弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
———目覚めよ。
何か聞こえる。聞いてるだけで落ち着く声、でも間違ってもお母さんの声じゃない。もっと中性的なでも深みのある声だ。
――――目覚めよ我らが愛し子、女神の欠片を持ちし半神半人の子よ。
え、何それ。私はとりあえず目を開けた。でもそこにはさっきまで一緒にいたライオンの群れはいない。それどころか草原ですらない。何もないしひょっとしたらどこかの異空間なのかもしれない。
「あなたは?」
だれもいない空間で響く声に話しかけてみる。
――――我が名はアヌ。そなたをこの時代に呼んだ者だ。
え、私って死んだんじゃなかったの?確か手紙と一緒に屋上から落ちたはずなんだけど。
するとアヌと名乗った天の声さんは私の思っていることが分かるようでそのまま疑問に答えてくれた。
――――そなたはまだ生きている。ああなったのはこちらに来るきっかけを作るのにひと手間かかったのでな・・・本当はもう少し穏便にしたかったのだが仕方なかったのだ。
チョットマテ。じゃあ私の人生初のラブレターは・・・・?
――――ああ、あれは偽物だ。
う、うああああああああ!!主犯はこいつだった!!私の期待と時間を返せええええええ!!!!
――――こらこら、仮にも女子がそんなぎらついた目をするでないわ。
させてんのはあんただよ!!どうしてくれるの私の人生!いきなり平原に立ってて味方はライオンの群れしかいないし・・・いや、あったかいしもふもふだしある程度意思疎通できるし寂しくないし・・・あれ、結構平気かもしれない。
――――・・・・とにかく、我らがそなたを呼んだのは単純に時期がきたと判断したからだ。単刀直入に伝えよう。そなたは本来ならばこの時代に生まれるべき存在だったのだ。
ある王を諫めるためにそれと同等の存在として我らが直接魂から造り出した半神半人。それがそなただ。
いきなり言われてもパッとしない。それどころか胡散臭い話にさえ思えてくる。
「いや、そんなこと言われても私一般家庭の庶民派女子高生でして。女神とか言われても超能力とか魔法とか超直感とか能力の兆しとかそういうの一切なかったし・・・人違いでは?」
――――そなたをこちらに呼んだ時点で既に魂に女神としての核を融かしておいた。うまく馴染んでいるようで何よりだ。そもそもそんな力を持つ者をそなたの時代に組み込んだらそれこそ収拾がつかなくなるだろう。だから時期が来るまでただの人間として暮らせるよう元の魂・女神としての核・権能を分けておいたのだ。
「ちょっとまって、けど権能なんて私知らないし、なぜか体も縮んでるんだけど」
――――体については魂の調整の副作用だ。成長するし、体に影響もない。権能についてはそうだな。荒療治にはなるが・・・女神としての自身を受け入れよ。
そうすれば嫌でも理解できるだろう。そう言われると同時に視界が眩む。その霞んだ僅かな一瞬でホワイトアウトする意識。と同時に全身に走る激痛。
私が『私』になって『私』が私になる。
溶け合う。共有する。
愛して、守って、誓って。
我が身は愛するもの(世界)のため
我が心は愛するもの(生命)のため
我が全ては愛する者たちのため
——————「永劫なる星の礎(エヌマ=エリシュ)」
「受け入れてくれてありがとう」。完全に溶け合う前、私たちはお互いにそう囁いた。
プロローグと分割して書きたかった話。これから展開していく話の主人公についての基礎教材みたいな話です。割とどうでもいいかもしれないけど、主人公が自分の能力を駆使するに当たって知っておかなきゃならない事だと思って書きました。
主人公は弟と同じで素直だけど、理想論より現実を見てそれらを織り込みながら自分の意見や見識を言うタイプの人間。無茶な特攻もするけど考えなしの無鉄砲さんじゃないです。
ただ文章見ててわかる人もいらっしゃるかもしれませんが、権能が「傷つける」より「守る」ことに特化しているので無茶すること多いかも・・・・。