弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
ある日の夕方。間桐臓見は久々に蟲蔵へと向かっていた。それを今恐怖に思う者は既にここには誰一人いなかった。
「(雁夜め⋅⋅⋅⋅あやつがあの女なぞ召喚しおったからに)」
あの女⋅⋅⋅シールダーが召喚されてからというものの臓見のこの家での生活は彼にとって最悪だった。
出会い頭に何らかの呪いをかけられ、顎が外れ呪文を唱えられないため大規模な魔術を行使できない。呪文を唱えずとも蟲たちを使役できるがその程度ではシールダーにはまったく通用しなかった。
ならば雁夜や桜を⋅⋅⋅⋅とも考えたが何らかの術で守られているため入る隙もない。そのうえシールダーの特訓により魔術も戦闘もオールマイティーにこなせるようになってしまい益々取り込めなくなった。
ぶっちゃけるとこの家での臓見のヒエラルキーは鶴野が居ないこともあって最底辺だった。
あの愚息どもや孫の怯え恐怖にひきつる顔を見るのがなによりの楽しみだったというのに、今では手のひら返したように見て見ぬふりである。
このままではまずい。本懐の不死身どころかこの家での立場がなくなる。そしてなによりたかがサーヴァント…使い魔なぞに遅れをとっているという事実が二百年以上を生きる大魔術師の自分のプライドを傷付けた。それもキャスターではないシールダーなどというエクストラクラスに。
何がなんでも起死回生の機会をつくり、思い知らしめてやろう。そう思って薄暗く湿気のあるそこにたどり着くと臓見は視界の下になにかを発見した。それは幾重にも重なった鎖で繋がれ、辛うじて唸りながらもがいていた。
それを見つけた臓見は久々に口角を吊り上げた。これは間違いなくあの時のものだ。恐らくここに縛りつけたのはあの女。これはいい。
「このようなところに縛り付けられ続け自らの本懐を遂げずに終わるなど余りだと思わぬか?のう―――――――バーサーカーよ」
唸り声をあげる忘れ去られた黒き狂戦士に益々笑みを深めるとそれを拘束している鎖に触れた。
*****
一方、その日の夜。イノリは自分の施した封印の揺れを察知した。
ーーーーーー誰がやったか、なんて考えるまでもないんだけどね。
実は私は雁夜さんの召喚に割り込んできただけであって召喚そのものはキャンセルしていなかった。本当に呼び出したかったのはバーサーカーなのだし、いざというときの戦力として残しておくのも悪くないと思い、とりあえず雁夜さんの負担にならないように供給ラインを召喚と同時に切断。暴れられると困るので魔力で編んだ特製(即席)の鎖で拘束しつつそれからバーサーカーに魔力を提供していた。
「桜ちゃんと雁夜さんはもうあそこに行かなくてもいいはずだし、やっぱり一人しかいないよねー・・・」
ということで事情を話し雁夜にも付いてきてもらいもう誰も寄り付かなくなった蟲蔵へ向かうと。
そこには元々封印していたものではなく、別の人物がかかっていた。元々即席とはいえサーヴァント・・・英霊を拘束する鎖なのでいくら名の知れた魔術師といえど言葉を発せないほどの状態になっていた。
「えーと、俺たちは拘束されてるバーサーカーの様子を見に来たんだよな?なんでジジイが逆に拘束されてるんだ?」
「それはこの人が封印に干渉したからでしょうね。普通に触る分には何ともないはずなんだけど、きっとこの人のことだからバーサーカーの封印を解いて私たちを出し抜きたかったんじゃないですか?」
「あー、それはたしかにあるな」
「バーサーカーっぽい魔力補足しました。ちょっと追っかけてきます。」
「ああ、じゃあ俺たちはその間に先に遠坂邸に行ってる。」
あの葵さんとの邂逅から私たちは話し合い、遠坂さんちに乗り込むことにした。本当はもっと前もって準備すべきなんだろうけど、今は聖杯戦争真っ只中でいつどちらが殺されてもおかしくないので早めの方がいい。という結論になり、さすがに何もなしで行くのはまずいので一方的に使い魔に郵送させてもらった。届いてないとか言われると面倒なので郵送する書状には魔術のプロテクトの他に「捨てても必ず手元に戻ってくる」「送り主じゃないと消却できない」呪いをかけておいた。そして今日の夜、というか今から行こうとしていたのだ。これさえなければ。
「すみません。捕まえたらその足で急行します」
「大丈夫だ、いざというときはパスと令呪がある」
「・・・はい。じゃあ、行ってきます!」
「気をつけてな!」
雁夜さんの声を背に私はバーサーカーの反応がある場所―――――倉庫街へと急いだ。
遠坂さんちフラグ=再会フラグにしようかどうか迷ってます。倉庫街の場面はバーサーカーなしにはきっかけとしてきついかなと思ったのでバサスロットの召喚には一応成功した、という事にしました。