艦これ 転生するジオンの意思 作:ジオン十字勲章
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UC0079 12.25――宇宙要塞ソロモン陥落
ある者は愛する者の名を叫びながら、
ある者は公国の勝利を願いながら、
さきの防衛戦で宇宙の塵芥となった。
たくさんの同志が、
たくさんの仲間が、
あの海域で英霊となった。
(こいつらは――俺の部下だけは絶対に死なせない)
宇宙軽巡洋艦ムサイの艦橋の艦長席に座している黒髪の青年、サイ・ハルノエは思う。
「駄目です艦長!! 敵の追撃が予想以上に激しい……このままでは」
通信部から女性オペレーターが逼迫した状況のせいか上擦った声で叫ぶ。
「落とさせんさ!! この艦は、お前たちの命は、絶対に俺が守る――敵砲撃来るぞ!! 絶対に当たるなよ」
「わかってますぁ、 そんなこと!!」
操舵手は操艦を一気に回し、艦全体を傾ける。それに伴い艦橋は激しく揺れ、数秒前まで艦橋があった場所にビームが光の軌跡を描く。
「回避成功!! さすがですアレンさん!!」
「そりゃあ、どうも、っと!!」
女性オペレーターの賞賛を操艦を操りながら受けとる金髪の男操舵手――アレン・ラックス。彼が操艦を回すたびに艦は右に左にと傾きその度に艦橋は激しく揺れるものの、そのおかげで艦は敵から目立った攻撃を受けていない。
(だがこのままでは遅かれ早かれ)
不安な考えがサイの頭によぎる。
駄目だ……この先は考えるな、サイは首を振り不安を払う。
だが実際にこの状況をどう切り抜ける?
燃料も最低限、
弾薬もあまりない、
この八方塞りの状況をどうする?
答えはすでに決まっていた。
サイの中ですで答えは出来ていた。
その答えを告げるため、意を決して口を開く。
「皆に告げる――」
「宇宙の膿め、早く落ちればいいものを」
サラミス級巡洋艦艦長、アレックス・ダルミアは溜め息混じりに呟く。
現在地球連邦軍は宇宙要塞ソロモンから撤退を開始しているジオン残存兵の追撃を行なっている。アレックス・ダルミアが指揮するサラミス級巡洋艦もそれを行なっており、前方を走るムサイ軽巡洋艦に狙いを絞っていた。
「クソ、何故落ちん!! 私の出世のためさっさと落ちんか!!」
前方を走るムサイ軽巡洋艦は幽鬼のようにふらふらと揺れビームを躱す。当たりそうで当たらないその状況にだんだんとアレックスの中てイライラが募っていく。
「砲撃手め、一体何をしているんだ!!」
座席の肘掛けに握り拳をぶつけながらアレックスは声を荒らげる。
腹立たしい。
実に腹立たしい。
ジオンが、宇宙のガン細胞が、私に手間をかけさせるなどあってはならない。
「艦長!!」
通信部の男性オペレーターが叫ぶ。
何だ!! ヒステリック気味にアレックスは叫ぶ。
「敵艦に動き有り!! 回頭を始めます」
「何だと?」
ジオンめ、何を企んでいる? 逃げ切れんと思って気でも狂ったか? いや、まさか――
「奴らめ、我が艦に特攻するつもりか!!」
これだからジオンの連中は嫌なのだ。
ナショナリズムに染まった奴らは追い詰められたら何をしでかすかわからない。
「撃ち落とせ!! ジオンの屑どもに調子にのさせるな」
アレックスの鶴の一声でさらにサラミス級巡洋艦の弾幕は濃くなる。敵の艦が回頭しきる前に――
「敵艦に主砲直撃!! 轟沈します」
男性オペレーターが声を上げる。
「ジオンめ、大人しく」
アレックスがこの先の言葉を続けることはなかった。
重々しい爆発音を伴いムサイ軽巡洋艦が爆炎を上げていき、闇に支配されたハズの宇宙空間を高熱の光が照らしていく。その光景がMS-14S ゲルググの頭部のモノアイカメラを通し、眼前のモニターへと鮮明に映し出される。
俺の艦が沈んでいく……今までありがとう。そしてゆっくり休んでくれ。サイは鼻で深呼吸し、先ほどの艦でのやり取りを思い出す。
「あんた……それ本気で言ってるのか?」
怒気を含ませた声で艦の操舵手アレン・ラックスはサイに問う。その間もしっかり操艦をしっかりと操り艦が沈まないよう回避行動をとっている。
「本気だ。皆が助かるにこの方法しかない」
「皆ね……そりゃあ俺たちは助かるかもしれない。だけど……大佐は、アンタはどうなる? そんなことをしたらアンタは確実に死ぬ。アンタにシゴかれた俺たちがそれを、はいそうですかって、受け入れると思うのか? 日頃から、生きることを諦めるな、って口やかましいアンタの、そのふざけた提案を!!」
「提案ではない」
サイは深く息を吐き、続ける。
「これは命令だ……上官命令だ。異論は認めん」
「ふざけ「それに」」
アレンの言葉を遮りサイは続ける。
「俺は死ぬつもりはない。奴らを蹴散らし、必ずお前たちと合流する」
「本当だな? 本当に……死ぬつもりはないんだな?」
「あたりまえだ」
「わかった……その言葉を信じる。俺は、アンタを信じる。みんなもそうだよな!!」
アレンは操艦を操りながら大声で叫ぶ。すると艦橋にいた乗組員は一様に立ち上がりサイに向かって敬礼をした。
サイは黙って頷き、
「皆早く脱出艇に乗り込め!! この艦は破棄する」と
爆煙によって敵の姿は一切視認出来ない。
それは敵からも同じ、おそらく向こうは俺の艦を落としたと考えているハズだ。
サイが考えた作戦はこうだ。
ムサイ軽巡洋艦を敵の前で回頭、敵に特攻を思わせ撃墜させる。そうしたら敵は必ず油断するハズだ。
サイは撃墜される前にモビルスーツで脱出し艦が撃墜されたら爆煙に紛れて敵艦に奇襲、接近して撃破するという算段だ。
だが――とサイは妙な感覚を覚える。
敵艦の位置が直感的にわかる??
敵艦は視認出来ないのに何故??
しかし……これなら接近する必要はない。
ビームライフルの狙撃で落とせる。
「俺の部下には手を出させない。お前はここで落ちろ!!」
とタカアキは直感を頼りにビームライフルの引き金を引いた。
轟音を伴った光がまた一つ出来る。
遠目なら星の煌きに見えるかもしれないが、その光はそのようなロマンティックなものではない。
その光には怨嗟が宿り、
その光は怨恨を生む。
繰り返される殺し合いの応酬、
サイもまたその運命からは逃れることは出来ず、たった今、敵の艦を落とし大勢の人間の命を奪った。
「敵の艦は撃墜……皆のところに向かうか……それとも」
数秒目を瞑り考える。
「決まっている……撤退している友軍の手助けをし、少しでも多くの仲間を助ける!!」
サイはゲルググのブーストをふかし、未だに残っている爆煙の中から飛び出した。
UC.0079.12.25
サイ・ハルノエ大佐 戦死
大佐から中将へ二階級特進
ソロモン撤退戦においてMS10機、戦艦2機という獅子奮迅の活躍を見せる。