艦これ 転生するジオンの意思   作:ジオン十字勲章

11 / 13
今回は宇宙世紀での話です


幕章 不死鳥隊

 宇宙世紀0079.12.25――ソロモン撤退戦にてジオン将兵の大多数が英霊となる。

 かつて死者がゼロだった不死の部隊、「不死鳥隊」と呼ばれた部隊隊長――サイ・ハルノエ中将も英霊となった一人だった。

「何が……何が死ぬつもりがないだ‼︎ あの野郎ふざけやがって、結局、先に、逝ってるんじゃねぇか‼︎ くそ、くそぉ」

 金髪の男――アレン・ラックスが壁を殴りつける。彼はサイ中将の部下であり宇宙軽巡洋艦ムサイの操舵手をしていた。

 現在、アレンを含む不死鳥隊の面々はソロモン残存兵の回収の任務に来ていた友軍に回収され、重巡洋艦チベに乗艦している。今彼らは慌ただしい格納庫にその身を置いていた。

「アレンさん……気持ちはわかりますが落ち着いて下さい」

 アレンを(たしな)めるのは宇宙軽巡洋艦ムサイの通信オペレーターをしていた、茶色がかった髪をしたマリア・ランオード、アレンが彼女の胸倉を掴む。

「てめぇ……あいつが、サイさんが死んだんだぞ‼︎ なんで落ち着いていら――」

 マリアの目からは涙が溢れており、アレンは今更ながら気付く。

 俺は何してんだ……悲しいのは俺だけじゃねぇ。マリアのヤツだって、いや、ここにいるヤツみんな悲しいんだ。サイさんだけじゃねぇ、ソロモンでたくさんの人間が死んだ。殺された。

「すまねぇ……マリア」

 とアレンはマリアから手を離す。

「いいんです……先ほども言いましたが気持ちは痛いほどよくわかりますから」

 「おい」とアレンとマリアは声をかけられる。2人が後ろを振り返ると、そこには同じ艦で整備班の班長をしていたバリアス・レグレイト――通称「おやっさん」と呼ばれている人だった。

 彼は2人とは決定的に違うところが一つあった。

 

 笑顔なのだ――彼はいつもと変わらない豪快な笑みを浮かべている。

 

「おめぇーらはサイ坊が死ぬと思ってんのか? あいつならきっと大丈夫だ」

「なんでそんなことが言えんだよ?」

「あ? そんなの決まってらぁ。あいつは俺たち不死鳥隊の隊長だぞ? 部下である俺たちがこうして生きてんだ、それならあいつも生きてるさ。不死鳥の名は伊達じゃねぇだろうよ」

「……おやっさんの言う通りだ。あいつが、あの人がそう簡単に死ぬわけがない。きっと何処かで生きてる」

「そうですね……必ずそうです」

 

「不死鳥隊の者はいるか? 確認したいことがある」

 と大きな声を上げたのはソロモン残存兵の回収指揮を執っていたマ・クベ大佐である。彼のもとに不死鳥隊であるだろう船員が集まってくる。

「あの激戦でこの数の兵士が残っているのか。どうやら不死鳥という名はお飾りではないらしい。実は君たちに聞きたいことがあってな」

「聞きたいこと……ですか?」

 隊を代表しアレンは訝しげに思いつつ口を開く。

「うむ……君たちの隊長、サイ・ハルノエは戦場を逃げ出す腰抜けかね?」

「――なっ⁉︎」

 アレンは予想外の質問に言葉を失い、同時に怒りが込み上げてくる。この男は――戦場で死んだあの人を、愚弄するのか。俺たちのため、友軍のために死んだあの人を‼︎

 アレンは激昂しマ・クベ大佐に殴り掛かりそうになるが、彼を窘めるようにマリアが彼の名を呼ぶ。

「そう怒らないで欲しいな。これは彼の名誉ために確認していることなのだ」

「――どういうことです?」

「君たちにならば説明しても構わないだろう。実はな――」

 

 マ・クベ大佐の話はこうだった。

 サイ・ハルノエが搭乗していたMS-14S ゲルググ(指揮官機)は発見された。それは大破はしておらず、コクピットを貫かれたであろう弾痕があった。

 しかしそこにはなかったのだ。

 あるハズのものがなかった。

 

 サイ・ハルノエの死体がなかったのだ。

 しかもコクピットのハッチが閉まっていた状態で――まるで死体そのものがそこになかったかのように。

 

 マ・クベ大佐の話を聞き不死鳥隊の面々は確信する。

 彼の死体がないなら、必ずどこかで、醜いかもしれない状態で、だが力強く気高く生きているだろうと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。