艦これ 転生するジオンの意思 作:ジオン十字勲章
助けて下さい。
時刻は午後3時――吹雪は工廠にいた。
榛名さん……何処にいるのかな。
利根(利根型1番艦)は工廠におるハズじゃー、って言ってたけど……あ、いた!
「榛名さん!」
「ふ、吹雪ちゃん、そんなに慌ててどうしたんですか?」
一刻でも早く榛名と話したかった吹雪は利根から有力な情報を得ると工廠まで走ってきた。そのため彼女は言葉を紡ごうとするが、呼吸が乱れているせいで上手くできない。吹雪は一度深呼吸をし言葉を紡ぎ出す。
「実は長門さんが――」
「――良かった」
榛名の思わぬ言葉に吹雪は目を白黒させる。榛名は構わずに続ける。
「まだ解体されてないんですね」
「か、解体?」
物騒な言葉に思わず身構える吹雪、一方の榛名は落ち着いた様子で自分が見たものを説明する。
「実はですね――」
「長門さんが執務室を!?」
「確証はありませんが、榛名はほぼ間違いなく長門さんがやったと思います」
「なるほど……それで」
「どうしたんですか? 吹雪ちゃん」
「実は――」
長門がさっき笑っていた、吹雪はそのことを榛名に説明する。
「長門さんが……珍しいですね」
「たぶん、執務室を破壊して色々とスッキリしたから笑顔だったんだと思います。清々しいとも言ってましたし……」
「なるほど……確かにその状況なら吹雪ちゃんの推理は当たってると思いますよ」
「問題は何故長門さんがあいつと一緒にいるか……ですよね」
二人は暫しの間考え込む。先に口を開くのは榛名。
「榛名は思うのですが、長門さんはあいつに何かしらの弱みを握られて、それで仕方なく行動を共にしているんじゃないでしょうか?」
「なるほど」
吹雪と榛名は互いの考えをまとめることにした。
二人の考えは以下のようにまとまった。
第一、何かしらの理由で長門が執務室を吹き飛ばす。それで吹雪に清々しいと笑顔で言った。
第ニ、執務室を吹き飛ばすところをあいつに目撃される。それが理由かはわからないが何かしらの弱みを握られ、長門は仕方なくあいつと行動を共にしている。
第三、あいつは長門の肉体を楽しむためにまだ解体をしていない。
「本当に……提督っていうヤツはクズばかりです。長門さんは榛名たちが助けないと……」
吹雪は共感の意を込めて黙って頷く。
「吹雪ちゃん……今夜あいつが寝静まった頃に」
榛名は吹雪の目を確と見たまま意を決する。
「あいつを暗殺しましょう」
「私たちが……やるしかないですもんね」
こうして、今夜二人は行動に出ることとした。
現在、サイと長門は執務室修繕の依頼のため工廠に足を運んでいた。工廠の環境は入渠ドッグや食堂に比べたら思いのほかマシだったことにサイは驚く。しっかりと資材も仕分けされており、整理整頓されている。ここの責任者がしっかりしているのだろう、とサイは思う。
「明石、私だ。少しいいか?」
工廠内の奥にあった扉を数回ノックし長門は言った。すると扉が少しだけ空く。
「提督はここにいて下さい。先に私が話してきます……彼女も前任に色々やらされていたので」
「わかった……よろしく頼む」
長門は部屋の中に入っていった。
長門が部屋中に入って数分――サイは工廠内にいたある存在に気付く。
(あれは……小人? もしかして長門が言っていた妖精というやつか?)
サイは初めて見る存在に若干の好奇心を持ち、観察を始める。妖精たちはサイを警戒しているのか一定以上の距離を保ち、近づいてはこない。
(……可愛いな)
柄にもなく可愛いと思うサイ。妖精の警戒心を少しでも解きたい彼は自ら話し掛ける。
「俺はサイ・ハルノエだ。階級は大佐、一応ここには提督という形で着任した。君たちはどういう仕事をしているんだい?」と親愛の意味を込めて右手を差し出す。
妖精はその意を汲んだのかサイとの距離を僅かに縮める。そして妖精の一人が代表してサイに聞いてくる。
「あなたは私たちにヒドイことするですか?」
「しないさ」
「本当に……ですか?」とサイが嘘を言っていないか、彼の瞳を妖精は確と見る。サイはその視線に応えるように口を開く。
「あぁ本当だ……俺の胸に宿る信念に誓おう」
妖精たちは彼が嘘を言っていないと判断したのか、彼が差し出していた右手の指をその小さな手で掴む。
「よろしくお願いしますです。この工廠内にいる私たちは基本的にメカニックマンに近い仕事をしています」
「その体格でか?」
「はい!」
「いい返事だ。なかなかに頼もしいじゃないか」とサイは妖精たちの頭を撫でてやる。
「気持ちいいのです」
「そうだ……先に言っておこう」
「なんですか?」
「実はな――」
サイは妖精たちに、明日から鎮守府内の改装を行うから忙しくなるかもしれないと説明する。
「なるほど。そういことなら頑張るのです」
一人の妖精がおーっと右手を上げると、それに呼応するかのように他の妖精たちもおーっと右手を上げる。
「ありがとう、助かるよ」
もう一度頭を撫でると妖精たちは骨抜きにされ、その顔は脱力しきっていた。
「どうだ明石……あの人は?」
工廠奥の部屋、長門と明石はサイの行動を見ていた。
「正直……意外かな。あの子たちが提督にあんなにすぐに懐くなんてさ。悪い人じゃあないんだろうね」
「それは私が保証する」
「長門さんがそこまで肩入れするぐらいだからよっぽどなんだろうね……いいよ。さっきの話やったげる」
「本当か?」
「うん。明日の昼までには出来ると思うから伝えといて」
「あぁ、じゃぁよろしく頼む」
長門は工廠奥の部屋を後にした。
午前二時――榛名と吹雪は行動を開始する。