弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
次は雁夜さんとギルガメッシュ回にしようか悩んでます。
無表情で現れたギルガメッシュに私たちは強張る。特に彼と女神イノリの関係を知る私と切嗣は冷や汗すらかいていた。そんな私たちをよそに無表情のまま間桐雁夜を降すと間桐雁夜は目を覚ましたようで勢いよく身体を起こした。
「アーチャー!?シールダー、シールダーは!?」
「あやつは聖杯にくべられた・・・貴様はそこで寝ておれ雑種、イノリが守ったものを無為にするでないわ」
「・・・・ああ、そっか・・・・そうだよな・・・ごめんな、俺・・・・」
「よい、今は嘆いても始まらん。そのまま動くな」
そしてそのままギルガメッシュは私たちに向き直った。
「さて、先の答えだったか。当然であろう。女神とは自然そのもの、世界の一部だ。貴様らは世界の一部を贄として願望器を起動させた。どのような願いを願ってあやつを贄にしたのかは知らんが今起こっているのは曲がりなりにも貴様らの願望を叶えようとした結果だ。」
「そんな馬鹿な、僕が願ったのは「恒久的世界平和」だ。こんな人間が消えていくような世界であるわけがない!!」
「ならば聞くが、お前の思う「世界平和」とやらはどういった状態のことを指す」
「争いがない、誰も傷つかない全ての人間が平等に幸福な世界だ」
「・・・・貴様らはそんなくだらん願いのためにイノリを犠牲にしたのか」
地を這うような底冷えする声で、表情は無表情のままなのに切嗣を見るその目は明らかに怒気と憎悪がにじみでている。
「誰も傷つかない全員が幸福な世界?おかしなことを。誰も傷つかずに幸福を保つ世界などない。人間とは犠牲なくして生を謳歌できぬ獣の名だ。平等という綺麗事は闇を直視できぬ弱者の戯言に過ぎぬ。お前の願いは醜さを覆い隠し目を背けるための言い訳だ」
「っ、だが、お前も王だったならわかっているはずだ!戦場に希望なんてない。あるのは掛け値無しの絶望だけ。敗者の痛みの上にしか成り立たない。勝利という名の罪過だけだ。なのに人類は、その真実に気付かない。いつの時代も、勇猛果敢な英雄が、華やかな武勇談で人の目をくらませ血を流すことの邪悪さを認めようとしないからだ。人間の本質は石器時代から一歩も前に進んじゃいない!!」
「分かっていないのはお前だ、雑種。争いというのは生物が行き着いた最も効率のいい生き方だ。互いの利権を譲れば生き残れぬ、弱ければ死ぬ、強き者・勝者のみがしのぎを削り生き残ることを許される。これほど分かり切ったことはこの世に存在しない」
「なら、弱者の居場所はないと、そう言いたいのか!?」
「そうだ、少なくとも我の国に弱者はいらん。老若男女、強き者、有能な臣下―――――我が欲しいのは雑種などではない。王たる我に尽くし我に命を捧げる者。地獄の中ですら生き延びられるモノにこそ、支配される価値がある。その点で言えば今回は落第だったな。文明の進化・科学だよりの今の人間は目も当てられぬほどの脆弱ぶりだ。この程度で死ぬなど、最早我が手を下すまでもない。」
「なんてやつだ・・・お前にとっての人間は一体なんなんだ!?多くの人が亡くなっているこの状況をなんとも思わないのか!?」
「我にとっての人間だと?そんなものは決まっている。我を楽しませる愉悦と成り得るかそれ以外、または今すぐ死ぬかいつか死ぬか、それだけだ。それに、この状況で死に絶えるのならそれでよい。自らの罪で消え去るのなら、生きる価値などあるまい」
「?!どういうことだ」
「貴様らもイノリを知っているから贄に選んだのだろう。やつの権能は「守護」と「浄化」、そして元が「ガイア」側の英霊だ。つまりこの状況でもわかるように「世界平和」のために「星を破壊するおまえたち人間」と「消費する他の生物たち」を「星の癌細胞・敵」とみなし「世界」を「守護」するために「星の一斉浄化」をする。おそらくそういうことだろう」
「そん、な」
「だから言ったのだ「何故も何もない」と、あやつを聖杯に捧げた時点でこうなることは目に見えていた。しかし本来は既に無色透明の魔力に変換された存在であるあやつに意思なぞ存在しない。しっかりと願いを叶えるまでの道程を思い描いていれば権能に頼った極端な「世界平和」は起こらなかったはずだ。分かるか、衛宮切嗣。全てはお前たちの不手際とくだらん理想のために行き着いた結果だ」
真っ青になって打ちのめされる切嗣を見ていられなくなって私も声を上げる。
「でもこの作戦を切り出したのは私で切嗣の理想は間違いなんかじゃないわ!」
「その結果を受け入れず後悔する男のどこが間違いでないと言えるのだ、我の最愛を犠牲にしておきながらこの体たらく、呆れ返ってものも言えん。本来ならば死ぬまで徹底的に痛め付け拷問してやるところだが、気が変わった。最早貴様らにはその価値すらない。故に死ぬまでその罪と周囲の怨念に焼かれながら生き続けるがいい」
「!あ・・・・」
そこで私たちははたと気付いた。そうだ、この男にとって女神イノリは女神ではなくて生涯愛した最愛の女性だったのだ。殺した神を親友と共に殺し、英雄とは程遠い神殺しをやってのけるほどの。そして私たちはその再会を無惨なものにしてしまった。二人はただ再会できた奇跡を喜び一緒にいようとしていただけなのに。結局自分たちのことだけで何一つ救えない、それどころか見えてすらいなかった。もう、私たちは、この場所から一歩も動けなかった。
セイバー陣営再起不能になりました。辛うじて動けるのはセイバーですが動かすかどうかはまだ決めてないです。