名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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54.謎の事故

 高校のOBである伊坂(いさか) 公子(きみこ)に別荘へ招待された聡美、蘭、園子、コナンの四人は、とある山奥の洋館へとやってきた。

 チャイムを鳴らす聡美。

「はーい」

 公子が出てくる。

「ようこそ、いらっしゃい。入って」

「伊坂先輩、お久しぶりです」

 と、蘭が口を開く。

「聡美さんと蘭さんに園子さん……新一くんは連れて来なかったの?」

「あ……お兄ちゃんは用事があって来られなかったんですよ」

(バーロー、ここにいるっつうの)

「あら? この子は?」

 公子がコナンに気づいた。

「この子は私の家で預かってるコナンくん」

「江戸川 コナンです」

 公子は姿勢を低くしてコナンに目線を合わせた。

「コナンくんね。公子よ。よろしくね?」

「うん」

「あら? この子、小学生時代の新一くんにそっくりね」

「そ、それは私の親戚ですから」

「そうなの?」

 聡美の言葉に振り返る公子。

 そこへ真っ赤なスポーツカーが現れた。

 スポーツカーの中からチャラそうな男が下りてくる。

(なんだ?)

彰人(あきと)、遅い!」

 と、ムッとした表情で男に言う公子。

「道が混んでたんだからしょうがねえだろ? ん、そいつらは?」

「帝丹高校の後輩よ」

「へえ。えらい可愛い子たちだなあ」

「変なことしないでよね!」

「へいへい」

 彰人という男は洋館へ入り、リビングへ向かって歩いていった。

 

 

 四人が洋館に上がって小一時間が経過したころ、二人の男女が現れた。

 緒方(おがた) (まい)楓山(あきやま) (すぐる)である。

「緒方先輩に楓山先輩!」

 と、蘭が声を出した。

「毛利さんじゃない。それに鈴木さんに工藤さん」

 と、言葉を返すのは舞だ。

「高校生探偵は来てないのか?」

 そう訊ねるのは勝だ。

「うん?」

 勝がコナンに気づく。

「誰だおめえ?」

「江戸川 コナンです」

「変わった名前だな」

「お父さんがコナン・ドイルの大ファンで」

 そこへ公子が姿を見せる。

「舞に勝、いらっしゃい」

「おう、公子。卒業以来だな」

 舞が辺りを見渡して。

「彰人はまだ来てないの?」

「さっき来たんだけど、峠を攻めるとか言って出て行ったわ。走り屋なんて辞めてほしいんだけどね」

「ここら辺だと、青山(せいざん)峠ですか?」

 と、聡美が訊ねる。

「青山は彰人のホームコースね」

 ピンポーン、とチャイムが鳴る。

「こんなところに誰かしら? あなたたち以外は呼んでないのだけど……」

 公子が首を傾げながら玄関に向かう。

「はーい」

 扉を開ける公子。

「こちら、伊坂 公子さんの持ち家ですね?」

「はい、そうですけど」

 二人の男の内の一人が警察手帳を提示した。

「鳥取県警交通捜査課の久部(ひさべ)と申します」

(鳥取県警?)

 気になった聡美が玄関に移動した。

恩田(おんだ) 彰人(あきと)さんのことでお話があります。上がっても?」

「ええ。……?」

 二人の警察官が家に上がった。

「それで、彰人が何か?」

「恩田さんなんですが、先ほど「事故に遭ったんじゃないですか?」

 警察官の言葉を遮るように、聡美が訊ねた。

「なんでわかったんですか?」

「恩田さんと言いましたっけ? 先ほど、顔を合わせた時、車から妙な音がしたのが聞こえたんですよ。あれはたぶん、ブレーキがイカれた音だと思うんですけど」

「そうなんですよ。ブレーキの異常でカーブを曲がりきれずにガードレールを突き破って谷へ真っ逆さま。搬送先の病院で息を引き取られました」

「え! そんな、まさか!?」

「伊坂さん、確か、伊坂さんは自動車屋を営んでおりましたよね? 恩田さんはそこのお客さんで何度か利用されてる思うんですけど、何か心当たりはありますか?」

「ちょっと! 私が原因で彰人が亡くなったとでも!?」

 怒った公子が久部に詰め寄る。

「いえいえ、そういうわけでは……」

「久部さん、その現場を見せていただくと言ったことはできますか?」

「あなたは?」

 聡美の問いに久部が聞き返す。

「工藤 聡美です」

「工藤 聡美? はて、どこかで聞いたような……」

 首を傾げる久部に、もう一人の警察官が言う。

「ほら、東京の同業さんに協力してる噂のJKDですよ」

「おお! 君がそうか! 目暮から話は聞いてるよ!」

「目暮警部から?」

「警部? そうか、昇進したのか。俺は警部補だが、いつの間にか追い抜かれちまったな」

(ていうか、JKDって弁護士じゃないんだから……)

