【凶狼】が闇落ちしたのは間違っているだろうか。 作:ほしぞら
その分、誤字脱字があるかもですが……まぁ、是非お読みくださいな、((
「__……行くぞ」
その言葉が合図だった。
Lv.6の脚力にものを言わせ、僅かに残った距離を一瞬で埋めた青年に、アイズが出来たことは、防御であった。
長脚を生かした右上段蹴りに、愛剣のデスペレートを重ね、堪える。
耳障りな金属音が鳴る中、拮抗状態を維持し、アイズは声を上げた。
「……ベートさんっ」
「……」
「ベートさんっ!」
「…………」
無言を貫くベートに、アイズの眉が跳ね上がる。
感情の薄いその顔に、あからさまな苛立ちを映して、少女は剛脚を無理矢理跳ね返した。
僅かにたたらを踏む青年を見やり、浮かぶのはたった一つの感情であった。
たった四つしか年の変わらない貴方は、随分と意地を張っている。
仲間だった、家族だった自分に、何も話してはくれない。
道を間違えた貴方に__何も言わせてくれない!
そんなの__ずるいにも程がある!と、アイズは最早睨みつけるまでのありありとした怒りを、何も語らないベートにぶつける。
「【目覚めよ】!!」
発動した【エアリアル】が箍の外れたかけた感情に巻き込まれないよう、静かに怒りを吹き荒らす。
一気に踏み込んで、先程空いた距離を詰め、デスペレートで切り上げる。
風を纏った神速の斬撃は、青年の体に吸い込まれる__ことなく、あっさりと宙を切った。
焦るのはアイズだ。
確かに合わせた筈の間合いにズレが生じていた事に、確かな驚きを彼に向けた。
その様子に、ベートは微かに唇を曲げた。
__昔と変わってない顔に、切れたり不機嫌になったりするとすぐに安直な攻撃に頼る癖。
随分女らしくなったが、まだまだ自分の知るアイズだ。
そんな安堵を覚えた青年は、本心からの笑みを少女に向けた。
「……変わってねぇな、アイズ。お前は、強いままだ」
嬉しそうに、今にも掻き消えそうな微笑みを浮かべて、青年は言った。
その言葉が、アイズに動揺を植え付ける。
__嘘には思えない、だけど聞き流して良いことでは、ないと思う。
困ったように眉を曲げ、揺れる視線を向けるアイズに、彼は笑う。
「__だがやっぱり技は甘ぇな」
「っ!?」
__不意打ち。
肉薄した狼は、戦闘に立ち直させることなく、少女をあっさりと地に転ばした。
少女が風を爆発させ立ち上がろうと、力を入れ手を地に突くも、その手をぐっ、と銀の長靴で踏みつける。
アイズは痛みに顔をしかめ、体を跨いで見下ろすベートを、睨み付けた。
「……さっきの言葉、訂正があるな。アイズ、お前は強い。だが、甘くなっちまった。ガキん頃の、他人に無頓着な、強さだけを求めてたてめぇは何処行った?」
それに厳しい視線を返す青年は、微かな失望を盛大な嘲笑を以て隠す。
そして、少女の上から退くと、顎で一方の道をしゃくった。
「__……あっちが一番【闇派閥】が少ねぇ。行くならあの道だ。行かねぇなら__此処で死ね、アイズ」
見逃せばレヴィスが自分を許さないだろう。
殺される可能性だって、否定は出来ない。
だから、一番良いのは彼女の元へ誘導する事だ。
わかっている。
わかってはいるが、この少女の瞳から、光が消えるのは嫌だった。
そんな我が儘に身を焦がすベートは、アイズが戦いを止め、逃げるのを待つ。
「早く行け」
「……………………」
答えぬ彼女に歯を噛み締め、数時間にも感じた静寂を、ただ過ごした。
閲覧ありがとうございました、!!
恒例の(?)おまけです↓
▼▼▼
「……それは……違うな、それも、ある」
重苦しい雰囲気をかもし出す狼の青年に、治療師の少女はごくりと唾を飲んだ。
「それも、ってことは……?」
「もうひとつ、あるに決まってんだろ」
剣呑な瞳で此方を見やるベートに、リーネは再度喉を鳴らすのであった。
▽▽▽
……続く!()