高校のOBである
チャイムを鳴らす聡美。
「はーい」
公子が出てくる。
「ようこそ、いらっしゃい。入って」
「伊坂先輩、お久しぶりです」
と、蘭が口を開く。
「聡美さんと蘭さんに園子さん……新一くんは連れて来なかったの?」
「あ……お兄ちゃんは用事があって来られなかったんですよ」
(バーロー、ここにいるっつうの)
「あら? この子は?」
公子がコナンに気づいた。
「この子は私の家で預かってるコナンくん」
「江戸川 コナンです」
公子は姿勢を低くしてコナンに目線を合わせた。
「コナンくんね。公子よ。よろしくね?」
「うん」
「あら? この子、小学生時代の新一くんにそっくりね」
「そ、それは私の親戚ですから」
「そうなの?」
聡美の言葉に振り返る公子。
そこへ真っ赤なスポーツカーが現れた。
スポーツカーの中からチャラそうな男が下りてくる。
(なんだ?)
「
と、ムッとした表情で男に言う公子。
「道が混んでたんだからしょうがねえだろ? ん、そいつらは?」
「帝丹高校の後輩よ」
「へえ。えらい可愛い子たちだなあ」
「変なことしないでよね!」
「へいへい」
彰人という男は洋館へ入り、リビングへ向かって歩いていった。
四人が洋館に上がって小一時間が経過したころ、二人の男女が現れた。
「緒方先輩に楓山先輩!」
と、蘭が声を出した。
「毛利さんじゃない。それに鈴木さんに工藤さん」
と、言葉を返すのは舞だ。
「高校生探偵は来てないのか?」
そう訊ねるのは勝だ。
「うん?」
勝がコナンに気づく。
「誰だおめえ?」
「江戸川 コナンです」
「変わった名前だな」
「お父さんがコナン・ドイルの大ファンで」
そこへ公子が姿を見せる。
「舞に勝、いらっしゃい」
「おう、公子。卒業以来だな」
舞が辺りを見渡して。
「彰人はまだ来てないの?」
「さっき来たんだけど、峠を攻めるとか言って出て行ったわ。走り屋なんて辞めてほしいんだけどね」
「ここら辺だと、
と、聡美が訊ねる。
「青山は彰人のホームコースね」
ピンポーン、とチャイムが鳴る。
「こんなところに誰かしら? あなたたち以外は呼んでないのだけど……」
公子が首を傾げながら玄関に向かう。
「はーい」
扉を開ける公子。
「こちら、伊坂 公子さんの持ち家ですね?」
「はい、そうですけど」
二人の男の内の一人が警察手帳を提示した。
「鳥取県警交通捜査課の
(鳥取県警?)
気になった聡美が玄関に移動した。
「
「ええ。……?」
二人の警察官が家に上がった。
「それで、彰人が何か?」
「恩田さんなんですが、先ほど「事故に遭ったんじゃないですか?」
警察官の言葉を遮るように、聡美が訊ねた。
「なんでわかったんですか?」
「恩田さんと言いましたっけ? 先ほど、顔を合わせた時、車から妙な音がしたのが聞こえたんですよ。あれはたぶん、ブレーキがイカれた音だと思うんですけど」
「そうなんですよ。ブレーキの異常でカーブを曲がりきれずにガードレールを突き破って谷へ真っ逆さま。搬送先の病院で息を引き取られました」
「え! そんな、まさか!?」
「伊坂さん、確か、伊坂さんは自動車屋を営んでおりましたよね? 恩田さんはそこのお客さんで何度か利用されてる思うんですけど、何か心当たりはありますか?」
「ちょっと! 私が原因で彰人が亡くなったとでも!?」
怒った公子が久部に詰め寄る。
「いえいえ、そういうわけでは……」
「久部さん、その現場を見せていただくと言ったことはできますか?」
「あなたは?」
聡美の問いに久部が聞き返す。
「工藤 聡美です」
「工藤 聡美? はて、どこかで聞いたような……」
首を傾げる久部に、もう一人の警察官が言う。
「ほら、東京の同業さんに協力してる噂のJKDですよ」
「おお! 君がそうか! 目暮から話は聞いてるよ!」
「目暮警部から?」
「警部? そうか、昇進したのか。俺は警部補だが、いつの間にか追い抜かれちまったな」
(ていうか、JKDって弁護士じゃないんだから……)
一行は彰人が事故を起こした現場である青山峠のコーナーへとやってきた。
「恩田さんはこのカーブを曲がりきれず、車ごと転落したんだ」
聡美が破壊されたガードレールの下を覗き込む。
(深いな)
「通報者は?」
「男性の声で匿名だったが、事故の痕跡があると駆けつけてみたら、谷底に落下している車を見つけて、中から恩田さんの遺体がな」
「その男性について何かわかってることは?」
「非通知だったからなあ……」
「そうですか」
「不運な事故としか言えませんな」
「事故った車、見せていただけますか?」
「写真でよければ構わんよ。
安西という警察官が、事故に遭った車の写真を聡美に渡した。
聡美は数枚の写真を順番に眺める。
(うーん、特に怪しい箇所は見つからないわね)
「それにしても、吹っ飛んだブレーキ本体、どこにあるんでしょうね? 久部さん」
「ああ。暗くなる前に谷底を一斉捜索してみるか」
「え? ブレーキが見つからないんですか?」
「実はそうなんだよ」
聡美は写真を持つ手を下ろし、反対の手を顎に当てて考え込んだ。
「僕にも見せて」
コナンが写真を手に取って眺めた。
(なんだ。何かがあの写真にあるような気がするんだけど……)
聡美の足元で、満面の笑みを浮かべるコナン。
(まさか何か気づいたの?)