 

 

 一行は彰人が事故を起こした現場である青山峠のコーナーへとやってきた。

「恩田さんはこのカーブを曲がりきれず、車ごと転落したんだ」

 聡美が破壊されたガードレールの下を覗き込む。

(深いな)

「通報者は?」

「男性の声で匿名だったが、事故の痕跡があると駆けつけてみたら、谷底に落下している車を見つけて、中から恩田さんの遺体がな」

「その男性について何かわかってることは?」

「非通知だったからなあ……」

「そうですか」

「不運な事故としか言えませんな」

「事故った車、見せていただけますか?」

「写真でよければ構わんよ。安西(あんざい)

 安西という警察官が、事故に遭った車の写真を聡美に渡した。

 聡美は数枚の写真を順番に眺める。

(うーん、特に怪しい箇所は見つからないわね)

「それにしても、吹っ飛んだブレーキ本体、どこにあるんでしょうね? 久部さん」

「ああ。暗くなる前に谷底を一斉捜索してみるか」

「え? ブレーキが見つからないんですか?」

「実はそうなんだよ」

 聡美は写真を持つ手を下ろし、反対の手を顎に当てて考え込んだ。

「僕にも見せて」

 コナンが写真を手に取って眺めた。

(なんだ。何かがあの写真にあるような気がするんだけど……)

 聡美の足元で、満面の笑みを浮かべるコナン。

(まさか何か気づいたの?)

「(俺がやってもいいか?)」

 コナンが小声で聡美に訊ねる。

「(いいわよ、別に。けど誰を探偵にするの? 小五郎さんいないし、まさか蘭を?)」

 コナンは園子めがけて麻酔銃を構えた。

(マジ?)

 麻酔銃から放たれた細い針が、園子の首筋に突き刺さる。

「ふにゃ!?」

 園子は睡魔でバランスを崩し、岩壁に寄りかかって眠りに就いた。

「園子、どうしたの?」

 心配そうに園子を見る蘭。

 コナンが園子の前に立ち、蝶ネクタイ型変声器で彼女の声を出した。

「久部警部補、犯人がわかったわ」

「え?」

 振り返る久部。

「犯人って、これは恩田さんの整備不良による不運な事故だよ?」

「いいえ、これは交通事故を装った殺人事件よ」

「なんだって!?」

「あのね、お嬢ちゃん? 君は捜査は素人でしょ?」

「黙れ、安西」

「……………………」

「続けてくれ」

「事故の状況を説明するわね」

 事故は、コーナーに進入する際に起こった。

 ブレーキが吹っ飛び、減速できなくなった車がコーナーを曲がりきれずにガードレールを突き破って転落する。

 結果、乗っていた彰人は即死。

 一方、吹っ飛んだブレーキは、路面に落下し、現場近くで待機していた犯人が持ち去る。

「——と、いうわけよ」

「なるほど?」

「それで、鈴木さん? 彰人を殺したのは誰なの?」

「彰人さんを殺したのは……」

 コナンは犯人と思しき人物を見やる。

 犯人は焦っていた。

「そう……犯人は、緒方先輩に楓山先輩、あなたたち二人よ」

(え?)

 聡美は二人を見る。

「ちょっと待ってよ園子? それ本当?」

 聡美が園子の声を使うコナンに訊ねた。

「証拠はまだあなたたちが持ってるんじゃないかしら? おおかた、ここへ来る時に乗ってきた車に隠してあるんでしょう? 錆びたブレーキが」

 捜査員たちが別荘に向かった。

「ちょっと待って園子。この二人は免許持ってないわ」

(あれ? 俺の推理間違ってる?)

「そうですよね、二人とも?」

「ああ、俺たちは免許を持ってないから、ここへはタクシーで来たんだ」

「え?」

(嘘だろ?)

「園子がごめんなさいね。真犯人はあなたですよね?」

 と、聡美が意外な人物を指差した。

「——伊坂先輩!」

 焦る公子。

「証拠がやってきましたね」

 捜査員が戻ってくる。

「警部補! 伊坂さんの車から、錆びたブレーキが見つかりました!」

「伊坂先輩、言い逃れはできませんよ」

「や、やってない。私やってないよ。これは冤罪よ」

「伊坂先輩、あなた、私たちの前から離れて、緒方先輩と楓山先輩が来るまで、どこにいたんですか?」

 へたり込む公子。

「もうダメね。逃げ切れると思ったんだけど、ブレーキが見つかったんじゃあ」

 公子は逮捕された。

 彰人を殺害した動機は、公子に対する金銭の無心である。

「久部さん、緒方さんたちが乗ってきたタクシー」

「え?」

「タクシーの運転手ですよ、事件の通報をしたのは。非通知なのは、現場で犯人の姿を見たからでしょうね」

 

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