねるのは聡美だ。
「なんで俺が花を殺さなきゃならないんだよ?」
「大林さん、本村さんとの京都旅行でお金払ってませんでしたよね?」
「だからなんだよ? それが犯罪だとでも言うのか?」
「本村さんはそのことで不満を溜め込んでいました」
「それだけで俺が殺されるの?」
「だけではありません。あなた、乾燥機能つきの洗濯機に本村さんのプロレス用の衣装が入ってることに気づかず、洗濯乾燥を行なって損壊させていますね」
「まさか?」
「ええ、それで本村さんの中で何かが切れて殺意になった。そのことに気づいたあなたは、やられる前に殺そうと思い、硫化水素を購入したんですね?」
「ちょっと待ってくれよ。俺が殺しだなんて……」
「実は硫化水素の薬剤の容器から誰のだかわからない指紋が検出されているんだ」
と、目暮が容器の写真を取り出す。
「大林さん、あなたの指紋と称号させてもらえんかね?」
「……………………」
大林は床に両手をついた。
「すみませんでした」
「お認めになるんですね?」
「はい。俺が、俺が花を殺しました。硫化水素を使って。遺書は花が書いた手紙などを拝借して、文字を複写したものです」
「署までご同行を」
と、高木と佐藤が大林を警視庁に連行した。
聡美は本村 洋子の元を訪ね、ことの真相を説明した。
「花は、花は自殺じゃなかったんですね!」
「ええ」
「ありがとうございます!」
洋子が報酬の金一封を渡した。
「これはせめてものお礼です」
「そんな、いいですよ。受け取れません」
「どうかお納め下さい」
「……わかりました」
聡美は報酬金をしまった。