「(俺がやってもいいか?)」
コナンが小声で聡美に訊ねる。
「(いいわよ、別に。けど誰を探偵にするの? 小五郎さんいないし、まさか蘭を?)」
コナンは園子めがけて麻酔銃を構えた。
(マジ?)
麻酔銃から放たれた細い針が、園子の首筋に突き刺さる。
「ふにゃ!?」
園子は睡魔でバランスを崩し、岩壁に寄りかかって眠りに就いた。
「園子、どうしたの?」
心配そうに園子を見る蘭。
コナンが園子の前に立ち、蝶ネクタイ型変声器で彼女の声を出した。
「久部警部補、犯人がわかったわ」
「え?」
振り返る久部。
「犯人って、これは恩田さんの整備不良による不運な事故だよ?」
「いいえ、これは交通事故を装った殺人事件よ」
「なんだって!?」
「あのね、お嬢ちゃん? 君は捜査は素人でしょ?」
「黙れ、安西」
「……………………」
「続けてくれ」
「事故の状況を説明するわね」
事故は、コーナーに進入する際に起こった。
ブレーキが吹っ飛び、減速できなくなった車がコーナーを曲がりきれずにガードレールを突き破って転落する。
結果、乗っていた彰人は即死。
一方、吹っ飛んだブレーキは、路面に落下し、現場近くで待機していた犯人が持ち去る。
「——と、いうわけよ」
「なるほど?」
「それで、鈴木さん? 彰人を殺したのは誰なの?」
「彰人さんを殺したのは……」
コナンは犯人と思しき人物を見やる。
犯人は焦っていた。
「そう……犯人は、緒方先輩に楓山先輩、あなたたち二人よ」
(え?)
聡美は二人を見る。
「ちょっと待ってよ園子? それ本当?」
聡美が園子の声を使うコナンに訊ねた。
「証拠はまだあなたたちが持ってるんじゃないかしら? おおかた、ここへ来る時に乗ってきた車に隠してあるんでしょう? 錆びたブレーキが」
捜査員たちが別荘に向かった。
「ちょっと待って園子。この二人は免許持ってないわ」
(あれ? 俺の推理間違ってる?)
「そうですよね、二人とも?」
「ああ、俺たちは免許を持ってないから、ここへはタクシーで来たんだ」
「え?」
(嘘だろ?)
「園子がごめんなさいね。真犯人はあなたですよね?」
と、聡美が意外な人物を指差した。
「——伊坂先輩!」
焦る公子。
「証拠がやってきましたね」
捜査員が戻ってくる。
「警部補! 伊坂さんの車から、錆びたブレーキが見つかりました!」
「伊坂先輩、言い逃れはできませんよ」
「や、やってない。私やってないよ。これは冤罪よ」
「伊坂先輩、あなた、私たちの前から離れて、緒方先輩と楓山先輩が来るまで、どこにいたんですか?」
へたり込む公子。
「もうダメね。逃げ切れると思ったんだけど、ブレーキが見つかったんじゃあ」
公子は逮捕された。
彰人を殺害した動機は、公子に対する金銭の無心である。
「久部さん、緒方さんたちが乗ってきたタクシー」
「え?」
「タクシーの運転手ですよ、事件の通報をしたのは。非通知なのは、現場で犯人の姿を見たからでしょうね」